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ハイメール通信No. 139 涙のむこうにある信仰

今年もプリム(エステルの祭り)がやってきました。暗闇に光り、哀しみが喜びに変わるときです。
そのプリムの月、ユダヤ教神学校の図書館でトーラー(聖書のモーセ五書)を勉強中の10代~20代の少年たち8人がテロリストによって射殺されました。今、彼らは信仰の試練を通っています。

テロの直後からスデロットへのロケット攻撃が激減しています。イスラエル軍は、この静寂は一時的なものとして、ガザの警戒を続けています。

イスラエル政府は、西岸地区へ数百の住居を新しく建設することを決めました。国連や海外から、和平交渉を妨害する施策として非難をあびています。

(写真:オリーブ山で犠牲となった少年たちの葬儀)

第十二の月、すなわちアダルの月の十三日、この日に王の命令とその法令が実施された。この日に、ユダヤ人の敵がユダヤ人を征服しようと望んでいたのに、それが一変して、ユダヤ人が自分たちを憎む者たちを征服することとなった。(エステル9:1)



■ ユダヤ教神学校でテロ

先週木曜日6日、夜8:30、エルサレムのユダヤ教神学校メルカズ・ハラブ・イシバがアラブ人テロリストに襲撃されました。10分間にわたる乱射で8人が死亡。11人が負傷、うち3人は重傷です。

死亡したのは同校の学生で15才2人、16才2人、18才1人、及び卒業生で26才の青年一人。

イシバ(ユダヤ教の神学校)では男性だけが勉強できるので、犠牲者はすべて男子です。

この日はアダルの月の新月祭。哀しみが喜びに変わったというプリム(エステルの祭り)がある特別な新月祭でした。学生たちは嘆きの壁で夕刻の祈りを終えて学校へ帰り、新月祭の祝宴を待っていたところでした。

テロリストが侵入したのは図書室。突然始まった銃撃に他の部屋にいた生徒たちは、最初はプリムの時に使う爆竹だと思ったといいます。しかし、図書室から逃げてきた生徒がテロだと知らせます。

20人ほどの生徒たちは直ちに教室に隠れ、戸口に机を並べて、犯人が入ってこないようにしました。犯人は図書館を出て、他に生徒がいないかと探し回っていました。

一人が携帯電話で警察に通報。犯人に聞こえないよう小声で話したため、警察はなかなか状況を把握できなかったようです。警察が到着する前に校内にいた学生と近くにいた非番の国防軍兵士が反撃してテロリストを射殺。ようやく惨劇を止めることができました。

乱射のあった図書館は文字通り血の海となりました。犠牲者の少年たちはそこでトーラー(モーセ五書)の勉強していた8人でした。ある者はテロリストに反撃しようとタルムード(分厚い聖書の解釈書)を投げつけようとして撃たれ、それを握ったまま死亡していました。“聖なる”書は犠牲者の手の中で血に染まっていました。

生徒たちが着用していたタリート(祈りのショール)も血で真っ赤になっていました。

テロリストは東エルサレム在住でイスラエル国籍をもつアラブ人で、20才のアラ・アブ・ダイム。かつてこの学校で運転手として働いていたことがあります。

“ガリラヤ自由戦士”と名乗る団体が先月のヒズボラ指導者ムグニエ暗殺に対する報復であるとの犯行声明を出しました。

警察は、アラ・アブ・ダイムの葬儀で暴動になる可能性があるとして、家族への遺体の返還をしていません。

葬儀ができないため、アラ・アブ・ダイムの両親は、なぐさめと「祝辞」をもってくる大勢のアラブ人のためにテントを出し、ヒズボラとハマスの旗を掲げました。(後で家族はイスラエル軍の指示で旗をとり降ろしています。)

ガザでは人々が通りに出て狂気乱舞し共に祝福し合う姿が、メディアに報道されました。

<聖書的シオニズムの神学校:メルカズ・ハラブ・イシバ>

「聖書的(宗教的)シオニズム」とは、現代イスラエル国家は神が聖書でイスラエルに約束されたことの成就である、したがってユダヤ人はシオン(エルサレム)に帰るべきであるとする考えのことです。

提唱したのはラビ・クック。神の約束の成就のためにイスラエルを守り、発展させるという考え方のもとに全国に聖書的シオニズムのイシバを設立しました。エルサレムにあるメルカズ・ハラブ・イシバは、その中心的な存在。

(写真:安息日に旧市街で祈るイシバの学生たち)

今までにイスラエル国家に貢献する有能な政治家や兵士を数多く送り出しています。また1967年以降、ガザ地区、西岸地区に積極的に入植していったのも聖書的シオニズムの人々でした。今回のテロは、彼らの活躍を知った上での犯行であると推測されています。

