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プロジェクトレポート

晩年に祝う過ぎ越しの祭り

文:ピーター・ファスト(BFP国際会長・CEO)

イスラエルでは4月、ユダヤ教の三大祭りの一つ、過ぎ越しの祭りを迎えます。
人生の最晩年を過ごすホロコースト生存者が、
喜びをもってこの祭りを祝えるよう私たちは支援を続けています。

ホロコースト生存者の元を訪れ、愛を届けるBFPボランティアたち
Photo by McCoy Brown, Chloe Kaltoum/bridgesforpeace.com

エルサレムの狭いアパートの玄関先で戸枠につかまり、じっと立っていたハヤさん(仮名)。BFP(ブリッジス・フォー・ピース)の紺色のTシャツを見た瞬間、表情は一変し、多くの闇を見てきたその目に光が宿りました。

「また来てくれたのね」。涙を浮かべ、ハヤさんはささやきました。自分のことを覚え、大事に思ってくれる人がいる――それは、数週間分の食事以上に尊い贈り物でした。

少女時代にホロコーストを生き延びたハヤさんは、イスラエルで新たな人生と安全な避難場所を見つけ、結婚し、友人もでき、活動的な人生を謳歌(おうか)していました。しかし89歳を迎えた今、大切な人々が次々と亡くなり、ひっそりと一人で暮らしています。健康上の問題と年齢的な衰えから部屋に閉じこもり、孤独が付きまとう日々。「明日の朝、目覚めないほうが楽かもしれない」。そんな絶望的な思いが頭をよぎることも少なくありません。

「もう生きる気力がわかないの……」。かろうじて聞き取れる声でハヤさんは告げると、驚くほどの力強さでボランティアの手を握りました。「また来てもらえるかしら?」

その日、私たちはハヤさんのために祈りました。希望が絶望を打ち砕くように、私たちの存在を通して神の愛を感じられるように、そして、自らの人生に今も価値と目的があることを知ることができるように、と。

同時に、厳粛な事実にも気付かされました。私たちは、ハヤさんのような何千人もの人々にただ食料をお届けしているわけではない。希望そのものを届けているのだと――。

過去の残響

アウシュヴィッツ強制収容所の解放から80年以上。イスラエルで暮らすホロコースト生存者は約11万2千人となりました。その多くが貧困に苦しみ、言葉にならない恐怖の記憶に悩まされ、孤独な晩年と闘っています。毎月多くの生存者がこの世を去ります。それは、歴史の最も暗い章を体験した証言も失われていることを意味します。

地獄を耐え抜き、破壊された人生を再建するため祖先の地を選んだ尊い生存者たち。彼らに敬意を表する時間は、刻一刻と無くなりつつあるのです。

BFPは、尊い生存者たちをあらゆる方法で祝福しようと、この5年間で一つの約束を実行し続けてきました。それは、通常の食料支援に加え、エルサレムに住む1500人のホロコースト生存者が過ぎ越しの祭りを祝えるようお手伝いすることです。お一人おひとりが、この伝統的な意義深い祭りを尊厳と喜びをもって祝えるよう願っています。今年はこれまで以上に皆さんのご支援が必要です。

儀式用食事セット

過ぎ越しの祭りは、イスラエル人がエジプトの奴隷状態から解放されたことを記念する祭典です。ユダヤ教徒の家庭では、この出来事を象徴する食事をします。マッツァ(種無しパン)、ハロセット(奴隷だった古代イスラエル人がレンガづくりに使用した泥などを象徴する甘いディップ)、マロール(苦菜)を食し、4杯のブドウジュース(ワイン)を飲みながら、神の救いを語り継ぐのです。

これは分かち合いの祝祭です。家族で食卓を囲み、子どもたちは祭りに関する伝統的な四つの質問をし、古来より伝わる自由と感謝の歌が響き渡ります。

そんな祭りの時に、何も無いテーブルを前に一人ぽつんと座る姿を想像してみてください。愛する人たちが座っていた席は空っぽで、奴隷からの解放を祝いながらも記憶の中ではトラウマに捕らわれたままです。

形ある愛

BFPのボランティアたちは毎年、ホロコースト生存者へ届ける過ぎ越しの祭りの贈り物を何カ月も前から準備します。毎日の食事に必要な主食も用意し、次に祭りに欠かせない品々の準備です。ブドウジュース、マッツァ、ハロセットの材料、資金が許せばセデル(過ぎ越しの食事)用のお皿一式も詰めます。

しかし、本当の意味での奉仕は配達にあります。ほぼすべての訪問先で、BFPボランティアたちは中へ招き入れられます。生存者たちは「どうしても座ってほしい」と勧め、この日のために何日も掛けて精一杯用意した手づくりのクッキーやケーキを差し出します。そして一緒にお茶を飲みながら、数十年前に殺された親族の写真を見せて、美しい思い出や恐ろしい記憶を語るのです。時には私たちの子どもたちについて尋ね、その人生の節目を共に祝うこともあります。

何年も通い続けるうちに、私たちの姿を見ると彼らの顔がほころぶようになりました。今や家族も同然です。彼らの体験談、好物、笑顔や涙を誘う思い出を私たちは知っています。誕生日も忘れません。時には祈りを捧げ、ちょっとした自宅の修理もします。言葉にならない時は黙って寄り添い、孤独に押しつぶされそうな時は手を握ります。

ある生存者はこう打ち明けてくれました。「笑顔になれるのは、皆さんが訪問してくれた時だけよ」。別の女性は、世界中のクリスチャンが自分を気に掛け、ボランティアを派遣して愛を伝えてくれていることを知り、信仰と人生の最終章に対する見方が変わったといいます。

共に支える

ホロコースト生存者たちは、家族と引き裂かれ、飢えや拷問、想像を絶する喪失を味わいました。それでも彼らは生き延び、人生を立て直し、不屈の精神で耐え抜きました。晩年を迎えた今、私たちの支えを必要としています。

神は、弱い立場にある人々を支えるという特別な召しを私たちの心にお与えになりました。彼らを顧みることは「父である神の御前できよく汚れのない宗教」だと、ヤコブの手紙1章27節は宣言します。預言者イザヤは「慰めよ、慰めよ、わたしの民を」(40:1)という神の御心を告げ知らせました。

私たちはその呼び掛けに応える特権と神聖な責任を負っています。「イスラエルの必要のために」へのご支援は、ハヤさんのようなホロコースト生存者がこの祭り期間をただ生きるのではなく、祝うことを可能にします。皆さんのご支援によって、彼らは自分たちが忘れられることなく大切にされていること、そして世界中のクリスチャンが共にいることを知るのです。

ぜひ支援の輪に加わりませんか。多くの闇を見てきた人々のために、力を合わせて食卓を整え、彼らの最晩年に光をもたらしましょう。

尊い生存者たちと共に過ごす時間は、長くは残されていません。しかし、今であれば彼らの過ぎ越しの祭りを尊いものにすることができます。ぜひ惜しみないご支援をお願いいたします。クリスチャンの愛が本物であり、行動を伴うこと、彼らが祭りを一人で過ごさなくていいという確信を、彼らの心に、そして食卓に満たしましょう。

孤独な中で過ぎ越しの祭りを迎えるホロコースト生存者へのご支援は、「ホロコースト生存者のために」にお願いいたします。

※銀行またはゆうちょダイレクトからの送金の際は、必ずご連絡をお願いいたします。

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