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神を知り、神を愛する -後編-

TEXT:レベッカ・J・ブリマー [BFP国際会長]

前号では、神を追い求めたモーセとそれに応えられた神のやりとりなどから、ユダヤ人の考える「神のあわれみの13 の属性(特質)」について学びました。今号ではさらにそれらの属性について確認してまいりましょう。

1&2 ― 「主」

神の1番目と2番目の属性は新改訳聖書第三版では【主】と翻訳されています。ヘブライ語では、ユッド.ヘー.ヴァヴ.ヘーと書かれています。その文字をヤハウェと発音すると主張する人もいますが、発音は定まっていません。なぜでしょうか。1953年にラビ、ラファエロ・レヴィンによって書かれた本ではこのように書かれています。「神を表すこの名は、初代キリスト教翻訳者たちによってユッド.ヘー.ヴァヴ.ヘーという4文字のヘブル語の誤った発音から起こりました」この4文字のヘブライ語(神聖四文字)は聖なる御名に対する崇敬から、発音してはならないと考えられていました。ですから発音されることなく、代りに、主、主人を表すアドナイという言葉が用いられました。後に、ヘブライ語表記に母音を加えるようになったとき、アドナイは、ユッド.ヘー.ヴァヴ.ヘーの4文字の下に母音として加えられ、イェホヴァと発音され、ラテン語でジェホヴァとなりました。実際、この神聖四文字は、ヘブライ語の動詞「〜になる/〜である」に由来し「存在、永遠」を意味します。モーセが神の名を尋ねたとき、「わたしは、『わたしはある』という者である。」(出エジ3:14)と神は答えられました。

ラビ・マグリソは、「神聖四文字であるこの文字が使用されているときはいつも、あわれみの属性を意味する」と言っています。また、タルムードによると、この一番目と二番目の「主」には、それぞれ、神のあわれみの異なる属性が込められていると書かれています。(*「主」と【主】は別の意味をもたせているので区別して表記)
一番目は、純真な子どもに対する親のようなあわれみをもつ神。二番目は、たとえ罪を犯しても、それを心から悔い改めた人に対するあわれみをもつ神、ということです。

3 ―「神」(エル)

サムエル・バーンボムは「3番目の属性はエルという言葉に見られる。それは主の知恵の命じるままに行動する力強さを表す」と言っています。そのほかに神の全能なる性質を指すともいわれています。エルという神の名は、神が支配者であり全知全能なる方であることをも表します。アダム・クラークの注解書には、エルは、強い、力にあふれた神であるとあります。

モーセがこの名前を聞いたとき、彼は、イスラエルの民の代表として、神の力強い御業を思い出したことでしょう。神(エル)は、初子を死なせるなどの災いをエジプトにもたらし、紅海を分け、荒野でイスラエルの民に食物を与え、岩から水を出すなどのくすしい御業を行われました。

全知全能の神は、その主権のうちにあわれみをもって神の民と神のご計画のために、御心を行われます。

4 ― あわれみ深い

ヘブライ語は子音の言語で、すべての言葉には二つか三つの子音の語幹があります。類似する意味を持つ言葉は、語幹または語根を共有します。「あわれみ深い」と訳されているヘブライ語「ラフーム」の語根は、レーシュ.ヘット.メムです。胎または子宮を意味する「レヘム」は「ラフーム」と同じ語幹であるといいます。神の優しいあわれみと慈しみが、生まれる前の子どもを母の胎の中で覆い守るというのです。

神とユダヤ人との関係を聖書の中の「あわれみ深い」という言葉から見ることができます。使徒パウロは出エジプト記33章19節を引用して、次のように言っています。「わたしは自分のあわれむ者をあわれみ、自分のいつくしむ者をいつくしむと言われました。」(ローマ9:15) また、詩篇103篇13節では、「父がその子をあわれむように、【主】は、ご自分を恐れる者をあわれまれる。」と言っています。

5 ― 情け深い

「情け深い」という意味のヘブライ語「ハヌン」は、旧約聖書の中で「恵み深い」とも訳されていますが、神の属性を表す言葉として13回使用されています。ユダヤ人注解者の中には「親切」と訳す人もいます。この言葉は「ヘン」(恵み)というヘブライ語から派生しています。私にとってそれは、神の扉がいつでも開いているという考え方を象徴しています。

ウェブスター辞典に、「優しい」とは、「親切、魅力、礼儀をもつ、あるいはそれを表す」とあります。クリスチャンの間で神の恵み、無償の愛についてよく話されます。私たちの優しい神は、いつも神の子どもたちへ恵みの御手を喜んで伸ばしてくださっています。ラビ・カプランは、「ハヌンという言葉は、無償の贈り物を意味する」と記しています。ローマ人への手紙の中でパウロは、「罪から来る報酬は死です。しかし、神の下さる賜物は、私たちの主キリスト・イエスにある永遠のいのちです。」(ローマ6:23) と言っています。神から神の子どもたちへの無償の贈り物に感謝します。

