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ハイメール通信No. 158 第18代政権発足にむけて

前オルメルト首相が辞職することとなり、2009年2月10日、総選挙が行われました。中道のカディマ、右派リクードの接戦となりましたが、結果はカディマがわずか1議席差で勝利となりました。しかし、右派に傾きつつある国会で、カディマが連立政権を立ち上げるのは困難とみられています。

オルメルト首相は辞職の日を前に、シャリートさんの返還をめざして間接的なハマスとの交渉を行っています。痛みを伴う取引ですが、シャリートさんが解放される可能性が出てきました。

明日どうなっているのかわからないというのがイスラエルです。主が守り最善の道へと導き続けてくださるよう祈りましょう。

人の立てたすべての制度に、主のゆえに従いなさい。それが主権者である王であっても、
また悪を行う者を罰し、善を行う者をほめるように王から遣わされた総督であっても、そうしなさい。(第1ペテロ2:13)



■ 2009年総選挙事情~2月10日 現地エルサレム・メディアセンターよりの速報~

イスラエルでは本日、国民の祝日とされました。昨夜ペレス大統領は国民に投票に行くよう呼びかけました。今日はあいにくのひどい雨と風でしたが、投票率は60%を超えました。

2月10日夜10時、総選挙の開票が始まりました。ここエルサレムのメディアセンターではチャンネル1,2,10他、各テレビ局の速報を流しています。

開票開始直後は中道カディマが30議席でトップを走っています。右派リクードが2位で28議席と接戦です。左派労働党13議席で3位から転落、超右派のイスラエル・ベイテイヌが15議席と3位に浮上してきました。

今回、大幅に議席数を増やしたイスラエル・ベイテイヌの党首リーバーマン氏は、「イスラエルの市民権はイスラエルに忠誠を持つ者だけに与えるべき」と過激発言で問題になった人物です。この発言が、アラブ系イスラエル人の市民権を剥奪することを意味していたからです。

しかしアラブ人議員が、「ハマスに敬意を表する」などと言いつつ、高額な給与をイスラエル政府から受けていることに疑問を持つ者も多く、支持を集めているものと思われます。

(開票が終了した11日現在の結果はカディマ28、リクード27、イスラエル・ベイテイヌ15、労働党13、となりました。)

正式な選挙結果は前線にいる兵士などの開票を待って18日に発表されますが、結果に大きな変化はないとみられています。
正式結果が出たところでペレス大統領が連立政権を立ち上げる政党と党首を指名します。

通常ならば最多議席を獲得したカディマのリブニ党首が指名されるはずですが、今回はリクードのネタニヤフ氏が指名される可能性が高いとみられています。

<カディマが議席最多数になったのに政権をとれないのはなぜ??>

現与党のカディマは、パレスチナとの二国家共存のため、エルサレムの分割を視野に入れた和平交渉を継続する方針です。そのためリクードは言うまでもなく、その他の小さな右派政党もカディマの連立に加わることはありません。

またカディマと連立を組む予定だった労働党が4位に転落した上、連立政権には加わらず野党にとどまると宣言しました。従ってカディマは最多数議席を獲得しましたが、国会過半数の61議席を超える連立政権を立ち上げることは不可能と思われます。

ペレス大統領は、左派労働党出身であるため右派リクードを支持したくないようですが、現状をかんがみて、リクードのネタニヤフ氏を指名せざるを得ないと思われます。

指名されるのがどちらかはわかりませんが、第18代政権が発足するのは、今日から41日目となります。

<リクードとカディマの連立政権??>

カディマは中道ですが、元々はリクードから発生した等であり、どちらかといえば中道右派に分別されます。したがってリクードとカディマが連立を組むことは全くありえないことではありません。

12日現在、右派リクードと中道右派カディマの連立により、よりバランスのとれた政府を望む声が高まっています。

リクードのネタニヤフ党首はもしカディマが連立に加われば、小さな右派政党を連立からはずすとの考えも明らかにしています。もしリクードとカディマの連立が実現すれば、政府が右派に傾きすぎないようになるというわけです。

