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神の武具を身に着ける -前編-

シェリル・ハウアー/国際開発ディレクター

「主は義をよろいのように着、救いのかぶとを頭にかぶり、復讐の衣を身にまとい……」(イザヤ59:17a)

人間が父なる神をもっと知ることができるように、空や海、そして植物や昆虫にいたるまで、神は被造物を視覚教材として用いられます。また、神は被造物に絶えず目を置き、私たちの心を探り、地球の隅々まで見ておられます。人間は神の姿に似せて創造されているため、私たちにも視覚が与えられています。視覚を通して、人間は多くのことを学び取っています。

聖書は、目に見えない霊的な概念を五官で感じられるようなみことばで満ちています。これらのみことばを通して、私たちは複雑な霊的概念をより深く理解し、どのように行動すればよいのかが分かるようになります。例えば、神の家にあるおい茂るオリーブの木のように、神の恵みに拠り頼む姿(詩52:8)、あるいは水路のそばに植わった木のような祝福を受ける姿(詩1:3)などです。

神と神の民イスラエルとの契約関係が強められるに連れて、神はさらに多くの視覚教材を示して彼らに教えられました。それらは日常生活の一部になり、主の臨在、主の愛、主の律法を思い起こさせるものとなりました。

「これをしるしとしてあなたの手に結びつけ、記章として額の上に置きなさい。これをあなたの家の門柱と門に書きしるしなさい。」(申命6:8-9)

額にテフリンを付け、
ツィツィートを被って祈るユダヤ教徒の男性

申命記6章8節から9節は、イスラエル民族の日常生活における、最も重要な視覚教材の土台となったみことばが書かれています。手と額にみことばを記章として結び付けるという神の指示は、テフリン(敬虔なユダヤ人が祈りのときに身に着ける、みことばを入れた小さな革の箱)を生み出しました。また、家の門柱に主のみことばを書き記すようにという命令は、メズーザ(世界中のユダヤ人の家の門柱に置かれている申命記6:4のみことばが入れてある小筒)を作る要因となりました。タリートと呼ばれる祈りのショールは、ユダヤ人の祭事具の中で最もよく知られているものの一つで、この四隅にはツィツィート(房)が付いています。この飾り房は、トーラー(モーセ五書:創世記〜申命記)にある613の戒めを表すために特別な方法でねじられ、結ばれたもので、民数記15章申命記23章の神の教えに従って作られました。

これらの驚くべき視覚教材とそれらが表す神のみことばは、昔から変わらずユダヤ教の基盤であり、人生に多くの教訓をもたらしました。主は七つの視覚教材(4本のツィツィート、額と腕に一つずつのテフリン、一つのメズーザ)を示されました。そして、これらを見るたび、神との契約関係を思い出すようにとユダヤ人は教えられてきました。言い換えると、これらの品々は絶えず見える所にあるため、神の守りや教え、そして臨在を自ずと思い起こさせることになります。そして全能の方の陰に安全に隠されることを彼らは知るのです。

新約聖書の中の視覚教材

新約聖書の中でも神は、みことばによるイメージや視覚教材を通してご自身を明らかにされています。新約聖書の著者の中で使徒パウロほどこれを用いた人はいません。

パウロは有名なラビであるガマリエルの門下で聖書研究を行っており、そこで培われた知識を用いて、1世紀の初代教会の人たちに分かりやすく聖書を教えました。彼らの多くが聖書的背景を全く持っていない異邦人でしたが、パウロは彼らにモーセやダビデ、そしてイスラエル史に挙げられている純粋に主に心を注いだ人々と同じように主に仕えるよう勧めました。

パウロはあらゆる機会を用いて、過去、敵たちが神の子たちを全滅させようとしてきたことを伝え警告しました。パウロはこのことについて繰り返し弟子たちに語っています。教会は霊的戦いの中にあり、敵はあらゆる手段を用いて偽りと落胆で神の民を打ち負かそうとしているのだと。

当時パウロはローマの支配下にありましたが、中でも西暦60年から64年の間の霊的戦いはすさまじいものでした。パウロは、宣教旅行の途中で開拓された何十もの教会が、ローマの圧制下でどのような扱いを受けたのかを耳にし、彼らのために熱心に祈りました。それらの会衆へ宛てた手紙でパウロは、信仰に強く立ち、イエスの愛を表し、共に働きキリストの体として一致することを勧めました。また、絶えず現実に存在する霊的戦いを意識し、悪の力に立ち向かい、主の力にあって強くあり続けるよう忠告しました。パウロはあらゆる機会に兵士の武具を目にしていましたし、彼らが置かれていた状況からすれば、視覚教材としてローマ軍の武具を例えに用いたことは驚くことではありません。当時の教会はローマ軍の武器についてよく認識しており、教会に敵対するすべての危険についても認識していました。

