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ハイメール通信No. 162 冷え始めたアメリカとの関係

4月初頭に発足したネタニヤフ政権。アメリカとの関係が冷え始めています。5月18日にネタニヤフ首相がワシントンでオバマ大統領と初会談。

対イラン政策でネタニヤフ首相が期限つきの制裁措置を求めたのに対し、オバマ大統領は明確な期限は設けない姿勢を明らかにしました。

また、オバマ大統領はパレスチナとの二国家設立を明らかにしており、イスラエルの治安が保証されない限りパレスチナ国家を認めないとするネタニヤフ首相と対立色が明らかとなりました。

オバマ政権は現在、西岸地区のユダヤ人入植地拡大に厳しい態度をみせており、ネタニヤフ首相の対応が注目されています。

オバマ大統領は28日にアッバス議長と会談、続いて6月4日にはエジプトでアメリカの対アラブ政策を発表する予定ですが、イスラエルには厳しい内容になると予想されています。

ちょうどこの時期、イスラエルではシナイ山でイスラエルがみことばを授かったことを記念する例祭シャブオット(7週の祭り)がありました。主がみことばを受けとる器として選ばれたイスラエルをあわれみ、見捨てずに守り導いて下さるように祈りましょう。

小麦の刈り入れの初穂のために7週の祭りを、年の変わり目に収穫祭を、行わなければならない。
年に三度、男子はみな、イスラエルの神、主、主の前に出なければならない。
わたしがあなたがたの前から異邦の民を追い出し、あなたの国境を広げるので、あなたが年に三度、あなたの神、主の前に出るために上る間にあなたの地を欲しがる者はだれもいないであろう。(出エジプト記34:22-24)

(写真:ローマ教皇が嘆きの壁で残した平和への祈り)



■ 動き出したオバマ大統領との関係

1.ネタニヤフ首相とオバマ大統領の会談

5月18日、ネタニヤフ首相が政権発足後初めてワシントンを訪問、オバマ大統領に面会しました。会談は2時間に及び、互いの考えや方針を知り合う機会となりました。

会談後の共同声明では、アメリカはイスラエルがユダヤ人の国として守られることを最優先に考える、と継続した友好関係維持を表明しました。しかしながら、実際は、両者の間に不一致があることが明らかにもなりました。

<イラン対策について>

ネタニヤフ首相は一貫してイランの核開発がイスラエルだけでなく全世界の脅威であると警告し続けています。

今回、ネタニヤフ首相は、アメリカにより具体的で強力な期限付きの対イラン制裁の確約をとることを第一目標に掲げ、オバマ大統領を訪問しました。アメリカに良い印象を持ってもらうため、西岸地区の違法に建築された建物の一部を撤去させて、ワシントンを訪問しました。

しかし、オバマ大統領は、「これまで、対話なしにイランに制裁を行ってきたが、何も変わらなかった。ヒズボラやハマスは(イランの支援で)さらに強大になった。つまりこれまでの政策が効果的でなかったということだ。これからは今までにしなかったこと、イランと直接対話するという方策をすすめる」と答えました。

いつまでその方針を続けるかといった具体的な計画は提示されませんでした。イランはこの6月に大統領選挙を控えており、その結果がでるまでは少なくとも様子をみるべきというのがオバマ大統領の考えです。

ネタニヤフ首相の訴えにより、今年いっぱいでイラン情勢に変化がなければ改めて方針を再検討するとの約束をとることができましたが、アメリカが示した姿勢はイスラエルを落胆させるものでした。その後北朝鮮が核実験を行いましたが、それに無反応だったアメリカをイランがどのように認識するかをイスラエルは懸念しています。

<パレスチナ対策について>

オバマ政権はイスラエルとパレスチナ人の問題を解決するためにはパレスチナ人も国を持ち、イスラエルと二国家共存することが必要不可欠であると考えています。

これは2003年にブッシュ大統領によって提示されたロードマップ案、昨年アナポリスで打ち出された和平案に基づいています。

オバマ政権はユダヤ・サマリヤ地区(西岸地区)や東エルサレムにいるユダヤ人入植者が新しい建築物を建てていることについて、パレスチナ国家設立の妨害であるとして厳しく批判しています。

一方、ネタニヤフ首相は二国家共存がパレスチナ問題の解決になるとは考えていません。まずパレスチナ人の経済を活性化させ、生活を向上させることによってパレスチナ人の意識を変えることが先決と考えています。

貧困が続きその原因がイスラエルにあると憎しみを募らせている限り、たとえパレスチナ人の国家が立ち上がってもイスラエルの治安は守られないと考えています。

首相は「パレスチナ人がイスラエルをユダヤ人の国として認め、イスラエルが自国を守る手段を持つことを理解する」ならば両者は隣人として平和に暮らせるとの見解を述べました。

