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ハイメール通信No. 194 What’s Next!?

エジプトでムバラク政権が倒れました。エジプトはイスラエルとパレスチナ自治政府やハマスとの仲介に活躍してきた国です。これからどうなるのか!?エジプト情勢について報告します。
イスラエル軍の新しい参謀総長が決まりました。予定されていたヨアブ・ギャラント氏ではなく、ベニー・ガンツ氏です。緊張続く中東情勢に主のあわれみと守りがあるようにとりなしましょう。

神よ。あなたの公正を王に、
あなたの義を王の子に授けてください。
彼があなたの民を義をもって、
あなたの、悩む者たちを
公正をもってさばきますように。(詩篇72:1,2)



■ エジプト情勢とイスラエルの関係

2月11 日現在、エジプト、カイロでのデモ・騒乱が18 日目となりました。ムバラク大統領は権力をエジプト軍最高評議会に委譲し、家族と共にヘリコプターでシナイ半島に逃れました。軍最高評議会は、軍が政権をとることはないと断言、次期政権が立つまで暫定的に国を管理すると発表しています。イスラエルで懸念されていたのは、イスラエルとエジプトが1979 年に締結した平和条約が破棄されるのではないかということでした。しかし、11 日、軍最高評議会はイスラエルとの和平条約を継続履行すると発表しました。

<民主主義の顔をした強権政治>

今回、追放されたムバラク氏は、1981 年サダト大統領の暗殺の後、副大統領から大統領に就任しています。以後30 年もの間、一回も政権交代することなく、権力を掌握し続けてきました。それを可能にしたのは民主主義の顔をした強権政治でした。すなわち、選挙はあっても、選択の余地なくムバラク大統領が選ばれるしくみです。
反政府野党に対しては、裁判のない投獄や拷問がありました。また、慢性的な雇用不足、貧しさが人々の不満を爆発させたといわれています。
今回の大規模なデモを成功させたのは30 代までの若者たちでした。彼らは携帯電話やフェースブック、ツイッターなどで、連絡を取り合い、これほどの大規模なデモに発展しました。

* ムバラク大統領、相当な資産

政権を30 年も掌握してきただけに、その間に蓄積した財産は最大6兆円にも上る可能性があります。ムバラク氏が、デモが始まった後も、なかなか政権を委譲しなかったのは、その間に財産の整理をしていたのではないかともいわれています。ムバラク大統領の資金はスイス銀行の他アメリカやロンドンの銀行など海外にあります。スイス銀行は一時的に大統領の預金を凍結しましたが、それらがエジプト市民に戻されることはなく、結果的にはムバラク氏の手元に戻るだろうと予想されています。
デモの代表的存在であるエルバラダイ氏は、ムバラク氏に来週の金曜までにエジプトを去るように、そうでなければ殺害されるだろうと警告しています。

<“デモのろば”:エルバラダイ元IAEA(国際原子力機関)局長>

ムバラク政権に対するデモの象徴として担ぎ出されたのが元IAEA のエルバラダイ氏です。知識層であり、西側諸国にも信頼の厚いエルバラダイ氏を担ぎ出すことにより、デモのイメージが上がりました。担ぎ出したのは、イスラム原理主義組織で、エジプトでムバラク政権につぐ最大野党のムスリム同胞団であると言われています。

ムスリム同胞団は、現時点では自らがデモの先頭に立つことはせず、むしろ背後で動いているようです。やがて民主主義に基づいて選挙が行われれば、最大野党のムスリム同胞団が政権をとるのは必定で、エルバラダイ氏はその時がくるまでの、“ろば”だと評されています。

* ムスリム同胞団

エジプトがイギリスの植民地であった1920 年代、西洋からの独立とイスラム文化の復興を目標に、1928 年に立ち上がったのがムスリム同胞団。スンニ派で、イスラム法シャリーアに基づく国の形成をめざしています。かつては穏健路線でしたが、1960 年代に殉教したクトゥブ以来、ジハード(聖戦)を打ち出す急進派イスラム団体となりました。ガザ地区のハマスの母体でもあります。
社会福祉活動などにより民衆の支持が高く、エジプトの国会456 議席中88 席を同胞団が獲得しており、エジプトでは最大野党で、最も組織力が整った団体です。 

