ホーム > 祈る > ハイメール通信 登録・停止 > バックナンバー > ハイメール通信No. 88 スタート・ラインに立つ
イスラエルの総選挙でカディマが第一党になりました。来週、第17代国会が決定します。翌29日、パレスチナ自治政府にハマス主導内閣が、正式に発足しました。首相は、ハマス指導者のハニヤ氏。対イスラエル武装闘争は継続の方針です。閣僚20人のうち、14人はイスラエル刑務所を経験している強者たちです。オルメルト氏は、ハマス主導の政府とは交渉をしない方針です。両者は今までとは違う方向に向かって、新しいスタートを切りました。
エルサレムよ。
わたしはあなたの城壁の上に見張り人を置いた。
昼の間も、夜の間も、
彼らは決して黙っていてはならない。
主に覚えられている者たちよ。
黙りこんではならない。(イザヤ62:6)
3月28日、イスラエル国会の総選挙が、無事行われました。投票率は過去最低の63.2%。結果は、120議席中、カディマ29議席、労働党20議席、リクード12議席、シャス宗教党12議席、ロシア系右派のイスラエル・ベイティヌ11議席、今回、年金党が7議席と躍進し、注目されています。
カディマは最高44議席が予想されていたので、思わぬ低迷となりました。労働党、年金党など、非右派との連立への模索が始まっています。
40から12議席へと惨敗したリクード内部では、惨敗の原因はネタニヤフ氏にあるとして党首を解任させようとする動きがあります。ネタニヤフ氏は、党首辞任は否定しています。
通常ぎりぎりまで、方針を明らかにしなかったシャロン首相と違って、オルメルト氏は、自分の立場や方針を、常に明確にするのを好むと言われています。選挙前に、自らの方針「1.パレスチナ側との交渉はしないで、一方的な分離を進める。2.防護壁の完成を今年中に完成させる。3.西岸地区の入植地をさらに撤退させ、4年以内に国境線を策定する。」をすでに明確に表明しています。カディマが第一党となったことで、この政策が今後進められていくことになります。
オルメルト氏の方針の中で、最も繊細な問題は、西岸地区入植地からの撤退問題です。シャロン首相の下で、昨年撤退したガザ地区の入植者は8,500人でした。西岸地区には、24万人ほどが、240万人のパレスチナ人たちの間に点在しています。カディマの長老、シモン・ペレス氏は、実際に西岸地区の入植者を撤退させるのは、早くても1年後以降だと語っています。選挙結果から、120議席中61人の議員が西岸地区撤退に同意するものと予想されています。
カディマ党首のオルメルト氏は、来週中に組閣を形成します。外務相、国防相、大蔵相の主要3ポストはカディマから出したいところですが、獲得議席が少ないので、1ポストは他党に譲ると見られています。労働党は、社会保障の充実を掲げていることから、大蔵相のポストを要望しています。また、今回議席を伸ばしたシャス宗教党や年金党が加わるのではないかとも予想されています。イスラエル・ベイティヌ(イスラエル・我が家)やリクードなど右派政党は連立に入らないと見られています。カディマの、西岸地区のさらなる撤退の方針に反対しているからです。
オルメルト氏は、ハマス主導の政府とは交渉をしないとの立場を明確にしていますが、アッバス議長との交渉には前向きであることも表明しています。アメリカのブッシュ大統領は、組閣が終わったら訪米するようにとオルメルト氏に要請しています。
1月の総選挙でハマスが圧勝してから、組閣が進んでいなかったパレスチナ自治政府ですが、イスラエルの総選挙結果が出たのを受けて、29日、ハマス主導の内閣が正式に発足しました。
首相は、ハマス指導者のハニヤ氏。閣僚24人中、19人がハマスに所属しています。また、24人中、14人は6カ月~6年、イスラエルの刑務所を経験しています。(ハニヤ首相は3年)
発足式は、ガザの評議会で、コーラン(イスラム教教典)に誓いをする形で行われました。1人だけコプト教徒(エジプト土着のキリスト教)であったため、彼だけは聖書に誓いを立てました。ハニヤ首相を含む10人がガザ在住、14人が西岸地区在住です。ガザ在住のパレスチナ人が西岸地区へ移動することはできません。閣議はテレビモニターを通じて行われます。
ハマスは、対イスラエル武装闘争の継続を撤回しないままの政界入りとなりました。ハニヤ首相は、ハマスがイスラエルと交渉することはあり得ないが、アッバス議長は、パレスチナの最高指導者なので、彼のすることに反対はしないと語っています。また、イスラエルに責任があるといいながら、暴力の応酬はしたくないとの発言もありました。
しかしこの発言と同時に、ガザからはイスラエルに向かってのカチューシャロケットによる続いています。30日、2発のロケット弾が、近くのキブツに着弾しました。幸い犠牲者はありませんでしたが、イスラエル軍がガザにむけて報復攻撃に及んでいます。イスラエルは、ハニヤ首相の発言の真意を見守っています。
ハマスが政界入りしたことで、パレスチナ人への西側からの直接の支援はできなくなりました。アラブ諸国の支援なしには、間もなく経済破綻することとなります。アメリカを始めEUなどは、人道支援をどのように行っていくのか検討中です。
総選挙に向けて、イスラエル治安当局は少なくとも13件のテロ警告を受けていました。警戒体制は一時レベル4にまで上がっていました。22日、テルアビブからエルサレムへ向かう主要バイパス道路上の、ラトルンのジャンクションで、10人の男が乗ったワゴン車が治安部隊に追跡されました。あたかもハリウッド映画のような光景はテレビでも放映されました。ワゴン車は捕獲され、10人のテロリストは逮捕。エルサレムで使う予定だったとみられる15ポンドの爆弾を無事に応酬した。
ガザ地区でも、30キロの爆弾を所持して越境しようとしたパレスチナ人テロリスト2人が、イスラエル国防軍によって殺害されました。イスラム聖戦が活発に動いています。
31日、西岸地区、ナブルスの近くで、イスラエル人の車に乗り込んだテロリストが自爆。イスラエル人4人が議席になりました。犯人は、正統派などユダヤ人に紛争してヒッチハイクしていたものと見られています。アル・アクサ旅団が犯行声明。2005年以来の自爆テロとなりました。
ニュース情報源:ハアレツ、エルサレムポスト、イスラエル政府プレスセンター、イスラエルインサイダー、イスラエル外務省HP、CNN、NYタイムス 他
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