ホーム > 祈る > ハイメール通信 登録・停止 > バックナンバー > ハイメール通信No. 161 建国61年 イスラエルが直面するチャレンジ
4月29日、イスラエルは建国61年周年を祝いました。人口は740万人で建国当時の約9倍となっています。世界的経済危機のあおりでイスラエルでもすでに12万人が解雇されました。強力な経済政策が求められています。
防衛関係では、イランがシリアとの関係強化を誇示し、両国がイスラエルに対するパレスチナ人の「抵抗運動」を支援することを盟約しました。
新しく発足したネタニヤフ政権は、イスラエルの防衛とともにパレスチナ人の経済発展を支援し和平に向けた対策を進める方針です
先週ペレス大統領がアメリカのオバマ大統領を訪問し、友好関係を確認しました。2週間後ネタニヤフ首相がオバマ大統領に会見する予定です。
今週、バチカンの教皇ベネディクト16世がイスラエルを訪問します。共に来訪するカトリック信者は1万人以上と予想されています。今週も主がイスラエルをあわれみ、あらゆる点において祝福してくださいますように。
写真:建国記念の花火(テルアビブ)
『あなたがた家を建てる者たちに捨てられた石が礎の石となった』というのはこの方のことです。
この方以外には、だれによっても救いはありません。天の下でこの御名のほかに、私たちが救われるべき名は人に与えられていないからです。(使徒の働き4:11-12)
イスラエルは今年4月29日、建国61周年を迎えました。現時点での人口は741万1000人。内559万3000人(75.5%)がユダヤ系イスラエル人です。
149万8000人(20.2%)がアラブ系イスラエル人。残りの32万人(4.3%)が非ユダヤ非アラブ人で内20万人が海外からの労働者になります。
1948年建国当時の人口は80万6000人でしたから、60年の間に人口は9倍になりました。また、建国当時、人口10万人の都市はテルアビブだけでしたが、今は14になりました。
内20万人を越える都市は5つで多い順にエルサレム、テルアビブ、ハイファ、リションレツィオン、アシュドッドです。(写真:建国記念日の航空ショー テルアビブ・ビーチ)
中央統計局によると昨年中に15万4000人の赤ちゃんが生まれました。新しく来た移民者は12,500人で、全体としては昨年度より125,000人増えて成長率は1.8%と算出されています。
しかし、ユダヤ人の出産率、移民者数は年々減少しており、アラブ人の増加率の方が高いという傾向が続いています。現在ユダヤ人の増加率が1.5%であるのに対し、アラブ人は倍の約3%となっています。
今年の移民者は12,500人で過去最低を記録しました(昨年は19,700人)。内訳は旧ソ連からの移民がさらに減少し、6,185人(前年7,069人*2006年データ)となりました。北米やイギリスからの移民8,334人(前年2,364人*2006年データ)が急激に増加しています。
ユダヤ人のうち最も多いのがロシア系を含むアメリカーヨーロッパ系で220万人(38.5%)、アフリカ系が87万1000人(15%)、次にアジア系が11.9%です。現代イスラエルは白人、黒人、黄色人種が入り交じる国際社会です。
しかし、建国61年となった現在、年々減少する移民者は代わって、イスラエル生まれのイスラエル人(サブラ)の割合が増えて全体の70%となりました。外見は様々でも、現地生まれのイスラエル人と呼ばれる人々が増えていることになります。
(写真:イスラエルのサブラたち)
これまでに国家存続の戦いで死亡したイスラエル人は22,570人、内テロで亡くなった人は1,723人でした。
イスラエルでは5人目の豚インフルエンザ患者が確認されました。先に診断された4人は回復に向かっており、特に混乱はありません。
中央統計局の示す失業率は6.3%(昨年6.1%)となっています。しかし、今年3月から急激に失業した人が増えているとIES(イスラエルの雇用サービス・日本で言えばハローワーク)が報告しています。
IESによると、3月だけで解雇された人は20,000人。世界的な経済危機が始まってからすでに12万人が失業しました。
今年3月IESに職を求めて相談に来た人は226,000人ですが、実際に仕事を見つけることができたのはわずか11,857人です。
Yネットニュース(イスラエル大手新聞誌イディオト・アハロノト2008年12月のデータ)によると、IESに助けを求めてくる人は60%以上が最近10年以内にイスラエルへ移住してきた人々です。彼等のほとんどは45才以上であるため就職が難しくなっています。
