ホーム > 祈る > ハイメール通信 登録・停止 > バックナンバー > ハイメール通信No. 109 オルメルト政権危機! ~ハルーツ参謀総長辞任~
昨年のレバノン戦争以来、きびしい批判にさらされてきたオルメルト政権。イスラエル国防軍の参謀総長が辞任し、状況はさらにきびしくなりました。今後だれが参謀総長になるかが政権の将来を語ることになります。
オルメルト首相が国営銀行民営化に伴い、賄賂を受け取ったとする刑事事件が発覚し捜査が行われています。
女性指導者たちがめざましく活躍しています。アメリカのライス国務長官が中東とヨーロッパを歴訪し、イスラエルとパレスチナ、アメリカの3者会談、並びにカルテット(国連、EU,アメリカ、ロシア)による中東和平会議が実現することになりました。
イスラエルのリブニ外相も中国に続いて日本を訪問。中東和平のビジョンを明確に語りました。中東に平穏が来るように今週、特に指導者たちを覚えて祈りましょう。
あなたがたの中に知恵の欠けた人がいるなら、その人は、だれにでも惜しげなく、とがめることなくお与えになる神に願いなさい。そうすればきっと与えられます。(ヤコブ1:5)
昨年のレバノン戦争で戦略不備を指摘されていたハルーツ参謀総長が16日夜、辞任を発表。翌17日ハイファで行われた海軍の記念式典で、正式に辞任を表明しました。ハルーツ参謀総長は、40年以上国防軍に忠誠を尽くした軍人です。辞任は国防軍へのさらなる忠誠のしるしとして決意したと語りました。
辞任を英雄視する声があがる一方、前参謀総長は、「リコールが出た6カ月前に辞任するべきだった」と厳しい評価を下しています。また、来月に控えたウィノグラード委員会(戦争責任を検証する委員会)の証人喚問から逃げたのではないかとの声も上がっています。
「戦略ビジョンのない参謀総長と防衛経験のない国防相。このペアが惨事を呼ぶ。特に首相が戦略家でない場合は・・・vハアレツ紙は、現職リーダーシップをこのように批判しています。
参謀総長は国防相と並んで国の防衛を担う重要なポジションです。今までの政権では、参謀総長が弱い場合は、国防相が強く、国防相が弱い場合は強い参謀総長がいてカバーされてきました。オルメルト政権では両方が弱いと評されています。また現ペレツ国防相がいつ更迭されかわからない状況でもあります。次期国防相は誰になるかを視野に入れつつ、確かな人材を参謀総長に選ばなければなりません。
この人事は、代々、政府の中で誰が一番影響力を持っているかを繁栄するバロメーターとなってきました。法律によれば、参謀総長を指名するのは国防相です。しかし、首相の方が強い指導力を発揮している場合は、実質的には首相の意見による任命となります。ハルーツ氏の指名は、シャロン前首相の意見が当時の国防相の意見を上回って決定したものでした。
現在の国防相はペレツ氏ですが、戦略への批判から労働党内部でも支持率が14%程度まで落ち込み、5月の労働党首選挙までもたない(更迭される)と言われています。オルメルト首相もまた、重要な汚職事件(*)が発覚し、国民の信頼は急激に下がっています。
ハルーツ氏の辞任で、ペレツ国防相、オルメルト首相も続いて辞任することを望むイスラエル人はペレツ氏85%、オルメルト氏65%となっています。(電話によるスミス世論調査・ヤフーNEWS)
*オルメルト首相の汚職・・・2005年、イスラエル最大の国営銀行バンクレウミの民営化が行われました。民営化に伴い、当時経済相だったオルメルト氏が、2人の実業家から賄賂を受け取って便宜をはかったという疑惑です。オンブズマンのマズーズ氏は、刑事訴訟の調査を開始しています。場合によってはオルメルト首相の権限が制限される可能性もあります。
ハルーツ氏の辞任が決まってまもなくペレツ国防相は、法律に従って次期参謀総長を選出するため様々な司令官たちとの面接を行っています。
