プロジェクトレポート「一人の命を救うことは全世界を救うに等しい」

文：レベッカ・J・ブリマー（BFP国際会長）

BFPは創立以来、多くのユダヤ人を救出する恵みにあずかってきました。
たった一人であっても命を救うことの尊さとその影響力の大きさを思う時、心が震えます。

アウシュヴィッツを訪問するユダヤ人の若者たち
Photo by Kami Zuto/Pixabay

ユダヤの考えによると、一人の命を救うことは全世界を救うことに匹敵します。ホロコースト生存者であるベルテさんも、命を救われた一人です。私たちは、彼女から身の上をお聞きする機会がありました。ユダヤ史における暗黒時代とも言われるホロコーストにおいて、ベルテさんはナチスの手によって殺されようとしていました。そんな彼女を引き取って救い出したのは、未亡人であったクリスチャン女性と彼女の2人の子どもたちです。

写真を見せながら、当時について語るベルテさん

ベルテさんは今では孫やひ孫に囲まれ、総勢17人の大家族に恵まれています。彼女の話に耳を傾けながら、私はあることに気付き、ハッとしました。前出のクリスチャン女性が救い出したのは、ベルテさんという幼い少女一人だけではない。少なくとも17人を救い出したことになるのだ、と。

ウクライナ危機が発生してから約2カ月の間に、私たちは5千人近いユダヤ人を救い出すことができました。彼らは今、安全な地イスラエルにいます。救出活動は現在も継続中です。

ウクライナの住民たちは、プーチン大統領が命じた爆弾、銃弾、戦車を避け、ポーランド、ルーマニア、モルドバに次々と避難してきています。体は冷え切り、空腹とトラウマを抱えながら……。

避難してきた高齢者や女性、子どもたちは、恐ろしい光景を目の当たりにしてきました。埋葬されず道路に横たわる遺体、がれきの下に埋もれ、二度と姿を現すことのない人々……。ホロコーストをほうふつとさせるような大量の墓が、再び大地を覆っています。第二次世界大戦以来、ヨーロッパにおいてこれほど多くの絶望的な避難民を見たことはありません。

BFP（ブリッジス・フォー・ピース）の救出作戦チームは、手遅れになる前に一人でも多くの人を救出しようと、疲れ果てた体を休めることなく働き続けています。モルドバで救出活動に携わっているスタッフ、イゴールとアラは、2021年に93人のユダヤ人を救出しました。2022年の今年は、既に2117人もの人々を救い出しています。体力的には疲れを覚えていても、彼らが立ち止まることはありません。神が、絶望に打ちひしがれた人々を助けるための力を与え続けてくださっている、そう彼らは感じているそうです。

救出された避難民が無事にイスラエルに到着しても、私たちの活動はそこで終わりではありません。避難民にはあらゆる面で助けが必要です。世界中のクリスチャン支援者から寄せられる寛大なご支援のおかげで、私たちは彼らに生活必需品を提供することができます。食料はもちろんのこと、キッチン用品、タオル、毛布、子どもたちの通学用カバンなどです。

旧約聖書の預言者たちは、神が世界中からユダヤ人を祖国に連れ戻されることを告げました。エゼキエル書にはこうあります。「わたしは彼らを国々に引いて行かせたが、また彼らを彼らの地に集め、もう国々には一人も残さない。このとき彼らは、わたしが彼らの神、主であることを知る。わたしは二度と、わたしの顔を彼らから隠すことはない。わたしの霊をイスラエルの家の上に注ぐからである――神である主のことば」（エゼ39：28〜29）

私は、ウクライナから避難してきたユダヤ人が飛行機からイスラエルの地に降り立つ瞬間に立ち会いました。その光景を目の当たりにしながら、これこそ神の民に対する神の御心なのだと改めて思いました。神のパートナーとして働けることは、何という幸い、何という祝福でしょう。

イエスは、貧しいやもめが全財産に当たるレプタ銅貨2枚を献金箱へ入れた時、それを称賛しました（マル12：41〜44、ルカ21：1〜4）。この聖書箇所を読む時、「自分の献金は取るに足りない」と思われる方がいるかもしれません。しかし、イエスが語られたのは、そういう意味ではありません！　金額の大小に関係なく、皆さんのご支援は、神がイスラエルに対する約束を成就されるために用いられているのです。次の聖句に目を留めましょう。「あなたがこの王国に来たのは、もしかすると、このような時のためかもしれない」（エス4：14）。私たちは、助けを待ち望むすべての人を安全な地に連れ戻すまで、手を休めることはありません。

「帰還者支援」に寄せられる皆さんのご支援のおかげで、ユダヤ人を無事にイスラエルの地へ連れ戻すことが可能となっています。さらに、到着後の彼らに必要な物資と食料を提供することもできます。私たちは共にこの全世界を救っているのです。