これに対してカディマのリブニ党首はリクードの政権には加わらないと語っていますが、党内からは連立に加わるべきとの意見が強くなってきているようです。

カディマは、リクードの連立に加わる条件として首相の次に重要な閣僚となる外務相、国防相のポジションを要求していると報じられています。

3位になったイスラエル・ベイテイヌ(イスラエル我が家)のリーバーマン党首はいまだにどちらにつくとも表明していません。リーバーマン氏は超右派なので当然リクードにつくはずでが、世俗派でもあります。そのためリクードとすでに連立を約束しているユダヤ教正統派政党のシャス党(5位10議席)とまったく立場を異にしており、共に連立に加われないほどに対立しているのです。

シャスの宗教的指導者オバデヤ・ヨセフ師は、「リーバーマンに投票する者はサタンに投票するものだ」と公言しています。今後イスラエル・ベイテイヌがどちらに着くのかが注目されます。

イスラエルの主な政党

カディマ(28議席)
2005年ガザ撤退を推し進めるために前シャロン首相が立ち上げた政党。
現在の与党。シャロン前首相が持っていた二国家分離共存をめざし、エルサレムを分割し、東側をパレスチナに引き渡すことを視野に入れている。
右派と左派の中間であるが、どちらかといえば中道右派と言われる。
党首はツィッピー・リブニ氏で、もし政権をとればイスラエル史上2人目の女性首相となる。

リクード(27議席)
右派政党で、党首はネタニヤフ氏。エルサレム分割に反対し、政策は強硬的である。
イスラエルは和平にむけて努力してきたが、結果的に状況は悪化しただけでハマスやヒズボラの態度に変化は見られなかった事実や、イランの核兵器問題もあり、国民は全体的に右派傾向である。

イスラエル・ベイテイヌ(イスラエル我が家)(15議席)
超右派政党で党首はリーバーマン氏。
リーバーマン氏は元リクードに所属していたが、ガザ撤退に反対して離党、イスラエル・ベイテイヌを立ち上げた。
「イスラエルはユダヤ人だけの国」とリクードよりもさらに強硬的だが、動機は聖書や宗教的概念に基づいていない。
世俗派として知られ、安息日の規制の撤廃や、ユダヤ人と異邦人の結婚を認めるべきなどと法律の改正を求める傾向にある。このため、宗教政党のシャスと対立している。

労働党(13議席)
イスラエル建国の基となった。ベン・グリオン氏も労働党である。
パレスチナ人と初めて和平を試みた(オスロ合意)ラビン首相も労働党である。
左派として知られ、パレスチナ人との交渉で、二国家共存をめざす。
しかし、オスロ合意以降、テロが増え、ヒズボラやガザのハマスからの攻撃を受けて、国民は交渉だけでは和平は成り立たないと考えはじめているため、支持率を落としたものと考えられる。

シャス(10議席)
ユダヤ教の超正統派の政党。政府が律法にかなった法律を保持するよう働きかけている。
通常は条件によっては左派、右派どちらにでもつく政党だが、今回は条件はどうあれ、エルサレムの分割に賛同できないため、リクードについている。

<祈り>

  1. 主がイスラエルの国会を支配し、最善の政権を早く立ち上げてくださるように。

■ ハマスとの交渉大詰めか?

1月18日にイスラエルは停戦を宣言、続いてハマスも停戦を宣言しました。しかし両者が同意する停戦案がなく、ハマスはロケット攻撃を継続しイスラエルも応戦するという小競り合いが続いています。

現在エジプトとフランスの仲介で、ガザの復興支援を中心に停戦合意条項が検討されています。
その条項とは、ガザの復興支援を含む①18ヶ月の完全な停戦、②ガザとエジプトの国境解放、③シャリートさんとイスラエルに収監されているテロリストとの交換、④パレスチナ人同士の和解です。しかしながら、総選挙の結果、もし右派のリクードが政権を取った場合は上記の交渉は流れる可能性があります。

