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あなたの隣人を自分自身のように愛せよ

文:シェリル・ハウアー(BFP国際副会長)

聖書の中で最も大切な戒めと言われている「愛」。
キリストが十字架で示された究極の愛を思う時、その模範に従うことは時に難しく思われます。
どうすれば聖書で命じられている愛を実践できるのか、共に考えてまいりましょう。

Photo by Hannah Taylor/bridgesforpeace.com

あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい」。これはイエスが語られた二番目に大切な戒めであり、レビ記19章18節後半の引用です。「あなたは復讐してはならない。あなたの民の人々に恨みを抱いてはならない。あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい。わたしは主である

イエスはこれを1世紀のユダヤ人男性に向けて語られました。革新的でも目新しい発言でもなく、既に明らかにされてきた真理を再確認したものです。トーラー(モーセ五書)は神と隣人を愛するように教え、愛の実践方法を示しています。

レビ記19章18節について、ユダヤの子ども向け百科事典『私のユダヤ世界』は次のように説明します。「この律法はその他すべての律法の土台です。律法は、不正な取引や恨みを抱くことを禁じ、無防備な人々を気遣うことを強調しています」

ウィキペディアの「愛についてのユダヤ人の見解」という記事には、こうあります。「『あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい』(レビ19:18)というユダヤ教の中心的命令は、偉大な戒めと呼ばれ、トーラーの真ん中の書の中心に置かれている」

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ユダヤの賢人ラビ・アキバとラビ・ヒレルは、隣人を愛することが何よりも大切だと教えました。「自分が嫌なことを人にしてはならない、というのが律法のすべてであり、他はその解説である。さあ行って学びなさい」。このヒレルの言葉は有名です。

ラビ・ヒレルの時代の後まもなくして働きを始められたイエスは、ヒレルの教えに精通していたはずです。イエスはヒレルの言葉を引用し、「ですから、人からしてもらいたいことは何でも、あなたがたも同じように人にしなさい。これが律法と預言者です」(マタ7:12)と言われたに違いありません。

タナハ(旧約聖書)は信仰の学び、議論、実践を勧めています。イエスの信仰はこのタナハに基礎を置いていました。イエスが聖書の教えを認めなかったことは一度もなく、むしろ周りの人々に、聖書の真理を理解して日々の生活に活かすよう勧めました。

隣人を愛することは簡単ではありません。この戒めを確実に守るためには、自分が好む人だけでなく、好感を持てない人、怒りっぽい人、気難しい人をも愛する必要があります。

自分の隣人とは?

隣人とは誰でしょうか。この問いはユダヤ社会で関心を集め、多くの議論と意見を生みました。「ユダヤ人は皆隣人だ」と言う人もいれば、「全人類(偶像礼拝者を含めない場合もある)が隣人だ」と言う人もいました。

紀元1世紀にもこの問いは関心の的でした。ルカの福音書10章で、イエスと会話をした律法の専門家が申命記6章5節とレビ記19章18節を引用しています。「では、私の隣人とはだれですか(ルカ10:29)と律法の専門家が尋ねると、イエスは良きサマリヤ人の話をし、「この三人の中でだれが、強盗に襲われた人の隣人になったと思いますか」(36節)と問います。律法の専門家は「その人にあわれみ深い行いをした人です」(37節)と答えました。この話は次のように結ばれています。「あなたも行って、同じようにしなさい」(37節

ここから分かるように、イエスが期待しておられることは、私たちがこの隣人のように他の人を扱うことです。単に近隣住民や同じ文化圏に暮らす人、同じ教会に通っている人だけでなく、すべての隣人、時には敵と思える相手にも、愛とあわれみと気遣いを示すことです。イエスの時代、「よそ者」だったサマリヤ人は隣人愛の対象ではなく、ユダヤ人がサマリヤ人と交わることもまれでした。当時の聴衆にとって衝撃的な「隣人」の例を用いることで、イエスはすべての人が隣人であることを示されたのでしょう。

レビ記19章18節を引き合いに出した別の箇所で、イエスはこう言われました。「『あなたの隣人を愛し、あなたの敵を憎め』と言われていたのを、あなたがたは聞いています。しかし、わたしはあなたがたに言います。自分の敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。天におられるあなたがたの父の子どもになるためです。父はご自分の太陽を悪人にも善人にも昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからです。自分を愛してくれる人を愛したとしても、あなたがたに何の報いがあるでしょうか。取税人でも同じことをしているではありませんか。…ですから、あなたがたの天の父が完全であるように、完全でありなさい」(マタ5:43-48

