ホーム祈るハイメール通信 登録・停止バックナンバー > ハイメール通信No. 193 2011 政治不安の幕開け

ハイメール通信

ハイメール通信No. 193 2011 政治不安の幕開け

2011 年、新しい年がはじまってもう1月の下旬になりました。日本では民主党が新しい内閣を発足させ、混乱の中での年明けとなりました。
不思議なことにレバノンでもヒズボラが連立政権から脱退して混乱、イスラエルでもバラク国防相が労働党を脱退して新党をたちあげ、その立場で国防相にとどまるという前代未聞のこととなっています。

ロシアのメドベージェフ大統領がイスラエルには立ち寄らずに、パレスチナを訪問、「東エルサレムを首都とするパレスチナ国家」を支持する意向を明確に表明しました。

ガザでは昨年末より、すでに20 発以上のロケット弾がイスラエルに撃ち込まれ、すでに紛争が始まっているともいえる状況になっています。イスラエル国内ではアラブ人や非ユダヤ人を差別する動きが社会や学校でも広がりを見せ、まさに「城壁が低い」危険な状態になりつつあります。イスラエルはいつにもまして危うい2011 年の幕開けとなりました。今年も主の前に何を祈るのか、主に聞きつつとりなしを続けていきましょう。

それゆえ、人の子よ、預言してゴグに言え。神である主はこう仰せられる。わたしの民イスラエルが安心して住んでいるとき、実に、その日、あなたは奮い立つのだ。
あなたは、北の果てのあなたの国から、多くの国々の民を率いて来る。彼らはみな馬に乗る者で、大集団、大軍勢だ。
あなたは、わたしの民イスラエルを攻めに上り、終わりの日に、あなたは地をおおう雲のようになる。ゴグよ。わたしはあなたに、わたしの地を攻めさせる。それは、わたしがあなたを使って諸国の民の目の前にわたしの聖なることを示し、彼らがわたしを知るためだ。(エゼキエル38:14-16)



■ ヒズボラ連立離脱でレバノン政権崩壊

レバノン政権はサアド・ハリリ首相を中心にシーア派イスラムのヒズボラ、キリスト教徒、ドルーズなどによる連立政権となっています。現在の首相は、サアド・ハリリ氏で、2005 年に暗殺された故ラフィク・ハリリ首相の息子にあたります。
故ラフィク・ハリリ首相は多額の私財を用いて、内戦で破壊されたレバノンを復興させようとした人で、民衆にも人気がありました。そのラフィク・ハリリ氏が、車に仕掛けられた爆弾で他の22 名とともに暗殺されたのは2005 年2月。当時、軍を駐留させ、レバノンを事実上支配していたのがシリアだったため、暗殺はシリアの犯行ではないかと思われました。

やがて民衆の激しい反シリア抗議行動がはじまり、約2ヶ月後の4月、シリアは、レバノンから撤退を余儀なくされました。その穴をさっと埋めたのがヒズボラです。撤退後、シリアはイランとともにヒズボラを外から支援。その多大な資金力でヒズボラは連立政権の11 席(計30 席)を占めるようになり、レバノンを事実上支配するまでに大きな力となりました。

<ヒズボラ連立離脱>

ところが、今年になり、国連の調査団がラフィク・ハリリ氏を殺害したのがヒズボラのメンバーであるとの調査結果を発表するのではとの情報が流れ始めました。
するとヒズボラはそれが、アメリカとイスラエルによる悪巧みであると非難。この状況を打開するため、現レバノンのサアド・ハリリ首相は、トルコを初めアメリカ、フランスなどを歴訪し、協力を求め始めました。

今月15 日、ハリリ首相がアメリカのオバマ大統領に会っている最中、ヒズボラは「ハリリ首相は西側諸国と歩調を合わせて裏切った」との理由で連立政権から11 議席(計30 席)すべてから離脱しました。これは政権崩壊ということになります。ハリリ首相は、アメリカから緊急に帰国しまし たが、現在は「レバノン政府世話役」といった暫定措置で動いており、新政権発足でハリリ氏が再び政権を取るのは難しいとの見通しです。

ハリリ首相がスンニ派であるのに対し、ヒズボラがシーア派であるため、内戦が懸念されていますが、ヒズボラは「我々は武力ではなく政治的に戦う」として内戦の可能性は否定しています。
しかしながら、19 日、レバノンの首都ベイルートでは、黒服に身を固めたヒズボラのメンバーが、武器を持っていないものの、町の主要部に立ちはじめ、不穏な動きをみせています。サウジアラビアはレバノンの安定のために労をつくしていましたが、今やそのサウジアラビアも「レバノンは危険」と評するに至りました。20 日に入り、レバノン市民の中には預貯金をドルにして安全な国外へ移したり、留学生は帰国をアドバイスされるなどうわさから、パニックに陥りやすくなっています。イスラエル軍も、ヒズボラがレバノンを征服した場合に備え警戒態勢に入っています。