聖書的シオニズムの人々は、イスラエル国家を大切に考えています。しかし指導者が世俗派であるため、彼らの思いは複雑です。ガザを手放し、今西岸地区を引き渡そうとする政府に怒りさえ持っています。

テロの直後、教育相が慰問のためこのイシバを訪問しましたが、政府に反発する生徒たちの激しい罵声の中、学校を退出せざるを得なくなりました。

また、学生の中には、テロに対する報復を叫ぶ者もおり、暴力に訴える者が出るのではないかとも懸念されています。イシバでは、報復は生徒たちのすることではないと指導しています。

*イスラエル軍は西岸地区・ベツレヘムでの戦闘で3月12日、今回のテロを指揮したイスラム聖戦の首謀者1人とその仲間3人を殺害、6人を逮捕しました。

<ためされる信仰>

今回のテロは、メルカズ・ハラブ・イシバの生徒たちにとって信仰が大きく揺さぶられる時となりました。嘆きの壁で祈り、聖書を勉強中になぜ殺されたのか。なぜ、神はテロを止めて下さらなかったのか。なぜそこまでの憎しみを持ちうるのか。

このイシバにいる学生の多くは10代の少年たちです。彼らは今ダニエルやシャデラク・メシャク・アベデネゴのようにチャレンジを受けています。「もしそうなれば、私たちの神は、火の燃える炉から私たちを救い出すことができます。・・・しかし、もしそうでなくても、王よ。ご承知ください。私たちはあなたの神々に仕えず、あなたが立てた金の像を拝むこともしません。」(ダニエル3;18)

しかし、彼らにとって、あまりにも急なことであり、ショックが大きすぎました。事件は木曜の夜でしたが、メルカズ・ハラブ・イシバの学長は、続く安息日は、学校に残らず、自宅にもどって家族と過ごすよう、指示しました。

教師たちにとっても大きなチャレンジです。犠牲となった8人のうち6人はラビ・ウエイスの生徒たちでした。遺体の確認をしたラビは、6人が彼の生徒だったことに打ちのめされたといいます。

冷淡なことで有名なテレビのリポーターがショックと哀しみにうちひしがれているラビ・ウエイスにインタビューしています。「あなたの宗教はこの哀しみに助けとなっているのですか?」

結果的にラビは世俗派のリポーターと視聴者に神を語ることになりました。ラビは時々涙で詰まりながら、次のように答えています。

「なぜトーラーを学んでいた若者たちが死ななければならないのか。それは私たちにはわからないことです。彼らは何かの贖いとして取られたのでしょう。神の国の計算は私たちにはわからないのです。

私たちは死を恐れて、そこから逃れようとして生きています。しかし、死んだ後にも命がある。そこで神とともにすごすのです。この哀しみの中で喜ぶことは難しい。しかし、トーラーは喜ぶように言っています。たいへん深い教えです。

今はただ痛みだけです。私は泣いてもよいと生徒たちに教えています。」

<祈り>

  1. 重傷で入院している生徒たちの回復のために
  2. ショックを受けている他の生徒たち、彼らの主への信仰を覚えて
  3. ユダヤ人側から、アラブ人側から双方のテロが懸念されます
    若者たちが憎しみにかられて、暴力に出ることのないように
  4. まだ救われていない若い魂がこれ以上殺されることのないように
    (福音の拡大のために)

■ ガザ・ヒズボラ、そしてイラン

エルサレムでのテロ以降、ガザからのロケット攻撃が激減しています。しかし、この静寂は一時的なものだとして、イスラエル軍は警戒を続けています。(写真:ガザのイスラエル兵)

2月末からのガザ侵攻で、パレスチナ人120人が死亡。イスラエル兵の死者は2人です。

ヒズボラはムグニエ暗殺以降、イスラエルとの戦争準備をしていると報告されています。イランは、ムグニエの「功績」をたたえて、記念切手を発行しました。

<祈り>

  1. 殺戮と憎しみの連鎖が止まるように
  2. 戦場にいる兵士たち、現地住民を覚えて

■ プリムの祭り

エステル記を記念するプリムの祭り。今年は3月20ー,21日です。哀しみが喜びに変わったことを記念します。ユダヤ教シナゴーグではエステル記が朗読されます。

イスラエルの宿敵「ハマン」が出てくると、叫んだり足を慣らしたりして騒音を出し、「ハマン」という名が聞こえないようにします。

子供たちは仮装し、楽しみと喜びいっぱいの祭りです。町にはたくさん小さな「エステル王妃」が見られます。

プリムの名物は「ハマンの耳」。三角形のソフトクッキーがたくさん店先に並びます。

今年はエルサレムでの悲しいテロがあったので、イスラエル人にとっては複雑なプリムとなりそうです。

<祈り>

  1. イスラエル人が主への信仰を持ち続けることができるように
  2. 犠牲となった少年たちの家族を覚えて

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

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