「敵を憎め」という言葉はトーラーには出てきませんが、どうやら、当時、この教えは一般的だったようです。イエスはこの言葉の説明と解釈に異を唱え、敵を愛しなさいと明確に語られました。実に衝撃的で難しい命令です。

愛についての使徒たちの手紙

愛に関する最も有名な聖句はコリント人への手紙第一13章でしょう。この聖句は結婚式でよく使われますが、特別な時に用いられることを意識して書かれた良き言葉ではありません。むしろ人生の指針となる実用的で高尚な言葉であり、人間関係を成功させる方法を語っています。使徒パウロは「こういうわけで、いつまでも残るのは信仰と希望と愛、これら三つです。その中で一番すぐれているのは愛です」(Ⅰコリ13:13)と、何ものにも勝る愛の重要性について語りました。信仰と希望と同じように大切でありながら、愛はこれらすべてを凌駕(りょうが)しているのです。

13章で説明されている愛は、実践する愛です。自己中心でも自己満足でもなく、相手に完全に与えます。ギリシャ語でアガペーと呼ばれるこの愛は、「相手の価値によらず、意図的な選択に基づく愛のこと。このような愛は自然には生まれない。これは与える愛、無私の愛、見返りを求めない愛である」と、ネルソン・スタディー・バイブルに書かれています。

ヨハネも、人を愛さないなら神を愛していない、と率直に語りました。「神を愛すると言いながら兄弟を憎んでいるなら、その人は偽り者です。目に見える兄弟を愛していない者に、目に見えない神を愛することはできません。神を愛する者は兄弟も愛すべきです。私たちはこの命令を神から受けています」(Ⅰヨハ4:20-21

どうすればアガペーの愛で愛せるのか?

愛について探究すると、到底達成できない高尚な目標に思えるかもしれません。どうすれば敵を愛せるのか、どうすれば家族を自己中心抜きで愛し、真心から神を愛せるのか。この最大の戒めを守り通せる希望はあるのか。答えは「あります」。しかし、これは生涯にわたる取り組みであり、ドライブスルーで簡単に得られるようなものではありません。神を知り、神が主であることを認め、神との交わりに入ることが第一歩です。そうすれば、私たちの心と人生の中で神が働き始めてくださいます。

もし私たちが神の命令を守っているなら、それによって、自分が神を知っていることが分かります。神を知っていると言いながら、その命令を守っていない人は、偽り者であり、その人のうちに真理はありません。しかし、だれでも神のことばを守っているなら、その人のうちには神の愛が確かに全うされているのです。それによって、自分が神のうちにいることが分かります」(Ⅰヨハ2:3-5)とヨハネは言いました。さらに「光の中にいると言いながら自分の兄弟を憎んでいる人は、今でもまだ闇の中にいるのです。自分の兄弟を愛している人は光の中にとどまり、その人のうちにはつまずきがありません」(Ⅰヨハ2:9-10)と警告も与えています。

これは選択です。選択する機会は一日に何千回とあります。その中で愛することを選び取っていくのです。私の夫がユースパスターだったころ、中高生に愛について教え、「愛は感情ではなく選択の実践だ」と伝えました。愛を人生の優先事項とし、自分の家族や教会の家族、周りに住む人々、偶然出会った人々、さらには自分を憎む人々にも繰り返し愛をもって行動することを選ぶのです。

イエスはこのように言われました。「わたしはあなたがたに新しい戒めを与えます。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。互いの間に愛があるなら、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての人が認めるようになります」(ヨハ13:34-35

悲しいことに多くのクリスチャンが愛のテストに失敗しています。歴史的に見ても、ユダヤ人はこれまでクリスチャンから十分愛されてきませんでした。今日、神はイエスに真心から従う者たちにユダヤ人を愛するよう呼び掛けておられます。BFPでは、愛の実践を通してイスラエルの人々に神の愛を示していきたいと願っています。

私は、皆さんが隣人に実際に愛を示すことができると信じています。「このように、あなたがたの光を人々の前で輝かせなさい。人々があなたがたの良い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようになるためです」(マタ5:16

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