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ハイメール通信No. 159 ネタニヤフ氏の課題

2月20日、各党との会談の後、ペレス大統領は総選挙では27議席で2位であったリクードのネタニヤフ氏を組閣に指名しました。現在、第18代ネタニヤフ政権をめざして祖国の交渉が行われています。

ガザから2.5キロの町スデロット。現在もロケット弾攻撃が続いています。ガザ情勢の不条理を訴えるスデロット・メディア・センターからお伝えします。

イランがブシャーラの原子炉の試運転を開始しました。イランはすでに核兵器を作成可能なウランを所有していると言われ、緊張感あるイラン関係の記事が増えてきました。イスラエルにまだ正式な政府がない今、私たちが城壁となってとりなす時です。

「いちじくの木や、すべての木を見なさい。
木の芽が出ると、それを見て夏の近いことがわかります。
そのように、これらのことが起こるのを見たら、神の国は近いと知りなさい。
まことに、あなたがたに告げます。すべてのことが起こってしまうまでは、この時代は過ぎ去りません。
この天地は滅びます。しかし、わたしのことばは決して滅びることがありません。
あなたがたの心が、放蕩や深酒やこの世の煩いのために沈み込んでいるところに、その日がわなのように、突然あなたがたに臨むことのないように、よく気をつけていなさい。
その日は、全地の表に住むすべての人に臨むからです。
しかし、あなたがたは、やがて起ころうとしているこれらすべてのことからのがれ、人の子の前に立つことができるように、いつも油断せずに祈っていなさい。」(ルカ21:29-34)



■ ネタニヤフ政権のゆくえ

2月18日、総選挙の最終結果が発表されました。カディマ党28議席、リクード党27議席、イスラエル・ベイテイヌ(イスラエル我が家)15議席、労働党13議席でした。

この結果を受けてペレス大統領が各党と会談。それぞれの意向を確認した結果、20日、リクードのネタニヤフ氏を首相候補とし、組閣の指名を行いました。(写真左)もしネタニヤフ氏が28日以内(42日まで延長可能)に連立政権を立ちあげることができれば、ネタニヤフ政権が立ち上がることになります。

<カディマとの連立>

ネタニヤフ氏は、カディマ党首リブニ氏に連立に加わり、団結して強いイスラエルにしようとの交渉を行いました。カディマには内閣のトップ2つのポジションを提供し、パレスチナ自治政府との交渉も続けると好条件を出したとも報告されています。

しかし、リブニ氏は、考え方や方針の全く違う者が同居する与党というものはありえない(最も大きな意見の差違は、エルサレムの分割問題。ネタニヤフ氏は分割絶対反対、リブニ氏は分割もありの方針)、

また、もしリクードの政権に加われば、カディマに投票した人々を裏切ることになるとして、ネタニヤフ氏の要請を拒否しました。

逆にリブニ氏は、4年の首相任期を2年ずつに分け、2年をネタニヤフ氏、2年をリブニ氏が首相になるならば、ネタニヤフ政権の連立に加わってもよいと提案しました。これについてはネタニヤフ氏が拒否。結局、リクードとカディマの幅広の連立政権の可能性はなくなりました。

カディマ内部ではかつてリブニ氏と党首選を争ったモファズ氏が、「ネタニヤフ氏の提示をよく検討もせずに断ったのは失敗だった」と批判しましたが、党内部はおおむねリブニ氏の方針に賛同しています。

<右派政権の誕生?>

現在、ネタニヤフ氏は極右政党も含めた連立交渉を行っています。注目されるのはイスラエル・ベイテイヌの動きです。

イスラエル・ベイテイヌの党首リーバーマン氏(写真)は、超右派ではありますが、世俗派ロシア系ユダヤ人で、イスラエルの結婚登録制度の改正を大きくとりあげている政党です。