次期指導者の候補ですが、エルバラダイ氏の他に、元外務大臣で、長年アラブ同盟の議長を務めてきたアミール・ムーサ氏が有力候補と報じられています。

<アメリカの対応は正しかったのか??>

ムバラク大統領率いるエジプトはイスラエルとの条約を継続し、穏健派アラブ諸国の代表的存在として長年、アメリカや西側諸国に協力してきた国でした。ところが今回、アメリカのオバマ大統領は、デモを最大限に支持、早くからムバラク大統領に政権を委譲するようにと強くせまりました。
去らなければ経済協力にも影響すると脅迫的な発言もありました。あれほど協力させてきたムバラク大統領をあっさり見捨てたということです。
このアメリカの態度の急変は、アラブ穏健派諸国に大きな打撃となりました。つまり、今いくらアメリカに協力していても、いったん何かが起こるとすぐに「捨てられる」可能性があることを示唆しているからです。アメリカを全く信用していないイランやシリアの方が正しいと証明したような形となりました。ムバラク大統領は、アメリカのこの態度について、「今後中東でイスラム急進派が勢力をのばすであろう」と、古くからの知り合いであるイスラエル議員のベン・エリエゼル氏に電話で語ったと報告されています。

今回、エジプトで起こったことは、1979 年のイラン革命の時と酷似していると言われています。当時のイラン国民は、アメリカに事実上、支配・統制されていたパーレビ国王を追放したのですが、当時のアメリカはパーレビ国王をあっさりと見捨てました。その後イランは、イスラム原理主義を中東や世界に輸出する結果となり、今のアフマディネジャド政権のような過激な政権を生み出してしまったのです。今回も、エジプトが、いわゆる民主主義政府を立ち上げる準備ができているとはいえないということで、ムバラク政権後に、いわゆる西側のいう民主主義国家が立ち上がる可能性は低いとみられています。

今、エジプトで“成功”した反政府デモが、独裁体制をとっている多くの中東諸国に広がっていくことが懸念されています。すでにアルジェリアとイエメンでデモが始まっています。サウジアラビアなどでは、特別給与を支給するなどして、民衆の支持を得ようとする動きがあります。今後の中東情勢を見守る必要があります。

<行き場のないパレスチナ人>

エジプトの現政権が倒れたことで最も震撼しているのがパレスチナ自治政府・ファタハのアッバス議長です。アッバス議長は、アメリカや西側諸国の 強力なバックアップを受けていました。従ってアラブ諸国の中では、同じ親米のエジプトだけが、頼りになるアラブの国だったのです。

エジプトはイスラエルとの和平の仲介にも大きな役割を果たしていました。さらにエジプトは、宿敵ハマスを押さえてくれる存在でもありました。今、軍が暫定的な管理者となりましたが、反米のムスリム同胞団が台頭してくる可能性が高まっています。その、ムスリム同胞団はハマスの産みの親なのです。今後ハマスがさらに力を得て、ガザ地区だけでなく、西岸地区にも勢力をのばしてくることも大いにあり得ます。
また、パレスチナ自治政府も民主主義にみえても実際には、強権的な政治をしているため、民衆の蜂起の可能性もあります。エジプトでのデモが始まると、パレスチナでも小さなデモがありました。自治政府はすぐにデモ禁止令を出しました。人民の怒りをそらすためか、パレスチナ自治政府は、この状況を受けて、今年9月までには総選挙を行うと発表しました。この選挙はすでに昨年行われるはず
だったのですが、実施2週間前に独断的に自治政府によってキャンセルされていました。
*パレスチナ人が70%という隣国ヨルダンでもデモはありましたが、規模は大きくなっていません。

