ハイメール通信

ハイメール通信No. 206　テロが戻ってきた

「テロが戻ってきた」― これは今日の新聞の見出しです。24 日朝、ガザからのグラッドミサイルがベエル・シェバに着弾、男性が一人負傷し、町は一日中アラームにおびえました。その午後、エルサレムでは混雑するバス停付近で爆弾の入ったバッグが爆発、１人が死亡、50 人以上が負傷しました。

イスラエル軍は直ちにガザとエジプトの間の地下トンネル付近を空爆、すると２５日には、グラッドミサイルはじめ迫撃砲などが発射され、アシュケロンより北、テルアビブからわずか25Ｋｍ南のヤブネでも爆発音が聞こえたということです。幸い負傷者の報告はありません。イスラエルでは今後数日間、全国的にレベル３（かなり高い）の警戒態勢に入るということです。

上記のような事情で、日本の関東東北の地震についてのニュースは、少なくなりましたが、東京都でも水道水に高い放射性物質が検出されたことに続き、原発内で作業員３人の被曝が伝えられています。ハイファ大学ではアジア学科の学生たちが日本を支援する取り組みを行っています。

私は死ぬことなく、かえって生き、
そして【主】のみわざを語り告げよう。
主は私をきびしく懲らしめられた。
しかし、私を死に渡されなかった。（詩篇118:17-18）

■ エルサレム市街地での爆発テロ
■ ベエル・シェバにグラッドミサイル
■ シリアの反政府デモ悪化
■ ハイファ大学学生日本支援千羽鶴めざす

■ エルサレム市街地での爆発テロ

24 日（水）午後３時、エルサレム中央バスステーション向かいにある国際コンベンションセンタービニヤニン・ハアウマ前のバス停付近で大きな爆発がありました。このテロにより、１人が死亡、50 人以上が負傷しました。死亡したのはイギリス人女性（56 才）で、ウイクリフの聖書翻訳に携わってきた福音派クリスチャンでした。

外国人の福音派クリスチャンがイスラエルでテロに巻き込まれて死亡するのは今年に入ってから今回で２回目です。

爆発があった地点は、エルサレム市内を巡回する多くのバスが発着する地点で、常に数十人の利用客がバスを待つところです。このバス停付近にある公衆電話の下に置かれたブリーフケースが爆発し、バス２台が被害にあいました。その公衆電話のすぐ後ろに小さなキオスクがありますが、店主が警察に「不審な荷物がある」と通報している最中に爆発が起き、会話の途中で叫び声に変わるという生々しい録音が報道されました。

店主の男性は負傷していますが、命に別状はありません。また、犯人二人がブリーフケースを公衆電話の下に置いてすぐその場を離れる様子を目撃した人が警察に通報し、多くがその場に近づくのを阻止できていたことも後でわかりました。

爆発直後、現場は、多数の警察官、救急車やストレッチャーを持って走る救急隊員、叫び声、見物人などでかなり混乱した状態に陥りましたが、数時間後には、すべて片づけられ、通常のバス停風景に戻りました。警察は同様の爆弾テロが複数行われるのではないかと一時、警戒態勢レベルを最大に上げて警戒していましたが、その後のテロは発生していません。警察では今後しばらく全国でレベル３の警戒態勢に入るということです。

翌日、犯人２人が西岸地区のジェニンで逮捕されましたが、二人がイスラム聖戦に所属する者たちであると同組織が犯行声明を出しました。

■ ベエル・シェバにグラッドミサイル

エルサレムでテロのあった同じ日の朝、アシュドド郊外にロケット弾が着弾、その数時間後、ベエル・シェバの市街地にグラッドミサイルが着弾。家屋内にいた男性が飛んできた破片で負傷しました。
このミサイルに先立ってアラームが町中に流れ、人々はシェルターに駆け込むという騒ぎになりました。

