文:ピーター・ファスト(BFP CEO)
10月7日のテロの全貌が分かるにつれ、
悲しみは深まるばかりです。
私たちは残された家族を支え続けます。
BFP(ブリッジス・フォー・ピース)の素晴らしい友人であるラビのイェフダ・グリック師と妻のハダスさんは、「アミツィン」(勇敢)という団体を主宰しています。親や配偶者を失いトラウマに苦しむ家庭に回復をもたらすため、支援活動を行う素晴らしい団体です。BFPとパートナーシップを組み、親や伴侶を失った方々に具体的な支援と愛を送り、癒やしの場を提供してきました。
片親を失うと、二つのアイデンティティーが新たに生まれます。一つは「寡婦・寡夫」、もう一つは「孤児」です。西洋の考え方では、孤児とは一般的に両親を失った子どもを指しますが、聖書とユダヤ教では少なくとも片親を失った子どもを孤児と考えます。父親と母親は二本の支柱のように互いに寄り添い、安定と安全、扶養、愛、平安、そして精神的栄養を子どもと結婚生活にもたらします。そのため片親が亡くなると、家庭という概念の全体が打撃を受けるのです。家庭の安定は失われ、悲嘆に暮れる片親は子どもたちと共に無防備な状態に置かれます。
2023年10月7日、イスラエル南部でハマスによる大虐殺が発生し、何百ものイスラエル人家庭が耐え難い惨事を経験しました。1200人以上の市民が殺害され、銃撃された人も多数います。家族全員が生きたまま焼かれた家庭もあります。さらに、多くの人々がガザ地区に拉致されました。わずか数時間の間に恐怖が現実のものとなったのです。
2023年11月2日、BFPのリーダーたちは死海のホテルに車を走らせました。甚大な攻撃を受けたキブツ・ベエリの生存者たちの避難先です。ベエリでは、住民の10%に及ぶ人々が虐殺されました。成人男女はおろか、子どもや赤ん坊までも犠牲となりました。避難先のホテルには住民約1千人が滞在しています。彼らのコミュニティーは完全に破壊されてしまいました。
夫を失った生存者の話
Photo by Michio Nagata/bridgesforpeace.com
私たちは一人の生存者から話を聞くことができました。あの日、ハマスが放つ何千発ものロケット弾がイスラエルに降り注ぐ中、彼女は家族と共に自宅の防空シェルターに逃げ込みました。しばらくするとハマスのテロリストたちが現れ、恐怖におびえる家族の耳に銃声が聞こえてきました。父親はすぐに行動に出ました。テロリストたちがシェルターのドアをこじ開けようとする間、ドアノブを握り続け、家族を守るために必死に戦いました。ドアを巡る攻防が20分ほど続いた後、いら立ったテロリストたちはドアに向けて自動小銃を発射。父親は致命傷を負いました。母親は、瀕死の夫の手から拳銃を取ると、とっさにドア越しに撃ち返しました。
しかし、これで一家が危険を逃れたわけではなかったのです。テロリストは一家を生きたまま焼き殺そうとし、煙がシェルターに充満し始めました。母親は3人の子どもたちを救うのに必死でした。夫の血が流れ出ないように押さえていた止血帯から手を放すと、小さな窓を開け、子どもたちが少しでも呼吸できるようにしました。おかげで母親と子どもたちの命は助かりました。しかし、ご主人は出血多量で命を落としました。この勇気ある女性は寡婦となり、子どもたちは孤児となったのです。
マゲン・ダヴィド・アドム訪問
11月27日、BFPのリーダーたちは、イスラエルの救急サービス「マゲン・ダヴィド・アドム」(MDA)のセンターを訪問し、内部を見学しました。驚くべき救命方法に耳を傾け、救急車や対応時間の他、救急隊員の活動についても学ぶことができました。
その後、話は10月7日のテロに及びました。痛ましくも英雄的な彼らの証言を聞きながら事件を理解し、テロリストが放った無数の弾痕が残る救急車を視察し、殺害された救急隊員のことも聞きました。最後に、ある録音を聞かせてもらいました。クファル・アザに住む9歳のマイケルとMDA通信員のやり取りです。マイケルは、6歳の妹と共にクローゼットに隠れていて助かりました。けれども、両親は目の前で殺され、妹のアビガイル(3)はテロリストたちに拉致されてしまいます。
通信員 ご両親は? 話す時は、私に分かるぐらいの小声で、でも大きな声で話さないでください。
マイケル OK……。ママは……最初はパパが外に出たんだ。そうしたら、兵士(テロリスト)が入ってきて、家の中でママを殺したんだ。パパが戻ってきたから、『ママが死んじゃった』と言った。それから僕たちはシェルターに逃げ込んだ……。彼らはパパを殺した……。今は僕たち二人だけ。
通信員 それで、今……こんなことを聞いて申し訳ないんだけど……たった今、お父さんとお母さんが撃たれたんだね?
マイケル はい。
この少年の勇敢さを想像できるでしょうか。そして、彼があの恐ろしい朝に経験したトラウマを――。奇跡的に妹のアビガイルは人質と囚人交換の際に解放され、兄姉と再会できました。しかし、マイケルと妹たちは孤児となりました。
BFPは、非常にデリケートな分野で奉仕を行っています。悲しみに暮れ、最も傷つきやすい状態にある人々を目の当たりにしています。シバ(7日間の喪に服す期間)の間、傷ついた家族と共に座り、彼らが泣く時には抱き締めます。世界中のクリスチャンが心配して祈っていること、共に立ち上がり行動を起こしていること、彼らは孤独ではないことを伝え、暗黒の時を過ごす彼らに神の愛を示し、人生に光をもたらそうと努めています。しかし、それは私たちだけの力ではできません。皆さんの助けが必要です。傷ついたイスラエルの人々の生活に変化をもたらすため、「危機基金」への惜しみない支援をぜひご検討ください。ご一緒に、この暗黒の時を照らす光となりましょう。今こそ、イスラエルの人々に希望をもたらすために団結する時です!
10/7のテロ襲撃とその後の戦争による寡婦・孤児へのご支援は、「危機基金」へお願いいたします。
ご入金方法は、下記バナーよりリンク先をご覧ください。
※銀行またはゆうちょダイレクトからの送金の際は、必ずご連絡をお願いいたします。