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ティーチングレター

ペルシアからイランまで イスラエルの宿敵の歴史をひも解く

文:パトリック・バーベテン(BFPアメリカ支部局長)

今やイスラエルの最大の敵国と言っても過言ではないイラン。
しかし、その歴史をひも解く時、違った側面が見えてきます。

Photo by MORTEZA YOUSEFI/shutterstock.com

神は、ご自身の主権の中でイランという国を用い、ご自身の栄光と栄誉を世界中に広げてきました。現代のイランは、聖書的に言えば古代ペルシアです。

聖書からペルシアについて見ていきましょう。

聖書に登場するペルシア帝国

ペルシアという名前は、主にダニエル書、エズラ記、エステル記、エゼキエル書に登場します。ペルシア帝国に関する主要な情報源の一つが聖書です。大英博物館に所蔵されている「キュロスの円筒」は、その歴史的妥当性を裏付けています。

ペルシアの建国からネヘミヤ記まで、ペルシアが登場する聖書箇所を年代順に見てみましょう。

●紀元前2350〜2000年ごろ 洪水後の定住期

ノアの子孫は後にペルシアとなる地域に定住し、エラム(創10:22)のような初期の王国を築く。

●紀元前2000〜1500年ごろ 族長時代のエラム(創14章)

聖書に最初に登場するペルシア地域の支配者は、エラムの王ケドルラオメル。ソドムとゴモラに対抗する同盟を率い、アブラハムのおいのロトを捕虜にした。

●紀元前700〜600年ごろ エラムの影響とアッシリアの支配

エラムはアッシリアと紛争と同盟を繰り返し、イスラエル史に影響を与えた。

●紀元前625〜550年 メディアとペルシアの出現

キュロス2世の下でペルシアは王国となり、メディアと同盟を結ぶ。

●紀元前539年 キュロスがバビロンを征服

キュロス2世がバビロンを攻略し、捕囚のユダヤ人がエルサレムに帰還するという聖書預言が成就(エズ1:1〜4)。

●紀元前538〜516年 神殿再建

エズラの指導の下、捕囚のユダヤ人がエルサレムに帰還し、ペルシア王の支援を受けて神殿再建へ。

●紀元前486〜465年 クセルクセス1世の統治(エス1〜10章)

エステル記はクセルクセス王の統治時代に起こった話で、ペルシアに住む神の民に対する神の摂理を浮き彫りにしている。

●紀元前445年 ネヘミヤのエルサレム帰還(ネヘ1〜6章)

アルタクセルクセス王に仕えるネヘミヤは、エルサレムの城壁再建の許可を得た。

聖書におけるペルシアの意義

聖書時代のユダヤ人とペルシアの関係はおおむね良好で、肯定的な結果をもたらしました。年表を読みながら、70年間バビロンで捕囚されていたユダヤ人が、キュロス王によって祖国帰還を果たした聖書の話を思い出した人もいるかもしれません。

この出来事が起こる150年ほど前、預言者イザヤは、神がキュロス王を用いられることを預言しました(イザ44〜45章)。イザヤは、ペルシア王となるキュロスのことを神が「わたしの牧者」と呼ばれた点を強調し、キュロスがエルサレムを再建して神殿の土台を据え、神のご計画を成就することを指摘(同44:28)。また、神は諸国民を従わせるためにキュロス王に油を注いだと語りました(同45:1a)。この預言は、ペルシア王がバビロンを打ち倒し、ユダヤ人の祖国帰還の道を備えたことを伝えています。

ギュスターヴ・ドレ
「民にトーラーを読んで聞かせる祭司エズラ」
パブリック・ドメイン/wikimedia.org

祖国帰還のカギを握る指導者の一人が、アロンの家系の祭司エズラです。エズラは、ペルシア王から提供された資金と資源を用い、民をエルサレムに帰還させ、神殿を再建。トーラー(モーセ五書)にも熱心に取り組み、民を霊的刷新へと導きます。

前述の年表では、ペルシアでの出来事を綴ったエステル記にも言及しました。ペルシアの王クセルクセスは、邪悪なハマンの悪い助言を受け、ユダヤ人を全滅させる法令を出しました。ここで重要なのは、エステル記の時代に大勢のユダヤ人がペルシア帝国に住んでいたことです。エステルのいとこで後見人でもあったモルデカイは、ユダヤ人を代表して王に進言してくれるようエステルに要請。エステルは、勇気と神への従順を示し、ペルシア王に自分の民の救済を懇願しました。この出来事をユダヤ人は今日も覚え、「プリム」と名付けられた祭りを祝います。

これに続くのがネヘミヤ記です。ネヘミヤは、王の許可と権限と後押しを得て、ペルシアでの職務を離れ、エルサレムの城壁再建に乗り出しました。神がネヘミヤを用いて再建されたのは、城壁以上のものです。彼は、ユダヤ人共同体を築き、ユダヤの民の見事な告白と悔い改めを促したのです。

ペルシアでのダニエルの影響と預言

神を恐れていたダニエルは、メディア人ダレイオス王の命令に背き、エルサレムに向かって祈りました。メディア人ダレイオス王とは、バビロニア帝国からペルシア帝国に移行する時代に、キュロス王に先立ってペルシアを治めた王です。

