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イスラエルという土地 -前編-

パメラ・トーマス/BFP英国総責任者

「来年はエルサレムで!」

――この言葉は、何世紀にもわたって、ユダヤ人が心の底から叫んできた言葉です。それは日々の祈りの中でも唱えられ、エルサレムへの望郷と渇望の思いを表すものでした。この夢は長く心に秘められていたものであり、エルサレムにたどり着くことは、幻の実現であるとさえ考えられていました。何がそれほどまでに彼らの心を揺さぶったのでしょう。アブラハムの時代から、エルサレムがユダヤ人の首都となった紀元前1000年のダビデの時代に至るまで、また、近年においても、何が彼らにそのような言葉を語り続けさせたのでしょうか。

聖書的約束

イスラエルの所有権に関する最初の記述が創世記12章、13章に書かれています。ここでアブラハムは、神によりハランからカナンの地へ呼び出されました。

「主はアブラムに仰せられた。『さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。』」(創世13:14-15)

さらに、アブラハムから“イスラエル”という名の新しい家族が誕生し、その子孫から「人類の救い主」が生み出される、という神の目的が明らかにされています。

神の召命を受けアブラハムが辿った道

「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」(創世12:1-3)

これはアブラハムに与えられた神の契約であり、聖書のあらゆる箇所で繰り返されています。これこそが、イスラエルにユダヤ人国家を築く土台となりました。これは神による最初の神政契約でした。これには全く条件が付随しておらず、完全に神だけに依存しており、人類に対する神の救済計画が、すべてこの契約と関連していました。

神がこの契約を結ばれたとき、カナンの地をアブラハムとその子孫に永遠の所有として与えると約束されました。

「また彼に仰せられた。『わたしは、この地をあなたの所有としてあなたに与えるために、カルデヤ人のウルからあなたを連れ出した主である。』」(創世15:7-8)

アブラハムがこの約束を信じて受け取るためには、大きな信仰が必要でした。なぜなら、当時彼には子どもがいなかったからです。しかし後に、約束通りアブラハムとサラにイサクが与えられました。神は、アブラハムと結ばれた契約に基づいて、イサクを祝福することを約束されました。

「あなたはこの地に、滞在しなさい。わたしはあなたとともにいて、あなたを祝福しよう。それはわたしが、これらの国々をすべて、あなたとあなたの子孫に与えるからだ。こうしてわたしは、あなたの父アブラハムに誓った誓いを果たすのだ。」(創世26:3)。その後、この同じ契約がヤコブと結ばれました。

「そして、見よ。主が彼のかたわらに立っておられた。そして仰せられた。『わたしはあなたの父アブラハムの神、イサクの神、主である。わたしはあなたが横たわっているこの地を、あなたとあなたの子孫とに与える。あなたの子孫は地のちりのように多くなり、あなたは、西、東、北、南へと広がり、地上のすべての民族は、あなたとあなたの子孫によって祝福される。見よ。わたしはあなたとともにあり、あなたがどこへ行っても、あなたを守り、あなたをこの地に連れ戻そう。わたしは、あなたに約束したことを成し遂げるまで、決してあなたを捨てない。』」(創世28:13-15)

さらに、神は預言書全体を通して、終わりの時代にユダヤ人をイスラエルの地に連れ戻し、もう二度と散らされることはないと約束されました。(イザヤ11:11-14、エレミヤ16:14-16、30:3、アモス9:14-15

イスラエルは、明らかに神の所有地です。レビ記25章23節には、次のように記されています。「地はわたしのものであるから。あなたがたはわたしのもとに居留している異国人である。」この地は神の所有地ですから、永久に売り渡すことはできません。神はこの領地がもつ特異性を示して、「わたしの国」(エゼキエル36:5、20、38:16、ヨエル3:2)と呼んでおり、イスラエル人自身の土地とも呼んでいます。(エゼキエル36:17、24、37:21

イスラエルの人々とイスラエルの土地が余りにも密接に結び付けられているので、あたかも両者が互いに「結婚している」かのように語られています。「かえって、あなたは『わたしの喜びは、彼女にある。』と呼ばれ、あなたの国は夫のある国と呼ばれよう。主の喜びがあなたにあり、あなたの国が夫を得るからである。若い男が若い女をめとるように、あなたの子らはあなたをめとり、花婿が花嫁を喜ぶように、あなたの神はあなたを喜ぶ。」(イザヤ62:4-5)

神はアブラハムとその子孫に対する約束を、忠実に守られました。私たちはイスラエルの土地と国民に対して、神が保ってこられた計画を、聖書的に理解する必要があります。このことは、「神はなぜ、イスラエルの人々を選ばれたのだろうか?」という疑問を投げ掛けます。申命記には、「主があなたがたを恋い慕って、あなたがたを選ばれたのは、あなた方がどの民よりも数が多かったからではない。事実、あなたがたは、すべての国々の民のうちで最も数が少なかった。しかし、主があなたがたを愛されたから、また、あなたがたの先祖たちに誓われた誓いを守られたから、」であると記されています。(申命7:7-8前半