ネタニヤフ首相は記者会見にあたり、イスラエルはパレスチナ人を支配しようとしていないことを強調しました。イスラエルは、(上記の点について)パレスチナ人との交渉をすぐにも始める予定であり、できれば幅広く穏健派アラブ諸国もその交渉のテーブルに参加してもらうことを希望していると語りました。

ネタニヤフ首相の発言の中に「隣人として」という言葉はあっても「パレスチナ人の国」ということば一度も出ませんでした。そのため、パレスチナ人からは明らかななゴールのない提案として批判をあびました。

入植地の新しい建築について、ネタニヤフ首相は、違法の無許可に建てられているものについては、強制的にでも撤去するが、「自然発生的な拡大」は認めるべきだと訴えています。

*「自然発生的な拡大」とは、子どもが成長し新しい土地と家が必要になって建てる家のことなどをさします。

2.ネタニヤフ・オバマ会談の後の動き

<ネタニヤフ首相:エルサレムは二度と分割されない>

アメリカから戻ったネタニヤフ首相は22日のエルサレム統一記念日の演説にあたり、「エルサレムは決して再分割されず、統一したイスラエルの町であり続ける」と訴えました。

アメリカが目標とするパレスチナ国家が実現するとしたら、エルサレムは東西に分割されなくてはなりません。さらに神殿の丘を含む旧市街はイスラエルの手から離れ、国連の旗がたなびく国際都市になることになります。

ネタニヤフ首相の発言はアメリカはじめ諸外国からは、和平交渉を妨害する発言として批判をあびました。

<アラブよりに傾きつつある?オバマ政権>

ネタニヤフ首相との会談の後、オバマ大統領は26日にエジプトのムバラク大統領、28日にはパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談しました。

オバマ大統領はパレスチナ国家設立に向けて、イスラエルの入植地建設に厳しい処置をとる方針を語りました。オバマ大統領はイスラエルが直ちに入植地の建設活動を凍結しないならば、アメリカは国連でイスラエル支援方針を弱めるとの強い圧力をかけたとの報告があります(ニューヨークタイムス)。(後に米国務省は撤回している)

この状況を受けてネタニヤフ首相は、違法無許可に進出している入植地20箇所からユダヤ人入植者を強制的に退去させ、建物を破壊する方策を決行しました。違法な入植を取り締まることにより、大きな入植地の自然拡大的な建築活動を守る方針です。

しかし強制退去をさせる国防軍や警察隊と入植者の間で乱闘騒ぎがありました。抗議者たちは国道1号線上でタイヤを燃やすなどして国防軍をはばもうとしました。中にはパレスチナ人にように顔にマスクをして国防軍兵士に石を投げる若者もありました。今回退去させられた人の中には2005年にガザから強制撤去させられた人々もいます。

2日、バラク国防相がオバマ大統領を訪問することになっていますが、冷え始めたアメリカとの関係をとりなす目的があるとみられています。これに対し野党のリブニ氏は「男らしくない」とするどい批判を述べています。

アッバス議長はじめ自治政府高官らは、オバマ大統領の方針を高く評価し「ネタニヤフ政権が崩壊するのを待っていればよい。」との発言も出ています。

*オバマ大統領とアラブ和平案

徐々に明らかになってきたオバマ政権の中東和平に関する方針ですが、以前サウジアラビアが中心となって提出したアラブ和平策を採用するのではないかと言われています。

この方策によれば、穏健派アラブ諸国がイスラエルとの国交を回復するかわりに、イスラエルは1967年の国境線まで撤退するというものです。これはイスラエルがエルサレムだけでなく、ユダヤ・サマリヤ地方を失うことになり、イスラエルが決して受け入れられないものです。

オバマ大統領は6月4日にエジプトのカイロで対アラブ政策についての公表を行うことになっており、イスラエルは緊張の中でオバマ発言に注目しています。

<イスラエルの対ロシア政策>

アメリカとの交渉に明け暮れているイスラエルですが、ロシア対策もすすめられています。

ロシアは今イランとの関係を強化しており、新型迎撃ミサイルの売却問題もイスラエルにとっては大きな懸念事項です。

新しく外務大臣となったリーバーマン氏(ロシア系ユダヤ人)がロシアを訪問しています。リーバーマン氏は、イスラエルはイランを攻撃するつもりはないと述べた上で、イランが核保有国になることの危険性を訴えました。

<祈り>

  1. 主がイスラエルをあわれんでくださり、イスラエルの側に立って、助けて下さるようにとりなしましょう。
  2. エルサレムが統一されたイスラエルの町であり続けることができるように
  3. ネタニヤフ首相と政府のチームワークと知恵ある決断のために

■ ヒズボラ、ハマス、イラン-強敵に対処する全国民避難訓練

ヒズボラ、ハマスともにイランの支援を受けて強大になりつつあり、イスラエルへの脅威が高まっています。この状況を受けて、イスラエルでは日曜日から5日間の予定で全国民を巻き込んだ戦時下非難訓練が行われています。

