プロジェクトレポート

家路に就くまで

文:ピーター・ファスト(BFP CEO)

イスラエルに帰還してきたユダヤ人にとって、
重要なのはその後の生活再建です。
将来への不安で押しつぶされそうになっている新移民の方々を、
私たちは全力でサポートしています。

ウクライナから帰還したユリアさん(右から2人目)とレフ君(右端)、ハイム君(左端)
Photo by Bridges for Peace

BFPのボランティアたちが到着した瞬間、ユリアさんの目から涙がこぼれ落ちました。恥ずかしそうに涙をぬぐうユリアさんに、私はこう声を掛けました。「大丈夫です。泣いてもいいのですよ」。すると、再び彼女の目に涙があふれました。

息子のレフ君(18)とハイム君(13)に手を引かれながら、ユリアさんはBFPのボランティアが次々と贈り物を運び入れ、空っぽのアパートを満たすのを涙しながら眺めていました。

最初に届いたのはダイニングテーブル、次に息子さん用のベッド、続いてユリアさんのためのソファーベッドです。ユリアさんは、それまでリビングルームにある薄いマットレスで寝ていました。間もなく台所も、台所用品や調理器具、食器、掃除用具であふれかえりました。ベッドには新品のシーツが敷かれ、棚には食品袋が並びます。カラフルなラグと趣味の良い小物を飾り、さらに新しいノートパソコンとテレビもプレゼントして完璧な仕上がりです。

わずか1時間のうちに三つの小部屋は、ユリアさん、レフ君、ハイム君にとって居心地の良い居室に変わりました。彼らはこの場所で、ウクライナの戦争で負ったトラウマを癒やし、イスラエルでの新生活を築いていきます。

究極の選択

3月、ユリアさんは想像を絶する選択を迫られました。イスラエル側は、戦争から逃れてくるユダヤ人のために門戸を開いていたものの、ウクライナでは18歳以上の男性は出国が許されませんでした。ウクライナから脱出するということは、すなわち夫のドミトリーさんと長男マトヴェイ君(19)を置いていくことを意味します。「母親がそんな選択をするなんて……」とユリアさんは首を振ります。けれども、「最終的にはマトヴェイが私を説得しました。弟たちのために――と」。

ユリアさん、レフ君、ハイム君の3人は、レフ君が18歳になる誕生日の4日前に国境を越え、ポーランドに入りました。イスラエルの地に降り立ったのは、それから数日後のことです。

戦争からは無事逃れられたものの、ユリアさんは別の闘いに直面することになります。「どこに住もうか、どうやって息子たちを養おうか……。そんなことを考え始めると、夜も眠れませんでした」と当時を振り返ります。

イスラエルでの再出発は予想以上に大変だったことをユリアさんも認めます。「私の友人はドイツに行きました。彼女は『ドイツにいらっしゃいよ。生活は楽だし、物価も安いのよ』と言うのです。でも、私たちはユダヤ人です。イスラエルこそユダヤ人にとって唯一の場所なのです」

支援物資を配達するBFPボランティアたち
Photo by Bridges for Peace

ある日、BFPから「アパートに家具をそろえるお手伝いがしたい」との連絡を受けた時、ユリアさんはまず恐怖心がわいたといいます。「理解できなかったのです。もしかしたら見返りに何かを求められるのではないか、そうでないなら誰も欲しがらないような古くて壊れた物を持ってくるのではないか、そう思っていました。でも、これほどの品々とは……。きっと誰も信じてくれないわ。証拠写真を送らないと」。そう言って笑うと、ユリアさんは目を輝かせました。

わずか1時間で、この素晴らしいご家族の生活は一変しました。ユリアさんは、もうリビングルームの床に敷かれた薄いマットレスの上で、寝返りを打たなくていいのです。彼らを悩ませる恐れは消え去り、新しい人生に向け安定した基盤が築かれました。このご家族が未来に向かって歩き始められるのは、クリスチャンの方々が無償の愛を示してくださったおかげです。

ハイム君は学校に通い始め、ユリアさんとレフ君はヘブライ語のレッスンを受けているところです。レフ君はヘブライ語が流暢(りゅうちょう)に話せるようになったら、すぐにイスラエル国防軍に入りたいと願っています。

3人は、週末になるとバスに乗り込み、海に向かいます。近い将来、ドミトリーさんとマトヴェイ君と共に暮らせる日が来ることを期待して――。「今はここがわが家です」と彼らは口をそろえます。

私たち一行が帰る準備をしていると、ユリアさんが言いました。「私たちは、神の預言が成就し、神がユダヤ人とクリスチャンを結び付けている時代を生きているのですね」。全く同感です。

旅の続き

神は、ユダヤの民を世界の四方から集め、約束の地に連れ帰ると言われました。その神の働きのパートナーになることは、クリスチャンの特権です。ただし、イスラエルの地に到着しても、それは旅路の最初の一歩に過ぎません。

多くの新移民はわずかな荷物だけを持って到着します。どこかで雇用してもらおうにも、その前に何カ月も掛けてヘブライ語を習得しなくてはなりません。ユリアさんと同じように、多くの人々が夜も眠れず、どうやって家族を養っていこうかと思い悩んでいます。戦争でトラウマを負い、慣れ親しんだ人々や物を残して祖国を離れた彼らは、異国の文化や生活様式を理解しようと必死です。そうした中で、生きていくことの難しさに直面する状況を想像できるでしょうか。

神のパートナーとなり、新移民の人生を神の愛で照らし、お世話をすることは、私たちクリスチャンの特権です。「帰還者支援」では、新移民の食卓に食事を整え、交通費をまかない、子どもたちの学校生活を支援します。こうして、夜も眠れなかった新移民の方々に安眠をもたらすことができるでしょう。

しかし、それ以上に大切なことがあります。皆さんのご支援によって、彼らは自分が一人ではないこと、顔を合わせたことがないクリスチャンが自分たちを気遣い、成功を願ってくれていることを知るのです。ぜひお祈りくださり、寛大なご支援を検討していただけたら幸いです。皆さんの贈り物は、彼らの手を取り、家路へと導く助けとなるでしょう。

「帰還者支援」へのご支援方法は、下記バナーよりリンク先をご覧ください。

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