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神の選び ~その代償~ -後編-

クリス・エデン/南アフリカ ナショナル・ディレクター

前号ではイスラエルの独自性と、歴史においてイスラエルを物理的に破壊しようとしてきた試みについて検証しました。今号では、それとは別の方法でイスラエルをなきものにしようとする企てと、神から与えられたイスラエル独自の召命について、再確認していきましょう。

イスラエルの独自性を取り去る企て

エゼキエル書11章12節では、諸国の中で、イスラエルが周辺国のようになってしまったことに対する裁きについて語られています。

「あなたがたは、わたしが主であることを知ろう。あなたがたが、わたしのおきてに従って歩まず、わたしの定めを守らず、あなたがたの回りにいる諸国の民のならわしに従ったからである。」

この裁きの理由は何でしょうか? 彼らを取り囲む国々との区別がつかなくなったことです。神への従順と不従順、信仰と不信仰、背信――、イスラエルの神に対する姿勢はこの繰り返しでした。そして、とうとう大切な神殿が異教徒によって汚されるというところにまで行き着きました。

ギリシャ人

アンティオコス4世の肖像が
刻まれたコイン

紀元前323年のアレクサンダー大王の死に続き、ギリシャ帝国は3つの主要国に分割されました。そして、「約束の地」はアンティオコス4世の配下となりました。彼は、自分自身をギリシャの神・ゼウスの生まれ変わりとし、自らに「エピファネス(神の顕現)」という意味の称号を冠したのです。

アンティオコス4世は、領土のヘレニズム化を強力に推進し、彼ら独自の礼拝形式を確立させていきました。

真にイスラエルの神を信じ従う人々はこのような行為に猛反発し、ヘレニズムの慣習に同調することを拒否しました。しかしアンティオコス4世は、安息日、割礼、コーシェル(ユダヤ教の食物規定)を守ること及びいけにえを捧げるなどの儀式に対する禁止令を発布しました。そして、ゼウス崇拝のために、コーシェルで清くないとされている動物を捧げ、神の神殿を汚したのです。

ユダヤ人は壊滅的危機に直面していました。そこで、祭司マタティアの下、マカビー一家が立ち上がりました(新共同訳『マカバイ記』)。イスラエル人は彼らに勝利を収め、ついに神殿を奪回しました。そしてトーラーを学び、ユダヤ人独自の習慣を守る環境を立て直し、神殿をユダヤ人社会における中心的役割に戻しました。

私たちクリスチャンにとって、マカビー一家の命を懸けた抵抗の結果は重要です。マカビー家が立ち上がらなかったら、約167年後に来臨するイエスの鍵となる要素、イスラエル民族と神殿が消えていたかもしれないのです。

アンティオコス4世は、ユダヤ人の存在を容認しましたが、イスラエルの神への礼拝に対しては寛容ではありませんでした。彼の目的はユダヤ人を他の人々と同化させること、その独自性を取り去ることでした。

現代の非難

現代においても、イスラエルを他国の民族のように変えようとする試みがあります。イスラエルはアパルトヘイト時代の南アフリカに例えられ、人種差別主義だと常に非難されています。しかし、民族としてのイスラエルに対するこの非難は、人種の構成に関することではありません。イスラエルのアラブ人(人口の20%)は、他の人種の人々と何ら変わりなく恩恵を受けています。また、ユダヤ人自身、聖書のことば通り世界の四隅から帰還しており、同じ民族であっても肌の色も違えば帰属していた国によって言葉も違います。このような背景により、イスラエル社会は人種的偏見のない世界であり、多様性を保っています。

イスラム政党ヒズボラ議長
ハッサン・ナスララ

レバノン戦争

2006年夏、イスラエルとテロ組織ヒズボラとの間に戦争が勃発しました。このレバノン戦争は、イスラエルが不当に非難された実例といえるでしょう。事の発端は何だったのでしょうか?ヒズボラの戦闘員がイスラエル統治境界線を越境し、イスラエル兵8人を殺害、2人を誘拐しました。そして、イスラエル住民センターにミサイルの雨を降らせたのです。しかし、世界のメディアも各国の政府も、ほぼ例外なく沈黙を保ちました。

ところが、ヒズボラの過度の武力行使と民間の住民センターへの爆撃に対し、イスラエル側の応戦が始まった途端に激しい非難が集中したのです。

置換神学

悲しいことに、イスラエルの独自性を奪う最も大きな試みはキリスト教国の中で行われました。教会がイスラエルに「取って換わった」とされたのです。 置換神学者らは新しいイスラエルとして教会を置き、神のさらなる計画の外にイスラエルを置き、イスラエルがイエスをメシアとして受け入れないことを強調したのです。

殉教者ユスティノス(紀元160年)は、「聖書はあなたがたのものではなく、私たちのものだ」と述べています。4世紀初頭、エウセビオスは、「ヘブライ語聖書の約束はすべてクリスチャンのためであって、ユダヤ人のものではない、呪いはユダヤ人のためのものである」と主張しています。その後の教会は、「ユダヤ人は邪悪な人種であり、永遠に神の呪いを受けている」(ポワティエのヒラリウス、紀元291.371年)、「ユダヤ人はへび、ユダの姿をした者、彼らの賛美と祈りはロバのいななき」(ヒエロニムス、紀元347.407年)と呼んで嘲笑し続けました。

