文:ジャネット・アスリン(BFPスタッフライター)
悲惨な状況を前にすると、
ハバククのように神を疑ってしまうことがあります。
ハバククの疑問に対する神の答えは、
私たちの信仰を改めて奮い立たせるものです。
Djane Daviss/Pixabay聖書は、書巻や手紙の宝庫です。すぐに探し出せる有名な書巻もあれば、そうでない書巻もあります。ハバクク書は間違いなく後者でしょう。この短い預言書は、ナホム書とゼパニヤ書の間にひっそりと収められています。
ハバクク書は2800年ほど前に書かれたにもかかわらず、現代と極めて高い関連性があります。ハバククと神との対話に、共に耳を澄ませてみましょう。
謎の人
ハバククについてはほとんど知られていません。名前が出てくるのも、預言の冒頭(ハバ1:1)と最終章の初め(ハバ3:1)の2回だけです。ハバククという名前の意味について、多くの学者はヘブライ語の語根であるחבק(ハバク)に由来すると考えています。意味は「抱擁する、握り締める」です。ハバクク書を読み進めると、この預言者がまさに神だけを抱き締め、握り締めた人であることが分かります。
ハバククはいつの時代に生き、預言を書いたのでしょうか。幾つかの説がありますが、大半の学者はハバククがマナセ王の治世(紀元前697〜643年)に生きたとする『セデル・オーラム』(ラビによる聖書の出来事の年代記)を受け入れています。ヒゼキヤ王の治世にユダ王国で行われた宗教改革は、息子のマナセが即位するやいなや無効とされました。その結果、罪と悪が広がり、ハバククは最初の嘆きを口にします。
神よ、あなたは何もしておられません!
神を愛し、神にしがみついていたハバククは、マナセの治世下のエルサレムの惨状に恐れをなしました。「彼は、主がイスラエルの子らの前から追い払われた異邦の民の忌み嫌うべき慣わしをまねて、主の目に悪であることを行った」(Ⅱ列王21:2)
Photo by Pexels/pixabay.comハバククは心を注ぎ出して叫びました。「いつまでですか、主よ。私が叫び求めているのに、あなたが聞いてくださらないのは。『暴虐だ』とあなたに叫んでいるのに、救ってくださらないのは。なぜ、あなたは私に不法を見させ、苦悩を眺めておられるのですか」(ハバ1:2〜3a)
「あなたは何もなさらない」というハバククの非難に対し、神はこう告げられました。「異邦の民を見、目を留めよ。驚き、たじろげ」(ハバ1:5a)。その後、神は、ユダ王国への裁きの道具としてカルデヤ軍を選んだことを説明します。カルデヤ軍は、征服した土地への暴力と冷酷な破壊で有名でした。
神よ、ひどすぎます!
「神よ、あなたは何もしておられません!」という最初の叫びは、唐突に「神よ、そのような襲来には耐えられません。ひどすぎます!」という恐怖に変わります。その後ハバククは二度目の嘆きを口にします。まず「来るべき破壊に耐えられる人はいるのか」と問い、次に「イスラエル人よりも、はるかに邪悪なカルデヤ人という民族をなぜ神が選んだのか」と問います。
それからハバククはニネベのヨナのように決意するのです。「私は、……砦にしかと立って見張り、私の訴えについて、主が私に何を語られるか、私がそれにどう応じるべきかを見よう」(ハバ2:1)
幻を明確にする
主からの返答は即座に来ました。神は説明する代わりに、ハバククに使命を与えられます。それは、迫りくる裁きの幻を人々と分かち合い、警告を発するという使命でした。
「主は私に答えられた。『幻を板の上に書き記して、確認せよ。これを読む者が急使として走るために』」(ハバ2:2)
主は、幻を聞いて悔い改める人々がいることを期待し、ハバククの質問に答え始めます。最初の問いに対する神の答えは、単純明快です。「正しい人はその信仰によって生きる」(ハバ2:4b)。「正しい」と訳されているヘブライ語はツァディクで、「義なる者、律法を順守する者」を意味します。マナセが人々を偶像礼拝へ引き込んだ時代に、それでも神を愛し、トーラー(モーセ五書)に記された神の命令に従った義なるレムナント(残りの民)がいたのです。
悪しき者への災い
2章の残り(5〜20節)は、「神は、なぜ私たちよりも邪悪な民を用いて懲らしめられるのか」という、ハバククが投げ掛けた第二の問いへの答えです。
Photo by Pexels/Pixabay神は、会話の半ばで状況をふかんし、全世界へのご自分の主権を宣言されました。13節ではこう問い掛けておられます。「見よ、万軍の主によるのではないのか。諸国の民が、ただ火で焼かれるために労し、国々が、ただ無駄に疲れ果てるのは」(強調筆者)。主は「まことに、水が海をおおうように、地は、主の栄光を知ることで満たされる」(ハバ2:14)と未来形で答えられました。この宣言は、国々の出来事や歴史(history)が、実は「神の物語」(Hisstory)だという信仰を強めるものです。
