プロジェクトレポート

戦争の痛み

TEXT.レベッカ・J・ブリマー(BFP国際会長)

今月はガザとやっと停戦に漕ぎ着けたイスラエルから、現地の生の声をお届けします。

地下トンネルから現れたテロリストを阻止しようとして犠牲となった予備役少佐(45歳)の妻子、葬儀にて ©Ashernet

ほぼ2カ月の間、イスラエルの町にロケット弾が降り注いでいました。これまで、ガザからイスラエル市民を狙って発射されたロケット弾は実に6000発を超え、子どもたちに深いトラウマを残しました。本来楽しいものであるはずの夏休み。今夏は、イスラエルの子どもたちは、外で遊ぶことができず、いつでもシェルターに駆け込めるよう活動を制限されていました。ガザ近郊の町では、警報発令からシェルターに逃げるまでたったの15秒しかありません。15秒のタイマーをセットして、その間にどれだけの距離を走れるか、試してみられたら、15秒がいかに短いかお分かりいただけると思います。優秀な長距離ランナーであったとしても、そう遠くまで逃げる時間がありません。ですから、多くの人がシェルターのすぐそばで生活するか、あるいはシェルターの中に住んでいました。特にお年を召した方は、走ることができません。子どもが複数いる家庭の場合、どの子の手をひいて逃げるか、瞬時に判断しなければなりません。この選択が親にとっていかに苦しいものであるか、容易に理解していただけると思います。それでも、イスラエルにはシェルターがあります。国が市民のためにシェルターを作っているからです。しかし、ガザを支配するハマスはガザ市民にシェルターを提供しません。それどころか、ハマスは故意に、ロケット弾の発射基地を市民の中に置きます。一般の家、学校、モスク、病院内から発射することでよりガザ市民の犠牲を増やし、国際社会の関心を得ようとしています。

ベングリオン空港近郊の町、ヤフードにて、
ハマスのロケット弾の直撃で大破した家 ©Ashernet

戦争による経済苦

イスラエルでは25%以上が貧困の中で暮らしています。平時さえ、彼らは自分の家族を食べさせていくために、苦悩します。戦争が起きれば、当然、その生活はより苦しくなります。シェルターのそばにいなければならないので、多くの人が仕事に行くことができません。戦争によって、受注していた仕事がキャンセルされることも多々あります。戦争中、BFP(ブリッジス・フォー・ピース)には追加食料の要請が殺到しました。皆様のご支援により、私たちはできる限りそのニーズに応えてきました。

イスラエル南部(ガザ近郊)の人々は、すでにロケット攻撃によって十分傷ついています。また、ハマスがイスラエル領内に向けてトンネルを掘り、テロリストを送り込んでくるため、テロ攻撃も心配しなければなりません。そのような懸念材料に日々悩まされている人々が、その上、明日の食事をも心配しなければならない状況を放置できるでしょうか。

ホロコースト生存者

つい先日のことですが、BFPフードバンクのドライバーであるジェイが、ホロコースト生存者の女性宅に食料を届けた時の話です。ジェイが、彼女の手に食料の入った袋を手渡した時、袋が破けてしまいました。小麦粉の袋が床に落ちて、中身が少しこぼれました。すると彼女は即座に残りの食料を脇に置き、注意深く、床に散乱した小麦粉をすくい集め出しました。ほんの一つまみの小麦粉さえ床に残さず、彼女はすべての小麦粉を集め切ったのでした。この話は私の心に深い痛みをもたらしました。

BFPのボランティアによる食料配達
Photo by D Williams BFP

また、戦下、アシュドットというガザ近郊の町へ食料を届けた時の話です。食料を受け取った住民が深い感謝を表した後で、このような話をしてくれました。「私たちの町ではたくさんの人が、ぎりぎり最低限で生活しています。その多くはホロコースト生存者です。そうでなければ、ロシア、ウクライナ、モルドバ、アゼルバイジャン、ウズベキスタンなどから来た新移民です。新移民たちは、イスラエルに溶け込むのに苦労しています。言葉、文化、年齢、病気……など、理由はさまざまで、例を挙げれば切りがありません。そんな彼らに助けの手が伸べられないなら、彼らはどん底の孤独に落ち込みます。そして、とても、とても貧しい日々を送ることになるのです!(強調筆者)」

手に負えない状況

ガザとの紛争下では、さまざまな場面に出くわしました。BFPのボランティアの一人が、次のような体験を語ってくれました。「私たちはアシュケロン(アシュドットと同じく、ロケット弾の射程圏内にある町)へ向かっていました。その朝、ロケット弾攻撃があったとニュースで聞いたのですが、幸いにも運転中は非常に静かな道中でした。ソーシャルワーカーと落ち合う予定のシェルターに着いて、食料を降ろそうとした時、ソーシャルワーカーの男性が慌てて駆け込んできました。彼は時間に遅れたことをわび、理由を説明してくれました。男性が出掛けようとしたとき、4人の子どもを持つ女性から、子どもに食べさせる食料が無いので自殺をするという切羽詰った電話を受けたというのです。彼は至急、カウンセラーをその女性宅に向かわせ、自分もBFPからの食料を持って女性に届けていたとのことでした。私はその絶望した4人の子どもを持つ女性について、四六時中考えてしまいます。途切れなく続くロケット攻撃に加えて、子どもたちに食べさせる食料が尽き、彼女がどんなに自分の手に負えない絶望感を味わっていただろうかと…。これから先も、私は彼女のために祈り続けます。」

何か食べたいと思って、冷蔵庫のドアを開けた時、そこには冷蔵庫のライトが光っているだけで、空っぽの棚だった時、その気持ちを想像できるでしょうか。

皆様は神さまの手です

私がこのレポートを書いている今、貧困者の状況は悪くなる一方です。彼らがシェルターから離れられずに過ごした一日一日は、彼らが家族を養うための稼ぎを得られない一日一日に直結しています。BFPの食料支援は、文字どおり、彼らの命を救う支援です。皆様にぜひ次のことを覚えていただきたいと切望しています。

  1. イスラエル南部の町々の住民のためにお祈りください。
  2. このたびの紛争について、一方的な報道しか知りえないお友達や周囲の方に、イスラエルが直面している事実をお伝えください。現実の情報はBFPのホームページや、日本ではオリーブライフなどを通して知ることができます。
  3. 与えることによって愛をお示しください。その愛が本当に違いを生み出すことができるからです。
フードバンクに集まる食料 Photo by D Williams

イスラエルに背を向ける人々が圧倒的多数となってきました。このような時、どうぞ神さまの手となり、食料の項目に寛大なご支援をお願い致します。またテロ被害者支援に捧げられたご支援は、戦争で愛する家族を失った、悲嘆に暮れている方々を慰めるために用いられます。皆様の愛とお祈り、そして経済的なご支援は、そのまま神さまのイスラエルへの愛の表れです。切迫した苦境の中にあるイスラエルの人々に、皆様の愛の手が伸ばされる時、人々はそこに神の愛を見ることができるのです。

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