経済危機によってより大きい打撃を受けているのが女性労働者です。昨年12月のデータによると、その月に初めてIESを利用した人は55,000人。内31,000人が女性で、内5,451人の女性が大学の学位をもっている人です。妊婦の解雇率は倍になっています。
経済相のステイニッツ氏は、イスラエル人が職を失っている時代に外国人を雇うわけにはいかないとして、10万人の外国人違法就労者を追放する方針を明らかにしました。
また違法に外国人を雇用した雇用主には24,000ドル(240万円)の罰金が課されます。
4月に新しく発足したネタニヤフ政権が少しずつ動き出しています。ネタニヤフ首相は「イスラエルは和平を3本柱で追求する。①政治面 ②防衛面 ③経済面 」と国民に訴えました。
イスラエルの防衛強化策の中にパレスチナ人の経済改善をあげているのが特徴です。新しく外務大臣になったリーバーマン氏は現在ヨーロッパ諸国を歴訪中で、各国にネタニヤフ政権の方針への理解を求めています。
ネタニヤフ首相は、パレスチナ国家設立に同意しない右派の首相として知られています。しかし実際に首相になってみると徐々に歴代首相と同じ歩みを強いられているようです。
すなわちパレスチナ人との和平交渉を続けること、そのためにはエルサレム分割も視野に入れなければなりません。アメリカのオバマ政権はイスラエルの治安を最優先にしながらもパレスチナ国家設立に力を入れており、ネタニヤフ首相がどこまでそれに同調できるかが注目されています。
今月末に予定されているネタニヤフ首相とオバマ大統領の会談に先立ち、先週、建国時代を知る長老シモン・ペレス大統領がホワイトハウスを訪問しました。
会談は20分の予定が1時間に延長されました。「ネタニヤフ首相をよろしく」といった会話もなされたようです。オバマ大統領は、アメリカとイスラエルは変わらず友好関係を継続すると約束しました。
5月末に右派のネタニヤフ氏がオバマ大統領に何を話すのかは未知数と言われていますが、ペレス大統領は、イスラエルはオバマ大統領に協力すべきであるとの見解を発表しています。(写真右)
イランのアフマディネジャド大統領が5日、2年ぶりにシリアのバッシャール大統領を訪問しました。イランとシリアは共にテロ支援国家としてアメリカからの制裁措置を受けている国です。
アフマディネジャド大統領は、イランとシリアが同盟関係にあれば中東が安定すると語っています。両国はパレスチナ人のイスラエルに対する「抵抗運動」を今後も支援することで一致しました。
シリアの首都ダマスカスにはハマスだけでなく、イスラム聖戦の本部があります。両者はレバノンのヒズボラへの支援も続ける意志を公言しました。
バル・イラン大学が行った統計(18才以上のイスラエル人610の返答)によると、大半がアメリカとの友好関係が必要と答えています。
しかしイランが核兵器開発をやめないならば、たとえオバマ大統領の考えに反しても攻撃するべきと答えた人は66%に上りました。
5月11日から4日間、バチカン教皇のベネディクト16世がヨルダンに続いてイスラエルを公式訪問します。目的は宗教的巡礼です。
ローマ教皇がイスラエルを国家として認めて以来、公式訪問するのは2000年にヨハネ・パウロ2世が初めて公式訪問して以来2度目になります。
前回のパウロ2世の訪問では、キリスト教会が長年反ユダヤ主義をもってユダヤ人を迫害してきたことを公式に認め謝罪することが目的でした。
パウロ2世は、ヤドバシェムにおいて教会の代表である教皇として、ユダヤ人に謝罪しイスラエルを祝福しました。さらに西壁ではユダヤ人が主を証する契約の民であることを認め、これまでの罪の赦しを神に乞い、これからは真の兄弟愛をもって歩むことを神に誓いました。この公式謝罪は広くユダヤ人に受け入れられ、バチカンとイスラエル政府との関係が大きく改善されました。
ベネディクト16世は、ドイツ出身で10代のころにはヒトラーユーゲントと呼ばれる少年部隊に属していた人物です。今年9月には、ホロコーストを否定する発言をして破門を言い渡された司祭の撤回したため、自身もホロコースト否定しているのではないかと疑われました。教皇庁はこれを否定しましたが、ユダヤ人は懐疑的です。
ベネディクト16世は、エルサレムやナザレなどキリスト教関連の地を訪問し、ベツレヘムでミサを執り行うことになっています。
このミサに出席するため、ガザから100人程度のカトリック信者が検問所を越えてベツレヘムに入ると予想されています。ガザのカトリック信者らは、教皇にガザへ来て現状を見るよう要請していたのですが、実現しませんでした。
ベツレヘムでは彼等の訴えに教皇がどう対処するのかが注目されています。