<イラン進出の懸念>

パレスチナの人権保護運動活動を行っているパレスチナ人のバッサム氏によると、この混乱に乗じて、エジプトとガザ地区の間封鎖がゆるんで、すでにイランが出入りしているとのことです。実際にハマスは新しいエジプト政権には、エジプトとガザの間の封鎖を解除し、自由な行き来を可能にしてほしいとの要望を明らかにしています。

<中東に民主主義は可能か?>

パレスチナ人人権保護運動家のバッサム氏によると、パレスチナでも他の強権政治のアラブ諸国と同様に、本当の民主政治は行われていないということです。言論の自由はなく、裁判なしの逮捕投獄拷問が行われています。
バッサム氏は、皮肉なことに、外国に「占領」されたことのある国は民主主義を理解するようになるが、そうでないアラブ諸国は民主主義を理解することはないと考えています。
アラブの文化に民主主義というものがもともと存在しないからです。バッサム氏は自身も西岸地区に住むパレスチナ人ですが、パレスチナ自治政府もまだ民主国家を立ち上げる準備はできていないと語っています。

<イスラエルへの影響>

イスラエル政府はエジプトにどのような政権が立つのかを注意深く見守っています。最も大きな懸念は、エジプトがイスラエルとの和平交渉を破棄するのではないかということでした。11 日現在、エジプト軍最高評議会は、イスラエルとの和平は継続履行すると発表しました。
親米のエジプトはパレスチナ自治政府だけでなく、イスラエルにとっても重要な仲介者でした。皮肉なことですが、エジプトを失うイスラエルとパレスチナは今、「同じ屋根の下」つまり同じように支えを失うという形になりました。
イスラエル国内では、エジプトの様子は毎日ニュースのトップで取り上げられています。様々な解説も行われていますが、人々の様子は通常とまったく変わりありません。イスラエルにいるアラブ人は、エジプトがムバラク政権から解放されたことを喜んでいますが、デモにまでは至っていません。


■ 新しいイスラエル国防軍総参謀総長

2月、前イスラエル軍参謀総長であったアシュケナジ氏の任期満了にあたり、今月、参謀総長が交代します。予定ではヨアブ・ギャラント氏が就任するはずだったのですが、自宅周辺の土地を不正に着服しているとの容疑で、就任1ヶ月前になって不的確となりました。一時はアシュケナジ氏の残留も上がっていましたが、最終的には、現副参謀総長のベニー・ガンツ氏に決まり、14 日、就任式が行われました。
しかし、すでにギャラント氏が就任するということで、ギャラント氏の要請による軍内部人事も決まっていました。今から人事をやり直すことはできないため、ガンツ氏にとっては難しい船出となります。

* イスラエル人誘拐殺害警告

ヒズボラの指導者の一人、ムグニエが死亡してから3年目となります。3周年を機にヒズボラが、イスラエルへの報復として、海外にいるイスラエル人の誘拐、殺害を警告しています。イスラエル政府はイスラエル人に対し渡航を控えること、渡航した場合でもイスラエル人が集団で集まっているようなところへ行くことを自粛するよう指導しています。


■ ちょっといい話

1.ガリラヤ湖その後

昨年から水位が、海抜214.12 メートルにまで下がって危険水位となったガリラヤ湖。その後、雨期にはいって水位は43 センチ上がり、213.69 メートルとなりました。危険水位脱出まであと69センチです。

2.エルサレムで18 人目を出産した女性

エルサレムで44 才のユダヤ教正統派女性が18 人目を出産しました。一番上がすでに2児の父であるため、この子は生まれながらにしてすでに2人の叔父となります。女性の子どもたちはこれでちょうど男の子9人、女の子9人となりました。

<祈り>

  1. エジプトに早く穏健な指導者が立ち、民主国家エジプトとなるように
  2. 中東諸国でこれ以上、イランのような急進派イスラム諸国が増えないように
  3. ネタニヤフ首相、バラク国防相、政府閣僚が知恵をもって発言、対処できるように
  4. イスラエル軍の新しいガンツ参謀総長を覚えて

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

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