ホーム > 祈る > ハイメール通信 登録・停止 > バックナンバー > ハイメール通信No. 172 交渉、また交渉
中東では全てが交渉で決まります。法律や約束はあってないようなもの。
西岸地区の入植地拡大建築を巡る交渉、ハマスに拉致されたシャリートさん返還の交渉、イランの核開発をめぐる交渉、そのどれもが暗礁にのりあげています。
ネタニヤフ首相は、今週、体調を崩して休んでいます。先の見えない争いを続けるこの地域を主があわれみ、大きな悲劇から守ってくださるように祈りましょう。
ほむべきかな。日々、私たちのために、
重荷をになわれる主。
私たちの救いであられる神。
神は私たちにとって救いの神。
死を免れるのは、私の主、神による。(詩篇68:19,20)
ネタニヤフ首相は先週、西岸地区での新しい建築を10カ月凍結することを発表しました。パレスチナ側との和平交渉を一刻も早く再開するため、アメリカの要請に応じたものです。
しかし、この凍結には最も問題になっている東エルサレムやエルサレム周辺は含まれておらず、この地域での建設は続く見通しです。そのため、パレスチナ側は、この決定について、不十分だと評価しています。
現在建築中で保留の対象となる物件は約2500戸、最近建築許可が出た物件は490戸です。西岸地区の入植者を代表するヤッシャ委員会は、政府の指示に従わない(建築を続行するということ)方針を明らかにしています。
アメリカでは、裕福なユダヤ人に西岸地区の新築物件を購入するよう斡旋して、オバマ政権に抗議しようとする動きもあります。
イスラエル政府は、西岸地区の建築現場を監視する監視員を新しく40名に増やし、対処にあたる方針です。政府はこれまでにも防護壁からパレスチナ側へ大きくはみ出した違法な開拓村(プレハブの前哨のような建物)を強制的に撤去してきました。
強制撤去を実施するのは国防軍兵士たちですが、これを拒否する一部の兵士たちが抗議運動を行いました。これに対し、アシュケナジ参謀総長は、兵隊は軍の命令に従うべきであると兵士らに厳しくあたっています。
エルサレム周辺で領地問題が微妙な地域に住んでいる人の多くが、正統派ユダヤ教徒です。それらの地域における宅地開発に制限がかかっていることを受けて、正統派ユダヤ教徒たちが徐々にエルサレム市内の世俗派の町中に移住し始めています。
ベイト・ハケレムやキリアット・ヨベルなどがその地域になります。エルサレムの町の居住地区の構図が変わっていくのではないかと言われています。
激務の続くネタニヤフ首相。今週ドイツに飛び、メルケル首相と会談の予定でしたが、体調を崩して延期を余儀なくされました。
ヤロン副首相が代わりに行くと申し入れましたが、ドイツ政府がこれを拒否した模様です。
ハマスに捕らえられているイスラエル兵シャリートさん。これまでにも「シャリートさん解放近し」とのニュースが流れては「ハマスとの合意に至らず」との結果に終わることが何度もありました。
今回はもう少し具体的になっているようです。今週、イスラム教の例祭が終わると、シャリートさんの身柄がエジプトへ移される予定です。それが確認されたら、イスラエルはテロリスト450人を釈放します。次にシャリートさんが無事イスラエルへ帰還したら残りの700人を釈放します。
しかし、まだこの時点になっても決定が変更になる可能性は残されています。釈放するテロリストの中に、終身刑5回分の刑に処せられているマルワン・バルグーティなど超凶悪な者が含まれているからです。
バルグーティは釈放されると、アッバス議長にかわってファタハのリーダーになると予想されています。ハマスとバルグーティがイスラエル排除という過激な目標に向かって協力することになれば、西岸地区もまたガザのようになり、イスラエルの治安はかなり厳しい状況となります。
現在、釈放するテロリストのリストについてまだ論議があるもようで、ネタニヤフ首相は、情報がメディアに漏洩しないよう、閣僚たちに厳しく注意しています。
ハマスは先週、ガザ市民の生活が改善するよう、イスラエルへの攻撃は控えるとの方針を発表しました。バルグーティを含むテロリストの釈放を推進するためです。
これを受けて、アッバス議長に退いてもらいたくないアメリカは、イスラエルに西岸地区に建築凍結を行うよう圧力をかけました。アッバス議長に有利な状況を作り出すためです。そのために、ネタニヤフ首相が10カ月間の凍結を決意したと思われます。根回しの根回しといったかけひき交渉が水面下で行われています。
シャリートさんの返還はイスラエルにとって大きなコストを伴います。
国内ではテロの被害者家族がテロリストの釈放に反対しています。
ハイファ大学の調べによると、国民の62%はシャリートさん解放を優先していますが、16%は、危険なテロリストが釈放されることに反対しています。
(写真:シャリートさん解放を訴えるデモ(テルアビブ))
これはネタニヤフ首相にとって大変大きな痛みを伴う決断となります。
国連がイランに対し、核濃縮の70%を国外(ロシアとフランス)で行うようにとの案を行い、イランが拒否したことを受けて(ハイメール前回参照)、
IAEA(国際原子力機関)のエルバラダイ局長は、35ヵ国からなる理事会において、交渉の限界に来ていると語りました。
IAEAは27日、イランが全ての核濃縮を直ちに停止することを要請するとした決議案を採択。イランはこの決議案に反抗するとして新たに核濃縮工場10箇所の建設を発表しました。
今後はイランに対する厳しい制裁が議論されることになります。イランに対する制裁については、これまではロシアと中国が常に反対してきたため、見送られてきました。しかし、今回はこの二国もIAEAの決議に賛成しており、どのような制裁措置がとられるのか注目されています。
イランはIAEAの決議が採択される直前に、大規模な軍事演習を行っています。これはいかなる制裁にも対処できることをアピールしたものと考えられています。
*エルバラダイ局長は、今週、12年の任期を終えて、次期局長に任命されている日本人の天野氏にこの問題を引き継ぐことになります。
インドのムンバイで計166人が死亡したテロから一年となりました。
この時、ユダヤ教ハバッド派の施設も襲われ、若いラビ・ホルツバーグ夫妻は死亡。夫妻の長男で2才のモイシェ君は、インド人ナニー(子守)のサンドラさんに助けられ無事でした。現在、モイシェ君は、サンドラさんとともに、祖父が住むイスラエルのアフラに帰り、回復と成長を祈られながら生活しています。
テロ当時、2才だったモイシェ君は、3人の遺体がころがっている部屋のなかで泣きながらはい回っていたところをサンドラさんに発見されました。
モイシェ君のからだには血痕が付着していたとの報告もあり、2才にして最も恐ろしい光景を見た可能性があります。イスラエルに帰国後は、カウンセラーなどの手当を受け、幸い、今のところ正常な成長を遂げているとのことです。
モイシェ君を命がけで助けて建物の外へ避難したサンドラさんは福音派クリスチャンです。サンドラさんは、モイシェ君を助けた功績によりイスラエルの市民権を与えられました。
現在、ホルツバーグ一家とともにアフラに住んで、モイシェ君の世話を続けています。モイシェ君は家族にはヘブル語で、サンドラさんには英語で話し、サンドラさんを非常に慕っているということです。
11月18日はモイシェ君の3才の誕生日でした。しかし同時にテロの発生のちょうど1年後にあたります。ハバッド派は、クファル・ハバッド(ハバッド村・中央イスラエル)でモイシェ君の誕生日を記念する集会を行いました。ラビ・ホルツバーグへの記念にもあたるため、約2,000人が出席しました。
ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど
画像提供:www.israelimages.com、Isranet他
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