2章は、人のつくった偶像によって救われると信じるむなしさに対し、神が警告を発して終わります。ハバクク書2章20節が、すべてを語っています。「しかし主は、その聖なる宮におられる。全地よ、主の御前に静まれ」。議論は終わり、ハバククの問いは答えを得ました。
神との出会い
3章に入ると雰囲気は一変し、「預言者ハバククの祈り。シグヨノテの調べにのせて」(1節)と始まります。「シグヨノテ」という言葉が登場する他の箇所は、ダビデ王が敵からの救いを熱烈に嘆願した詩篇7篇だけです。ここでは単数形(シガヨン)で出てきます。GotQuestions(聖書に関する質問に答えるウェブサイト)によれば、「ほとんどの注解者が、シグヨノテには『強い感情』『気まぐれな放浪』『激しい動揺』という意味があると考えています」。
いと高き神と直接出会って感動しない人はいません。ハバククは深い感情を込めて、こう叫びました。「主よ、私はあなたのうわさを聞きました。主よ、あなたのみわざを恐れています。この数年のうちに、それを繰り返してください。この数年のうちに、それを示してください。激しい怒りのうちにも、あわれみを忘れないでください」(3:2/強調著者)
ハバククは、カルデヤ軍という形で裁きが来ることを受け入れながらも、あわれみを祈りました。それは神の本性(ほんせい)とご品格を知っていたからです。あわれみは神の本性の一つであり(出34:6〜7)、この叫びは神の心を動かしました。私たちは義なる神の裁きを受けるに値しますが、神のあわれみを嘆願することができるのです。
ハバククの祈りは続き、神の偉大さについて三人称代名詞を使って描写し、徐々に距離を縮めながら二人称代名詞に変わっていきます(ハバ3:3〜15)。そして、自らの応答へと移り、ついにクライマックスが訪れるのです。「その音を聞いたとき、私のはらわたはわななき、唇は震えました。腐れは私の骨の内に入り、足もとはぐらつきました。……私は静かに待ちます」(ハバ3:16)
ハバククが自分の愛した町と国の滅びを受け入れたことが、この短い書巻の最後で分かります。木々は切り倒され、オリーブの収穫は無くなり、囲いには羊や山羊も残りません。それでもハバククは、初めよりも神をより深く知る境地に達しました。「神よ、あなたはどこにいるのですか」と尋ねる代わりに、たとえ神の御業が理解できなくても、誠実であられる神を見上げることを選んだのです。
ハバクク書からの教訓
ハバクク書から何を学べるでしょうか。
Photo by RakeshGurjar/pexels.com質問をすること:一般的に「なぜ?」と神に問い掛けることは、本当に神の答えを求めていることもあれば、自分のほうが神よりもうまくやれたとほのめかしていることもあります。神は、私たち以上に心の動機を知っておられます。一方でハバクク書は、神に質問してもいいことを示していると思われます。ただし、神の答えが意に沿わないこともあるでしょう。
不満を述べること:不満がある時に最も大切なことは、神に直訴することです。私たちの考えや心の状態は神に隠されていません。他人に不平や不満を訴えるより、神のところに持っていくのが最善です。
裁き:罪には結果が伴います。神はあわれみ深いお方ですが、時に私たちに罪の結果を体験させます。神が何を使って私たちを懲らしめるかは選べません。私たちにできることは、ハバククのように「激しい怒りのうちにも、あわれみを忘れないでください」と叫ぶことだけです。
神との出会い:主との直接の出会いは厳粛なことであり、選ばれたわずかな人だけに許されたことでしょう。こうした出会いが訪れると、疑問や不満は消え去ります。
例えばイザヤは主を見た時、「ああ、私は滅んでしまう。この私は唇の汚れた者で、唇の汚れた民の間に住んでいる。しかも、万軍の主である王をこの目で見たのだから」(イザ6:5)と叫びました。ヨブは、主の問い掛けに言葉を失い、ただこう告げました。「ああ、私は取るに足りない者です。あなたに何と口答えできるでしょう。私はただ手を口に当てるばかりです」(ヨブ40:4)
聖書は一つの書物
私たちは神と直接出会うことはなくても、みことばの中で主にまみえることができます。よく読む書巻だけでなく、聖書全体を研究することが大切です。
かつてBFPの指導者がこのように語っていました。「新しい聖書を手にしたら、私は旧約と新約の間にある空白のページを破り取ります」
その時は少し驚きましたが、しばらくしてこの行為の知恵に気付きました。旧約と新約の間にある障壁を取り除く時、聖書が一つの本であり、隠された宝と啓示に満ちているという真理を鮮やかに示します。その真理は、何千年も前に聖霊が著者たちに霊感を与えた時と同じく、今日でも真理なのです。
















