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神の勇士ギデオン -後編-

TEXT:ジャネット・アスリン(BFPスタッフライター)

後編ではギデオンの戦いと、彼の陥ったわなを通して、さらに神のご性質を学びます。

3百人の精鋭

3万2千人のイスラエル人が、ミデヤン人と戦おうというギデオンの呼び掛けに応えました。ミデヤン人は13万5千という四倍の兵力で、勝ち目はありませんでした。しかし神はギデオンに「あなたといっしょにいる民は多すぎるから、わたしはミデヤン人を彼らの手に渡さない。イスラエルが『自分の手で自分を救った』と言って、わたしに向かって誇るといけないから(士師7:2)」と言われました。残念なことですが、乗り越えることのできない問題に直面しない限り、私たちはいつも自分の力で勝利したと言いたい誘惑に駆られます。神の御力に完全に頼って生活することは自然にできることではなく、毎日へりくだって神に従って生きることによって会得するものなのです。

イスラエル軍のうち、まず恐れている2万2千人が家に帰りました。そして泉へ行き、残りの1万人を試したところ、ギデオン軍の人数はさらに減りました。ほとんどの者は舌で水をなめるように、膝を着いて水を飲みました。神はギデオンに、水を手ですくって飲んだ者だけを選べと言われたのです。「選ばれた人々はのどの渇きにもかかわらず、敵の存在に注意を払い、水を飲んでいる間も武器を手放さなかった人たちである。」と、『聖書の戦い(ハイム・ヘルツォグ&モルデカイ・ギホン著)』にあります。また、「ひざまずくというのはバアル礼拝の象徴(Ⅰ列王19:18参)であり、本物のイスラエル人はひざまずかない」ということです。これらの説明が正しいかどうかは不明ですが、確かなことは主が民をテストしてギデオン軍に加わる3百人を選ばれたということです。

ギデオンは、主に従って9千7百人を家に帰し、主の選ばれた3百人をとどめておきました。聖書には「…ミデヤン人の陣営は、彼から見て下の谷にあった(士師7:8)」と書かれています。神が再びギデオンに語り掛けて攻撃するように命じたのは夜でした。ここで、神がご自分の子どもたちを非常によくご存知であり、私たちに対して優しく接してくださるというさらなる証拠を見ることができます。神はギデオンが完全に勝利を確信できるよう、再びしるしを見せてくださったのです。「しかし、もし下って行くことを恐れるなら、あなたに仕える若い者プラといっしょに陣営に下って行き、彼らが何と言っているかを聞け。そのあとで、あなたは、勇気を出して、陣営に攻め下らなければならない。」(士師7:10-11)

ギデオンとプラが敵の陣営に着いた時、ミデヤン人の衛兵が同僚に、大麦のパンのかたまりがミデヤンの陣営にころがってきて、天幕をひっくり返したという夢の話をしているのが聞こえてきました。アルフレッド・エドラシェムは『旧約聖書の歴史』の中で、「夢とその解き明かしは…彼らに深い感銘を与えた…。大麦のパンは最も貧しい食事とみなされていた。その卑しい一かたまりのパンが、ミデヤンの陣営に転がってきて指導者の天幕にぶつかってそれを倒してしまったというのだ!これは弱小と思われていたイスラエルの勝利を表す夢である…」と解説しています。

ギデオンとプラは陣営に帰って最終的な指示を与えました。3百人が敵の陣営に下っていき、角笛を吹いて「主のためだ。ギデオンのためだ」といっせいに叫び、たいまつを隠していたつぼを打ち壊しました。突然現れた光と音に圧倒されたミデヤン人たちは闇の中に逃げていきました。

エポデの落とし穴

ミデヤン人が打ち負かされると、イスラエルの人々はギデオンに、王朝を設立して統治者になってほしいと願いました。ギデオンはためらうことなく、自分も息子たちも統治しない、統治されるのは主であると答えました。ギデオンはこの内面の戦いに勝利しましたが、彼が取った次の一歩はギデオンやギデオンの直接の家族にだけではなく、イスラエル国家に悲劇をもたらしました。ギデオンは主の導きと指導を離れて一歩を踏み出してしまったのです。彼は民にミデヤン人から分捕った金のイヤリングを求めました。人々は喜んでこれに従い、程なく1700シェケル(約20㎏)相当の金が集まりました。

