ティーチングレター

平和

文:レベッカ・J・ブリマー(BFP国際会長)

2020年、イスラム教国が次々とイスラエルとの和平に合意しました。
これは真の平和なのか、あるいは聖書の言う偽りの平和なのか、多くのクリスチャンが疑問を抱いています。
聖書から平和について考えてまいりましょう。

Hannah Taylor/bridgesforpeace.com

今回のティーチングレターで何を書けばよいか祈っていた時、主が私の心に「平和」という言葉を与えてくださっていると感じました。「やすけさは川のごとく」「シャローム・アレイヘム」(平安があなた方にあるように)「シャバット・シャローム」といった聖歌やヘブライ語の歌などが私の心に流れ始めました。世界は平和を願い求めているのです。

イスラエルに移住して以来、平和を切望しないイスラエル人に会ったことは一度もありません。誰もが平和を願っています。若者たちが軍服を着、戦いの武器を持つどの時代においても、次の時代は平和になることが期待されていました。イスラエルに対立する国々がイスラエルに真の友情の手を差し伸べるなら、中東の紛争はすぐにでも終わるでしょう。イスラエルの首相を務めたゴルダ・メイアが語った次の言葉は有名です。「アラブ人が私たちを憎む以上に自分の子どもたちを愛するようになる時、平和は実現する」

ここ数カ月でイスラム教国が次々にイスラエルと和平を結びました。注目に値するのは、この和平合意と引き換えにイスラエルが領土を譲渡する必要がなかった点です。これは平和のための和平なのです。ヨルダンやエジプトとの和平は「冷たい和平」でしたが、今回は「温かい和平」であることを既に目の当たりにしています。かつての敵対国とイスラエルの間に直行便が就航し、イスラエルの実業家たちは相互に有益な取引に新たな同盟国を引き入れています。観光業もこれに続くでしょう。イスラエル人は喜んでいます。クリスチャンの中には喜ぶ人もいれば、これはダニエルが預言した7年の契約(ダニ9:27)かもしれず、反キリストによる偽の平和だと言う人もいます。私たちはどう考えればよいのでしょうか。

聖書は平和についてどう語っているか

イスラエルの預言者たちは戦争の無い時代について語りました。イザヤとミカの預言はほぼ同じ内容です(ミカ4:3、イザ2:4)。「主は国々の間をさばき、多くの民族に判決を下す。彼らはその剣を鋤に、その槍を鎌に打ち直す。国は国に向かって剣を上げず、もう戦うことを学ばない」(イザ2:4

エルサレムの中心にこのみことばが刻まれた石碑が立っています。戦いの武器が片側に、農機具がもう片側に刻まれた石碑です。この預言は一般的にメシア預言だと考えられています。

一方でこの2人の預言者は偽の平和についても語りました。さまざまな時代のイスラエルの指導者や預言者たちが、平和が無い時に平和を宣言して人々を励まそうとしました(エレ6:14、8:11、エゼ13:16)。ネルソン・スタディー・バイブルはエレミヤ書6章14節について「宗教指導者たちは希望と平和のメッセージによって人々を慰めようとした。しかし、それは神のことばではなかった。平和とは…神のことばに従って信仰によって生きることで得られる心と思いの確かさ、安心、平安である」と語っています。

近世の出来事では、イギリスのチェンバレン首相がヒトラーと会談し、ズデーテン地方譲渡と引き換えに和平合意を取り付けました。ヒトラーは英独不可侵条約にサインまでしたのです。チェンバレンは帰国して「この時代の平和」を宣言しましたが、これは真の平和ではなく宥和(ゆうわ)政策でした。

使徒パウロは、主の日(滅び)は夜中の盗人のように、人々が「平和だ、安全だ」と言っている時に、妊婦に産みの苦しみが臨むように突如として襲い掛かる(Ⅰテサ5:2-3)と言いました。

平和
神からの贈り物

平和は良いものであり、追求すべきものです。ダビデ王は「悪を離れて 善を行い 平和を求め それを追い続けよ」(詩34:14)と記しました。使徒ペテロはこのダビデの言葉をペテロの手紙第一3章11節で引用しています。

「シャローム」(平和)はイスラエルでは祝福のあいさつです。「こんにちは」と言う代わりに「平和がありますように」とあいさつします。ペテロ、パウロ、ヨハネは書簡の中で「恵みと平安(平和)」という言葉を祝福として使っています。御使いたちがイエスの誕生を羊飼いたちに伝えた時、御使いの軍勢は「いと高き所で、栄光が神にあるように。地の上で、平和が みこころにかなう人々にあるように」(ルカ2:14)と神を賛美しました。

神が平和を与える方であり、平和の神であることを示す聖句は数多くあります(詩4:8、詩29:11、Ⅰコリ14:33、ピリピ4・6-7など)。平和は神がご自分の民に与えられた祝福だと信じます。