出エジプト記19章5節には、条件付きの約束が語られています。「今、もしあなたがたが、まことにわたしの声に聞き従い、わたしの契約を守るなら、あなたがたはすべての国々の民の中にあって、わたしの宝となる。全世界はわたしのものであるから。」また、34章10節では、このように語られています。「主は仰せられた。『今ここで、わたしは契約を結ぼう。わたしは、あなたの民すべての前で、地のどこにおいても、また、どの国々のうちにおいても、かつてなされたことのない奇しいことを行なおう。あなたとともにいるこの民はみな、主のわざを見るであろう。わたしがあなたとともに行なうことは恐るべきものである。』」

しかし、申命記28章から30章では、もし彼らが神に従わなければ、彼らをその地から立ち退かせるが、彼らが悔い改めて主に立ち返るなら、彼らを連れ戻すと言われました。その土地は現在まで依然として彼らの手にあるのです。

歴史的見地

聖書的見地から言えることは、ユダヤ人の誕生の地はイスラエルだということです。イスラエル人とその土地の結び付きは、約3800年にも及びます。その間に、彼らにとって重要な出来事が起こっています。何十世紀にも及ぶ歴史全体で、この土地には継続的かつ活気に満ちたユダヤ人の存在があったのです。しかしながら、イスラエル人がヨシュアとカレブの指導下にあった時代でさえ、実際には彼らの所有すべき土地をすべて所有してはいませんでした。彼らに約束された地域は、ユーフラテス川とエジプトを境界線とし、東部は現代のクウェートの地域にまで広がっています(創世15:18参照)。

ゴルダ・メイヤーがイスラエルの首相だったとき、「モーセが犯したただ一つの過ちは、約束の地イスラエルにおいて、その境界線を定めるに当たり、石油の巨大な埋蔵地域を含まなかったことである」と言いました。しかし彼女は、実際にはモーセが境界線を引いたその地域内に石油が埋蔵されているのを全く知らなかったのです。(ティム・ラヘイ著『中東に訪れようとしている平和』P27)

イスラエルが中心に書かれた世界地図

「いと高き方が、国々に、相続地を持たせ、人の子らを、振り当てられたとき、イスラエルの子らの数に従って、国々の民の境を決められた。主の割り当て分はご自分の民であるから、ヤコブの相続地である。」(申命32:8-9)

神が古代の世界の中心にイスラエルを置かれたのは、ある特別な目的があったからです。約4千年前から約束の地イスラエルは、アジア、アフリカ及びヨーロッパを結ぶ国際貿易の交差点としての役割を果たしてきました。神はユダヤ人を世界の中心地に住まわせ、神の栄光を輝かす特別な役目を与えました。神は、イスラエルの人々が神に聞き従うことを通して彼らを祝福し、その生き方によって彼らの繁栄を全世界の人々が見るようにされたのです。(申命4:6、エゼキエル39:7

イスラエル12部族に分割された土地

歴史的な記録によると、アブラハムの子孫はヨシュアの指導の下、紀元前1422年頃に約束の地に入りました。その地は後に12部族の間で分割されました。神はその後、イスラエルの最も偉大な王ダビデとの間に契約を結ばれました。ダビデはまずユダの領地を統治し、その後イスラエル全土を治めました。聖書はダビデの統治が紀元前1011年から971年に至る40年間に及び、その間の国勢はまさに彼の霊的あるいは道徳的状態と連動していることを示しています。国民はダビデが神に従順であるときは神からの祝福を頂き、ダビデが神に背いたときには患難に遭遇したのです。

第二サムエル記7章では、神はダビデと契約を結ばれました。これは「ダビデ契約」と呼ばれ、以下の内容をもつ契約です。第一に、約束の地を永遠の所有地としてお与えになること(10節)、第二は、終わることのない王朝(16節)が与えられること、そして最後に、永遠の王国(16節)が約束されたのです。

「ダビデの時代は、神に従い、神を愛し、礼拝し、神が神であられることを高く崇めた非常に稀な時期でした。ダビデは尊敬され、イスラエルはすべての敵から救い出され、領地はすべて回復され、イスラエルはその地域に偉大な勢力を占めることになったのです」。(ラモン・ベネット著『壁』P55引用)

神とダビデの契約を見ると、アブラハムとの契約の再確認であることが分かります。第一サムエル記から第二列王記に至るまで、イスラエルの地を一時期治めた王が最低42人いることと、その業績が列挙されています。その中でダビデに関してのみ、彼がその従順さと忠実さとのゆえに、神の御心に従い続けた王であることが明記されています。ダビデは模範的な王であり、それ以後の王たちはすべてダビデと比較して評価されています。ダビデは聖書の中で、来るべき救い主の予告あるいはひな型として紹介されており、神とダビデとの間に結ばれた重要な契約の中では、それが明らかにされています。(Ⅱサムエル7:4-17

次号ではその内容と、現代イスラエルについてを振り返り、学んでいきたいと思います。

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