■ ロシア、パレスチナ国家承認

先週、ロシアのメドベージェフ大統領が、イスラエルを素通りし、パレスチナ自治政府管理下にあるエリコを訪問。そこでアッバス議長と会談し、「ロシアは、1988 年当時と変わらず、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家設立を支持する」と表明しました。同時に、ワシントンDCのPLO 事務所でパレスチナの国旗が掲揚され、独立への一歩を踏み出したような意亜立ちとなりました。

現在、パレスチナ国家を支持しているのは、ロシアの他、アルゼンチンなど中南米諸国です。最近、イスラエルが東エルサレムにあるホテルをブルドーザーで破壊し、ユダヤ人向け住居を建設しようとしたことで、国際社会はパレスチナに同情的となっています。
しかし、20 日、アッバス議長は「単独独立は行わない」と名言、そのかわりに、このまま和平への絶望状態が続けば、再びインティファーダ(民衆蜂起)が起こるだろうと警告しました。

*ロシアの大統領がイスラエルを素通りしたのは、イスラエルの外務省がストに入っていて大統領を迎える準備ができなかったためです。これはロシア出身でロシアとの仲介を期待されていたリーバーマン外相にとって大きな汚点です。一方で、メドベージェフ大統領が、パレスチナに行ってパレスチナ国家支持を表明することは変えられない事実であったと考えれば、その前にイスラエルに立ち寄らなかったことで、イスラエルはメンツ丸つぶれを避けたことになります。


■ バラク国防相、労働党離脱 新党結成

現国防相は、労働党党首のエフード・バラク氏でした。しかし、ネタニヤフ政権はリクード党、つまりは右派政権です。その右派政権に、左派で、本来は野党の筆頭であるはずの労働党の党首であるバラク氏が、閣僚の一員になっていることは以前より様々な論議がありました。特に労働党内部では常に分裂の危機があったことは言うまでもありません。

今週に入り、バラク国防相が、突然3名の労働党閣僚とともに労働党を離脱、中道左派として独立を宣言しました。これを受け、ネタニヤフ首相はこの動きを承認、バラク氏を国防相に留任させた上、空いた3名の閣僚のポストに、政権にとってさらに都合の良い人物にすげかえました。この動きに加え、労働党議員8名も労働党を離脱したため、労働党はばらばらになった形です。

ネタニヤフ首相は連立政権が強力な政権になったと満足していますが、労働党は今やばらばらとなり、大きな痛手であることは間違いありません。現在、前国防相も務めたミツナ氏を中心に、早急な労働党では立て直しが叫ばれています。

最大野党カディマのリブニ氏は、バラク氏の動きを卑劣と非難し、「総選挙しかない」とネタニヤフ政権の動きを厳しく批判しています。


■ ガザ紛争エスカレート

ガザ情勢が悪化しています。今年に入ってからだけでもガザ地区からイスラエルに向けて発射されたロケット弾は20 発以上、隣接するキブツでは、着弾したロケット弾で農業に従事していたタイ人3人が負傷しました。一部の報道では、これらのイスラエルへの攻撃はハマスだけでなく、他の団体やアルカイダが加わっているとの報告もあります。

ロケット弾が発射されるたびに、イスラエル軍がガザ内部にいるテロリストを攻撃射殺、19 日にはイスラエル軍の戦車がガザ内部数百フィートまで侵攻し、テロリスト1名を射殺しています。2008年のガザ侵攻以後、両者の間にあった暗黙の停戦は事実上、無くなっているとの見方もあります。ガザとイスラエルの国境では、パトロールをするイスラエル軍兵士をねらって境界線上に爆弾が仕掛けられる事件が頻発しており、現場を押さえられたパレスチナ人がイスラエル軍に射殺されるという事件が相次いでいます。こうした戦闘の中で、残念なことに、イスラエル軍による誤爆が発生し、イスラエル兵一人が友軍の弾によって死亡するという悲しい事件もありました。

<ガザ地区と西岸地区のUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)責任者同時に退官>

ガザ地区のUNRWA は国連の代表機関としてガザ地区での人道支援物資配布や、100 以上に上る学校運営を行ってきました。責任者はジョン・ギン氏。そのギン氏がニューヨークの本部付けとなりガザを去ることになりました。UNRWA では、地元民を雇用して作業にあたっていますが、その多くがハマスなどのテロ団体と何らかの関係があります。

