ホーム > 祈る > ハイメール通信 登録・停止 > バックナンバー > ハイメール通信No. 74 ガザ無政府状態
入植者の完全撤退に引き続き、9月12日、ガザで後処理に当たっていたイスラエル国防軍もすべてガザからの撤退を完了しました。国連ではシャロン首相の演説が温かく迎えられ、イスラエルの国際的な立場が改善されつつあります。
一方イスラエル軍が撤退した直後からガザは無政府状態となっています。パレスチナ人たちが旧ユダヤ人入植地になだれこみ、残っているシナゴーグを破壊、略奪しています。武器密輸も行われていると見られ、テロ活動再燃への懸念が現実化しています。とりなしの祈りがますます必要な状況になってきています。
私をひとみのように見守り、
御翼の影に私をかくまってください。
私を襲う悪者から。私を取り巻く貪欲な敵から。(詩篇17:8-9)
9月11日、ガザのイスラエル軍基地の国旗が下されました。兵士たちは互いに記念撮影し、撤退任務が迅速に、計画通り進んだことを喜び合いました。
これを期に、軍用車やブルドーザー、戦車が次々にガザを離れ、12日、最後の車両が出た後、ガザに続くキスフィーム検問所の門が閉じられました。ガザの司令官コハビ氏は次のようにコメントしました。
「今閉じられた扉は、隣人たちとの平和な関係の下に、もう一度開かれるようになることを希望する。しかし、もしここから悪い風が吹いてくるならば、イスラエルは力でそれを阻止することになる。」
国連では現在60周年記念総会が行われています。シャロン首相も9月15日演説を行いました。13日のイスラエル軍撤退完了を受けて、タカ派で有名なシャロン首相も今回は、諸国に温かく迎えられました。
シャロン首相はまず、イスラエルにユダヤ人が生きる権利が、パレスチナ人の権利を脅かすものではないこと、イスラエルがパレスチナ人たちを支配することを全く望んでいないことを強調しました。パレスチナ人も自由に自立した国家を持って生きる権利があると述べました。
シャロン首相の示した妥協の姿勢を、国際世論は高く評価しました。シャロン首相はこれに続いてまず、国連から非難されていた「防護壁」建設をイスラエルが進めることを認めるよう、懇願しました。また、パレスチナ人たちのイスラエル領内への「帰還」は認められないことも訴えました。
「ユダヤ人とアラブ人が平和に共存できることを信じています。しかしたった一つのことを言わせてください。イスラエル国家はユダヤ人の国として存在することに妥協するわけにはいかないのです。……」
この他、イランの核開発の脅威や、エルサレム問題に触れ、パレスチナ人たちと平和を維持するために、土地を譲歩していかなければならないことがどれほど心痛むことかを訴えました。
シャロン首相は、イスラエルがガザを撤退した今、パレスチナ人たちにテロを終わらせる責任があると言いました。もしテロが市民を脅かす場合は、ひとつの国家としてイスラエルは防衛する用意があるとも訴えました。
12日、イスラエル軍がガザから撤退を完了した直後から、ガザは無政府状態となり、混乱が続いています。武装グループはそれぞれの旗を掲げ、空中に銃を撃ち放ちました。残されていた、ユダヤ教のシナゴーグがまず焼き討ちにされ、略奪されました。
多くのパレスチナ人たちが無人となった旧ユダヤ人地区に無秩序に侵入し、行きめぐり略奪しました。人々は「神は偉大なり!」と叫びながら自由になったことを喜び合っていました。パレスチナ自治政府はイスラエル撤退後の秩序を維持することを約束していましたが、自治政府の努力が完全に無視された状況です。
ハマスはエジプトとの国境を越えて、エジプト側でも団体の緑の旗をひらめかせました。パレスチナ人たちが無秩序にエジプトへ出入りしました。エジプトの治安部隊が、人々が国境の壁を乗り越えてくるのを阻止することはありませんでした。武器輸入も行われているものと思われます。エジプトは人道支援の一環として、ガザ、エジプトの両側に住む家族が面会できるように、期限付きで一時国境を開放したと説明しています。
AP通信のインタビューで、ある武器ディーラーは、エジプトに大量のライフル銃、ピストル、自動小銃などを持ち込んだと答えています。イスラエル軍の撤退直後から、ガザでは武器価格が下落しています。ライフル一丁2000ドルが1300ドルに、小銃弾は、4ドル程度であったものが1ドル以下の3シェケルとなっています。ガザとエジプトの行き来が自由になれば、武器も無秩序に入り込むことは止められません。イスラエルは国境警備の混乱を厳しく非難しています。
パレスチナ市民が無秩序に国境を超え、旧ユダヤ人地区に入り込んでいることに対処するため、アルアクサ殉教団の武装兵士(PLOに関係するテロ組織)が団体のユニフォームをつけたままの姿で、旧ユダヤ人地区に独自のチェックポイントを設けはじめました。本来パレスチナ自治政府警察が行うべき仕事です。この時、入植地侵入を防ぐために配置されていた自治警察官は12人に過ぎず、武器を持たない者もありました。
無秩序な混乱の中で、ユダヤ人たちが作った高技術のグリーンハウスが使用不能になる可能性も懸念されています。グリーンハウスは、アメリカなどの篤志家らが使える状態のままユダヤ人から買い取り、パレスチナ人に引き渡されていました。
ガザからイスラエル軍が撤退したことで、イスラエルとパレスチナの国境の最前線になってしまったイスラエルの町々があります。ガザ近郊のスデロットや、ネゲブの町々、アシュケロンなどです。
けが人はでていませんが、すでにロケッド弾が飛来したところもあります。
現地イスラエルのユダヤ人教会などから祈りの要請が来ています。イスラエル南部の町アラドでは、イエスを信じるユダヤ人たちが、物理的な迫害を受けています。宗教派のユダヤ人たちが信者宅前での数百人規模のデモなどを行っています。
ニュース情報源:ハアレツ、エルサレムポスト、イスラエル政府プレスセンター、イスラエルインサイダー、イスラエル外務省HP、CNN:HP他
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