ハマスの総本部はシリアのダマスカスにあり、カリード・マシャアルが最高指導者として立っています。先週、ガザ地区のハマストップ指導者の一人ザハルが停戦後初めてメディアに姿を現しました。
ザハルはカイロ(エジプト)を訪問し、続いてダマスカスを訪問する見通しです。ザハルが動いたことで、ハマスがエジプトの仲介を実際的に検討しているのではないかとみられています。

また今まだ続いているイスラエルとの小競り合いですが、停戦を望むガザのハマスに対して、ダマスカスのハマスがそれを赦さないでいるのではないかとの見方もあり、ハマス内部に亀裂が発生しているとも考えられています。

エジプトのムバラク大統領は、3月2日にガザ復興支援のための会議を予定しており、サルコジ大統領も招かれています。イスラエル側は、ガザの復興支援がハマスの復興支援にならない限りは協力する意向を伝えています。

ハマスは当初、支援物資の分配の監視を自ら行うと主張していました。しかし、先週、ハマスの武装メンバーが国連の支援物資を強奪したことが発覚、ハマス指導部がそれを返却するという不祥事がありました。その後、ザハルは、支援物資の監視にはだれが立てられてもかまわないと態度を変えました。

<シャリートさんの解放>

首相のポジションにいる日数があとわずかになった今、オルメルト首相がシャリートさん(写真)返還に向けた交渉をさらに熱心にすすめています。交渉を仲介しているのはエジプトとトルコです。

返還と同時に釈放するよう要求されているのは次の4名です。①アブドラ・バルグーティ(多くの自爆テロ指導者でイスラエル人を多数殺害)②イアブラヒム・ハマド(西岸地区のハマス武装部門指導者)③アル・サイード(ネタニヤでの過越の祭り中のユダヤ人30人以上を殺害)④アフメド・サアダト(PFLP指導者)

いずれも超大物で、イスラエルが今まで釈放を拒み続けてきた囚人です。ハマスは最初からシャリートさんとの交換にこれらのテロリスト釈放を要求しており、なんの妥協もしていないことになります。もし今、その要求を受け入れたとしたら、いったいなんのために2年も待ったのか、今回のガザでの紛争でイスラエルはいったい何を得ることができたのかとの疑問を述べる記事が出ています。

今回はシャリートさんの解放に今まで以上の希望があるとされていますが、最後の最後に覆る可能性は十分にあります。彼の帰りを待つ両親の心理的なプレッシャーは想像にたえません。

<祈り>

  1. イスラエル政府を早く立ち上げてくださり、首相によい知恵を与え、交渉にあたらせてくださるように
  2. 拉致されているシャリートさんが守られ元気にイスラエルへ戻ることができるように
  3. シャリートさんの両親が希望を持ち続けることができるように

■ エルサレム市内の様子

町の中心部では、市民はいつもとかわらない生活をしています。最も交通量の激しいヤッフォ通りに電車を走らせる工事がはじまり、町の中は雑然とし、また混雑しています。(写真)

総選挙をめぐって、エルサレム市内にはリブニ氏や、ネタニヤフ氏、リーバーマン氏をつけた市内バスが走っていましたが、選挙が終わると同時にそれらはあまり見られなくなりました。

旧市街では、冬で雨期ということもあり、観光客の姿があまりみられません。嘆きの壁付近でゴラニ部隊(イスラエル陸軍のエリート)が通りかかると、周囲から喝采がおこり、ガザでの彼らの働きに敬意を示す場面もありました。

エルサレムの中心街ではブリット・イェルシャライムというメシアニック・ジューの会衆があります。観光客をいれて150人ほどが礼拝しています。そこでカウンセラーとして働いているボリスさんは、かつてBFPの支援を受けていた青年でした。日本の支援者に感謝をおくられています。

エルサレム最大の病院、ハダッサ・ヘブライ大学病院はアメリカからの支援でなりたっている病院ですが、アメリカの経済危機のあおりを受けて、職員全員500シェケルの給与減額となっています。

<祈り>

  1. エルサレムの平和と救いのために
  2. BFPの支援を受けているすべての人が、主を知ることができるように

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

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