獅子の穴の中のダニエル
Briton Rivière/wikimedia.org

ダニエルは、神に祈ったことで獅子の穴に投げ込まれたものの、無傷でした。そのことを知った王は新しい法令を出し、ペルシア帝国中でイスラエルの神をほめたたえるようにしました(参照:ダニ6:26〜28)。

終末の預言におけるペルシア

このダニエルにまつわる出来事が、キュロス王のユダヤ人政策に影響を与えたのではないでしょうか。

四頭の獣(ダニ7:1〜7)、雄羊と雄やぎ(ダニ8:1〜8、20〜22)、七十週(ダニ9:24〜27)、ペルシアの国の君(ダニ10:1〜3、12:1)など、ダニエルの多くの預言はペルシアを扱っています。聖書学者のジョン・F・ウォルヴォードは次のように語りました。「ダニエルは、バビロン、メド・ペルシア、ギリシャ、ローマの大帝国について預言し、その興亡は歴史に記されている。この預言の正確さは、聖書が神の霊感によって書かれたことを示す最強の証拠の一つである」

ご自分のことばに誠実な神は、ペルシアで起こることを、預言者を通して明らかにされました。しかし、まだ成就していない預言もあります。エゼキエル書38章2〜6節にはこうあります。「人の子よ。メシェクとトバルの大首長である、マゴグの地のゴグに顔を向け、彼に預言せよ。『神である主はこう言われる。メシェクとトバルの大首長であるゴグよ。今、わたしはおまえを敵とする。わたしはおまえを引き回し、おまえのあごに鉤をかけ、おまえと、おまえの全軍勢を出陣させる。それはみな完全に武装した馬や騎兵、大盾と盾を持ち、みな剣を取る大集団だ。ペルシアとクシュとプテも彼らとともにいて、みな盾を持ち、かぶとを着けている。ゴメルとそのすべての軍隊、北の果てのベテ・トガルマとそのすべての軍隊、それに多くの国々の民がおまえとともにいる』

エゼキエル書38〜39章の預言には、イスラエルを攻撃する国々の中にペルシアが含まれています。これは、これから起こる出来事として理解されることが多いです。つまり、これらの国々の役割は、終末の時代に成就するまで取って置かれるということです。

著名なイギリスの正統派ラビである故ジョナサン・サックス師は、エゼキエルの預言について次のように述べました。「エゼキエルの幻で見えてくるのは、国々の対立だけではなく、人類のたましいを巡る戦いである。ゴグに率いられるペルシアなどの悪の軍隊は、正義と道徳を守る契約共同体に敵対している」

ペルシアを含む国々の新連合は今、世界に新たな通貨と秩序を築こうとしているのが見えます。正義と道徳への反対も見られます。「私たちは、エゼキエルが預言した時代に生きているのだろうか」と問うことは、非現実的でもセンセーショナルでもありません。そのような時代にあっても、私たちは「ただ前進あるのみ」だと、BFP国際会長レベッカ・J・ブリマーは勧めています。

使徒の時代から今日まで

使徒トマスはペルシア帝国に福音をもたらし、同帝国は中国に福音をもたらしたと言われています。同帝国でキリスト教が栄えたのは紀元600年ごろまでです。7世紀半ばまでにイスラム勢力がペルシアを征服しました。ただし、イスラム教が優勢になるまでには数百年掛かりました。

興味深いことに、ペルシア人の大半はイスラム教徒ですが、アラブ人ではありません。ペルシア人とアラブ人は、言語、文化史、民族の起源が異なり、独自のアイデンティティーを持っています。ペルシア人が多数のイランは、中東のアラブ人近隣諸国とは一線を画しているのです。

1935年、ペルシアは国名をイランに変更しました。「イラン」とは、ペルシア語で「アーリア人の国」を意味し、この国の立場と民族の起源を反映しています。

イランに住むユダヤ人とクリスチャンは、パーレビ王朝の下で文化的・宗教的な自由が認められていました。ところが、1979年のイスラム革命によって規制が強化され、両コミュニティーの多くの人々が移住を余儀なくされます。困難な中でも、ユダヤ人コミュニティーは小規模ながら存続しました。キリスト教信仰は、アルメニア人とアッシリア人のコミュニティーや、イラン人改宗者が率いる地下教会で増え広がり、持ちこたえています。

今日のイランは、イスラエル最大の敵として知られ、世界最大のテロ支援国家です。歴史を掘り下げる前に私が抱いていたこの国のイメージは、悪意、権力、支配でした。しかし、エペソ人への手紙6章12節は「私たちの格闘は血肉に対するものではなく、支配、力、この暗闇の世界の支配者たち、また天上にいるもろもろの悪霊に対するものです」と忠告しています。

聖書では、ペルシアは神の民を祝福し、神の御名を世界に広める祝福の器として用いられることを明示しています。そんなイラン人のために祈るよう私は促されています。多くの国民が、偽の宗教を信じるように洗脳されているからです。終わりの日に、神はどのように国々がイスラエルを取り扱ったかに応じて地を裁かれます(ヨエ3:12、マタ25:31〜46)。ペルシアの人々が暗闇と悪の正体を見破り、イスラエルの神を愛するようになることを祈っています。

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