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プロジェクトレポート

トラウマの傷痕

文:ピーター・ファスト(BFP CEO)

23年10月7日のハマスによる大規模テロは、
イスラエル全国民の心に深い傷痕を残しました。
BFPは心の癒やしに向けた支援も行っています。

テルアビブにある人質広場では、人質解放を訴える声がやみません
Photo by McCoy Brown/bridgesforpeace.com

重要なトラウマケア

「臨床心理士として25年間、経験を積んできましたが、今回ばかりはどう対応したらいいのか全く分かりません」。死海沿いの町エン・ボケックにあるホテル・ダビデで、ヨアブさんの絶望的な言葉を聞き、胸が痛みました。

かつて家族旅行や避暑地として人気のスポットだったこのホテルは、現在キブツ・ベエリの住民約1千人の避難所として使われています。23年10月7日、キブツ・ベエリにハマスのテロリスト数百人が侵入し、132人の男女と子どもを殺害、32人の住民を拉致し、町は壊滅状態となりました。

ふと目を上げると、数人の女性が幼児たちを連れてホテルのロビーを横切るのが目に入りました。無邪気に手をつなぎ、うれしそうに声を上げる子どもたち。彼らは一人残らず、ハマスの血生臭い計画の標的とされたのです。その事実に私は愕然(がくぜん)とし、頭を振りました。彼らが生き残れたことは、まさに奇跡です。

私は、ショックを抱えた生存者たちの話を聞き、トラウマケアの現場も見ました。彼らの癒やしのために、アートセラピー、マッサージカウンセリングなど多種多様な活動が用意されています。

遺された人々が負う心の傷

数カ月後、スデロットにある回復センターを訪れ、エリオルさんという若い兵士を紹介されました。エリオルさんと彼の警護部隊は10月7日、24時間体制でハマスのテロリストと戦い、ジキムというコミュニティーを救いました。一方で、テロリストたちと絶望的な戦いを強いられた末、殺された市民たちの姿も目撃しました。

「私はPTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しんでいます。何とかその中で生きようともがいている。この回復センターでは、いろいろな話ができるのが良いですね」。エリオルさんは、率直にそう打ち明けてくれました。

最後に面会したのは、アミット・マンさんの母親です。アミットさんは、キブツ・ベエリの若い救急救命士で、イスラエルの救急救命組織「マゲン・ダヴィド・アドム」のボランティアもしていました(本誌24年10月号P9で紹介)。10月7日、何とかクリニックにたどり着いたアミットさんは、負傷者を治療する中、乱入してきたテロリストによって無残にも殺されてしまいました。命が尽きるまで患者のケアを続けたその姿は、彼女の勇気と勇敢さを物語っています。

アミットさんの母親は、娘が10月7日の前日に歌った最後の歌を聞かせてくれた後、その場で泣き崩れました。

信じられないほどの強さと回復力こそ、イスラエルのDNAの一部です。一方で、イスラエル国民は1948年の奇跡的な国家再建以来、数十年にわたる戦争とテロ攻撃に耐えてきました。その結果、何層にもわたるトラウマが国民の心に傷痕を残しています。

10月7日に3千人に及ぶテロリストがガザ地区からイスラエル南部に押し寄せ、市民ら1200人以上を殺害、無数の負傷者を出しました。イスラエルは、レバノンのヒズボラやガザのハマスという悪の勢力と戦う中で、900人近い兵士を失っています(3月中旬時点)。

大切な人質を取り戻すため、イスラエルは「停戦」協定により約2千人のテロリストを刑務所から釈放。一方のハマスは人質を解放する際、異様なセレモニーを行い、野次を飛ばすガザの群衆の前でやせ細った人質をパレードさせました。イスラエル人はその光景に憤りながらも、愛する人々が戻ってきたことに歓喜するという、言語に絶する現実に直面しました。

ビバス家の解放を訴える声は、ハマスには届きませんでした
 Photo by McCoy Brown/bridgesforpeace.com

イスラエルは世界中の人々と共に500日以上もの間、ビバス家の2人の幼子、アリエル君とクフィル君、そして母親のシリさんが、父親のヤルデンさんの元に戻ってくることを祈り願ってきました。

しかし、彼らは遺体となって黒い棺に納められ、赤十字に引き渡されるという結末を迎えてしまいました。さらに、遺体は当初シリさん本人ではなく身元不明のガザの女性のもので、イスラエル人の心に怒りと絶望があふれました。その後間もなくシリさんの遺体がイスラエルに返還され、残酷な行為は終わりを迎えました。

拡大するBFPの働き

トラウマはユダヤ人と切っても切り離せません。ナチスドイツとその協力者が600万人以上のユダヤ人を殺害したホロコースト(1939〜1945年)は、代表的な苦しみの一つです。イラン及びその代理人たちは、唯一のユダヤ人国家を消滅させようと決意し、古くからのトラウマを呼び覚ましました。反ユダヤ主義は急増し、世界中のユダヤ人の間で恐怖が高まっています。

BFP(ブリッジス・フォー・ピース)のボランティアとスタッフはイスラエルに住みながら、イスラエル人が経験する痛みと喜びを分かち合っています。行いは言葉以上に雄弁です。私たちは防空シェルターや救急車を寄贈し、何千袋もの食料や衣類を困窮する人々に提供してきました。また、アミット・マンさんをしのび、ベテランのセラピストが乗るバンを購入して、トラウマ治療の支援も行っています。イスラエルでの私たちの活動は新たな段階に入りました。困難な道を歩む中でも、神は奇跡的に新しい関係を開いてくださったのです。

イスラエルの神が主権を持ち、王座に就いておられるゆえに、イスラエルの人々は生きることができます。しかし、すべてのユダヤ人がトラウマを経験し、その絶望と悲しみは明らかです。BFPは、トラウマケアの必要に応え、かつてないレベルでキリストの愛を実践し、苦しむ人々の心を神の愛によって照らしていきます。

どうか「危機基金」を通じてご支援ください。イスラエルの人々に仕え、トラウマの傷痕を癒やすために、共にキリストの愛を実践していきましょう。

トラウマに苦しむユダヤ人へのご支援は、「危機基金」へお願いいたします。
ご入金方法は、下記バナーよりリンク先をご覧ください。

※銀行またはゆうちょダイレクトからの送金の際は、必ずご連絡をお願いいたします。

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