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プロジェクトレポート

新しい祖国へ根を下ろすために…… ―移民者の心を励ます「帰還歓迎プログラム」の働き―

皆さまは、新しい土地へ引越しをされた経験がありますか。引越しにまつわる労働は山のようにあり、消費する物質的・精神的エネルギーの全体量といったら相当なものです。しかし、もしも引越し先が、全く新しい国、言葉も文化も民族性も違う、未知の国だったらどうでしょうか。

移民者の間に広まる失望感

イスラエルに帰還してくる移民者は、移住の過程で非常な苦しみを味わいます。彼らの多くが、わずかな身の回りの物だけしか持ち出すことを許されず、全財産の入った2、3個のスーツケースだけを持って出国します。今まで大切にしてきた愛着のある品々、ときには苦労して建てた家さえもそこに残していかなければなりません。そして、物質的なもの以上に後ろ髪を引くのは、生まれてから蓄え続けた人生の歴史を置いていかなければならないことです。

いざイスラエルに到着しても、周りで飛び交うヘブライ語がわかりません。生活必需品を買うお金がありません。今や失業率は12%に達し、働き口を見つけるのも困難です。家賃は欧米並みに高額、物価も高騰。しかも昨今の政治情勢の中で入ってくるニュースは、「今日も自爆テロがあった。テロリストの襲撃で何人が殺された。」などという、胸痛むものばかりです。それだけでもつらい中、彼らに対するイスラエル生まれのユダヤ人の冷たい偏見の目も移民者を苦しめています。

やって来たばかりの彼らには、心を許して頼り、助けを叫び求められる友人がいません。どうしようもない寂しさと孤独感にさいなまれる毎日です。この国での厳しい現実に苦しみ、また不穏な政治情勢の中で子どもたちの安全を心配し、ついには絶望して、生まれ故郷に帰る、あるいはアメリカやニュージーランドといった豊かな国へ移住するといったケースが増えています。

←親身になって移民者の相談に乗るBFPスタッフ

根を下ろす手助けを……

BFP援助センターの中核をなす働きの一つであり、移民者とBFPが初めて接触するチャンスとなるのが、『帰還歓迎プログラム』です。このプログラムは、新しくイスラエルに第一歩を踏み入れた移民者を歓迎し、物資援助をとおして彼らの新しいスタートを少しでもお助けすることで、「イスラエルに根を下ろすんだ!」という励ましを贈ることを目的としています。

「あそこの団体から、ただで台所用品がもらえるよ!」「家族の人数分だけ、暖かい毛布をもらったよ!」―BFP援助センターの働きは、こうした援助を受けた人々の“口コミ”で、広く知られるようになりました。

移民者は、鍋やフライパン、まな板や包丁などが入った『台所用品セット』、もしくは『食物バスケット』のどちらかを選ぶことができます。移民してきたばかりで、料理したくても肝心の台所用品がない人々が大勢いる中で、台所用品セットは人気No.1の品目です。また、家族の人数に応じて毛布が贈られ、冷え込みの激しい冬場は特に重宝がられます。お子さんをもつ家族には『学用品セット』が配られます。そして、ロシア語とヘブライ語が対訳になっている『旧約聖書三巻セット』も手渡されます。移民者の多くが、無神論を土台とする旧共産圏からやって来ますから、この聖書を読むことによって初めて自分たちの民族と信仰のルーツを発見することができるのです。

この思いがけない山のようなプレゼントに、彼らは驚きながらも、心から感謝を表してくれます。来た時は空っぽだった両手に、帰りは山のようなギフトを抱えて家路に着くことで、彼らの心がどれほど温められていることでしょう。イスラエルの厳しい現実に落ち込んでいた心に、「助けてくれる人々がいるんだ。これからもなんとかなるだろう……。」という希望の灯りがともされ、生きる元気がわいてきます。

さらに、特に貧しい人々は、そのまま『里親プログラム』へ登録するケースも多く、これから一年間、無料で物資援助を受ける道が開かれるのです。

「なぜ、クリスチャンが?」

中には、BFPがユダヤ人団体か、あるいはイスラエル政府機関の一つなのだと勘違いしてやって来る人々がいます。「世界中のクリスチャンが愛をもって支援し、運営されている民間援助団体なんですよ。」と告げると、彼らは一様に驚きます。「なぜ、クリスチャンが?!」と……。

旧共産圏やヨーロッパから移民してきたユダヤ人には、親族に最低一人はホロコーストの被害者がいます。BFPで働くスタッフの一人も、ウクライナからの移民者ですが、母方の大叔母とその息子がロシア人少女の密告で収容所送りとなり、父方の親族は第二次世界大戦中、ナチスの手の届かないウラル山脈へと逃亡しなければなりませんでした。ホロコーストのつめあとは、移民者の親族に必ずといっていいほど何らかの形で残っています。彼らの頭の中では、「いとしい家族の命を奪ったナチスの兵士たちは、クリスチャンであった」と認識されています。ですから、帰還歓迎プログラムは、「自分たちを助け、祝福してくれる」というまったく新しいクリスチャン像を移民者に紹介するきっかけとなるのです。

移民者に配られるフレッシュな食品類

励ましの種をまき続けるために

最近、この窓口にやって来る移民者の中に、自爆テロの被害者が増えてきました。昨年テルアビブのディスコが爆破された時、14歳になる娘が亡くなり、そのショックで流産してしまったという母親。エルサレムのベンイェフダ通りで起こった自爆テロに巻き込まれ、爆風で飛んだ鉄パイプが脚に刺さって深く食い込み、切開して取り出そうにも、かえって歩けなくなるという危険を背負った22歳の青年。一カ月前に起こったバスの爆破で、夫がのどをかき裂かれ、自分自身は頭を負傷したという女性。不安定な情勢が、移民者の心の中にも大きな傷と悲しみを与えています。イスラエルで無事に生活していけるだろうかという不安が、やがて絶望へと変わり、この国を去る方向へと彼らを導いてしまうのです。

「それにしても、どうしてこんな厳しい状況の中に、あえて帰らなければならないの?」と疑問に思われることでしょう。その答えは聖書の中にあります。「主はこう仰せられる。―……―見よ、わたしは彼らをその土地から引き抜き、ユダの家も彼らの中から引き抜く。しかし、彼らを引き抜いて後、わたしは再び彼らをあわれみ、彼らをそれぞれ、彼らの相続地、彼らの国に帰らせよう。」(エレミヤ12:14-15)

預言者たちが、くりかえし「彼らは帰って来る」と預言していたそのことばが、二千年の時を経て今実現に至っているのです。神さまのご計画を止めることは誰にもできません。いや、むしろそれが神さまのご計画であるなら、その実現のために、神さまの側に立って行動していく必要があるのではないでしょうか。

食物を受け取る喜びの移民者

まるで火の中に裸で飛び込んでいくような状況であっても、祖国で「反ユダヤ主義」の試練を受けるよりはましだ……というほど、ユダヤ人の上に暗雲がたち込めていることもまた、ぜひ知っていただきたいと思います。こうしたことをふまえ、どうぞこの帰還歓迎プログラムのためにお祈りください。また、BFPが励ましの種を彼らの心にまき続けられるよう、覚えてご支援いただきますようよろしくお願いいたします。

今、厳しい状況の中に置かれている彼らのために祈り、霊的かつ肉的に彼らのイスラエルでの新生活を支えていくことができるのは、イスラエルを愛する心を与えられた皆さま以外にだれもいません。

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