このような神学を土台として、十字架の下にユダヤ人を「キリスト殺し」として迫害してきた歴史があります。十字軍はイスラムだけでなく、多くのユダヤ人も殺害しました。ナチスはカギ十字を掲げ、ユダヤ人をガス室に送ったのです。これらのことが十字架の名の下に行われたため、和解のシンボルである十字架が、ユダヤ人にとっては災いのシンボルとなってしまいました。

神は、約束の民イスラエルを退け、召命を取り去ったのでしょうか? 太陽、月、星、そして波も、日々この質問に答えています。

「主はこう仰せられる。主は太陽を与えて昼間の光とし、月と星を定めて夜の光とし、海をかき立てて波を騒がせる方、その名は万軍の主。『もし、これらの定めがわたしの前から取り去られるなら、――主の御告げ。 ――イスラエルの子孫も、絶え、いつまでもわたしの前で、一つの民をなすことはできない。』」 (エレミヤ31・35-36)

神のことばとご性質の接点

神の意図は、神の民の人生のうちにご自身の臨在を現すことです。ダビデは神を信じ、石でゴリヤテを倒しました。ギデオンは神の指示に従い、ミデヤン人を破りました。出エジプトの時、神はイスラエル人を守ると約束し、人々は毎日マナを受けました。神の誠実は、神がご自身を指して語られる通りの事実に現されています。

「神は人間ではなく、偽りを言うことがない。人の子ではなく、悔いることがない。神は言われたことを、なさらないだろうか。約束されたことを成し遂げられないだろうか。」(民数23・19)

イスラエルの土地の状態、人々の帰還、そして彼らの霊的状態のすべてがイスラエル民族には重要です。エゼキエル書36章で、神はこれらのことを細かく語っておられます。そしてその過程で、記された預言のことばが成就されなければならない本当の理由を強調しています。

それは、神の御名のために成されなければならないことであり、神の御名のために必ず実現することであると書かれています。損なわれた土地と人々は、物理的にも霊的にも分散しています。国々の中で神の御名が汚されたのです。その過程が修正され、回復されるとき、神の御名は回復します。

なぜこのみことばが重要なのか

「神の賜物と召命とは変わることがありません。」(ローマ11・29)

イスラエルの歴史は挑戦と苦しみに満ちています。これらの苦しみは、彼らの不従順によって引き起こされたこともありますが、そのほとんどは神の民として選ばれたことによって起こったものです。「地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」(創世12・3b)。この民族の子孫としてお生まれくださったひとり子の犠牲を通して、神の恵みが表されました。神は、諸国の民をその信仰によって、この選びの中に加えられました。使徒パウロはエペソとローマの教会へ宛てた手紙の中で、この深い恵みについて説明しています。

「そのころのあなたがたは、キリストから離れ、イスラエルの国から除外され、約束の契約については他国人であり、この世にあって望みもなく、神もない人たちでした。しかし、以前は遠く離れていたあなたがたも、今ではキリスト・イエスの中にあることにより、キリストの血によって近い者とされたのです。……こういうわけで、あなたがたは、もはや他国人でも寄留者でもなく、今は聖徒たちと同じ国民であり、神の家族なのです。」(エペソ2・12-13、19)

「もしも、枝の中のあるものが折られて、野生種のオリーブであるあなたがその枝に混じってつがれ、そしてオリーブの根の豊かな養分をともに受けているのだとしたら、あなたはその枝に対して誇ってはいけません。誇ったとしても、あなたが根をささえているのではなく、根があなたをささえているのです。」(ローマ11・17-18)

神はご自分の御名のために今立ち上がり、イスラエル民族に約束された預言を成就しておられます。また私たちクリスチャンも同じ木に接ぎ木され、同じ約束の中に入れられています。
私たちは神の家族になるという恩恵にあずかるだけでなく、選ばれた責任も同時に課せられています。

1996年、ノーベル賞受賞者で大司教のデズモンド・ツツは、パレスチナ当局の会議で挨拶をしました。彼の背後にはアラビア語で書かれた横断幕、「最初に、土曜の人々を殺す、それから日曜の人々を殺す」が掲げてありました。これは、まずユダヤ人、次にクリスチャンを全滅させるという意味です。これはただの脅しではありません。世界宣教の状況を国別に統計、報告している『オペレーションワールド』は、クリスチャンの活動に制限を加えている国が66カ国、キリスト教を迫害する政府の下に生きるクリスチャンは4億人以上と発表しています。また信頼できる情報では、毎年16万人以上のクリスチャンが信仰のゆえに命を落としているとされています。

イスラエルは人類救済の核となるという役割を終えていません。そのため、それを阻止しようとする悪しき攻撃の最前線に立たされています。私たちクリスチャンにも、今後多くの戦いが待ち受けています。それに対抗する力は祈りです。イスラエルそしてクリスチャンに与えられた独自の召命に従って固く立ち、祈り続けていく必要があります。祈りこそが、この戦いを最後の時まで耐えられるようにするためのものなのです。

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