個人としての条件は、イスラエル国防軍のトップとして卓越したリーダーシップの資質を備えていること。昨年のレバノン戦争の不備には関わっていない人物で、その教訓を十分にいかして改革を行える人物です。
しかし、オルメルト首相も同時に面接を行っており(本来は首相の仕事ではない)、両者の対立が浮き彫りになっています。現時点では、オルメルト首相は現副参謀総長のモシェ・カプリンスキー氏を、ペレツ国防相は国防相次官のガビ・アシュケナジー氏を推薦しており、両者の対立が浮き彫りになりました。オルメルト政権は、崩壊寸前でかろうじてもちこたえている状態だと言われています。
現在、国防軍は、指揮系統の乱れや、戦場における武器食料の補給不備など様々な課題を抱えています。新しい指導者の下で、改革が期待されています。
また、イランに対する防衛戦略が緊急課題となっています。現在イスラエルにとっての最大の脅威はイランです。イランはイスラエル全土をミサイルの射程に入れており、たとえ核兵器を使用しなくてもミサイル攻撃してくる可能性があります。イランはヒズボラやハマス、イスラム聖戦といったテロ組織を使って攻撃してくる可能性もあります。イラン対策は新参謀総長の大きな課題です。
参謀総長辞任の傍ら、イスラエル軍は、パラシュート部隊に新しく配属される兵士の任命式が、エルサレムの嘆きの前広場で行われました。兵士は、一人ずつ呼ばれ、聖書と銃を受け取って任務に就きます。六日戦争の時、はじめて嘆きの壁に到達したイスラエルの部隊がこの場所で叫びました。「神殿の丘が今我らの手に入った!」その感動を覚える時です。
http://www1.idf.il/DOVER/site/mainpage.asp?sl=EN&id=7&docid=60211.EN
アメリカのライス国務長官が1月、中東を歴訪しました。歴訪中に、イスラエル、パレスチナ、アメリカでの3者会談を1カ月以内に行うことを決めました。
その後イギリスに次いでドイツを訪問。17日の記者会見で、ライス国務長官は、3者会談に先立ち、カルテット(UN,EU、アメリカ、ロシア)を復活させ、4者会談を2月1~2日に開催することを明らかにしました。カルテットは、2003年に共同提案した「中東和平ロードマップ案」が頓挫して以来、会議を行っていませんでした。ライス国務長官はこの発表をドイツ訪問中にメルケル首相とともに行いました。メルケル首相も女性です。
イスラエルの対アラブ諸国輸出は12億ドルに上り、そのうち1.8億ドルはパレスチナ自治政府への輸出となっています。もし紛争下でこれだけの貿易があるとすれば、もしイスラエルとパレスチナが協力して観光業に取り組んだ場合、5~10年以内に年間17億ドルにもなると推測されています。
イスラエルのリブニ外相が中国に続いて日本を訪問(日本の外務省の招致による)し、阿部首相、麻生外相と会談しました。またリブニ外相はNHKのインタビューに応じ、中東和平のビジョンについて次のように語りました。
「イスラエルは、ユダヤ人の国イスラエル、パレスチナ人の国パレスチナとの二国家共存を望んでいます。そのためにはパレスチナ人がイスラエル人に対する攻撃をやめなければなりません。穏健派パレスチナ人とイスラエルには共通の目標があります。アッバス議長の能力、可能性をみながら、(穏健派の人々と)平和へのプロセスを一歩ずつ進めていきます。中東和平に魔法の鍵はありません。対話を通じて段階的に平和と安全が可能になると信じています。」と語りました。
リブニ外相はイランの核開発に懸念を表明し、日本政府に対イラン政策への協力を求めました。日本はイランからの石油輸入国であることから、経済制裁に消極的です。 現時点でイランは、ウラン濃縮用の遠心分離器3000基の設置を完了しています。
日本は、アメリカやEUに継ぐ強力なパレスチナの支援国です。(*)リブニ外相は、日本が地域の発展に重要な役割を果たしていると高く評価しました。また、北朝鮮に拉致されている人々の返還に関して、イスラエルにも拉致されている兵士があり、日本の立場を理解するとともに、イスラエルも日本の拉致被害者返還への努力に協力すると語りました。