イスラエルの法律では、ユダヤ人同士が指定のラビの元で結婚した場合のみに夫婦として登録できることになっています。ユダヤ人が非ユダヤ人と結婚したい場合は海外で結婚するしかありません。

現在、ロシア系移民のうち、30万人は非ユダヤ人だといわれています。ロシア系移民だけでなく、現実にはイスラエルの世俗派ユダヤ人の多くもこの法律を改正したいと願っているようです。

リーバーマン氏は、ネタニヤフ氏との交渉において、連立に加わった場合は法務相のポジションを要求している模様です。しかし、これはユダヤ教政党のシャスと激しく対立している点であり、ネタニヤフ氏にとっては頭痛の種といえます。

今の流れとしては、リーバーマン氏の方が、「結婚の問題は私の最優先事項ではない。パレスチナ人も国をもつ権利がある」と発言するなど、「極右世俗派」のイメージをやわらげようとしている様子がうかがえ、妥協する姿勢を見せています。いずれにしても、ネタニヤフ政権は、成立しても幅の狭い、舵取りの難しい政権になることは間違いありません。

<ネタニヤフ氏の方針~パレスチナ人の経済的な発展支援>

ネタニヤフ氏はワシントンポストのインタビューに答えて「私たちの国を脅かさないのであれば、パレスチナ人も自らの国を持つ権利がある。」と答えました。ネタニヤフ氏は、政治的な交渉だけでなく、パレスチナ人の経済的な発展にも同時進行で力を入れていく方針を明らかにしました。

その理由として今回のガザ紛争の時、西岸地区のパレスチナ人が、ガザの同胞の苦境に同情しながらも大きなデモ活動や混乱を起こさなかったことをあげました。

ネタニヤフ氏は今、西岸地区、特にジェニンにおいて経済が回復のきざしをみせており、人々が戦い続けてガザのようになりたくないと思い始めていると分析しています。

ハマスとの戦いが早く終わりすぎて、すぐに戦力を回復してしまうと思っているかとの問に、ネタニヤフ氏は「ハマスがいるかぎり平和はありえない。ガザの住民がどうにかしてこの体制を覆すことができればと願っている。私たちはすべてのパレスチナ人との和平を望んでいるからだ」と答えました。また、ハマスを潤さないように注意しながら、ガザの住民のための人道支援を続ける方針も明らかにしました。(写真:リクード本部)

シリアが和平交渉を望んでいるようだが・・
「シリアはヒズボラに何千ものミサイルを与えて強化している。また第二次レバノン戦争以来、ハマス指導者のカリッド・マシャアルをダマスカスにおいて活動させている。その他のテロ組織や、イランとも密接にかかわり、中東に平和をもたらそうとしている気配はない。もしシリアがこれらの活動を放棄し、本当に平和を望んでいるとわかれば、シリアとも話すつもりである。」

<祈り>


現在イスラエルには政府がない状態です。(第17オルメルト政権が代理)
  1. はやく安定した政府が立ち上がるように
  2. 政府が立つまで、大きな戦争が起こらないように

■ 不条理を訴えるスデロット・メディア・センター

<ミサイルの町として、それがあたりまえになっている不条理>

1月、ガザとの紛争が停戦となりましたが、それ以降、イスラエル南西部にすでに90発のロケット弾やミサイルが撃ち込まれました。(写真:道路中央の穴はロケット弾によるもの)

2月25日、ガザから2.5Kmにあるスデロットへ取材に行ってきました。ハイファから電車でアシュケロンまで2時間半、途中テルアビブを過ぎると、乗客は徐々に減り、終点アシュケロンではほとんど乗客はいなくなりました。

アシュケロンもまた、ガザからのグラッドミサイル攻撃を受けている町です。29日(土曜朝)、2発グラッドミサイルが着弾し、数人がショックで治療を受けています。

スデロットはアシュケロンからバスでさらに30分ほどのところです。スデロットでは26日に2発、ロケット弾が民家に飛び込み家を破壊しました。住民はアシュケロンに出かけていて無事でした。住民の男性はラジオで聞いたがまさか自分の家とは・・・と語っています。

