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ハイメール通信No. 255 いよいよパレスチナ国家? ―9月国連で採択―

9月、国連がパレスチナ国家を承認する可能性が本格的となってきました。それを視野にパレスチナ自治政府ファタハと和解したハマス。エジプトのムスリム同胞団が勢力を安定させてきていることを受けて、拠点をシリアのダマスカスからエジプトのカイロに移すことになりました。ガザとエジプトの間ラファ国境が開放され、いよいよハマスが動きはじめているようです。

5月15日、北部レバノンとの国境から侵入したデモ隊。そのほとんどがシリア人でした。6月5日にも数百人のデモ隊がゴラン高原に侵入しようとして国防軍と衝突しました。シリア政府は23人死亡と伝えています。オサマ・ビン・ラディンが殺害された後のアルカイダ。福島第一原発が狙われるのではないかとの分析をする専門家があります。中東は今動いていますが、イスラエルでは専門家ですら、予想がつかず、何かが起こってから対処するしかないと言われています。現状報告に頼らず、聖霊の導きにそって教えられながらとりなすことが必要です。

しかし、愛する人たち。あなたがたは、この一事を見落としてはいけません。すなわち、主の御前では、一日は千年のようであり、千年は一日のようです。
主は、ある人たちがおそいと思っているように、その約束のことを遅らせておられるのではありません。かえって、あなたがたに対して忍耐深くあられるのであって、ひとりでも滅びることを望まず、すべての人が悔い改めに進むことを望んでおられるのです。(Ⅱペテロ3:8-9)



■ 9月、国連でパレスチナ国家承認か

パレスチナ国家の設立に向けた動きが本格化しています。9月に安全保障理事会と国連総会での投票が行われ、可決された場合は、パレスチナ国家の誕生となります。これまでにも何度かこのような話はありましたが、実現するには至りませんでした。しかし今回は、ロシアを始め多くの国々が、この案を承認するとみられ、たとえ安全保障理事会で、アメリカが拒否権を発動したとしても、実現が避けられないという見通しです。

パレスチナ国家が立つ場合、国境が必要になりますが、それは現時点では、1967年ライン、つまりはイスラエル独立戦争後の1949年に策定された国境線を基準にとされています。エルサレムの旧市街の一部をはじめ、マアレイ・アドミムなどイスラエルが開拓してきた多くの入植地を失うことになります。実際には、1967年ラインよりパレスチナ側にある入植地を動かすことは不可能であるため、その部分の土地と別土地とを交換する方策などが検討されています。
ネタニヤフ首相は、この問題について、アメリカの上院下院で発言する機会が与えられました。首相は「イスラエルは痛みを覚悟の上でパレスチナ自治政府との交渉をする用意がある。だが、1967年ラインを受け入れることはできない。」と明言しました。この演説の後、イスラエル国内ではネタニヤフ首相の支持率は13%上昇しましたが、一方で左派が、反対デモを行うなど、世論は分かれています。


■ ハマスとファタハの和解とその背景

上記のような国際情勢を受けて、ガザのハマスと西岸地区のファタハ(アッバス議長)が先月、和解を表明しました。ハマスは、パレスチナ人の団体ですが、エジプトのムスリム同胞団から出てきており、同じパレスチナ人でもPLO(故アラファト議長)から出たファタハとは絶対に一つになりえない組織です。従ってこの和解は、今年9月までの「一時的な結婚」ではないかと言われています。アッバス議長にとっては、パレスチナ人同士で相争っていたのでは国家承認への大きな障害になります。

またハマスにしても、もし本当にパレスチナ国家建設が成功するならば、現時点では国際社会から唯一の交渉相手と目されているアッバス議長と和解しておき、西岸地区での足がかりを残しておくことが有利なことになります。

イスラエル首相府のアラブメディアへのスポークスマンは、ハマスがガザと同様に西岸地区を制覇するのは時間の問題と語りました。理由は現在パレスチナ自治政府を運営しているファタハの指導者たちの年齢です。アッバス議長始めエレカット氏、ファイヤド首相にしても皆80才近い高齢者です。次世代は育っていません。従って、パレスチナ国家がアッバス議長をリーダーとして承認されても、近い将来自然にハマスが権力の座にとってかわるしかないのです。

