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エズラ、知られざる信仰のヒーロー -後編-

TEXT:シェリル・ハウアー(BFP国際開発部長)

後編ではエズラのみことばへの献身を、彼の記したと言われる詩篇119篇から学びます。

みことばへの愛を復活させる

エズラの神の御国への貢献はバビロンで終わりませんでした。BC457年、エズラは神殿の再建を続けるために、捕囚の民をエルサレムに連れて帰りました。彼は高潔で正しい人だったので、ユダヤ人共同体から支持されただけでなく、アルタシャスタ王の目にも留まりました。王は、もしエズラがバビロンに残るなら、安楽で豊かな生活を与えようと申し出ました。しかしエズラはイスラエルの地に戻る決断をしました。王はその旅を許可しただけでなく、エルサレムで民法を制定することのできる高い地位にエズラを任命しました。

ダリウス1世、クセルクセス(アハシュエロス)、アルタシャスタ1世、ダリウス2世らの墓
と信じられているナグシェ・ロスタム(イランに現存する遺跡) Photo by wikimedia

エルサレムに着いたエズラは、父祖たちの神から遠く離れてしまった民を見て落胆しました。祭司や宗教的指導者はほとんどいなかったと聖書には記されています。エルサレムの住民の多くは異教の慣習に浸り、神の命令に背いて外国人の妻を娶っていました。そのような結婚の結果、子どもたちはイスラエルが代々受け継いできた偉大な霊的財産を理解することなく成長していたのです。エズラは深く悲しみましたが、すぐに神殿の再建に取り掛かりました。数少ないリーダーたちを集め、団結力のあるチームを作ったのです。そのチームはエズラがバビロン捕囚の民に伝えたのと同じトーラーへの愛をユダヤ人共同体に呼び起こすために働きました。エズラは捕囚の中で忘れられてしまった律法を復活させ、今日も行われている新しいユダヤ人の慣習を作り出しました。ネヘミヤが到着して、二人は崩れた城壁の再建と共に住民の崩れた生活の再建に取り組みました。

こうして、エズラの知恵と洞察力により、ユダヤの歴史の道筋が変わりました。ネヘミヤ記には、エズラが律法の書(トーラー)を手に何千人ものイスラエル人の前で木の台の上に立ったと書かれています。男も女も子どもも、息を殺して主のみことばが語られるのを待っていました。そしてエズラが読み始めた時、「一つになって」応答ました。民は手を天に向かって上げ、「アーメン、アーメン(ネヘ8:6)」と叫んだのです。民は地にひれ伏して泣き、再び立ち上がりました。6時間にわたってエズラはトーラーを声に出して読み、何千人もの人々がそれに聞き入りました。そしてその結果、民は変えられたのです。歴史を見ると、ここでユダヤの民が個人として、また集団として悔い改めに導かれたことが分かります。民はついに自分たちの神とそのみことばに、再び結び合わされたのです。

エズラの記した詩篇

エズラはバビロンのユダヤ人共同体で書かれた文献に貢献したことでも有名です。聖書学者たちは、エズラはエレミヤ書、第二列王記、第二歴代誌の一部とエズラ記の全部、そしてネヘミヤ記の数章を記したと言っています。学者たちの中には、エズラの最もすばらしい記述は、詩篇119篇だとする人がたくさんいます。知恵の詩篇であるこの美しい詩は、情熱的な心の歌です。この詩からエズラの神のみことばへの愛を見ることができます。この詩には、言葉遊びが使われているため「8の詩篇」と呼ばれることもあります。この176節からなる詩篇は、8つの節が同じ文字から始まる一つの部分になっており、8節ごとに順番に22のヘブライ語アルファベットの文字が先頭に出てきます。この詩篇にはまた、神の導きを示す8つの言葉が使われています。それは、トーラー(みおしえ)、さとし、約束、戒め、おきて、仰せ、さばき、ことばです。

神の召しを受けた知恵の人エズラは、民の霊的感覚が捕囚の年月の中で鈍くなったことに気付いていました。イスラエルに帰還した人々でさえ、神殿再建への絶え間ない反対と苦難のために気落ちし、打ちひしがれていました。神殿と礼拝の明確な制度がなければ、ユダヤの民は舵のない船のようなものだったのです。エズラはトーラーへの愛によって民の心を満たし、正しい方向へ引き戻すことを決意していました。詩篇119篇の中にはその情熱がはっきりと見て取れます。詩篇119篇を見ると、トーラーは主の訓戒であり導きであることが分かります。重荷でものろいでもなく、受け入れて大切にしなくてはならない神からの贈り物です。トーラーは私たちの日常生活だけでなくイスラエル国家にも適応されなくてはならないのです。

