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プロジェクトレポート

神の民を救出する ~21世紀の杉原千畝氏として~

TEXT. 高田 篤美(B.F.P.Japan局長)

帰還したユダヤ人を空港で出迎える人々、2005年
リトアニアを脱出するユダヤ人、1939年

日本のシンドラーと呼ばれる杉原千畝(ちうね)氏。彼が6千人のユダヤ人の命を救ってから70年の歳月が流れました。杉原夫妻、そして彼らの三人の子どもの内、お二人がすでに亡くなり、二つの世代が過ぎ去ろうとしています。しかしユダヤ人の杉原氏への感謝と報恩は、世代を超えて少しも色褪せていません。

杉原氏の恩を忘れるな

外交官時代の杉原氏
photo by Wikimedia

東日本大震災が起こるとすぐに、世界中のユダヤ人が立ち上がり、「今こそ、寝食を賭して通過ビザを発給し、リトアニアから6,000人ものユダヤ人を救ってくれた杉原夫妻の恩義に報いる時である。」と、日本への支援を呼び掛けました。どれほど多くのユダヤ人がその呼び掛けに応答したことでしょう。事実、今なおイスラエルから、そしてユダヤ人社会から、被災地への物心両面の支援が贈り続けられています。

杉原氏が託したバトン

ナチス・ヒトラーの手から逃れようとする人々のために杉原氏がリトアニアで発給したビザを皮切りに、多くの人々がまるでリレーのバトンをつなぐようにユダヤ人の救済にあたりました。ユダヤ人たちはリトアニアからシベリア鉄道でウラジオストックに到着しましたが、そこで足止めを食います。大挙して押し寄せる人々の波に驚いた日本当局が、ビザを再審議するようにとウラジオストック総領事代理・根井三郎氏に命じたためでした。根井氏はユダヤ人の窮状を理解し、「杉原氏のビザを退ける理由はない」として彼らの通過を許しました。もしこの時、根井氏の英断がなければ、杉原氏のビザは無に帰していたことでしょう。

ユダヤ難民にりんごを配る
ホーリネスの牧師たち

その後、日本に上陸した彼らを、両手を広げて受け入れたのが、当時のホーリネス教団のクリスチャンでした。第二次世界大戦時下、物資が不足し、自分たちも食うや食わずの状況の中で、精一杯の支援を行いました。

鼻を突くような異臭を放つ洋服を洗い、繕い、食べるものを提供し、できる限りのことをして彼らを助けました。さげすみと差別、そして命を狙われる恐怖の日々から命からがら逃げて来たユダヤ人にとって、クリスチャンから示された愛がどれほど深く心に染み渡ったことでしょう。そして何より彼らを驚かせたのは、

「今は本当に苦しいでしょう。辛いでしょう。でも、聖書には、必ずイスラエルが再建されること、そしてあなたたちがそこに集められることが書かれています。あなたたちは神さまの選びの民です。心を強く持ってください。私たちはそのために、ずっと祈っています」

というクリスチャンの言葉でした。ユダヤ人にとって歴史的に一番暗い闇の時代、東の果てに住む日本人の口から聖書の預言が語られたのです。これが彼らを奮い立たせ、異国の地へ再出発する力となりました。そして、JTBの前身の会社が渡航手配を行い、彼らはそれぞれアメリカや現在のイスラエル、そして上海へと逃げ延びていきました。こうして杉原氏が救った6千人の命は、今や何万人にも膨れ上がっています。

40年前、日本赤軍がイスラエルの空港で起こした乱射事件では、26人のイスラエル人が殺害されました。わずか40年前に起こったことです。まだこの傷を引きずっている人々も大勢いる中、彼らはこれを忘れ、70年前に受けた杉原氏の恩をいつまでも忘れない、これがイスラエル民族の長所の一つだと思います。

ユダヤ人の胸に刻まれる クリスチャンの愛

今年9月、イスラエルの国会議員ロネン・プロット氏が公用で日本を訪れ、私たちB.F.P.Japan(ブリッジス・フォー・ピース日本支部局)とも交流を持ちました。その時彼が、