さらにハマスは、ガザで捕虜となっているシャリートさんの釈放条件として、イスラエルで収監されているハマスメンバー450 人を、ガザ地区ではなく、西岸地区へ釈放するよう要請しています。これを見てもわかるように、ハマスが西岸地区での勢力拡大をもくろんでいることは明らかです。イスラエル政府としては、シャリートさんをなんとか取り戻したいものの、他のイスラエル人の安全を考えれば、このハマスの要請は、容易にのみこめない条件なのです。


■ エジプトがハマスを後押し

今年1月末に始まったエジプトの民主化運動で、ムバラク政権が倒れたエジプトですが、9月の選挙までという条件で現在は、軍によって政治と治安維持が保たれています。民主化運動から、結果的にどんな政府が出てくるのか、イスラエルは注意深くゆくえを見守ってきました。
しかしやはり、ムスリム同胞団(ハマスの母体)の台頭は避けられず、エジプトが急進的なイスラム主義に傾きつつあると分析されています。

1月に民主化運動を始めた純粋な若者たちには、政党を結成し政治を運営していく基盤がありません。逆にムスリム同胞団は、ムバラク政権が勢力をのばさないように戦ってきたにもかかわらず、現在エジプトでは最も組織的に整えられた団体です。ムスリム同胞団は自爆テロ推進などの汚名で国際的な批判を受けているため、対外的には、大統領選に出馬しないと言ってはいます。しかし、実際は「自由と正義」という新党の形で、政権参与しています。この党はイランとの友好関係を打ち出しており、その影響として、数ヶ月前、イラン船籍がスエズ運河を通過して地中海に入る許可をエジプトが出したことは記憶に新しいところです。

<エジプトとガザの国境解放>

5月29 日、エジプトはガザとの国境ラファを解放しました。 今後ガザの人々が自由にエジプトに行くことができるようになります。初日は450 人が国境を過してエジプトに入りました。これまでトンネルを通ってガザに密輸されていた物資は武器以外、自由に運び込むことができるようになります。

2005 年、この国境は、エジプト軍とEU が監視する(イスラエルはカメラによる映像で遠隔から監視)という条件で解放されたことがあります。しかし、武器が運び込まれるなどの違反が見られたため、エジプト政府がすぐに閉鎖していました。今エジプトが解放するのは、この時の定めに違反することになります。

*昨年トルコからガザへ物資を運ぶ船団フロティーラとイスラエル軍が衝突し、トルコ人7人が死亡しました。現在新たなフロティーラが再度ガザへ向かっています。今では国境が開放され、物資の行き来が自由になったにもかかわらず、物資搬入の目的でガザへ向かっているということです。

<ハマスの拠点シリアからエジプトへ>

ハマスの拠点はシリアのダマスカスにありました。ところが現在、シリアで民主化反アサド政権デモが深刻化する中、デモの暴力化にムスリム同胞団が関わっていることがわかりました。これまでアサド政権はハマスの拠点を首都ダマスカスに置いて擁護してきたのですが、これでシリアとハマスの関係が悪化してしまいました。ハマスは最初、カタールなどに拠点の移転を考えていたようですが、エジプトがカイロにハマスのオフィスを置くことを許可したということです。今後エジプトでムスリム同胞団が勢力を伸ばすのに比例してハマスも勢力をのばしてくる可能性が高まっています。


■ ナクバの日(5月15 日)のデモを分析する

5月15日、イスラエル北部から130-140 人のデモ隊が国境を越えてイスラエルに入ってきたことは報道された通りです。この時、なだれこんできた人々は第3世代パレスチナ人で、実際はシリアに生まれ育ったシリア人でした。シリアとイスラエルの間にはゴラン高原があります。シリアからイスラエルに入ることはできず、イスラエルに住むドルーズ族がシリアに行く際にもかなり厳しい許可証のチェックが必要になります。実際は国境に近づくことすら不可能です。
しかし、今回はバス3台で堂々とデモ隊が国境付近まで来ていたことから、シリアのアサド政権が、国内の緊張をそらすために企画したことではないかと分析されています。

一方、この日のことはイスラエル政府も十分に情報を得ていたので、国境には1メートルごとに兵を配置して警戒していました。しかし、一般人には発砲しないという規制を指示していましたので、イスラエル軍は、侵入者が指示に従わないとわかるまで、発砲しなかったのです。130-140 人もの人間が国境を越えて侵入しようとしたにもかかわらず、イスラエル軍による発砲で死亡したのが3名あったことは、イスラエル軍が自制していたことを証明しています。一方で同じく国境にいたレバノン軍が、デモ隊に向けて直接発砲したことによる死者は10名です。

