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ハイメール通信No. 195 本当に民主主義の夜明け?

エジプトで始まったデモ運動から早6週間がたちました。ムバラク大統領が政権から追放された後、エジプト軍が全政権を保護する形で一応の安定をとりもどした形になりました。しかし先週、世界的イスラム学者カラダフィがエジプト入りし、イスラム同胞団の台頭が懸念されています。

先週、この混乱に乗じてイランの戦艦2隻がスエズ運河を通過、地中海に入ってシリアの港に到着しました。イランとシリアは共同で海軍の訓練を行うと発表しています。
また25日、ガザから発射されたグラッド・ミサイルがベエルシェバに着弾。死者負傷者はありませんでしたが、イスラエル軍は直ちにガザ地区へ報復攻撃し、ガザ情勢が再び悪化しています。
不確かな現状が続いています。主が今週もイスラエルの上に御手をおいていてくださるよう祈りましょう。

しかし、わたしはわたしの名のために、彼らが住んでいる諸国の民の目の前で、わたしの名を汚そうとはしなかった。わたしは諸国の民の目の前で彼らをエジプトの地から連れ出すと、知らせていたからだ。(エゼキエル20:9)



■ エジプト情勢その後

1月末はじまったエジプトでのデモ活動から6週間になりました。6ヶ月後の総選挙までということで軍が全権を掌握し、前政権の機能を維持、大きなデモは鎮圧された形です。しかしながら、未だに選挙の日程も発表されておらず、エジプトの行方はまだ不確かなままです。

先週、世界的にも有名なイスラム学者アル・カラダフィがエジプトへ帰国し、100 万人を超えるエジプト人を集めて集会をしました。政治犯を釈放し、軍は市民に政権をすみやかに帰すよう訴えました。

<アル・カラダフィとはどんな人物?>

アル・カラダフィは世界的なイスラム教の神学者で、イスラム同胞団に関与する人物です。9才にしてすでにコーランをすでに全部暗記していたといわれ、これまでにイスラムに関する本を80冊以上の本を執筆、アル・ジャジーラなどメディアでも活躍しています。イギリスのオックスフォード大学では、イスラム学の権威として認められ、西側にもよく知られています。
異宗教間のコミュニケーションにも寛大で、イスラム社会でもクリスチャンやユダヤ教徒が平和に共存することも可能であると言っています。また、コーランによると、殺人は大きな罪であるとして、テロ行為を批判します。
しかしながらイスラエルに関しては、領地を拡大しようとしている危険で堕落した国とみなし、イスラエルに対する戦いはジハード(聖戦)であると承認しています。イスラエルでは女性を含めて全国民が兵士であるとして「市民」に対する攻撃も奨励しています。さらに妊娠中の女性についても、将来子どもが生まれたときにはイスラエルの兵士になるという理由で、殺害を認める発言もあります。イスラム同胞団は、カラダフィをムフティと認定し、指導者になるよう要請しましたが、カラダフィは2回それを拒否したという経過があります。

<中東のデモはイスラエルにとって何を意味するのか>

1.イランに新しい政権が誕生する可能性

中東情勢がこの先どうなるのかということについては、たとえ専門家であっても予測不能だと言われています。混乱の中で、何に注目しなければならないのかということをいつもも念頭においておかなければなりません。イスラエルにとっては今の情勢は懸念することの方が大きいのですが、その中にチャンスも隠されています。もし今、イランでも発生しているデモが大きくなり現アフマディネジャド政権を倒して、イランに真の民主主義国が立ち上がるならば、中東はまったく逆の安定した将来を迎えることになります。
イラン人の多くは高い教育を受け、海外に留学や在住している人も多いので、イラン市民によって真に自由なイランを立ち上げる可能性は高いといえます。ネタニヤフ首相は、今イランがどうなるかが鍵であるとして、アメリカや西側諸国にイランの反政府運動をサポートするよう訴えています。

2.中東諸国が急進派イスラム一色に塗り替えられる危険性

エジプトのデモで、最も懸念されることはイスラム同胞団の台頭です。イスラム同胞団の目的は、エジプトに限らず、中東全域にイスラム急進派の国を増やしていくことです。中東から発信されているメディアの代表として知られるアル・ジャジーラはイスラム同胞団の影響下にあります。今、イスラエルが最も懸念することは、独裁政権打倒の後にどんな政権が立ち上がるかということです。真の民主主義を理解しているとは思えない中東では、イラン革命の時のように、市民レベルでのデモから、結局は急進派イスラム勢力が台頭する可能性が高いのです。つまりイスラエルをとりまく中東、アフリカ諸国が皆イランのようになってしまう可能性があるということです。

3.ハマスの勢いが増してパレスチナ人がイスラエルを包囲する危険性

現在、隣国エジプトでは、現在前政権を軍が保護する形で、国の運営が継続されています。つまりムバラク大統領抜きではありますが、前のままの与党が国を動かしているということです。 それに対するのが野党反対勢力ですが、その中で最も組織がしっかりしている団体が急進派のイスラム同胞団なのです。まだ政権をとるには至ってはいませんが、すでに勢いづいていることは間違いありません。
ガザ地区を支配するハマスの母体はイスラム同胞団です。
すでにエジプトとガザの国境がかなりゆるんでおり、武器やこの混乱でエジプトから釈放された凶悪なテロリストがガザに入ったと言われています。