サタンから来る偽の平和

サタンは、神がつくられたすべての良いものを偽造したり、歪曲(わいきょく)したりします。神がつくられた愛をサタンは情欲に変えます。神は真理をつくられ、サタンは「誰もがその人なりの真理を持っている」「絶対的な真理などない」と、真理を相対化します。神は信仰をつくられ、サタンは疑いを抱かせます。神は希望を約束され、サタンは恐れと絶望を生み出します。神の究極のメシア王国のしるしは戦争の無い平和ですが、サタンの約束する平和は偽物で長続きしません。偽物を見分けるには、本物と比べてみることです。偽物の目的は本物そっくりに見せ掛けて欺くことにあります。

終末論

私の父、デイビッド・アレン・ルイスは終末の聖書預言(終末論)を専門に研究していました。長い間父の教えを聞いていて分かったことは、クリスチャンの間には、終末論に関して幾つかの有力な見解があるということ。また、別の見解を持つ誠実なクリスチャンに配慮しない場合があるということです。私は将来の預言的出来事をどう考えるかはその人の神学次第だと考えています。なぜならそれは単純に、聖書に明示されていないからです。私は、自分の神学に固執しないようにとBFPスタッフにもアドバイスしています。救いに関わらない問題では、愛をもって意見の相違を受け入れることを学ばなくてはなりません。大切なことは神を愛し礼拝することであり、聖書を学び、イエスや弟子たちの模範に倣い、未来を神に委ねることです。

次の短い概要は、終末時代における偽りの平和に関する多くのクリスチャンの考えです。同意できない方もいるかもしれません。

終わりの時代に平和の人として反キリストが起こり、多くの国々と7年間の和平条約を結びます(ダニ9:27)。その条約は3年半後に偽物だと分かり、その時反キリストは礼拝されるために神殿に上り、神殿を汚します。終末の出来事についてイエスは次のように語られました。「それゆえ、預言者ダニエルによって語られたあの『荒らす忌まわしいもの』が聖なる所に立っているのを見たら―読者はよく理解せよ―ユダヤにいる人たちは山へ逃げなさい」(マタ24:15-16)。聖なる所とは神殿です。ダニエルの預言は紀元前164年にアンティオコス・エピファネスが神殿を汚した時、成就しました。それから200年近くたち、イエスはこの箇所を将来の出来事としても示されました。つまりこれは二度起こり、二度目には「罪の人/反キリスト」と呼ばれる神の敵によって引き起こされると考えられています。これに続く定められた期間、患難期が起こり、平和は長続きしません。偽の平和なのです。

難しいのは、どのようにして時を見極めるかです。大勢の人々が「今回の和平条約はダニエルやイエスが語った7年にわたる和平条約の一部なのだろうか」「この和平条約は本物だと喜んでいいのか、それとも偽の平和なのか」と疑問を抱いています。

 今のところ分かりません。ただ分かっていることは、今日神殿は存在しないということです。存在しないものを罪の人が汚すことはできません。イエスのことばを文字どおり理解するなら、将来神殿が再建され、そして汚されます。

イスラエルでは建築許可を取るのが非常に困難で、建築に時間が掛かります。聖書遺跡の上に建築する際、役所手続きはかなり大変です。考古学者に調査してもらい、認可を受けなくてはなりません。この土地を巡って世界中で紛争があるわけですから、建築は簡単でも迅速でもないことが分かるでしょう。すべてコンクリートや石、鉄筋で建造されなくてはならず、巨大な土台づくりが必要です。主要な建物の完成には数年を要するでしょう。多くのユダヤ人の心には神殿再建への希望がありますが、そのような公式の計画はまだ聞こえてきません。逆にイスラエル政府はこの話を避けています。神殿再建に向けて動くなら、第三次世界大戦勃発の可能性を否定できないからです。

私たちの応答

聖書にはイスラエルとユダヤ人を祝福しなさいと書かれています。使徒パウロは「喜んでいる者たちとともに喜び、泣いている者たちとともに泣きなさい」(ロマ12:15)と言いました。私たちは、イスラエル国家を守るために命を落とした人々のご家族と共に泣いてきました。イスラエル人の親たちはわが子が軍隊にいる間、息を潜めて子どもたちの安全を願い、祈っています。そして今、平和になる可能性が見えてきたことを喜んでいます。私も共に喜びます。この平和がいつまで続くかは分かりませんが、平和で穏やかな時代を喜ぶつもりです。

将来に向けて歩みながら、時と時節を明確に理解できるよう祈ります。主に啓示を求め、この時代の中で、そしてこれから先もどう行動すればいいのか導きを求めつつ、聖書を学びます。イスラエルを愛し、祝福し、イスラエル国家と共に喜びます。イエスは、油断せず目を覚まして、貧しい人に愛の手を差し伸べなさいと言われました(マタ24〜25章)。そしてこう語られています。「このように、あなたがたの光を人々の前で輝かせなさい。人々があなたがたの良い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようになるためです」(マタ5:16

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