TEXT. レベッカ・J・ブリマー（BFP国際会長）
あなたがたが、これらのわたしの兄弟たち、しかも最も小さい者たちのひとりにしたのは、わたしにしたのです。（マタイ25:40）
キッズプログラムの始まり
イスラエルには、最低限必要な物を我が子に与えられない親が多く存在します。イスラエルでは、小・中学校の授業料は掛かりませんが、教科書、ノート、鉛筆、ペン、カバン、制服、遠足費、個人指導、課外活動、給食費…など、数え挙げれば切りが無いさまざまな必要があります。中流に属する家庭でさえ、子どもの教育費を重い負担に感じています。特に、子どもの多い家庭はなおさら厳しい状態に置かれています。
最近帰還した新移民を始めとする経済的に恵まれない家族にとって、子どもの教育にお金を掛けることなど、到底手の届かないぜいたくです。たくさんの子どもたちが本、ノート、お弁当を持たずに学校に来ます。彼らはきちんとした通学用のカバンを持っていません。遠足にも参加できません。最悪なのは、法律的に定められた年に達すると、学校を簡単に辞めることができてしまうということです。高等教育（日本の大学や短大に相当）に進むまでに、学校を去っていく生徒が年々増えています。貧困が多くの子どもたちの夢を押し潰し、将来の希望を持てない状況に追い込んでいます。子どもたちの秘める可能性を考えれば、これはイスラエル国にとって大きな損失です。
２００６年、ＢＦＰ（ブリッジス・フォー・ピース）は彼らの必要をわずかでも助けるために、「キッズプログラム」を立ち上げました。私たちは子どもたちに投資することに、大いなる意味を見出しています。現在では、ベイト・シェメシュとカーミエルの町にある８校に通う２５０人以上の子どもたちに、クリスチャンの里親が付いています。皆様のご支援の結果、子どもたちは皆、新しいカバンを受け取り、教科書、ノート、給食などが供給され、すべての遠足やキャンプに参加できるようになりました。
キッズプログラムの開始から６年が経った今、すばらしい変化が起こっています！うれしいことに、数年前まで将来に意味を見いだせずいた子どもたちが、今は将来に希望を持ち、クラスで上位の成績を取るに至っています。彼らはそれぞれ教師、医師、考古学者などになるという夢を描いています。ベイト・シェメシュの教師や校長は、このプログラムが生徒の生活、及び彼らの将来に大きな影響を与えていると、熱心に語ってくれました。
最近、ＢＦＰのボランティア二人がベイト・シェメシュのアダヤフ小学校を訪問しました。子どもたちに誕生日プレゼントを届けに行ったのです。その後、私たちはアダヤフ小学校の英語の教師から次のような手紙を受け取りました。
親愛なるＢＦＰのボランティアの皆さんへ
今年に入ってからＢＦＰの皆さんが何度もベイト・シェメシュに来てくださったこと、特にアダヤフ小学校を訪問してくださったことを感謝します。貴重なお時間を割いて訪問くださり、喜びと愛の詰まった贈り物を携えてきてくださったことを感謝します。
アダヤフ小学校を訪問したパメラ（後列左）とロレイン（後列中央）
ＢＦＰの皆さんの訪問そしてご支援が、子どもたちにどんなに大きな影響を与えているかを、ぜひ知っていただきたいと思います。アダヤフ小学校の子どもたちは、イスラエルの外の世界をほとんど知りません。自分たちの身の周りの小さな世界が彼らの知っているすべてです。子どもたちは日々生きるだけで精一杯です。病気、麻薬、暴力、そしてアルコールなど、家族の中に問題を抱えている子ども達がいます。このような家の子どもたちは誰からも関心を払ってもらえず、自分が無視されていると感じています。自尊心が養われないので、自信が持てず、日々葛藤しています。
先日、皆さんが子どもたちに誕生日プレゼントを持って来てくださった後の様子をお伝えします。外国語（英語）を話す知らない人が、時間を取って自分たちのところに来てくれたこと、一緒に遊んでくれたこと、彼らの知らない外の世界では何が起こっているかを話してくれたこと……そうした一つ一つが、傷ついた子どもたちの励ましとなりました。子どもたちの心が満たされ、やる気が与えられました。もしかすると生まれてはじめて、「自分は大切な存在なのだ」、「自分は大事にされているのだ。」という思いを持てたのかもしれません。
もちろんアダヤフ小学校の職員として、私たちは毎日子どもたちにこのメッセージを伝える努力をしています。しかし、教師ではない存在の人、彼らの会ったことのない人たちから、このメッセージがもたらされたとき、それは彼らにより説得力を持って迫ったのです。皆さんの捧げてくださる労苦、時間、忍耐、ベイト・シェメシュの子どもたちたちに与えてくださるご支援に対して、心の底から感謝することしか私にはできません。
自分に自信が持てず、否定的なイメージの中にうずくまっている子どもたちが、自尊心を取り戻す様子を見られるのは、何と素晴らしいことでしょうか。皆さんは子どもたちの人生を救ってくださっているのです。すべての支援者の皆様が、この子どもたちの変化を実際に見ることができたらどんなに素晴らしいことでしょう。心からの感謝を込めて。
パール・ペラー（英語教師）より
子どもたちの夢を守るために
明るい表情の子どもたち私たちはキッズプログラムを通して、このような多くの成果が表されていることを感謝しています。パール先生の手紙にあったような、子どもたちの内面の変化は、容易にそれと分かるものではありません。パール先生のように毎日子どもたちと接する先生だからこそ、見分けられる変化だと思います。たとえ、成績や目に見える成果になって現れていない場合でも、子どもたちへの支援は確実に子どもたちの心を変えています。誰かに愛されている、誰かが自分を大切に思ってくれている、という意識が、子どもたちに自尊心と自信を与えています。
現実を見れば、夢など見ることのできない環境に育つ子どもたちが、将来の展望を語るまでに変化しています。キッズプログラムが将来のイスラエルを支える子どもたちを助け、クリスチャンからの支援を受けた子どもたちがさらに和解の架け橋となってくれることを確信します。今はまだ支援できる地域も人数も限られていますが、主がこのプログラムを祝福してくださり、より多くの地域の子どもたちがキッズプログラムの支援を受けられますよう願っています。
キッズプログラムは一年間の継続支援ですが、一回の特別支援も大変感謝です。このようなご支援によってＢＦＰがそれぞれの学校にコンピューター室、電子黒板、電子工学教室、エアコンなど設備を備える支援をすることができています。皆様は一人の子どもの人生を変えてくださっているのです。さらにキッズプログラムのため、お祈りくだされば幸いです
