ティーチングレター

羊飼いと羊 -後編-

TEXT:レベッカ・J・ブリマー(BFP国際会長)

前号では、リーダーの例えとして使われる羊飼いという職業について、また、みことばに書かれている羊飼いについて、詩篇23篇などから学んでまいりました。後編では、羊飼いを信頼し、その後を付いていくことの重要性に目を留めて学んでまいりましょう。

羊飼いの後に付いていく

羊飼いを知っていて、その声を聞き分けたとしても、羊には付いていかないという選択肢もあります。しかし、羊飼いの後に付いていくことは、羊にとって極めて重要なことです。羊飼いの声を聞いてもその後を付いていかない羊は、羊飼いが備える豊かな恵みを楽しむことができません。また群れから離れた羊は、野生動物の攻撃を受けやすくなります。自然環境にも翻弄されるでしょうし、どこで食物を得るのかも分からないでしょう。

羊飼いの後に付いて従う羊だけが、羊飼いの用意する良いものを受けることができます。後に付いて従うためには、耳を羊飼いの声の周波数に合わせ、目を羊飼いのほうに向けていなければなりません。羊飼いが動くとき、その声と動きに注意を払う者たちは、すぐに彼と共に行動し、与えられた備えと守り、安全を楽しむことができるのです。

良い羊飼いは良いリーダーを育成する

興味深いことに、聖書に登場する英雄的指導者のうち二人が羊飼いでした。それはモーセとダビデ王です。彼らが羊飼いとして働いているときに、神はこの二人をイスラエルの偉大なリーダーとなるよう召されました。彼らが指導者となる学びをしたのは、寂しい不毛の丘の頂でした。孤独の中で彼らは神の声を聞き、神と親しく会話するレッスンを受けました。彼らは群れを危険にさらすどのような脅威や問題にも対応できるよう、備える学びをしました。

ダビデはゴリヤテと戦う際にサウル王を説得し、羊飼いとしての能力を幾つか使いました。「ダビデはサウルに言った。『しもべは、父のために羊の群れを飼っています。獅子や、熊が来て、群れの羊を取って行くと、私はそのあとを追って出て、それを殺し、その口から羊を救い出します。それが私に襲いかかるときは、そのひげをつかんで打ち殺しています。このしもべは、獅子でも、熊でも打ち殺しました。あの割礼を受けていないペリシテ人も、これらの獣の一匹のようになるでしょう。生ける神の陣をなぶったのですから。』ついで、ダビデは言った。『獅子や、熊の爪から私を救い出してくださった主は、あのペリシテ人の手からも私を救い出してくださいます。』」(1サムエル17:34-37a)

ダビデは獅子と熊を追う勇気がありました。彼は、自分の命を危険にさらしても、羊をケアし守りました。絶えず迫りくる危険に向かって信仰をもって踏み出すとき、救い出してくださる方が神であることをダビデは知っていました。

モーセはイスラエルの子どもたちを導くよう任命された指導者でした。モーセは傲慢(ごうまん)な態度で導くのではなく、主の指揮にすべてを委ねていました。彼は神と時間を過ごすことを何よりも大切にし、常に神と過ごすことを選びました。事実、あまりにも長い間主と過ごしたので、彼の顔は輝きました。主の道を歩むことは、成功には欠かせないことであり、モーセはその道を知っていました。「『今、もしも、私があなたのお心にかなっているのでしたら、どうか、あなたの道を教えてください。そうすれば、私はあなたを知ることができ、あなたのお心にかなうようになれるでしょう。この国民があなたの民であることをお心に留めてください。』すると主は仰せられた。『わたし自身がいっしょに行って、あなたを休ませよう。』それでモーセは申し上げた。『もし、あなたご自身がいっしょにおいでにならないなら、私たちをここから上らせないでください。』」(出エジ33:13-15)

神は、民の中に羊飼いのように面倒を見るリーダーたちを配置されます。賢いリーダーは責任を認識し、誠実に行動し、その強さが主から来ることを知っています。賢いリーダーは良き羊飼いである神の後を追って、自分たちの成功、安全と備えを見いだします。ユダとイスラエルの王の記事を読むとき、王の善悪を判断する主の目、その基準に驚きます。それは、すべて一つのことに集約されています。良い王たちは主に従い、神の目に正しいとされることを行いました。そして悪い王たちは自分たちの目に正しいと見えることを行ったのです(1列王22:42-43、51-53参照)。反抗的な羊のように彼らは、「わが道」を行きました。

