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ティーチングレター

堅固な礎の上に建てる

TEXT:エリック・マロイ(BFPカナダ支部局長)

今なお残る2000年前のヘロデ大王の建築物。その中でも特に第二神殿から、土台の重要性、そして私たちの生きる指針・信仰における堅固な土台とは何かを学びます。

ヘロデ王の建設したギリシア風の町、カイザリア ©Ashernet

建築の達人、ヘロデ王

イスラエルを訪れた時、必見の場所があります。ガリラヤ湖、ヨルダン川、カペナウム、死海、エルサレムの旧市街、西壁(嘆きの壁)などですが、最も見ていただきたい場所が、神殿の丘の発掘現場です。そこにはヘロデ大王の再建した第二神殿跡や、イエスご自身も歩かれたであろう13メートルにわたる舗装道路があります。

NIVの考古学スタディ・バイブルには、次のような注釈が書かれています。「ヘロデ大王の神殿建築は、バビロン捕囚後、ゼルバベルやネヘミヤが再建した第二神殿の改築・拡張であった。これによって、ヘロデ大王は多くの事業の中でも最高の建造物を建築する機会を得た。おそらくヘロデの改築したエルサレム神殿は、これまでエルサレムに存在した中で最も印象的な建物であっただろう。」

ヘロデ大王は、非常に残虐で、自己中心的な人物でしたが、類いまれな建築家としても有名です。BFP(ブリッジス・フォー・ピース)の創立者ダグラス・ヤング博士は、彼について次のように言っています。「ヘロデは多くのギリシア風建築を建造し、カイザリヤやセバステ(サマリヤ)などの町々を建てていった。一方、彼は紀元前20年から、壮大な歴史に残るエルサレム神殿の再建を成し遂げた。彼自身はヘレニズム文化に傾倒し、ヘブライ的聖書信仰を持っていなかったが、これによって支配下にあるユダヤ人を懐柔しようとしたのである。」「ヘロデは多くの建物を建てたが、特に自分のための王宮を多く建造した。彼は自分の王宮を、一つは死海を見下ろすマサダに、もう一つはベツレヘムに、そしてもう一つはエルサレムに建てた。しかし中でも最も有名な建築は神殿だった。バビロン捕囚からの帰還後に建てられた神殿は不十分なものと見なされていたため、ヘロデは10年をかけて神殿を倍の高さにし、大理石で覆って再建したのである。」(『ユダヤ人の歴史の様相』より)

ヘロデ王の建てた神殿の西の壁は今も残り、
世界中の人を魅了する場所(嘆きの壁)となっている

このような一つ一つの実例は、ヘロデの建築の才能を示しています。ヘロデが築いた土台がなければ、建造物はとうの昔に歴史の中で灰燼(かいじん)に帰していたことでしょう。彼の卓越した才能により、建築物は堅固な土台の上に建てられ、現代にも残る不朽の価値を伝えています。

土台の役割

発掘された神殿の丘の端に立つと石材が見えます。これは壁や台の強度を十分にするため、ヘロデが使ったものです。もしローマ人が神殿を破壊していなかったなら、土台が固く据えられていた神殿は、今日もそこに残っていたかもしれません。ローマ帝国の抑圧を振り払うためユダヤ人が起こしたAD70年と135年の反乱の結果、神殿は破壊されました。それに続く数世紀の間、神殿の丘はさらに損なわれました。しかし、土台の石は今も誰もが目にできる形で残ったのです!

これを通して、土台の役割を知ることができます。メリアム-ウェブスター辞典では、土台を次のように定義しています。「(信条、原則、あるいは原理としての)基礎を築く行為で、その上に何かが建てられたり、それによって何かが支えられたりする。根本的な支え。特に建造物の石造りの基礎構造全体。」神殿の丘に立ち、今も残る土台の石を見る時、固く据えられた基礎の重要性に思いを馳せることができます。

信仰の正しい土台

堅固な土台が信仰生活においても重要なことは、聖書にはっきりと明示されています。「だから、わたしのこれらのことばを聞いてそれを行う者はみな、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができます。雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけたが、それでも倒れませんでした。岩の上に建てられていたからです。また、わたしのこれらのことばを聞いてそれを行わない者はみな、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができます。雨が降って洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまいました。しかもそれはひどい倒れ方でした。」(マタイ7:24-27)

