プロジェクトレポート

嵐を逃れて

文:ピーター・ファスト(BFP CEO)

決死の覚悟で母国を後にしたユダヤ人たちが、イスラエルの地に戻ってきています。
そんな彼らを支援することで、私たちは神の愛と希望をお届けしています。

避難をするため列車に乗り込むウクライナ難民
Photo by Ruslan Lytvyn/Shutterstock

マックスさんは額に汗しながら、自閉症の息子レオン君(4)を連れてウクライナとモルドバの国境までやって来ました。ところが、いざ国境を目の前にすると、「家族を安全な場所に連れていけるだろうか」と不安が頭をよぎります。マックスさんの瞳に絶望の色が浮かびました。

妻のタチアナさんも夫の決断にここまで必死に付いてきました。夫から「ロシアの猛攻撃から逃げなければならない」と厳しい知らせを受けた時のことが思い出されます。耳をつんざくような爆発音と隣人たちの悲鳴は、彼女の心に永遠に刻み込まれました。

気が付くと、息子が無表情な顔で自分を見上げています。その視線を受け止めながらタチアナさんは弱々しくほほ笑み、肩に掛けた重いカバンのひもを直しました。大切な息子が、降り注ぐ爆弾の音を聞きながら眠れぬ夜を耐えていた姿を思い出しては、涙がこぼれます。近くに防空壕が無かったため、一家は夜になるとアパートの廊下に身を寄せ、タチアナさんは息子の頭をなでながら歌を歌ってあげていました。

今は、わずかながらも希望が見えます。タチアナさんは、背負ったカバンの重さと、10kmを歩いてきたことによる足の痛みを忘れようと努めました。乗ってきた車は、延々と続く車列の中に捨ててきました。愛するウクライナから逃れようとする難民が、波のように次から次へと押し寄せてきます。

たとえ暴力と苦痛が取り巻いていても、マックスさん一家には新生活に対する希望がありました。彼らはウクライナ系ユダヤ人です。戦争が勃発した時、もう一つの故郷が待っていることを思い出しました。イスラエルです。国境を無事に越え、イスラエルの救護所にたどり着きさえすれば、面倒を見てもらえることは分かっていました。

国境検問所の向こうにはイスラエルの旗が見えています。ウクライナの兵士がゆっくりと近付いてきて、パスポートを要求しました。マックスさんは心の中で話すべきことを練習し、安心させるようにタチアナさんを見つめると、レオン君の頬にキスをしました。

家族で一緒にイスラエルに渡ることはできるのでしょうか。現地に到着した後、どうやって生活していったらいいのでしょうか。すべてを失った自分たちを愛し支えてくれる人はいるのでしょうか……。マックスさんは「神が祖国まで自分たちを運んでくださり、絶望的な状況から助け出してくれる人を送ってくださるように」と祈らずにはいられませんでした。

ウクライナ難民のために家具を運び入れる
BFPボランティアたち
Photo by Michio Nagata/bridgesforpeace.com

マックスさん、タチアナさん、レオン君はその後、無事にイスラエルに到着しました。持ち物は、衣類と家族の思い出の品を詰めた数個のカバンだけです。彼らの心配事については、BFP(ブリッジス・フォー・ピース)が皆さんの愛と支援により奇跡的に応えることができました。

戦争が激化する中、ウクライナにはまだ大勢のユダヤ人が残っています。影響はロシアに住むユダヤ人にも及び、何万人ものユダヤ人が母国を去ろうとしています。

BFPは、ユダヤ人及びイスラエル国家と共に立つ世界中のクリスチャンを代表し、活動しています。この暗い時代にあって私たちは光の道しるべとなり、ユダヤ人とクリスチャンの間に立つよう召されました。見捨てられ、心に傷を負い、貧困にあえぐユダヤ人に希望を与えることを目指しています。

私たちは、何千人ものユダヤ人難民が無事にイスラエルに到着できるよう援助を提供してきました。難民の中には、十分な衣類や食料、資金を持っていない方も大勢います。住居も定まっていません。こうした状況に変化をもたらすため、私たちは神に召されました。喜びをもってこの任務を担い、神の愛を彼らの人生に注いでまいります。

マックスさんやタチアナさん、レオン君のようなユダヤ人難民が大勢いることをぜひ覚えてください。私たちと共に、より多くの人の人生に影響を与え、彼らの心に光をもたらすため、この働きに参加していただけませんか。私たちクリスチャンが、神の瞳(ゼカ2:8)と呼ばれる人々に愛を注ぐ者になれるとは、何という祝福でしょう(マタ25:35〜36)。彼らは、死の陰の谷を歩んできました(詩23:4)。しかし、アブラハム、イサク、ヤコブの神は彼らを導き、守り続けてこられました。

イザヤは当時のユダヤ人に慰めの言葉を宣言し、主が地の果てからご自分の民を集め、約束の地に連れてくる時が来ると告げました。「恐れるな。わたしがあなたとともにいるからだ。わたしは東からあなたの子孫を来させ、西からあなたを集める。北に向かっては『引き渡せ』と言い、南に向かっては『引き止めるな』と言う。わたしの息子たちを遠くから来させ、娘たちを地の果てから来させよ」(イザ43:5〜6

聖書は、イスラエルの神を信じる異邦人たちがユダヤ人の帰還の一翼を担うことを明らかにしています。現代に生きる私たちは、そのことを実感せずにはいられません! この神の召命を無視することなく、ウクライナとロシアにいるユダヤ人を救い出しましょう。彼らのイスラエルでの新生活に神の愛を注ぐため、祈り、支援してまいりましょう。ぜひ皆さんのお力をお貸しください!

「帰還者支援」へのご支援方法は、下記バナーよりリンク先をご覧ください。

※銀行またはゆうちょダイレクトからの送金の際は、必ずご連絡をお願いいたします。

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