ロネン・プロット氏

「日本へ来る前に、ウクライナのキエフにあるイスラエル大使館を訪問しました。その時、大使から『日本のクリスチャンの皆様へ心からお礼を申し上げます。あなた方は多くの同胞を救い、イスラエルへと帰還させるお手伝いをしてくださいました。あなた方がしてくださったことを、決して私たちは忘れません。ありがとうございました。』というメッセージを預かってきました。」

とおっしゃいました。彼は公の席でもまた個人的にも、何度かこの感謝を繰り返していました。恐らく、彼自身がロシアからの帰還経験者ということもあり、ユダヤ人を助ける日本人のクリスチャンに対して、思いがあふれてきたのだと思います。杉原氏の救出劇が彼らの心に今なお深く刻まれているように、クリスチャンの愛が、多くのユダヤ人の胸に刻まれていることが伝わってきました。現代において皆様がユダヤ人を救出していることは、当時杉原氏が行ったのと同じことなのだと心から思います。

狩人が来る前に

BFPが『救出作戦』をスタートして14年。加古川バプテスト教会の648人を筆頭に、全国の教会、そして皆様と共に、これまでに4万人以上のユダヤ人帰還を実現してきました。世界情勢が急速に変化する中で、ユダヤ人の居場所は少しずつ狭くなっています。イランやイラクなどのイスラム圏には命の危機があり、ユダヤ人はもう数えるほどしか残っていません。また、ヨーロッパでもイスラエル製品のボイコットやシナゴーク(ユダヤ人の会堂)の放火など、じりじりと反ユダヤ主義が台頭し始めています。ヨーロッパの経済が悪化の一途をたどっている姿は、ヒトラーが現れる前のドイツの様子に酷似しています。「その時」が来たなら、驚くほど早く反ユダヤ主義が進むことでしょう。その時が来る前に、私たちは一人でも多くのユダヤ人をイスラエルへ帰したいと思います。

ウクライナからイスラエル帰還を
果たしたユダヤ人家族、2010年

エレミヤ書16章16節には、「見よ。わたしは多くの漁夫をやって、―主の御告げ。―彼らをすなどらせる。その後、わたしは多くの狩人をやって、すべての山、すべての丘、岩の割れ目から彼らをかり出させる。」と預言されています。今は恵みの時です。なぜならクリスチャンという〝漁夫〟がユダヤ人を見つけ出し、助け出すことができる時期だからです。しかし間もなく〝狩人〟と呼ばれる人たちが活躍する時代が訪れます。狩人たちは岩の割れ目にいるユダヤ人さえ見逃さず狩り出すのです。

先日、B.F.P.Japan設立以来の支援者である福岡の牧師先生から突然連絡があり、「神さまから100人のユダヤ人を救い出しなさいと明確に示されましたので捧げます。」という連絡がありました。この先生は教会や学校の働きをできるだけ次世代に委ね、ご自分は一日の多くの時間を祈りの中で過ごされています。先生いわく、その祈りはまるで至聖所の中にどっぷりと漬かるようなもので、時には神さまの至聖所から出たくないほどの臨在があるそうです。そうした祈りの中で、神さまの声を聞かれたということに、私たちはハッとさせられました。主が時を急いでおられる、その時の迫りをお知らせくださっているのだとおそれ多い気持ちになりました。

かつての日本のクリスチャンが信仰によって影も形もなかったイスラエルの再建を信じたように、ユダヤ人が民族的に救われるときに訪れる霊的イスラエル(神の御国)の実現を信じて祈っていきたいと思います。昭和初期から受け継がれているイスラエルへの支援と祈りのバトンは、今私たちに受け継がれています。共にこの行程を走り抜き、主のゴールを切りたいと思います。

まことに主はこう仰せられる。「ヤコブのために喜び歌え。国々のかしらのために叫べ。告げ知らせ、賛美して、言え。『主よ。あなたの民を救ってください。イスラエルの残りの者を。』見よ。わたしは彼らを北の国から連れ出し、地の果てから彼らを集める。その中には目の見えない者も足のなえた者も、妊婦も産婦も共にいる。彼らは大集団をなして、ここに帰る。(エレミヤ31:7-8)

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