すでに、ミサイル攻撃があった場合や、化学兵器による攻撃、テロリストによる襲撃にあった場合などの避難訓練が行われました。

火曜日には11時、全国的にサイレンが鳴り、学校では教師が子どもたちをシェルターへ、モールなどでは店員が客を安全な場所へ導く訓練が行われました。その後、学校では、国防軍の国土防衛部が放送する20分ほどの特別な学びが行われました。

各家庭では自宅に備えられている部屋への移動が行われ、10分後にでてくるという訓練でした。今回は史上三番目にあたる大きな避難訓練で「ターニング・ポイント3」と呼ばれています。

以前、イラクがスカッドミサイルを全国に撃ち込んできたことがありました。化学兵器が使われる恐れがある戦争でしたがイスラエル人たちは、良く準備していたためパニックになることなく、犠牲者も最小限で住みました。訓練は外国人にもわかるように英語の資料も提供されています。

<ヒズボラとハマスの動き>

レバノンでは6月7日に議員選挙が予定されています。西側が支援するクリスチャンとスンニ派イスラムのグループが過半数をとるのか、イランが支援するヒズボラが過半数をとるのかが注目されています。

ヒズボラのナスララ党首は選挙戦において、「イスラエルとの対戦が考えられる中、ヒズボラは今のレバノン軍より強い軍隊を提供できる」と訴えています。

この演説を聴きながら群衆が「イスラエルに死を!」と叫び続けました。クリスチャンの中には再び戦争になることを恐れてヒズボラに投票する者が出てくるという見通しがあり、レバノンのクリスチャンが二つに別れるとみられています。ヒズボラが政治的に力をつけてくる可能性があります。

西岸地区の町カルキリヤではハマスとファタハの抗争が続いており、ハマスの側に6人の死者が出ています。

<ローマ教皇ベネディクト16世の西岸地区訪問>

5月13日ローマ教皇がベツレヘムでミサを行い、その後難民キャンプなどを訪問丸1日を西岸地区で過ごしました。特に大きな混乱はありませんでした。

教皇はベツレヘムにいく際に見た防護壁について、イスラエルを厳しく批判しました。イスラエル側は「作りたくて作った壁ではない。作らなければならなかった。作らなければ自爆テロが後を絶たなかった」と教皇に伝えました。

教皇はミサに置いてイスラエルとパレスチナの紛争が1948年に始まったと微妙な発言をしました。イスラエルの存在そのものに関わる話題ですが、特に大きな混乱はありませんでした。

教皇が来たことを記念して、イスラエルに観光局は全世界のカトリック教徒に対し、聖地旅行のキャンペーンを展開することになっています。今年、多くのカトリックやクリスチャンがイスラエルにとってよい経済効果をもたらすことができるように祈りましょう。


■ 経済危機で13000人解雇 スデロットの心療クリニック閉鎖へ

昨年から続いている経済危機ですが、4月の一月だけで13000人が解雇されていることがわかりました。スデロットでは、クリスチャンとユダヤ人のグループで支えられてきた心療クリニックが閉鎖に追い込まれました。住民18000人のうち、PTSDで診療クリニックに登録している患者は5000人に上るといわれています。クリニックの閉鎖は住民に大きな負担となります。

<祈り>

  1. イスラエルの経済回復のために。スデロットの住民を覚えて

■ 主の選びの確信 シャブオット(7週の祭り)

5月28,29日はシャブオット(7週の祭り)と呼ばれるイスラエル3大祭りの一つが執り行われました。(出エジプト34:22,23、申命記16:10) 

シャブオットはイスラエルがエジプトを出てからちょうど50日目、シナイ山でみことばを授かったことを記念しています。

この日は国民の祝日で、学校や企業は休日となりました。シナゴーグでは夜を徹してみことばが読まれ、多くの人が早朝一番に嘆きの壁で主に祈りました。

季節的にはちょうど大麦の収穫が終わり、小麦の収穫が始まるころで、特にルツ記を読むことになっています。イスラエル人たちはこの時に初穂の実りを神殿に捧げるよう命じられています。(民数記28:26)キブツでは収穫祭が祝われます。

この日、イスラエルでは特に乳製品を食べる習慣があります。様々なチーズやチーズケーキ、ヨーグルトが食卓に並びます。

この日は五旬節と呼ばれ、使徒の働きでは聖霊が弟子たちの上に下った日です。文字で示されたみことばが聖霊を受けることで心に書き記されるようになりました。

<祈り>

  1. 主はイスラエルの民をみことばを受けとる者として、また最初にイエスを信じる者が聖霊を受けることを世に示す者としてもイスラエルの民を用いられました。
    イスラエルがどんな危機にあっても主は彼らを用い続けられます。
    今、イスラエルにいるユダヤ人たちが主に目を向けることができるように。
    聖霊を受けて力強くイエスの救いを証する人々がおこされるように祈りましょう。

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

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