スデロットでは「ツェバ・アドン(赤色)・・ツェバ・アドン」という女性の太い声がサイレンです。これが聞こえてからロケット弾が着弾するまでわずか15秒。人々は大人も子どもも命がけでシェルターに駆け込みます。ロケット弾は着弾すると同時に中に入っている大量の小さな金属片や釘が半径100mにまで飛び散って人々を殺傷し、建物を破壊します。

スデロットにはノーム・ベイリンさんをリーダーとする若者たちが、小さなメディア・センターをボランティアで立ちあげています。このメディア・センターは、攻撃を受け続けているイスラエル南西部現地でイスラエル側の現実を訴える唯一の情報センターです。

リーダーのノームさんは「スデロットは世界で唯一、住民が実際にミサイルの攻撃を受けながら、それがあたりまえと受け止められている町。自国の政府すらそう思っている。もしこれが他の国だったらどうだろうか。一発のミサイルで大きな国際問題になるはずなのに。」と語っています。(写真:左側がノームさん:背景はガザ地区)

彼らによると、ガザでは報道陣を有効に活用するためのプログラムに大金を使っているとのことです。

一方、イスラエル政府は、ガザ紛争のとき、イスラエル側の記者を一人もガザへ入れませんでした(安全のためと思われる)。それで、現地の情報はすべてガザ側の発信するものになってしまったとのことです。ハマスは戦闘服を着ないで民間人の服装で戦います。戦いで死んだ場合でも「民間人」として数えられます。イスラエルは正確な死者数を確認せず、従って報道もなされませんでした。

かつてイスラエルは西岸地区のジェニンでの戦闘の時に同じ失敗をしています。ノームさんたちのビジョンはガザとの国境、最前線にあるスデロットにイスラエルのメディア向けインフォメーションセンターを設立し、多くの人を受け入れて現状を正しく伝えることです。

*スデロットの住民は、有権者の過半数がリクードとベイテイヌに投票していました。

<ハマス指導者にイスラエルが給料を払っているという不条理>

3週間ほど前に、『イスラエルの地リーガル・フォーラム』(ユダヤ人がイスラエルに居住できるという法律的な根拠を研究する機関)は、政府がガザ地区へパレスチナ自治政府職員給料支援金として1億7500万シェケル(41億円)の現金をガザへ送ろうとしているのを中止するよう最高裁に要請しました。

しかし、この時、トラックに積み込まれた大量の現金はすでにガザの国境にまできており、安息日に備えて検問所が閉鎖されるまで5分しかありませんでした。いいかえればルービンスタイン判事は、この要請にどう答えるのか5分しかなかったということです。

判事は、現金をそのまま検問所近くに保管することは大変危険であると判断し、現金を乗せたトラックがガザへ入るのを許可してしまいました。(写真のトラックではありません)

イスラエルはパレスチナ自治政府を強化するため、政府関係者の給料を支援しています。書類上ではガザのハマス指導者イスマイル・ハニエとモハンマド・アル・ザハルは、2006年の選挙で首相など自治政府の官僚に選ばれた人物です。運び込まれた現金を受け取るのは、ハマスのトップ指導者であるこの2人に他なりません。

リーガル・フォーラムのランダウ弁護士は、イスラエルが法律に従ってパレスチナ側へ送金するべきときがある。しかし次回は、イスラエル政府はよく考えてから送金するべきと訴えています。

ランダウ弁護士によると、ガザへの送金がどのように決められるかは、実際は不明だということです。決定機関が一定していないため、送金依頼が国防相から来たり、首相府であったり、イスラエル銀行からお金が送られてくることがあり、それぞれなんのための送金かも明確でないということです。

前回1億シェケルがガザへ送金されたときは、国防相と外務省の反対を押し切って首相府が送金を決めたということです(アルーツ・シェバ2月26日号)