学者たちは17節から22節でエズラが捕囚生活についてほのめかしていると言っています。神に背いた民の傲慢(ごうまん)さのゆえに、神は民を戒めなくてはならず、民を虐待し中傷する民族の指導者の下で捕囚とならせたのです。民のあがなわれる道は、神のみことばに対する献身だけでした。92節にはこのことがうまく表現されています。「もしあなたのみおしえが私の喜びでなかったら、私は自分の悩みの中で滅んでいたでしょう。」

真の解放は従う時に得られる

エズラはまた、自分たちが神の契約の民であることを若い世代に教えることの重要性を認識していました。エズラがイェシバ(ユダヤ教の神学校)をバビロン中に建て始めた時、エズラの心には次のみことばが鳴り響いていたことでしょう。「どのようにして若い人は自分の道をきよく保てるでしょうか。あなたのことばに従ってそれを守ることです。…あなたに罪を犯さないため、私は、あなたのことばを心にたくわえました。」(詩119:9、11)

彼は神のあわれみをどうしようもなく必要としている、悲惨な人間の姿を繰り返し宣言しつつも、トーラーに熱心に献身する者への恩恵を賛美することを忘れてはいません。

この詩篇に見られるもう一組の8つの言葉は、復活、喜び、力、いのち、助け、理解、知恵、希望です。これらは全部、従う生活から自然に生まれてくるものです。捕囚の地に生きる民にとって、真の自由は神の命令に従う時に見出すことができるものだったのです。

今日の私たちにとって

詩篇119篇はユダヤ人のみならず、クリスチャンからも深く愛されてきました。この詩篇について数え切れない説教がなされ、注解書が書かれました。多くのクリスチャンがこのみことばを読んでエズラの叫びに共感し、涙を流して祈りました。私たちはこの感動を与えるみことばの中に人生の導きを見つけることができるでしょう。

民の堕落に色を失って祈るエズラ
ギュスターブ・ドレ画

もう一人の有名な詩篇の記者、ダビデ王はエズラと同じ情熱を持って詩篇19篇を作りました。「主のみおしえは完全…主のあかしは確かで…主の戒めは正しくて…主の仰せはきよくて…主への恐れはきよく…主のさばきはまことであり、ことごとく正しい。」(詩19:7-9)また、ダビデは、「それらは、金よりも、多くの純金よりも好ましい。蜜よりも、蜜蜂の巣のしたたりよりも甘い(10節)」とも言っています。私たちはみことばへの愛が薄れていく時代に生きています。聖書を読む人はますます減っています。大部分のクリスチャンはもはや聖書の中に絶対的真理や人生の導きを見つけることができないのです。エズラが行ったように、私たちは既に啓示された神のみことばから離れないようにしましょう。

へブル人への手紙やペテロの手紙第一には、私たちもまた寄留者であると書かれていますす。エズラ時代の捕囚の民と同じように、私たちも人生に対する確信と忍耐する勇気を神のみことばの中に見付けるのです。自分の人生における召しを全うするためには、準備が必要であることをエズラは理解していました。「エズラは、主の律法を調べ、これを実行し、イスラエルでおきてと定めを教えようとして、心を定めていた(準備していた)からである。」(エズラ7:10)

第二テモテには「聖書はすべて、神の霊感によるもので、教えと戒めと矯正と義の訓練とのために有益です。それは、神の人が、すべての良い働きのためにふさわしい十分に整えられた(備えられた)者となるためです。(Ⅱテモテ3:16-17)」と書かれています。

ここで使徒パウロは、エズラ同様みことばの卓越性を強調しています。神によって書かれた聖書の中には真理がありますが、パウロはさらに進んで、私たちはみことばを学ぶことによって完全になると言っています。この「完全」という言葉はギリシャ語では「有能、もしくは熟練した」という意味です。私たちは神が私たちに願っておられる人生を送るために、十分整えられ、準備されるのです。万軍の主に持ち場に就かせていただき、自分の人生に与えられた神の御計画を全うするためには、一人ひとりがエズラのように十分に準備を整えていなくてはならないのです。

今日私たちは、映画、テレビ、インターネット、そして常に変化する社会の規範によって四方八方から誘惑を受けます。エズラ時代の捕囚の民のように、私たちも主の戒めをあざける人々に囲まれています。現在の私たちに対する答えは数千年前と同じです。間違った潮流に立ち向かう勇気、正しい選択をする力、忠実に主に従い、主の戒めから離れないという決断は、献身的に神のみことばをおそれ、みことばに従うところにあるのです。エズラは当時の社会から支持を受けました。それはエズラが神の命令に従う情熱を持っていたからであり、持ち場に就く準備ができていたからです。私たちが寄留者として、この時代を生きるに当たって、エズラのような心を教会と私たち一人ひとりの明確な特徴としたいものです。

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