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ハイメール通信No. 69 決断の時

ガザ撤退まであと一月余りとなりました。入植者家族に決断の時が来ています。政府の援助を受けて引越しするのか、援助を断って最後までとどまるチャンスに賭けるのか。撤退させる兵士や警察官にとっても決断の時です。任務を受けるのか拒否するのか。いずれを選択しても心の傷は残ることでしょう。

これはシャロン首相にとっても同じです。迷っている人が確信をもって決断をすることができるように、イスラエル人同士の衝突が起こらないように祈りましょう。

心を尽くして主により頼め。
自分の悟りにたよるな。
あなたの行く所どこにおいても、主を認めよ。
そうすれば、主はあなたの道をまっすぐにされる。(箴言3:5-6)



■ シャロン首相演説「撤退を決めた理由」

正念場を迎えた6月30日、シャロン首相がカイザリヤ・カンファレンスの演説の中で撤退に対する思いを語りました。首相の意図するところ、撤退者を思う心が語られています。(抜粋)

「私たちは変化の時代を迎えています。世界全体が私たちの目の前で変わりつつあります。世界経済は今転換期にあります。イラクとレバノンに見られるように中東情勢も大きく動いています。イスラエルにとっても大きな転換期です。私たちが自ら変革しているものもあります。現状がイスラエルの益になっていないからです。

……首相執務室に着任し、第一日目から、「現状維持」に満足してはならないことを私は確信していました。現状維持にとどまり、危機回避の指示を出すためだけの目的で、首相に選ばれたとは思っていません。私はイスラエルの現状を改善するためにあらゆる分野で改革を行っていく責任を受けたのです。

優先順位の決断

……最も大きな改革は分離政策の実行です。私たちは先手を打たなければなりませんでした。先手に回るのか後手に回るのか、状況が私たちに選択を迫っていました。私たちは先手に回ることを決断しました。まず何を優先するのかを決断しました。

私たちはガザ地区から撤退します。ガザではユダヤ人人口が多数派になることはあり得ないからです。少数派ではユダヤ人の町にはなれません。小数派のままでは例え(パレスチナ側と)いかなる合意に至ったとしても、ガザはイスラエル国家の一部にはなり得ないのです。私たちはユダヤ人の存在が明らかな地域-ガリラヤ周辺、ネゲブ、広域エルサレム、(西岸地区)入植者ブロック、治安維持区域などにもっと力を注ぐことができるようになります。

……私は分離政策がイスラエルの現状を抜本的に改善する最高の手段であると信じています。……自信を持って言います。分離政策はいかなるシナリオにおいてもイスラエルを有利にします。7週間後に設定された日時にガザ撤退は必ず決行します。

平和への鍵がパレスチナ側に

……分離政策にはパレスチナ側にテロを中止させる大きな可能性があります。パレスチナ人たちは今、初めて自ら選択するところに立たされています。何かを建て上げていくのか、破壊を続けるのか? 自ら改革できるのか、それとも憎しみと扇動に飲まれて、自らの市民を貧困と困難へと導き続けるのか。今、チャンスが彼らに与えられています。逃すとしたら残念なことです。

……パレスチナ社会には正しい道を行こうとする指導者もいます。分離政策は彼らの働きを助けます。分離政策によって彼らが本当に(パレスチナ社会を)導けるのか、交渉の相手になり得るのかが分かります。

もしパレスチナ側が再びテロと戦争の道を選ぶならば、分離政策をとっていることによってイスラエルはテロにもっと効果的に対処することができるようになります。(テロ組織へのより強力な攻撃を正当化できる)

国際社会の意識を変える

……テロの目的は、イスラエルに対する国際社会の態度を硬化させることです。分離政策はイスラエルを優位に立たせます。(分離政策により)国際社会は、イスラエルが痛みに耐えてでも負わなければならない責任は果たしたと認めるようになりました。次は、パレスチナ人たちが扇動などを止め、必要な法律を定めてテロ組織を解体すること、イスラエルを破壊することではなく、パレスチナ人自身の社会を改善していくことに焦点を当てることを期待するようになります。

……しかし、最大の利益はアメリカが次の2点においてイスラエルに合意したことです。
1.イスラエル領内の入植者ブロックは守る。
2.パレスチナ人難民がイスラエル国内へ入らないようにする
(アッバス議長は難民がイスラエル国内への「帰還」を求めています)。

両者ともイスラエルの存亡にとって大変重要な項目です。

痛みを担う人々へ

……もちろん、変革によって直接痛みを受ける人々がいます。ガザ・サマリヤ地区に前から住んでいた人々です。すばらしい人々、イスラエル社会の中でも最高の人々と言えます。私は彼らの痛みを感じます。彼らが反対することに敬意を払います。私は彼らを愛しています。彼らが私個人に向けて痛みと抗議の声を上げるときでも、私は彼らを愛しています。