*ゴラン高原はイスラエル、シリア、レバノンの3国が接するところで、多くはドルーズ族です。イスラエルの入植者は1967 年以後から入ってきた入植者に過ぎません。それまでゴラン高原はシリアでした。そこへレバノンからヒズボラの勢力も南下してきたため、非常に複雑な政治状況になっているのです。

<ヒズボラの試み>

調べによると、この日、ヒズボラはイスラエルの国境越えに5万人が参加するよう、バス1000 台を用意していたということです。しかし、その案に参加する者は予想に反して130-140 人でした。このデモについて、イスラエルは「失敗」であり、エジプトなどで発生した民主化運動とは全く性質のことなるものだと考えています。

<ナクサの日-6月3,5、7日>

6月5日、シリアから再びデモ隊がゴラン高原に侵入しようとしてイスラエル軍と衝突しました。イスラエル軍の制止にも応じないため発砲し、23名が死亡したと発表されています。イスラエルはこうしたデモ隊に対して使用できる殺傷能力のない威嚇用の武器を探していましたが、間に合わなかったようです。

イスラエル当局の調べによると、デモに参加した者は1000 ドル、もし死亡した場合は10000 ドルをシリアから受け取る約束になっていたということです。シリアのアサド政権が国民からの批判の目をはぐらかすために、金で貧しいシリア人たちを雇ったとイスラエルの新聞は報じています。
アラブ社会で広がっているデモ活動に乗じて、今後もこのような動きが続くと予想され、イスラエルは殺傷能力のない威嚇武器の準備を急いでいます。


■ オサマ・ビン・ラディン殺害の影響-福島第一原発が危ない!?

ビン・ラディンの殺害後について懸念されていますが、イスラエルには今のところ大きな影響はありません。9/11 の後、アルカイダでは、オサマ・ビン・ラディンとアイマン・ザワヒリとの不協和音がありました。そのため、主導権はすでにザワヒリに移行していたのではないかと言われています。
結果的にはビン・ラディンが死亡しても、アルカイダ組織になんの影響もなく、逆にテロ活動が活発になる可能性の方が高くなりました。現在、アルカイダは、イエメン南部で勢力を伸ばしています。

世界が最も恐れることはアルカイダが原発テロを起こすのではないかということです。現在警戒態勢が全くなく、原発そのものの上空写真や内部写真が公開されてしまっている日本の福島第一原発が狙われる可能性を指摘する軍事専門家もいます。周辺住民は避難して誰もいない上、作業員らは全員防護服に身をかためているため、なんの問題もなく内部に侵入できるというわけです。

コラム:中東の本音と建て前

イスラエル首相府スポークスマンでアラブのメディアを担当するオフィル・ゲンドルマン氏によると、公にならないところで交わす会話にあっては、パレスチナ人もアラブ人も、いくら戦ってもイスラエルがなくなるはずはないと考えているということです。その本音をなぜだれも公の場で言わないのか。本音を言えない理由は、それを出した瞬間に暗殺されることをどの指導者も知っているからです。だから政治的なゲームを続けるしかないのです。
今回、パレスチナ国家が立ち上がる方向で国際社会は動いていますが、その後に本当に平和に共存できるのかといえば、おそらくそうはならないでしょう。かつてのイスラエル首相のイツハク・シャミール氏は「海が海のままであるようにアラブはアラブのままだ」と言いました。本音を出さないままイスラエルの存在を認めないとするアラブ社会の体質は決して変わることはありません。

この9月、パレスチナ国家が成立するのか、もしした場合はイスラエルはどういう状況に置かれるのか、それは専門家にも予想できていません。考え得る準備はできたとしても何が起こるのかはその時になってからでないとわからないと言われています。これは福島原発に対処しきれていない日本政府の後手にまわる姿にどこか通じるものがあります。今世界的にますますとりなしが力を発揮する時代といえるでしょう。主の前にへりくだり、主ご自身に働いて下さるよう願い求めましょう。

<祈り>

  1. 小さなイスラエルの国を主があわれんで守って下さり、主の栄光を国際社会に現して下さるように
  2. イスラエル人の中に主へのおそれがおこされ、霊的なリバイバルが始まっていくように
  3. アジア、アラブ圏で始まっているといわれるリバイバルで教会が主によって一つとされ、イスラエルに向かって前進し続けるように
  4. アルカイダ系のテロから福島第一原発が守られるように

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

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