一方、UNRWA では中立的な立場で働いてもらわなければならず指導は難航していました。特にUNRWAの倉庫がハマスに破壊、略奪された場合には難しいバランスを取らなければなりません。ギン氏自身も何度も暗殺未遂を経験していたということです。ガザからギン氏が退官すると同時に、西岸地区のUNRWA 責任者だったバーバラ・シェンストーン氏も退官してカナダに帰ることになりました。この二人が同時に退官することについて、理由は明らかではありません。最近エスカレートするガザ紛争への対処なのかどうかについてUNRWA は、「それはない」と完全否定。二人の退官について、関連性はないと説明しています。

<イスラエル国防軍総参謀総長交代遅れるか?>

ガザ地区の様子がきな臭くなっている中、2月、いよいよイスラエル軍トップの参謀総長が交代します。現参謀総長のアシュケナジ氏は第二次レバノン戦争後、イスラエル軍の構造改革を成功させ、広く尊敬と親しみを受けていた人物でした。現在、シュケナジ氏は退官を前に、様々な部署を回ってねぎらいと別れを告げています。

次に総参謀長となるのはヨアブ・ギャラント氏です。しかし、ここへ来て、グリーン運動と呼ばれる団体が、ギャラント氏所有の家屋の土地の一部が不正にとりこまれていると訴えました。このため2月の交代に遅れが出るのではとの懸念が出ています。しかし隣の住民によると、不正にとりこんだとされる土地は、実際はギャランと氏が空いていた場所に木を植えただけということで、ゴシップに過ぎないのではないかとの見方もあります。


■ イスラエル国内で人種差別広がる

イスラエルのユダヤ的アイデンティティに危機感を持つ正統派のラビたちが、ユダヤ教への改宗者について議論しています。どのレベルの改宗者をまでを正式にユダヤ人と認めるかが問題です。正統派ラビから、一時イスラエル軍内部での改宗は安易すぎるから認めないとの意見が出ましたが、社会から大きな批判がおこり、その意見はなくなりました。一方、世俗派たちからは、正統派ユダヤ教徒も従軍し、国民としての義務を果たすべきだとのデモが行われ、際限なく論議が続いています。

また昨年末、ラビの妻たちが、ユダヤ人女性はアラブ人男性に近づかないように警告を出して話題となりましたが、今週、ラビが最近の性的な乱れを防ぐ対案として、女子が結婚できる年齢を15才にまで下げることを提案。すると実際にはそんなに早く娘を嫁がせる親はいないだろうと反論が出ています。絶えず論議が出ていることが、すでにユダヤ国家なのかもしれません。いずれにしても道徳的な乱れからもユダヤ人の民族性が弱くなっていることは間違いなさそうです。

「だれがユダヤ人か」という根本的なところが議論となる中で、社会や学校でも国内の人種差別が問題になりつつあります。「アラブ人に死を」「善良なアラブ人は死んでいるアラブだ」などと落書きがなされたり、ごく普通の子どもが「国境警備隊となってアラブ人を殺す」と平気でクラスメートの前で発言し、教師を驚愕させたりしています。


■ シモン・ペレス大統領の妻ソニアさん87 才で死去 他

イスラエルのファーストレディ、ソニア・ペレスさんが、老衰でやすらかに亡くなりました。ソニアさんは夫を支え決して表にでることなく、控えめな賢妻と評されています。高齢で妻を亡くしたペレス大統領のために祈りましょう。

<カルメル山、その後>

カルメル山の火事から一カ月となりました。山火事で、三分の1が燃えてしまいましたが、その焼け跡にキノコの一種でチャワンダケと呼ばれているものが発生しています。またところどころにスイセンが芽を出してきているようです。
この一カ月の間に、犠牲となった消防士や刑務官たちの妻たち三人が無事出産しました。この子どもたちにもう父親はいません。主のあわれみをお祈りください。

<麻薬所持により日本で逮捕され収監されていたイシバ(ユダヤ教学校)学生三人>

空港で麻薬を所持していたイシバの学生三人が日本で逮捕され、刑務所に送られてから3年、そのうちの一人がイスラエルの刑務所に送られた後釈放されました。残りの二人はまだ日本の刑務所にいます。

<祈り>

  1. 主のあわれみがイスラエルの上にあり、裁きのなかにもあわれみを置いてくださるように。
  2. レバノンが再び内乱とならないように。
    レバノンの人々にあわれみがあるように
  3. イスラエルの中に渦巻き始めたアラブ人、非ユダヤ人への異様な憎しみの霊を取り去ってくださるように。
    特に子どもたちを覚えて

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

ページトップへ戻る

特定非営利活動法人
B.F.P.Japan (ブリッジス・フォー・ピース)

Tel 03-5969-9656(平日10時~17時)
Fax 03-5969-9657

B.F.P. Global
イスラエル
アメリカ合衆国
カナダ
イギリス&ヨーロッパ
南アフリカ共和国
日本
韓国
ニュージーランド
オーストラリア

Copyright 1996- © Bridges For Peace Japan. All Rights Reserved.