しかし、どんなに痛みを理解したとしても改革を止めることはできません。イスラエル全体の運命が掛かっているのです。イスラエルを建て上げるためにガザから撤退しなければなりません。

現在、すべての撤退対象者の必要が満たされるよう、大変な努力がなされています。経済的な補償問題、住居の提供、アパートの賃貸、定着のための土地、農業を再開するための土地などです。解決は、それを望む人々には用意されています。

……私は、撤退対象者と(撤退反対者の中の一部の)過激なグループが同じであるとは思っていません。彼らはユダヤ人とアラブ人に暴力を加え、イスラム教徒を侮辱し、イスラエル社会の努力を粉々にしようとしています……それはユダヤ教の教えではありません。入植者当事者の望むことではありません。イスラエル政府の方針ではありません。

……私たちは痛みを伴う大変な困難な時を迎えています。これは産みの苦しみです。共に堅く立ちましょう。経済が繁栄し、健全で文化的な国を建て上げましょう。なによりも安全と平和、平穏な将来を築きましょう。神の助けで私たちはきっと成し遂げることができます。

カイザリヤ・カンファレンス Israel Democracy Institute Conference on Economic Policy
原文:Israel Ministry of Foreign Affairs Full story


■ 二つの選択

1.撤退を決めた人々

西岸地区のガニームとカドゥミームではすでに撤退が始まっています。町の掲示板には空き家や空き部屋の宣伝、引越し会社の案内などがひしめき合っています。ガニームのほとんどの人々はすでに撤退しました。現在残っている人々もほとんどが2週間以内に移動する予定です。多くの人がガニームから10分以内のアフラの新居に引っ越しました。近いので仕事も学校も代わる必要がありません。

しかし今では、家の価格が高騰し、アフラに新居を求めるのは難しくなりました。政府からの補償は現時点では75%しか支払われていません。ペレツさん一家は、アフラの代わりにニツァニム地区への移動を申し込んでいますが、政府からの返事が来ていません。7月半ばには6家族がガニームに残るのみになります。ペレツさんは、仕事で外出中、人気のなくなったガニームで一人留守をまもる妻が心配だと言っています。

ミュルキンさん一家は7月2日、カドゥミームからギルボア山ふもとのガン・ニールに引っ越しました。一家は10年前に旧ソ連から移民してきました。また一からのやり直しです。カドゥミュームでは7月1日、お別れパーティが開かれました。すでに撤退した50家族も出席しました。翌日、引越しのトラックが次々にやってきました。トラックを見た瞬間、大人も子供も涙を流しました。もうここに二度と帰ってくることはないと思い知らされたからです。

補償問題

「セラ」はイスラエル政府の分離政策対策室です。室長はヨナタン・バシ氏。補償金支払いが遅れている件で、バシ氏が国会に提示したところでは、来週から補償委員会を五つから10に増やして対応することになりました。補償金は申請から60日以内に支払われる予定です。

現時点で396家族が申請しており、毎日20-30家族からの申請があります。早期に申請した人にはすでに満額が支払われています。

問題となるのは家屋の価値査定です。古い家ほど安く見積もられる傾向にあり、長期間住んでいた家族の方が短期間の家族より補償が少ないといった不条理もあり、対策が求められています。いずれにしても、申請をしない人には補償金は下りません。

政府の住宅対策

政府はガザ地区、並びに西岸地区の4地区の撤退対象者に対して、最終的な準備を行っています。住居の不足が出ないよう、住宅省は新たに1500家屋と、ネゲブ地方の賃貸住宅の確保を指示しました。賃貸アパートは、8月いっぱいまで、政府が家賃を払って確保します。最後まで撤退を拒否し、政府の補償を全く受けていない人が強制的撤去になった場合の住居に充てられます。

このほか、現時点で準備されているのは530のトレーラー(キャンピングカーの類?最も高価)、850のアパート、130の家屋です。アパートはアシュケロン、アシュドッド、ベエルシェバなどにあります。アパートの大きさや築、環境はさまざまです。住宅対策室長のアミギュール氏は必然的に早い者勝ちになる、と話しています。(エルサレム・ポスト、ハアレツ)

ガザ地区には1,674家族がいます。ガザ沿岸議会は、80%の家族が一緒に移動することを希望しています。バシ氏は、グッシュ・カチーフ最大のデカリームの住民は全員ニツァンに移動できると言っています。住宅省は400家族が一緒に移動できるように、アシュケロン北部のゴルフコースを買い取りました。

2.撤退しないと決めている人々

6月27日、ガザの入植地グッシュ・カチーフで、住民とイスラエル国防軍(IDF)兵士との衝突がありました。IDFはグッシュ・カチーフ海岸沿いで空き家になっていた11軒を、ブルドーザーで破壊しました。これに反対する住民と右派の若者たちがブルドーザーの前に寝転んだり、よじ登って兵士を妨害をしたりしました。紛争はエスカレートし、14人が負傷、3人が逮捕されました。