6 ― 怒るのに遅い

このヘブライ語は、新共同訳では「忍耐強く」と訳されています。文字通りだと、「長い鼻孔」となります。これは一体何を意味するのでしょうか? ウィリアム・ウィルソンによると、鼻孔を意味する言葉は、「怒る」という動詞の語根から来ていて、意味は「怒って、不快にさせられて、重苦しく息をする」です。怒り猛る人は鼻息荒く重苦しい息をしているのが分かるでしょう。

主の鼻息は怒りで煙を吐いてはいないと、非常に分かりやすい表現で神はモーセに言っているのです。主は人間を取り扱われるとき、私たちの想像を超えて忍耐強く、辛抱強く、怒るのに遅くあられます。神は人が悔い改めるのを切望され、そうするのに十分な機会を与えられます。ラビ・カプランは言います。「神が、悪しきことへの怒りと即座に罰することを遅らせるという意味が、この言葉に含まれます。神は悔い改める時間をくださっています」

7 ― 恵みに富む

「恵み」を表す「ヘセド」は、ヘブライ語の中で最も素晴らしい描写的な言葉の一つです。それはあふれんばかりの愛の表れであって、受ける価値のない者に対する神からの賜物です。また、肯定的な意味での熱意や誠実さも含みます。聖書の中でこの言葉は、あわれみ、親切、いつくしみと訳されています。例えば詩篇36篇7節を新改訳では「恵み」と訳し、口語訳と新共同訳では「いつくしみ」と訳しています。ヨハネは言いました。「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。」(ヨハネ3:16)そうです。神はいつも偉大な恵みの神であり、これから後も決して変わることはありません。

8 ― まことに富む

神は真実な方です。約束を必ず守られ、信頼できる方です。それは神のイスラエルに対する、決して変わらない契約の連続性と真実さから分かります。ユダヤ人にとって故国の再建は、イスラエルの預言者たちに預言された通りに成就しました。私たちはそのみことばがまさに成就している時代に生かされています。神は真実で、約束を守られる神です。「まこと」(エメット)という単語は意味深い言葉です。聖書では通常「真実」や「真理」と訳されています。また、「安全、安定、永続」の意味としてイザヤ書39章8節に使用されています。「彼は、自分が生きている間は、平和で安全だろう、と思ったからである。」それは変わることなく永遠に約束を守り続ける神のまこと、誠実さを意味します。

9 ― 恵みを千代も保つ

この言葉は、神が永遠の愛を与え続けることを意味します。神のあわれみといつくしみは決して終わりません。「千代も保ち」というのは、決して終わらないことの婉曲(えんきょく)的表現です。世界が続く限り、神は恵みを表されます。

10-12 ― 咎、そむき、罪を赦す

次の三つの属性の中に、神のすべての赦しが含まれます。

一番目の「咎と が」と訳されているヘブライ語は、故意に犯す罪を意味します。これは自分の願望のために罪を犯すことを意識的に決断し、それが罪であることを知っている人です。神は、それでも悔い改めるなら赦されると言われます。

二番目の「そむき」を表すヘブライ語は「反逆」を意味する言葉に関係しています。その罪がたとえ反逆の心から来る場合でも、神は悔い改める罪人を赦されます。これには、神への悪意をもって犯す罪という意味が含まれますが、それでも神は赦されます。

三番目の「罪」と訳されているヘブライ語は、過ち(不注意な罪)ですが、これも神は赦されます。

13 ― 罰すべきものは必ず罰して報いる

属性の最後は一つの句です。文字通り訳すなら、「神は洗い清め、神は洗い清めず」となるでしょう。神は愛、あわれみ、親切、いつくしみ、恵みの神であると同時に、正義の神でもあります。神は、悔い改めの心をもってくるすべての人を洗い清めてくださいます。しかし、悔い改めない人を洗い清めることはありません。

主に似た者となる

これら13の神の属性は、私たちの目指す目標でもあります。ガラテヤ人への手紙には御霊の実について書かれています。クリスチャンとして成長していくとき、その実が実っていきます。愛、寛容、誠実、親切など、同じ属性もあります。

13の神のあわれみの属性は、主の例祭のときにはいつもシナゴーグで祈られています。私たちは皆、この素晴らしい属性をもつ神を賛美します。神が私たちを、これほどまでに恵みとあわれみをもって取り扱ってくださるのと同じように、私たちも互いに助け合うことができるよう、神に祈ろうではありませんか。

「愛する者たち。私たちは、互いに愛し合いましょう。愛は神から出ているのです。愛のある者はみな神から生まれ、神を知っています。愛のない者に、神はわかりません。なぜなら神は愛だからです。」(Iヨハネ4:7-8)

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