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ネヘミヤの精神をもって -前編-

著:シェリル・ハウアー(BFPアメリカ支部副支部局長)
編:BFP編集部

BFPアメリカ支部で、副局長の任を担っている、シェリル・ハウアーが、ネヘミヤという人物を通してすばらしいティーチングを展開しています。今月と来月、二度にわたって皆様にご紹介いたします。

過去数カ月にわたり、世界各地のBFPの指導者たちと共に、BFPの働きについて、今後の方向性をひたすら模索する特権にあずかることができました。その中で、私の中にはっきりと浮かんできた二つの名前があります。それは、「ネヘミヤ」……そして「ビル・ゲイツ」です。ネヘミヤについては、はっきり分かります。聖書を開き、ネヘミヤ記を何度も何度も読み返し、ありったけの翻訳で、この書を読み返しました。また、キリスト教・ユダヤ教の両方から、関連するあらゆる注解書も読みました。そして、この名を通して主が語られていることが何なのか、悟ることができました。

しかしながら、「ビル・ゲイツ」――この名前を聖書に見つけることはできません。ここで神のおっしゃりたいことは何なのか、探し当てるのは、ネヘミヤの場合よりも少し困難でした。しかし、十分に祈った後、私の中に次の言葉がはっきりと浮かび上がってきました。「知名度(ノータリティー)」。アメリカで、道で出会う誰かにビル・ゲイツが何者なのか聞けば、その人ははっきりと答えてくれるでしょう。マイクロソフト社を興した億万長者。コンピューター産業を通して、世界を大きく変えた人物と。

しかし、BFPが世界に発信しているメッセージは、本来、ビル・ゲイツ氏でさえ真っ青になるほどのインパクトを与えるものです。神がクリスチャンとイスラエルに与えられたメッセージを、世界中のあらゆる社会、あらゆる教会に聞いていただきたいと願っています。そう、神が私たちにおっしゃりたいことは、単純なメッセージ――「ネヘミヤの精神をもって、ビル・ゲイツのように世界に知られるようになりなさい」ということです。今ひとつ、ピンとこないかもしれません。これをよく消化するために、ネヘミヤという人物を、ネヘミヤ記という書物から理解していきましょう。

人としてのネヘミヤ

ヘブライ語の語根には、多くの意味があります。例えば、「トゥシュバー」という単語は、単純には「悔い改め」ですが、実際には二つの意味があります。「〜から背を向ける」、そして「〜に返る・向かう」。このことから、「悔い改め」の真の意味が何なのか、私たちは理解することができます。「罪に背を向け、神に立ち返る」――それが悔い改めの姿勢です。

聖書注解書のほとんどが、ネヘミヤという名の意味を「神の慰め」と定義しています。「ネヘミヤ」という名は、「ナフーム」という語根から来ています。ナフームには、「慰める」「元気づける」「あわれみ」「敵を討つ」「のろいから逃れる」という意味があります。神の器として、ネヘミヤはイスラエルの上に降り掛かるのろいを取り払い、イスラエルを捕らわれの身から解放し、その敵を討ち、エルサレムを神の聖なる都として建て直しました(詳しくはネヘミヤ記参照)。その働きが同胞に励ましと慰めをもたらしたことから、この名にはより多様な、より深い意味が含まれていることが分かります。

城壁再建を指揮するネヘミヤ

ネヘミヤの四つの性質

ネヘミヤは、捕囚先のペルシャにおいて、ユダヤ社会のエリートでした。王の献酌官として影響力を持ち、また尊敬される地位にありました。彼は宮殿に住み、安定した生活を送っていました。しかし同時に、神と、神のみことばであるトーラーに宿る真理に対し、あつい信仰を持っていました。

ネヘミヤは、特筆すべき四つの性質を備えていました。それは、ご自身の器として用いるために、神が彼に備えられたものだと私は信じています。

あわれみ深さ(ネヘミヤ1:2-4)

この性質はネヘミヤ書1章2節から4節で表されています。

ユダヤからの訪問者が、ペルシャの王都・シュシャンに到着すると、ネヘミヤはまず、エルサレムにいる同胞と、彼らの置かれている状況について尋ねました。そして、彼らが大変な苦難の中にあり、また中傷を受けていることを知り、心を痛めました。エルサレムの城壁が崩れ落ち、その幾つかの門もまた焼け落ちたことを知った彼は、朝まで泣き続けました。その時代、城壁が弱体化するのは、その町の人々が信じる神が弱いと認識されていたからです。もし、城壁が大きく強固なら、そこで礼拝される神もまた強く、それゆえに、住人たちを守っていけると信じられていました。イスラエルの神の御名が、ご自身の都であるエルサレムのゆえに汚されているという事実にネヘミヤは嘆き、何日にもわたって断食を続けました。

勇気

ネヘミヤはまた、勇気あふれる人物でした。ネヘミヤ記は、彼のリーダーとしての勇気ある行動と、果敢さで満ちています。同書2章1節から8節では、エルサレムに帰って城壁の復興に携わりたいと、勇気を持って王に願い出ています。