*パレスチナ自治政府、ハマスとの和解の向けての動き

最近、パレスチナ自治政府はハマスとの本格的な和解にむけて動いています。今、ハマスと和解しなければ、自らの立場が危険だからです。もし、この和解が成立しハマスが西岸地区にまで進出してくるとイスラエルにとっては大変危険な状況となります。

4.イスラム諸国の諸事情が見えていない国際社会の危険性

かつてエジプトで、イスラエル大使を勤め、アラビア語にも通じているヘブライ大学のツビ・マツェル教授によると、西側の者たちはイスラムの諸事情を基本的なところからわかっていないと強く訴えています。原因は、現状を伝えるジャーナリストから、政府レベルでもアラビア語を知らないからです。

マツェル教授によると、アメリカはじめ西側諸国は、エジプトに対し、「イスラム同胞団を含む」形での政権樹立に圧力をかけているということです。この流れについて教授は、西側諸国は、エジプトが常にイスラム同胞団と戦ってきたという事実を知らない、同団体がいかに危険な団体かをわかっていないと深い懸念を語っています。また教授は、今回エジプトのデモ発生時、アメリカのオバマ大統領が、あっさりムバラク大統領を見捨てて、直ちに権力から降りるよう要請したにもかかわらず、そのわずか数日後に「平穏な政権の委譲を」と発言したことについて、一貫性がなく、超大国としての思慮責任に欠けていたと批判、今後を懸念するとも語りました。

ネタニヤフ首相は、今イランに着目し、市民運動をサポートすることが最重要事項だと、アメリカはじめ国際社会に訴えています。しかし、国際社会は、イランから目を離したようになっています。逆に今、この時期に、カルテット(アメリカ、ロシア、EU、UN)は今週、ブリュッセルにおいて、イスラエル、パレスチナとそれぞれと会談を持つよう圧力をかけています。

ネタニヤフ首相は、この会談にイスラエルからの使節団を派遣することが国益にかなうのかどうかをまだ決めかねています。もし参加した場合、国際社会から交渉再開への日程を強制される可能性があるからです。首相は今アメリカに何が目的で今ブリュッセルに集まるのかといった基本的なところから問い合わせているところです。

<入植者とイスラエル軍の衝突激化>

イスラエルとパレスチナ自治政府の和平交渉が途絶えているのは、イスラエルの入植活動が原因とされています。西岸地区への入植者の中には違法に家屋を建てる過激な者もあり、イスラエル軍と衝突することがあります。28日も入植者と軍の衝突で15 人の入植者(イスラエル人)が負傷、3人が逮捕されました。国際社会の批判をかわす目的なのか、イスラエル政府は違法にパレスチナ人の地域に違法に入植活動をしているイスラエル人の建物を強制的に破壊する方針です。

5.ガソリン価格の高騰

リビアでの紛争が影響し、イスラエルではガソリン価格が高騰しています。現在1リットル7.3シェケル(182 円)です。


■ イランの戦艦2隻がスエズ運河を通過

この混乱に乗じてイランの戦艦2隻がスエズ運河を通過してしまいました。イランの船籍がスエズ運河を通過するのは1979 年のイラン革命以後初めてのこととなります。この2隻は、地中海に入ってそのままシリアの港に到着しています。
イランとシリアはそこで共同の訓練を行うと発表しています。不思議なことですが、イランの戦艦がスエズ運河を通過する前日、その地域に地震がありました。
この時期に合わせるようにして、ロシアがイランにミサイルを売却しており、それがシリアを介してヒズボラに引き渡されるのではないかと懸念する記事があります。


■ ベエルシェバにグラッド・ミサイル着弾

先週、ガザからグラッド・ミサイルが発射され、ベエルシェバに着弾しました。ベエルシェバは観光客も多く訪れる大きな都市です。死者負傷者はありませんでした。
一時、ガザからの宣戦布告かと緊張が走りましたが、ハマスは関与しておらず、単発であったと判断されました。しかし直ちにイスラエル軍がガザを空爆、パレスチナ人の死者が出て、再びネゲブ地方へのロケット弾が飛来、ガザ情勢が再燃しています。


■ ニュージーランド地震、イスラエル人も犠牲に

ニュージーランドの地震で多くの日本の方々が犠牲になられ、ご家族の痛みは計りがたいものです。地震発生当時イスラエル人も多数ニュージーランドに滞在中で、これまでに15 人が現地にいたことがわかっています。こちらでも時間が経つごとに、犠牲となって発見された人たちのことがテレビで報じられています。


■ イスラエルに二つのオスカー

女優ナタリー・ポートマンが映画「ブラック・スワン」でアカデミー女優賞を受賞しました。
また、イスラエルでスーダン人や外国人労働者の子どもたち120 人を受け入れて一緒に教育している南テルアビブの小学校を記録した映画「Strangers no more」がドキュメンタリー賞を受賞しました。この外国人の子どもたちには、政府からの支援が全くなく、様々なチャリティ団体やボランティアによって生活が支えられています。

しかし、イスラエル政府はすでに子どもたちの強制送還を決めており、この子どもたちが来年も同じところで学んでいるかどうかはわからないということです。
オフィシャルサイトhttp://www.strangersnomoremovie.com/

<祈り>

  1. イランに穏健な民主主義国家が実現するように
  2. 国際社会とイスラエルが中東の将来のために最善の方針をとることができるように
  3. ガザ地区のあらゆる攻撃からイスラエル市民を守ってくださるよう
  4. 地震の犠牲者家族友人たちを覚えて

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

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