私はずっと従う立場の者でした。そして現在は指導者の立場にいます。言い換えるなら、以前は羊でしたが今は羊飼いです。自分の弱さを認めない者、怠惰な者、不安定な者はリーダーシップを取れないということを学びました。リーダーシップには信頼、誠実、信仰、エネルギー、哀れみ、そして決断力が必要です。羊飼いの責任は終わることなく永遠に続きます。世話され餌を与えられる必要がある羊は常にいます。神は、羊飼い自身の必要よりも羊の必要に重きを置くようにされました。弱く病んでいて迷っている羊、道を踏み外した羊は、養われ、治療を受け、見付けられ、回復されなければなりません。解決が必要な難しい問題や、脅威的状況や挑戦が頻発します。しかし、クリスチャンリーダーにとって最も重要なことは、神を知っている彼らが主の声を聞いて、主に信頼して従うことの模範を示すことです。このことを優先して実行するリーダーは失敗しません。

羊にも責任があります。前述したように、私たちは羊として羊飼いを知り、その声を知る必要があります。私たちは羊飼いの後に付いて従う必要があります。そして、羊飼いが私たちにとって何が最善なのかを知っておられることに信頼する必要があります。主は私たちを導くために、地上の羊飼いをも与えてくださいました。神が権威をお授けになったその者に、私たちは従い、尊敬して、彼らのために祈る必要があります。主が私たちを植えられた教会にも、羊飼いを与えてくださいました。「牧師」という語はラテン語の「羊飼い」に由来します。私は牧師の子どもとして育ちました。父は地元の教会を長年牧会しました。それは大変な責任で、多くのことが要求されます。羊飼いの仕事には、世話をすること、養うこと、守ること、導くことが含まれます。神は、忠誠ときずな、そして信頼で結ばれる羊飼いと羊の関係を大切に立て上げておられます。

今日の羊飼い

今日の世界では、自分たちの「羊」を犠牲にして自らの利益を追い求めるリーダーをよく目にします。過去2年間、アメリカというビジネス帝国の崩壊と経済の衰退と共に、トップリーダーたちの犯罪行為に関するニュースを数多く見聞きしました。労働者たちがもがき苦しむ中、自分たちは莫大なボーナスを受け取っていたのです。

神は、より高い基準をリーダーに期待されます。リーダーとは高潔な人であって、群れの必要を深く気に掛ける者のことです。リーダーは、イエスの語られた二つの偉大な戒めを真剣に受け止める必要があります。「『心を尽くし、思いを尽くし、力を尽くし、知性を尽くして、あなたの神である主を愛せよ』、また『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ』」(ルカ10:27)

不実なリーダーに対して、神はエゼキエルに預言するように言いました。

「人の子よ。イスラエルの牧者たちに向かって預言せよ。預言して、彼ら、牧者たちに言え。神である主はこう仰せられる。ああ。自分を肥やしているイスラエルの牧者たち。牧者は羊を養わなければならないのではないか。あなたがたは脂肪を食べ、羊の毛を身にまとい、肥えた羊をほふるが、羊を養わない。弱った羊を強めず、病気のものをいやさず、傷ついたものを包まず、迷い出たものを連れ戻さず、失われたものを捜さず、かえって力ずくと暴力で彼らを支配した。」(エゼキエル34:2,4)

私たちの羊飼いを信頼する

本当に私たちは大変な時代に生きています。さまざまな国へ旅行するたびに、失業率の上昇と仕事を得る難しさについて耳にします。この経済状態は誰にとっても深い悩みであり苦しみであり、不安材料です。戦争と戦争のうわさは安全を脅かし、テロの攻撃はどこででも起こり得ます。クリスチャンは、終末の時代について聖書に前もって記されている患難期について語ることが多くなっています。

現在は、今までなかったほど私たちの目を羊飼いなる主に向けなければならない時です。主は私たちの必要をご存知で、ご自身の働きを真剣に遂行しておられます。それは、私たち一人ひとりを最善の道へ導きたいと願っておられるからです。これからの時代、緑の美しい牧場ではなく、むしろ岩でごつごつした不毛の丘の頂にいることが多くなるかもしれません。しかしどんな状況であっても、私たちは良き羊飼いを信頼することができるのです。このとき、私たちは主に全く委ねることを学ばなければなりません。荒野を旅したイスラエルの子どもたちのように、私たちの目を主に向け続けるなら、最悪と思えるような状況の中でさえ主の備えに信頼できます。

今は主を知ることに日々没頭し、主の声を聞くことを学び、主の導きに従う時です。週に一度礼拝するだけでなく、瞬間瞬間、毎日毎日です。詩篇の言葉を思い出してください。

「主は私の羊飼い。私は、乏しいことがありません。」(詩23:1)

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