日本はアメリカ、EUと並んでパレスチナへの最大支援国です。1993年にパレスチナ自治政府が発足してから昨年10月までに8億7000万ドル(1000億円)以上の支援を行いました。UNRWAなどの団体を通じての支援する他、医療支援などの直接支援も行っています。
2005年、日本はアッバス議長を日本に招致。ガザの民政安定化のために4970万ドル、アッバス議長の議長府再建や人材派遣などからなる「大統領府機能強化支援計画」(約148万ドル)など1億ドル相当の支援を約束しました。また、エリコをモデル地区として地域総合開発(母子保健、地域行財政、廃棄物処理・管理)の技術協力プロジェクトを実施中です。
日本は、一般のパレスチナ人草の根レベルにおいてもトップ・ドナーです。たとえば日本が建てた「エリコ病院」は、「日本病院」とも呼ばれ親しまれています。2004年にラマラに日本が建てたラマラ文化センターに通じる道路は、「東京通り」と名付けられていました。
昨年ハマスが与党となってからは、日本も支援を凍結していました。しかし2006年3月、パレスチナ側の貧困が緊急事態になったのを受けて、UNRWA(国連難民救済事業団)などを通じて600万ドルの食料援助を決定しました。
北部のメシアニック・ジューの女性たちが始めた売春女性へのミニストリー及びプロライフの働きが拡大しています。リーダーのリディアさんは、オルメルト首相も在席する国会で数回にわたって証言しました。結果ミニストリーが拡大し、今や全国の被害女性から連絡が入るようになりました。すでに医師などのボランティアがいますがさらなに奉仕する働き手が必用になっています。
イスラエルとパレスチナ自治政府の対話がはじまろうとしていますが、南部イスラエルでは、いまだにガザからのロケット攻撃に悩まされています。停戦合意にいたってからだけでも51発のカッサムロケットがスデロットなどに着弾しました。
パレスチナ側に拉致されたシャリートさんの返還にも前進が全くありません。
それにもかかわらず、オルメルト首相は、アッバス議長に、保留になっていた10億ドルの税返還金送金と、西岸地区におけるパレスチナ人の移動許可拡大の約束をしました。これでは停戦合意違反を奨励しているようなものだと批判が高まっています。
2005年にガザから撤退した人々のうち、再就職できた人は、民間の調査によると48%(政府は75%と発表)にとどまっています。支援がカットされ、健康への障害も指摘されています。ネエビー・デカリーム(ガザの一地区)のクリニックの調査によると撤退の1年前と1年後では、喘息の発作を起こす回数は50%増えました。心臓発作も増加しています。これらの障害はストレスからきていると考えられています。
政府は、昨年のレバノン戦争で被害にあった家屋建て直しに、1億ドルの資金投入を決めました。反面、ガザ撤退者のための家屋建設は約1年遅れており、さらに後回しにされたことで、仮説住宅に住んでいる人々は激怒しています。
イスラエルの国立児童評議会によると、1歳未満の乳幼児死亡(650人)のうち70人は「ゆすられ症候群・Shaken Baby Syndrome SBS」で亡くなっていることがわかりました。「ゆすられ症候群」とは泣きやまない乳児にいらだち、激しく揺すったために脳に障害をきたし、約1カ月後に食欲がなくなったり、けいれんをおこすなどの症状が現れて死亡するものです。人々の生活にストレスが増してきているものと考えられています。
ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど
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