ギデオンはこの金を取って「一つのエポデを作り、彼の町のオフラにそれを置いた。すると、イスラエルはみな、それを慕って、そこで淫行を行った。それはギデオンとその一族にとって、落とし穴となった。」(士師8:27)ギデオンが作ったエポデの目的や形は明確ではありません。ユダヤ教百科事典には、タナハ(創世記〜マラキ書)の中の「エポデ」と言うことばには二つの意味があると書かれています。私たちがよく知っているのは大祭司の礼服の一部としてのエポデでしょう。しかし、このエポデということばにはもう一つ「像」と言う意味があり、ここではこちらの意味と考えるほうがより適切です。『ザ・リビング・ナハ(ヤアコブ・エルマン著)』の脚注には次のように書かれています。ギデオンが作ったのは「勝利を記念する金のベルトかもしれない。また他の人々はこのエポデが占いに使われたことを示唆している。」

それがどのような形をしていたにせよ、聖書にはそのエポデはギデオンとその一族の落とし穴になったと書かれています。もしそれが勝利の記念だったなら、ギデオンは高慢のわなに陥り、主から離れては何一つ成し遂げられないという自分のどうしようもない無力さを忘れてしまったのかもしれません。もしそれが占いや超自然的な助けによって知恵を求めるためのものであったなら、神がモーセを通して指示された神の民の生きる道に背いたことになります。その戒めの中には「まじないをしてはならない。卜占(ぼくせん)をしてはならない(レビ19:26)」というものもあるからです。

ギデオンの生涯から学べること

ギデオンが生きている期間、国は安定し平和でした。しかし聖書には「ギデオンが死ぬとすぐ、イスラエル人は再びバアルを慕って淫行を行(った)(士師8:33)」と書かれています。ヨシュアが死んだ後もイスラエルの民はヨシュアの時代に生きていた長老たちが生き残っていた間、主に仕えました(ヨシュア24:31)。ギデオンは、信仰の強い継承ができなかったのです。ギデオンが死ぬとすぐ、民はまことの神を礼拝することをやめ、バアルを礼拝し始めました。

私たちはギデオンの生涯から何を学ぶことができるでしょうか。ギデオンは、その準備期間において、主に尋ねることを恐れませんでした。そして、主の御声に直ちに従いました。ギデオンは神の霊に覆われた優れた軍の指導者で、ミデヤン人を徹底的に打ち負かしました。真の王は主であることを知っていたので王位を勧められても断りました。しかしギデオンは奇跡的な勝利の後、わなに落ちたのです。

それでも信仰の偉人たちのリストの中にはギデオンの名前があります。「これ以上、何を言いましょうか。もし、ギデオン、バラク、サムソン、エフタ、またダビデ、サムエル、預言者たちについても話すならば、時が足りないでしょう。彼らは、信仰によって、国々を征服し、正しいことを行い、約束のものを得、ししの口をふさぎ、火の勢いを消し、剣の刃をのがれ、弱い者なのに強くされ、戦いの勇士となり、他国の陣営を陥れました。」(ヘブル11:32-34)

ギデオンは最後に失敗者となってしまったのでしょうか。そうではありません。しかし、おそらく私たちはギデオンの人生から、主への100パーセントの従順以外に、わなから守られる道はないという教訓を学ぶことができるのではないでしょうか。

聖書の「信仰列伝」のリストに載っている人々の生涯を研究するのは良いことです。そうする時に私たちは、彼らが私たちと同様に弱さを持った人間であることが分かります。そして、ギデオンや私たちに対する神の真実の中に希望を見出すのです。主は、「あなたがたを、つまずかないように守ることができ、傷のない者として、大きな喜びをもって栄光の御前に立たせることのできる方(ユダ24)」です。私たちに約束してくださった方は真実なお方なのです!

[参考文献]

  • アルフレッド・エドラシェム『旧約聖書の歴史』
    Edersheim, Alfred. Old Testament Bible History. Grand Rapids, MI:William B. Eerdmans Publishing Company, 1982.
  • ヤアコブ・エルマン『ザ・リビング・ナハ(預言書と諸書)』
    Elman, Yaakov.The Living Nach, Early Prophets. Jerusalem: Moznaim Publishing Corporation, 1994.
  • ハイム・ヘルツォグ&モルデカイ・ギホン『聖書の戦い』
    Herzog, Chaim and Mordechai Gichon. Battles of the Bible, a modern military evaluation of the Old Testament. New York: Random House, 1978.

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