古代の王は絶対的な権力者でした。ある者は慈悲深く、ある者は残忍でした。エステル記でも分かる通り、シュシャンの宮廷では、王の前にどう出るか、どのように振る舞うか、厳しいエチケットが定められていました。王が、王酌を手向け、会話する許可を与えない限り、王に謁見を求めた人物は、投獄されるか、死刑になるかのいずれかでした。ネヘミヤが王の前に出た時、王は、彼が自分の職務に満足していないのではないかと疑いました。ネヘミヤにとってこれは、自分の命を懸けた陳情だったのです。ネヘミヤがなぜ悲しんでいるのか、王が尋ねた時、ネヘミヤの恐怖は頂点に達しました。エルサレムにいる同胞に対する思いが王に誤解され、不忠実で恩知らずと受け取られてしまったら、そのまま処刑されてしまうからです。

◆信仰

内なる恐怖に対するネヘミヤの姿勢は、自分が仕える神に対する、強い信仰を表しています。1章4節に、リーダーとして、建設者として、そして救済者として、彼がいかに成功したか、その鍵を見いだすことができます。「……天の神の前に祈って……」。ネヘミヤ書・全13章全体に見られる成功、反発、混乱、失望、その他もろもろの事柄に対するネヘミヤの姿勢は、常に「祈り」でした。神の導きと信頼に対する、彼の揺るぎない信仰は、自らの心や考えを真っすぐに神に向けるだけでなく、周囲の人々をもそのように動かし、希望と、神にある生き方を彼らに植え付けました。神こそすべての成功の源であり、そこにはすべての問題に対する唯一の解決策があることを知っていたネヘミヤは、己のビジョンと情熱を他の人々に継承していくことができました。

◆協調性

ネヘミヤは、目的を達成するために、人々と協力し合うことの必要性を理解していた人物でした。彼は卓越したチーム・ビルダーでした。エルサレムの城壁の再建は、困難な仕事でした。あまりの大事業だったため、エルサレムの城壁は、壊れたまま放置されていました。しかし、ネヘミヤは、ネヘミヤ記2章17節において、ユダヤ人に対し、城壁が壊れたままでであることは、自分たちの不名誉であることを示し、次の言葉で彼らを奮起させました。「さあ、エルサレムの城壁を建て直そう」。簡単な一言ではありましたが、ユダヤ人の心は燃え上がりました。そしてそれは、52日間にわたり、彼らをこの事業へと向かわせる力となったのです。

イスラエルの存在を受け入れない敵の存在は、今も昔も変わらない
城壁の破れ口をふさぐのは、
勇気ある役目であった

書としての「ネヘミヤ記」

ネヘミヤ記は、イスラエルの歴史書としてすばらしい書物であるだけでなく、その内容が今日のイスラエルの状況と、驚くほど重なっています。現在のように、ネヘミヤの時代もまた、離散の地からユダヤ人が帰り、国を再建していました。また、イスラエルに敵対する者たちが徒党を組んで攻撃し、絶望を与え、「おまえには存在する権利はない」と叫び声を上げていました。これも今日と同じです。さらにまた、この書は、BFPにとっても、ある一つの大切なメッセージを伝えています。

イスラエルの地における支援プログラムを通して、私たちもまた、この国を建て上げる手助けをしています。世界中のクリスチャンが送ってくださる助けによって、「BFPは、この地を回復するための支援をしている団体である」と、現地および世界のユダヤ人指導者から認知されるようになりました。

皆様がイスラエルに対する無条件の愛から伸ばしてくださった、助けの手によって、私たちは慰めと励ましを、この地にもたらすことができるようになりました。

ネヘミヤ率いるチームは、レンガと粘土を使って城壁を再建しました。しかし、私たちは、2000年近くにわたり廃墟となっていた“ユダヤ人とクリスチャンの関係”という壁を修復しています。そのひどい荒廃ぶりが、「神は無力だった。ご自分の民を守ることができなかった。」という、世界にとって悪い証しとなってきたその壁を、建て直しているのです。ユダヤ人とクリスチャンの間に、尊敬と真心、そして愛の関係が育つことにより、神の御力が再び現されるようになります。

両者の間に立ち続けることによって、私たちはこの地を守り、この地を再建する手助けをしています。クリスチャンにとって重要なのは「祈り」です。確かにクリスチャンは、イスラエルの国とその人々のために祈るよう召されています。あるユダヤ教のラビは次のように教えています。「壁を造った人々は偉大だ。しかしより偉大なのは、その間に立つ者だ。」古代において、この「間に立つ者」とは、敵の侵入を防ぐために、城壁の破れ口に自分自身の肉体を置いて、穴をふさぐ人でした。その穴から敵が侵入してくる危険に対し、神の御名の栄誉のために、自分自身の命を進んで捧げました。

「イスラエルとユダヤ人を支える」という聖書的命令を、世界のクリスチャン社会に伝えていくことは、終わりの日にあって、教会が、神の望まれる「強力な神の兵士」となることにつながっていることを覚える必要があります。

残念ながら、ここでページが尽きてしまいました。来月の後編では、この、「ネヘミヤ記から見るネヘミヤ像」の続きを学びます。そして、ネヘミヤの姿勢を通して、この時代に神が教会に望まれていることが何なのかを探りたいと思います。〈次号へ続く〉

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