ローマ軍は世界で最も強力な軍隊として知られていました。彼らは行く国々で、ローマの社会制度や宗教、政治を定めていった占有者でした。少しでも弱く備えができていない国、または油断している地はローマ軍に奪い取られたのです。

パウロがエペソの教会に書き送った手紙には、今後エペソがアジア宣教活動の中心となるという明確なメッセージが語られていました。認識されていたか否かにかかわらず、エペソの人々は実際に戦いの中にいました。それは表面に出てくるカルト、偽りの宗教、無神論者などとの戦いではなく、その背後にある本当の敵である悪霊との戦いでした。それは教会が直面する最強の相手でした。彼らは可能な限りすべてを奪い取ろうとしていました。そして、直面している敵との戦いを理解することは、教会にとって大変重要なことでした。ローマの抑圧者らを見ることで、パウロはどのように敵と戦うべきかを教えたのです。

ローマ兵の武具から学ぶこと

ローマ兵の武具

「終わりに言います。主にあって、その大能の力によって強められなさい。悪魔の策略に対して立ち向かうことができるために、神のすべての武具を身に着けなさい。私たちの格闘は血肉に対するものではなく、主権、力、この暗やみの世界の支配者たち、また、天にいるもろもろの悪霊に対するものです。ですから、邪悪な日に際して対抗できるように、また、いっさいを成し遂げて、堅く立つことができるように、神のすべての武具をとりなさい。では、しっかりと立ちなさい。腰には真理の帯を締め、胸には正義の胸当てを着け、足には平和の福音の備えをはきなさい。これらすべてのものの上に、信仰の大盾を取りなさい。それによって、悪い者が放つ火矢を、みな消すことができます。救いのかぶとをかぶり、また御霊の与える剣である、神のことばを受け取りなさい。すべての祈りと願いを用いて、どんなときにも御霊によって祈りなさい。」(エペソ6:10-18a)

これはエペソの人々に書き送られたパウロのメッセージで、新約聖書の中でも最も有名なみことばの一つです。言葉の選び方から始まってメッセージは力強く、実際的です。11節では、悪魔の策略に対して「立ち向かう」ようにと語られています。この言葉は、「たくましく、強く活動的に対抗する」を意味するギリシャ語が用いられています。また、12節で「格闘する」に使用されている言葉は、当時の格闘競技で使用された単語で、非常に現実的な戦いを示しています。13節の「対抗する」は、最後の人が立っているという意味を含みます。戦いが終わり、戦場には死んだ者たちや瀕死の人々が倒れていますが、エペソの人々は勝利の中にしっかりと立ち、次の戦いに備えたのです。

真理の帯を締める

パウロが頭のかぶとから始めず、腰の帯からメッセージを始めたのは興味深い点です。帯は小さな武器を差すために重要な役割を担っていました。また、兵士が動きやすいように着ていたズボンのようなものを、腰で結ぶ役割も果たしていました。さらに帯は、「戦いに備えて気を引き締める」精神的な要も担っていたのです。

ローマの時代、チュニック(ローマ人が着たガウンのような上着)にベルトをしないのは恥の象徴で、軟弱、女女(めめ)しい、怠け者を暗示していました。ですから兵士が上官から罰せられるときは、しばしば同僚の面前で帯を外されるという辱めを受けたのです。

パウロはこれを、エペソの人々に神の真理の象徴として語りました。軟弱であったり怠け者であったりするのではなく、ほかのすべての武器を支える基礎であり、力の象徴である真理の帯をしっかりと締めなさいと教えたのです。敵は偽りの父ですから、それに勝利するには高潔、真実、正直さが必要となります。

次号後編では、みことばの中で続けて語られている正義の胸当て、福音の靴を始めとする神の武具について詳しく学び、霊的戦いに関する神の変わらないメッセージを読み解きましょう。また、神の教えに聞き従うならいかなる場合でもすべての敵に勝利する約束が与えられていることを学んでまいりましょう。

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