ティーチングレター

注ぎの油 -前編-

ロン・ロス/イスラエルBFP『モザイクラジオ放送』責任者

東アフリカに住んでいるアラブ人には、勇気を奮い起こすためにライオンの脂肪を体に塗り付ける習慣があるそうです。ヒンズー教の世界では、牛が聖なる動物とされ、牛乳が油注ぎのために用いられるということです。

英語の「油注ぎ」という表現は、フランス語の「塗り付ける」という言葉に由来しており、そのほとんどが医学、あるいは医療に関わる用語として使われています。はるか古代から、ヘブル人は油注ぎを実行してきました。それは迷信を基礎とする儀式ではありません。ヘブル人の油注ぎは、神の命令に従う、祭司や王に油を注ぐ特別なものでした。

今回のティーチング・レターでは、アロンの時代までさかのぼってこの「油注ぎ」を探求したいと思います。アロンとその息子たちは、祭司として聖別されました。アロンは最初の大祭司でした。彼は「油そそがれた祭司」(レビ4:3)として知られています。アロンは頭に油を注がれるという形で油注ぎを受けました(レビ8:12)。これは、聖別の儀式でした。「カドシュ」はヘブライ語で、取り分ける・聖なるものとするという意味があります。アロンとその息子たちは、神の油注ぎと賜物を民に分け与える器として、取り分けられたのです。

この選びは、堕落したこの世から、聖なる神の王国へと移されたことを示しています。また、聖なる性質にあずかる神の子として、神の国に組み入れられることを示しています。

頭上に注がれて

出エジプト記29章には、アロンとその息子たちが油注ぎを受けた情景が鮮やかに書かれています。そして20節には、祭司の耳、右手の親指、右足の親指に雄羊の血をつけたことが記されています。ユダヤ人の言い伝えでは、祭司は人々の言うことに耳を傾け(耳)、人々のために行動し(親指)、人々の間に出て行かなければならない(足の親指)ことを意味しているといいます。

大祭司がきよめの儀式を
行うときにつける冠

別の教えでは、「黄金の子牛事件」のとき、アロンが犯した罪をあがなうことを意味していると言います。アロンの「耳」は真理を聞いていたにも関わらず行動で失敗をし、主に仕えるための「親指」を偶像礼拝に用い、邪悪な行いに参加するために自分の「足の親指」を用いたことを、彼に思い出させるためだというのです。

どちらにしても、油注ぎを受ける者が、聖であり義であることが重要であると、神は強調しておられます。祭司はその聖なる衣服を身にまとう前に、全身を水に浸してきよめの儀式を行いました。大祭司としてアロンはターバンを頭にかぶり、その上に聖なる冠を着けました。その儀式を完了するためには、レビ記8章から9章に記されているきよめの過程、その準備、聖職位授与に至るまでを含めて7日間を要しました。

そしてついに、注ぎの油がアロンの頭上に注がれました。「それは頭の上にそそがれたとうとい油のようだ。それはひげに、アロンのひげに流れてその衣のえりにまで流れしたたる。それはまたシオンの山々におりるヘルモンの露にも似ている。主がそこに、とこしえのいのちの祝福を命じられたからである。」(詩篇133:2-3)

ヘブル的な思想を伝える人々は、常に視覚に訴える手法を用いています。この箇所では、しばしばその頂上が雪で覆われるヘルモン山を選んでいます。そして油注ぎの油は、ちょうどヘルモン山に下りる露のようだと言っています。アロンの頭を流れ下り、ひげを潤し、聖なる祭司服にまで至るのです。何という麗しい情景でしょうか。

しかしながら、この油注ぎの瞬間は、視覚に訴えるだけのものではありません。それよりはるかに深い意義をもっているのです。イエスはこの油注ぎを次のように表現しました。「あなたは、わたしの頭に油を塗ってくれなかったが、この女は、わたしの足に香油を塗ってくれました。」(ルカ7:46)。モーセはアロンとその息子たちに油を注ぐように命じられました(出エジ30:30)。その油注ぎの目的は明確です。それは、「祭司として神と民とに仕えさせるため」でした。そして邪悪な世の世界から「取り分けられるため」でした。彼らは神に仕えるために召されましたが、それにはまず油注ぎが必要だったのです。

王も預言者も油注ぎを受けました。神はエリヤに明らかな指図を与えられました。「主は彼に仰せられた。『さあ、ダマスコの荒野へ帰って行け。そこに行き、ハザエルに油をそそいで、アラムの王とせよ。またニムシの子エフーに油をそそいで、イスラエルの王とせよ。またアベル・メホラの出のシャファテの子エリシャに油をそそいで、あなたに代わる預言者とせよ。』」(Ⅰ列王19:15-16)

預言者は、実際に油注ぎを受けることによって預言者と認められるのが普通でした。それによって、神が彼らに示される事柄が公に確認されました。また彼らは「油を注がれた者」と呼ばれました。契約の箱がダビデの準備した天幕に持ち込まれたとき、非常に聖なる厳粛なことが起こりました。「わたしの油そそがれた者たちに触れるな。わたしの預言者たちに危害を加えるな。」(Ⅰ歴代16:22)という厳しい訓戒が与えられたのです。