建国から2年目の1948年のエルサレムは、67,000人がユダヤ教徒、31,000人がイスラム教徒、30,000人がクリスチャン(主にカトリックやロシア正教やギリシャ正教など)でした。
この後クリスチャンはイスラム教徒の迫害を逃れて年々エルサレムを去り、現在は14,000人にまで減っています(このうち2,600人は修道僧や修道女)。現在エルサレムの総人口は70万5000人です。いいかえれば、かつてクリスチャンはエルサレム人口の20%を占めていたのに、今は2%にすぎないと言うことです。
逆に増えたのがイスラム教徒です。70万の人口のうち実に23万人がイスラム教徒になっています。
(写真:エルサレム神殿の丘で礼拝するイスラムの人々)
イスラム教徒の爆発的な増加は、非イスラム教徒の出産率の低下(1.38人)と教会離れによってヨーロッパでも著明になっています。エルサレム・ポストが出しているYチューブによる発表によると以下のような結果になっています。(抜粋)
http://www.youtube.com/watch?v=XK1pnCldKZI(英語のわかる方必見)
① フランス | イスラム教徒の出産率8.1人。20才以下の子どもたちの30%がすでにイスラム教徒 39年後にはフランスはイスラム教国になっている |
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② イギリス | 82,000人であったイスラム教徒が 過去30年の間に250万人になっている。 国内のモスクは1,000を越えている。多くは教会がモスクに変えられた |
③ ロシア | 現在すでに2300万人がイスラム教徒(5人に1人)。あと数年もすればロシア軍の40%がイスラム教徒になる |
④ アメリカ | 1970年には10万人だったイスラム教徒が現在は900万人。30年後にはアメリカのイスラム教徒は5000万人になっている。 |
近年カトリック教会は、信者の数がイスラム教徒の数を下回ったと発表しているとのことです。プロテスタントを入れるとまだキリスト教が世界の最大宗教ですが、イスラム教が世界最大宗教になる日が近づいているとビデオは警鐘し、福音宣教の重大さを訴えています。
イスラエルで福音宣教の中心を担っているのはメシアニック・ジューと呼ばれる人々です。4月30日のエルサレム・ポストにバル・デビッドさんという兄弟の記事がありました。
デビッドさんは、「メシアニック・ジューはイエスを信じていてもユダヤ人であり、イスラエル人として国を支持している」と証しています。
メシアニック・ジューはカトリック教会が信じてきた置換神学を否定し、イエスを拒否した後もなお神の選びは続くと語っています。
記事によると現在イスラエル国防軍には、200~300人のメシアニック・ジューが従軍していますが、いずれも従軍を栄誉と考えており、最前線でよい働きをしているとのことです。(写真は一般のイスラエル兵の後ろ姿です)
先週ジュネーブで2,000人のメシアニック・ジューと福音派クリスチャン(フィンランド、ノルウェー、スイス、フランス、ドイツ、イタリア、キプロス)がイスラエル支持の集会を持ちました。これは人権問題を取り扱いイスラエルを非難する国際会議ダーバンⅡに抗議する集会でした。
これらの動きがイスラエル人によい印象を与えています。しかし、国内ではメシアニック・ジューに対する迫害が激しくなっているとデビッドさんは語っています。新約聖書を燃やされたり、アミ・オルティズさん(15才)がひどい負傷を追ったテロ事件もありました。エルサレムでは爆弾を投げ入れられた教会もあります。
最近では内務相がメシアニック・ジューだけでなく、彼等と関わりのあるクリスチャンに対しても厳しい取締を行っています。ある福音派クリスチャンは、空港で入国時に連絡先をメシアニック・ジューの友人にしたところ、「イスラエルで宣教しない」という宣誓文にサインして初めて入国を許されました。
経済危機のあおりをうけて観光業は今年も低迷の予想となっています。その中で今回、ベネディクト16世とともにイスラエルに来るカトリック信者は1万人以上と見られています。観光業にとっては大きな祝福です。しかしながら、年間を通してみると、福音派クリスチャンのほうが多くイスラエルを訪問していることが明らかになっています。
ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど
画像提供:www.israelimages.com、Isranet他
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