この日、ベエル・シェバの学校は休校となり、家庭待機となりました。

ベエル・シェバには夕方にもう一発着弾しましたが、負傷者ありませんでした。

これらの攻撃についてもイスラム聖戦が犯行声明を出しており、イスラエルがパレスチナ人への攻撃を止めない限り、イスラエルへの攻撃は止めないとする声明を出しています。

なお、この一連の件について、ハマスは関与を否定しており、「イスラエルと今対峙することは避けたい。」との声明を出しています。

＜ガザを巡る最近の暴力の悪化の経過＞

イスラエル軍の空爆でハマス幹部が死亡したことに対して先週、５０発以上のロケット弾や迫撃砲がイスラエルに向けて発射されました。器物破損はありましたが幸い負傷者はなし。
２日前、ガザからグラッドミサイルがアシュケロンに着弾。けが人はありませんでしたが、近くにいた数人がショックで病院に搬送。この直後、ガザで、さらにミサイルを発射しようとしているテロリスト４人をイスラエル空軍機が発見、空爆でこの４人は死亡。
昨日、ガザから迫撃砲。イスラエル軍が迫撃砲で反撃したところパレスチナ人９人が死亡、近くにいたガザ市民４人（子ども）もまきぞえ。イスラエル政府が市民の犠牲について遺憾の意を発表も、ハマスが報復宣言。
今朝、ガザから発射されたミサイルがアシュドドに着弾、数時間後にはベエル・シェバの住宅地にも着弾。屋内にいた男性が窓から飛来した破片で負傷。病院へ救急搬送されました。
イスラエル空軍、ガザ地区とエジプトの間の地下トンネル付近を空爆
２４日、テルアビブからわずか25ｋｍの地点（無人地帯）にグラッドミサイルが着弾。

＜イスラエルの対応＞

ネタニヤフ首相はテロ発生直後、治安関係者や閣僚と緊急閣議を開いたのち、予定されていたモスクワ訪問に出発しました。
出発前には「イスラエルは厳しく、また賢くこれに対処する」と語りました。バラク国防相は、犯行声明はイスラム聖戦から出ていても、ガザを支配しているハマスに責任があると言っています。
イスラエルが２年前のような大規模なガザ侵攻を行うのではないかとする記事も多数出ています。

■ シリアの反政府デモ悪化

イスラエルの隣国エジプトに続いてシリアでも激しい反政府デモが続き、すでに100 人の死者が出ています。これまでシリアを支配してきたアサド一家は、少数派にもかかわらず強権政治を続けてきました。デモ隊は「ヒズボラはいらない！イランはいらない！」と叫んでいると言うことです。
シリア市民自身がこの言葉を発したのは初めてのことです。イスラエルでは、現政権が人民の意識をそらすためにイスラエル北部を攻撃してくる可能性があるとして警戒していますが、実際には今のアサド政権はそこまでの余裕はないと考えられ、現地で情報収集が行われていると言うことです。

■ ハイファ大学学生千羽鶴めざす

ハイファ大学日本語学科を中心とするアジア学科は、先週、授業をキャンセルして、原発事故を中心とする情報のフォーラムを行いました。また、大震災に見舞われている日本を支援するため、今週月曜からキャンパス内にブースを出し、募金を募っています。
募金５シェケルにつき折り鶴一つとし、献金してくれた学生の名前を翼にカタカナで書き込んでいます。

日本人にくらべておおざっぱなイスラエル人にとって折り紙は至難の業です。写真は、恐竜みたいになった折り鶴。
今週４日で数百にまでなっていますが、来週も続けて千羽鶴をめざします。
４月初旬にはハイファ近郊の小学校もこれに参加する予定で小さな子どもたちが、日本を思いつつ折り鶴に挑戦することになっています。

■ モシェ・カツァブ元イスラエル大統領実刑７年

４人の女性をレイプした罪で、審議が進められていたモシェ・カツァブ元大統領の求刑判決がでました。実刑７年です。本人がまだ犯行を否認しているため、執行猶予はありません。刑務所に入るのは５月初旬予定。イスラエルの刑務所での性犯罪者の扱いは特に厳しいとされており、カツァブ氏は入るまでに自殺するのではないかと懸念されています。

大統領から受刑者への転落という前代未聞のできごとに、イスラエル世論は、この判決についてイスラエルには真の「法の校正」があると評価する反面、国家的な恥辱だとする意見もあります。
この判決に続いて、オルメルト元首相の収賄疑惑で実刑判決にむけた審議が進められています。またネタニヤフ首相については、家族を頻回に高価な海外旅行に行かせており、その費用が国から捻出されているのではないかとの嫌疑でまもなく捜査がはじまります。バラク国防相も、海外では不必要な超豪華なホテルに滞在していると問題になっています。イスラエルでは最近の政治の腐敗に市民はうんざりしているところです。