また、グッシュ・カチーフでは、6月24日からデカリーム地区のホテルに30家族が立てこもりました。これらの反対派の行動は徐々に過激になりつつあり、近隣のアラブ人たちに発砲し、4人を負傷させたことから、IDFはホテルの掃討作戦を計画していました。

しかしこの計画が事前にもれ、600人の人々がホテル前に集結する騒ぎとなりました。掃討作戦は中止されましたが、30日、IDFと国境警備隊によって立てこもっていた150-200人は引きずり出されました。中には10代の少女らも含まれていました。同じく30日にはイスラエル中の道路上で座り込みデモが行われ、警察官5人が負傷、147人が逮捕されています。

3.IDF兵士らの選択

上記6月27日の空き家破壊の任務を受けた19歳の兵士アビさんは、「良心的兵役拒否」を決意した一人です。アビさんは任務の内容を聞かされずに現地へ派遣されました。現地で同胞たちが殴られているのを見てショックを受け、任務を遂行することができなかったのです。アビさんは、兵役拒否で収監されても後悔はないと話しています(アビさんはこの後、軍法会議にかけられました。)

兵役20年を超える司令官のマイクさんは、賛成はできないが、任務であれば遂行しなければならない、と話しています。IDF陸軍の主任心理学者であるツール少佐は、マスコミが扇動しているような現場での兵役拒否は少ないと見ています。IDFでは、任務にあたる兵士や警察官のために心理的準備を行っています。小グループに分かれて予想される困難を話し合ったり、司令官たちにはビデオを使ったりセミナーが行われたりしています。(ハアレツ)

<祈り>

  1. それぞれの家庭・IDF兵士たちの決断の上に主のお導きがあるように。
  2. 補償、住宅問題に主の助けと備えがあるように。
  3. シャロン首相の身の安全、心身の健康とさらなる知恵と判断力のために。

■ 苦難のアッバス議長

ハマスがガザ、西岸地区で政治的勢力を伸ばしていることを受けて、アッバス議長はハマスのメンバーを、自治政府閣僚に入って共に政治を担うよう打診しました。ハマスはこれを拒否しました。イスラエルが撤退後のガザの管理について、パレスチナ自治政府(PA)の一部としてではなく、パレスチナ人団体すべてが関与する委員会がならば、ハマスも同席はすると言っています。

ガザの地方ニュース番組にハマス高官であるマフムード・アル・ザハル氏が答えました。「(イスラエル)撤退後の管理についてハマスはPAの一部になるつもりはない。息子たちの命、多くの指導者の命をもって「ガザの解放」を勝ちとったのはハマスである。この成果をPAが盗むことは赦さない。

PAはハマスはじめパレスチナ諸団体を無視してガザの管理を決めることはできない。ハマスは武装解除はしない。ガザからの砲撃やロケット攻撃は継続させる。ガザ、西岸地区、エルサレムは地理的にもひとつである。西岸地区が攻撃されたらハマスは黙っていない。ガザに「占領」が戻ってくるかもしれないからだ。*ザハル氏はアッバス議長個人を「信用できない人物」と呼んでいます。

この過激な発言を緩和しようとしたハマス高官もいます。パレスチナ人民の間で内戦がおこるのはないかと懸念したからです。ラマラ在住のイスラム教指導者でハマス高官のハサン・ユスフ氏はザハル氏はPA並びにアッバス議長に関して個人の意見を述べたと発言しました。

<祈り>

  1. 撤退後、ガザで過激派が主導権をとらないように。
    平和のための管理体制ができるように。
  2. 一般のパレスチナ人たちのうちに暴力に対する嫌悪感を増し加えてください。
  3. ハマス内部での不一致と分裂で内部より解体が進むように。

■ イスラエルも民営化?

日本ではわずか5票差という薄氷な結果で郵政民営化法案が可決されました。シャロン首相も着任以来、さまざまな構造改革と民営化を進めています。現在までにエルアル・イスラエル航空、ツィム(輸送関係)、ベゼク(電話)、イスラエル銀行が民営化されました。6月末、レウミ銀行(有力銀行)も売り出す決定がなされました。民営化により財政赤字削減を期待しています。

シャロン首相は、そのほか水道、港湾(ベン・グリオン空港が新しくなりました)、銀行や市場、年金、ガスなどエネルギー資源におけるシステムの改革、外国人労働者を減らして雇用の拡大に取り組んでいます。最も力と予算を注いでいるのが、教育における改革です。

<祈り>

  1. イスラエルでなされた改革からよい結果が生まれてくるように。
  2. 小泉首相が日本にとって最善の決断をしていくように。

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