グラッドミサイルを受けているアシュケロンにある発電所は、今もガザへ電力を供給しています。電力だけでなく、イスラエルは人道支援物資も日々大量にガザへ送り込んでいます。
そのガザからは日々ロケット弾が飛んでくる。その町への保護対策はまだまだ不足しているのに、資金は自国住民よりもガザ住民を助ける方を優先しているとした抗議の記事もありました。(写真:シェルターつきバス停:スデロット)

<祈り>

  1. スデロットの住民を覚えて
  2. スデロット・メディア・センターの活動が拡大していくように
  3. 新政府がパレスチナ側への送金について効果的な整備を行えるように

■ イランが原子炉の試運転

イランが、建設に34年かかったビシャーラの原子炉の建設を完成し、2月25日、試運転を行いました。試運転は4~7カ月かかるといわれ、2009年末までに本格稼働を計画しているとみられています。

原子炉の燃料は濃縮ウランです。今回イランはウランを濃縮するための遠心分離器を6,000基所有していることを発表していますが、将来的には50,000基まで増やしたいとしており、現時点では核燃料はロシアが供給しています。

問題は原子炉で使われた使用済み核燃料が、核兵器になりうるプルトニウムに変換可能であるという点です。イランは使用済み核燃料をロシアに返還することに同意していますが、ロシアからの核燃料輸入は2007年に始まっており、すでに十分持っているということも否定できません。

イランは核開発を平和的利用であると主張しています。しかし、建設中の水力発電は頓挫したままです。

イスラエルのバラク国防相は、危機感を訴え、イランに対する制裁措置を行う必要があるとしながらも、ロシアが協力しない限り効果がないとも語っています。イランとイスラエルの緊張がさらに高まっていることは以下の点からも推測できるとエルサレムポストは警告しています。

  1. 2月2日、イランは宇宙衛星の打ち上げに成功。イランは地震の観測に使うと主張していますが、アメリカが極秘に打ち上げている衛星に対抗する目的であることは明らかです。今年中にあと3基打ち上げる予定です。
  2. IAEAはイランの核燃料保存状態を実際の3分の1程度に低く推測していたことを認めました。イランはすでに2,227ポンドの核資材を保持しており、これは核兵器をつくるのに十分な量になります。
  3. イランでは現在ウランの遠心分離器5,400基が稼働しています。このうち164基は最新式で高度なスピードでウラン濃縮が行われるようになっています。
    *ウランは低濃縮では平和利用できますが、一定以上の濃度になると核兵器にしか使えなくなります。
  4. イランが核兵器を持つ前に手を打つと表明しているネタニヤフ氏が次期首相になること。

現在ロシアは、イスラエルのイランへの攻撃に備えてs300ミサイルをイランに配備しようとして「ます。もしこれが実現するとイスラエルの戦闘機がイラン上空に入ることが非常に難しくなります。もし実際に配備した場合、設置配備完了するまでのわずかな時間にイスラエルは攻撃を開始するでしょう。

もしイスラエルが攻撃した場合、イランは直ちにホルムズ海峡を封鎖し、サウジアラビアのラスタヌラ石油ターミナルなど(サウジアラビアの石油生産の65%に影響が出る)を爆撃すると繰り返し脅迫しています。

そうなるとタンカーで運ばれている石油の40%が停止し、全世界で消費されている石油の18%に影響が出ます。アメリカでは日常で使う石油の20%が不足することになります。イランから最も多く石油を購入している国は日本です。日本への影響は大きいと思われます。

<祈り>

  1. 終末はいつか必ず来ます。主があわれみ、イスラエルやイラン、サウジアラビアなどで多くの人が福音を受け入れることができるように。
  2. 苦難の日が来たときに、私たちクリスチャンが落ち着いて主のみ声に従って行動できるように
    心も霊も準備できるように。

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

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