使徒パウロは、私たちクリスチャンの信仰の土台は、使徒と預言者が宣言し教えた、「今も昔も永遠に変わらない真理」であると説明しています。パウロは次のように書いています。「こういうわけで、あなたがたは、もはや他国人でも寄留者でもなく、今は聖徒たちと同じ国民であり、神の家族なのです。あなたがたは使徒と預言者という土台の上に建てられており、キリスト・イエスご自身がその礎石です。この方にあって、組み合わされた建物の全体が成長し、主にある聖なる宮となるのであり、このキリストにあって、あなたがたもともに建てられ、御霊によって神の御住まいとなるのです。」(エペソ2:19-22)

聖書が明確に描き出しているのは信者の共同体の絵であり、信者たちはイエス・キリストという礎石の上に使徒と預言者が据えた、堅い土台の上に建てられなければなりません。信仰の共同体は、正しい堅固な土台の上に、建築物のように組み合わされているのです。建物の一つ一つの部分(信者)は主に対して、また共同体のお互いに対して、神の御霊の御住まいを作り上げる責任があります。

第二神殿時代の住宅地域から発掘された土台
©Ashernet

パウロは、弟子テモテや自分が導いた人々に「また、まことのいのちを得るために、未来に備えて良い基礎を自分自身のために築き上げるように。……ゆだねられたものを守りなさい。そして、俗悪なむだ話、また、まちがって『霊知』と呼ばれる反対論を避けなさい。これを公然と主張したある人たちは、信仰からはずれてしまいました(Ⅰテモテ6:19-21)」と言いました。パウロはまた「(私がそのように書いたのは)神の家でどのように行動すべきかを、あなたが知っておくためです。神の家とは生ける神の教会のことであり、その教会は、真理の柱また土台です(Ⅰテモテ3:15)」と訓戒しています。

不安定な土台の例

礎石であるキリスト、そして使徒と預言者という堅固な土台の上に築き上げられない時、何が起こるでしょうか。数世紀にわたる教会史の中で、不安定な土台の上に築かれた建物がどのようになるか、如実に示されています。キリスト教史の中で、悲しいことに、多くの分派、派閥、教派、そしてカルトが生み出されました。

今日も、多くのクリスチャンは土台のない「クリスチャン消費者」的な考え方の犠牲になっています。信者たちは、「自分の必要が十分満たされるか」どうか、「イベントは好みに合うか」どうかなど自分中心の考え方に陥り、ショッピングする時のように教会を選べると考えているのです。今日、欧米のキリスト教界の多くのクリスチャンは、この間違った見解を取り入れてしまったように見受けられます。信じる者たちの群れそのものが「教会」、すなわち、生ける石たちで築かれた家である(Ⅰペテロ2:5)、という基本的な真理を認める代わりに、彼らは、「教会が提供するもの」を最重要視しているのです。

生きる指針

聞く耳があり、見る目があり、理解する心のある者に対して、聖霊は今日の教会とその指導者たちへの警告と励ましを語っています。個人・団体の教義、教会に関する教義体系、組織神学などは、堅固な聖書的土台の代わりになりません。預言者と使徒の例にならって、今日の信者がへりくだり、聖霊によって啓示された、最初に与えられたままのみことばという至高の権威に従うことは非常に重要なことです。中にはこのことが自分にとって都合が悪いように感じられ、避けたくなってしまう人がいるかもしれません。自分の必要ではなく、神のご計画全体を優先することは、時に困難さを伴うからです。そのような人々は痛みを伴う神の愛に満ちた訓練を受けるかもしれません。しかし、同時に聖書はまた、学び、信じ、教え、真理に生きるために必要な導きと方向性を与えています。

堅固な土台というテーマは聖書の中で繰り返し語られ、すべての信者に判断の基準点を与えています。もし預言者と使徒によって宣言され、聖霊によって照らし出された聖書の揺らぐことのない土台の上に建てられているなら、砂のように移り変わる世的な意見の影響を受けることはないのです。

[参考文献]

  • フィリップ&ラファエル・ギンズバリー『ユダヤ人の歴史の様相』
    Ginsbury, Philip and Raphael Cutler. The Phases of Jewish History. Jerusalem:Devora Publishing, 2005.
  • ダグラス・ヤング編『ヤング博士の聖書辞典』
    Young's Bible Dictionary, Tyndale Desktop Reference Edition. Carol Stream, IL: Tyndale House Publishers, 2007.

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