古代から、ヘブル人は
油注ぎを行ってきた

油注ぎに用いられる品々も聖別され、油を注がれました(創世31:13、出エジ30:26-28参照)。ルツはナオミにその身に油を注ぐように言われました。「あなたはからだを洗って、油を塗り、晴れ着をまとい……なさい。」(ルツ3:3)。これはルツがボアズに良い印象を与えることができるようにという、ナオミの配慮でした。ナオミはルツがイゼベルのように派手に化粧をするのではなく、最上の衣服を身に着け、正しく適切な方法でボアズに近づくようにと教えました。この箇所では、私たちが神の御前に近づこうとするとき、霊的に心を整える準備が必要であることを教えています。

新約聖書には、油注ぎのもう一つ別の目的が記されています。使徒は、病人たちのために癒やしを祈るときに、油を塗りました。「悪霊を多く追い出し、大ぜいの病人に油を塗っていやした。」(マルコ6:13)

霊的な油注ぎ

油注ぎの具体的な方法を通して、霊的な適用を知ることができます。まずここで霊的な油注ぎについて考えてみましょう。この点に関して、イエスは力強いみことばを語っておられます。

「主なる神の霊がわたしの上に注がれています。主がわたしに油を注ぎ、良い知らせである福音を柔和な、貧しい、苦しめられている人々に語る資格を与えてくださいました。主は心の傷ついた人々をいやし、(肉体的、霊的に)束縛を受けている人々に解放を告げ、牢獄の扉を開け、縛られている人々の目を開くために遣わされたのです。」(イザヤ61:1、ルカ4:18、詳訳聖書の自由訳)

この聖句に関して、マシュー・ヘンリーの注解書を無視することはできません。彼は次のように書いています。

「『主の御霊がわたしの上にあります。』と書かれている通り、御霊のすべての賜物と恵みが、他の預言者のように少しだけではなく無制限にイエスに授与されています。主は御霊の力によって来られました。

第二に、主イエスは全権を委任されて来られました。『なぜなら、神はわたしに油を注ぎ、遣わされたからです。』とあるように、主に与えられている、普通ではない特別な油注ぎこそが、全権を任されていることを証拠立てています。

神ご自身がある人を一つの召しを持って遣わす場合、必ずそのために油を注がれます。『神がわたしをお遣わしになったので、神の御霊をわたしとともに遣わされたのです。』と書かれている通りです。第三に、主イエスはそれを受けるにふさわしい資格を持っておられました。」

イエスは油注ぎを受け御霊に満ちておられましたが、私たちは神から与えられる程度により、神のご配慮に従って歩むのです。重要なのは、神の王国にふさわしい生き方ができるように、御霊が私たちに油を注ぎ、資格を与えているということです。イエスは預言者、祭司、また王として油注ぎを受けられました。「またヨハネは証言して言った。『御霊が鳩のように天から下って、この方の上にとどまられるのを私は見ました。私もこの方を知りませんでした。しかし、水でバプテスマを授けさせるために私を遣わされた方が、私に言われました。[聖霊がある方の上に下って、その上にとどまられるのがあなたに見えたなら、その方こそ、聖霊によってバプテスマを授ける方である]』」(ヨハネ1:32-33、詳訳聖書)使徒の働き4章27節には、ヘロデとポンテオ・ピラトが、「神から油をそそがれた、聖なるしもべイエスに逆らって集まった」と記されています。私たちにとって、油注ぎを受けることが、どんなに大切なことであるか使徒パウロは述べています。

オリーブ油の抽出は、まず
オリーブの実を30〜40分間、
石で砕く
そして、さらに高い圧力を加えて油を絞る

「私たちをあなたがたといっしょにキリストのうちに堅く保ち、私たちに油を注がれた方は神です。神はまた、確認の印を私たちに押し、保証として、御霊を私たちの心に与えてくださいました。」(Ⅱコリ1:21-22)

このように、私たちは神から油注ぎを受けているのです。また、「確認の印」を押されているのだともパウロは言っています。パウロの時代には、押印のない文書は真正のものとは認められませんでした。私たちに神の権威を与えるのは、御霊による押印です。神の御力によって私たちは油注ぎを受け、神によってきよめられ、神に仕える王であり祭司とされたのです。

注ぎの油の成分から学び取るべき教訓

油は聖霊の象徴です。それでは、なぜ油が聖霊を象徴しているのでしょうか。

その鍵を見いだすために聖書を調べてみましょう。「ついで主はモーセに仰せられた。『あなたは最上の香料を取れ。液体の没薬五百シェケル、かおりの強い肉桂をその半分――二百五十シェケル――、におい菖蒲二百五十シェケル、桂枝を聖所のシェケルで五百シェケル、オリーブ油一ヒン。あなたはこれらをもって聖なるそそぎの油を、調合法に従って、混ぜ合わせの香油を作る。これが聖なるそそぎの油となる。』」(出エジ30:22-25)

まず主は「最上の香料」を用いることを命じられました。そのような香料は高価で、貴重で、値打ちのあるものです。それには4つの種類の香料、すなわち、没薬、肉桂、匂い菖蒲、桂枝と1ヒンのオリーブ油、つまり5種類の成分が用いられました。

私たちは自分の個人的な努力によって油注ぎを受けるわけではありません。神に自分を委ねることにより油注ぎを受けるのです。神は恵みとあわれみに富んでおられるお方です。私たちは弱くても、敵に勝利することができます。なぜなら、神はご自分の王国の家族に対して忠実なお方だからです。神は注ぎの油の成分を詳細に定められました。その油は他のどのような用途のためにも用いてはならず、神殿においてのみ用いられるものでした。

次号では、この注ぎの油の成分を一つずつ検証することで、さらに油注ぎの意味について掘り下げていきましょう。

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