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プロジェクトレポート

過ぎ越しの祭りを祝うために

TEXT.レベッカ・J・ブリマー(BFP国際会長)

過ぎ越しの伝統的な食事(セデル)。ハガダーという決められた式次第の順序で進められるため、
席に着いてから食事が始まるまで長い時間が掛かる ©Ashernet
今年もいよいよ過越(すぎこ)しの祭り(4月15日-22日)の時期が近付いてきました。過ぎ越しの祭りは、ユダヤ人にとって非常に重要な例祭です。しかしこの大切な例祭を、悲しみながら過ごすユダヤ人もいます。

過ぎ越しの祭り

ユダヤ人の祭りとしておそらく最も有名な「過ぎ越しの祭り」。世界中のユダヤ人が、信仰の度合いにかかわらず何らかの形で祝う重要な祭日で、レビ記23章に「主の例祭」として定められています。過ぎ越しの祭りは、イスラエル人がモーセに率いられてエジプトの奴隷状態から脱出した出来事を記念します。この日は、家長である父親を中心に、子どもたちが過ぎ越しの意味を質問していく形式で、出エジプト前夜を追体験しながら食事をします。安息日や過ぎ越しの祭りは、神の全能の業と民族の役割を繰り返しユダヤ人の心と脳に刷り込み、彼らのアイデンティティを守ってきました。出エジプトからおよそ3000年間、連綿と祝われ続けてきた祭り。ホロコーストのさなかでも、危険を顧みず隠れて祝ったという証言がいくつもあります。いかなる迫害下においても先祖たちをエジプトから脱出させた主が、再び彼らを苦役と奴隷状態から解放し自由にしてくださるという希望の象徴でもありました。

ユダヤ人は過ぎ越しの祭り(レビ記には種を入れないパンの祭りと表記されている)の期間中、「パン種」(酵母やイースト菌)を使った食物を一切口にできません。そればかりか、過ぎ越しの前には、家中をひっくり返したような大掃除をして、パン種を取り除きます。スーパーなどの店先からも当然パン種を使った製品である、パン、パスタ、ケーキ、クラッカー、ビールなどが無くなります。その間、マッツァという種を入れないパンが主食になります。薄く平べったい、味の無いクラッカーのようなものです。現代のバラエティ豊かな食事に慣れている人には、味気ない7日間となりますから、マッツァをそのまま食べるだけでなく、スープの中にクルトンのように入れたり、マッツァボールというお団子状の物をチキンスープに入れて食べたりと工夫を凝らします。中にはマッツァでケーキを作るという家庭もあるとか。ですからこの時期は一年に一度、マッツァが大量生産され、大量消費されます。

すべての人が過ぎ越しを祝えるように

それほど重要な祝祭日ですが、貧困家庭では、この過ぎ越しの準備を十分にできません。そこで、BFPでは特別にぶどうジュースとマッツァ(種なしパン)のセット7000世帯分、個人にしておよそ3万人分を提供し、貧しいユダヤ人がお祝いできるようにしています。しかし、その需要と供給が追い付かず、マッツァの特別支給の依頼がさまざまな団体から殺到しています。

今年は特に、イスラエル国防軍所属の医療チームやハイファの視覚障がい者の施設から、その依頼が来ています。イスラエル国防軍医療部隊では未来の医療従事者たちが訓練に励んでいます。多くの人は、祝祭日を祝うために家族の待つ家に帰宅できます。しかし、国内に身寄りのいない青年や、貧困家庭出身者は過ぎ越しを充分に祝うことができません。過ぎ越しの祭りを祝えないユダヤ人の気持ちは、欧米で言えば、クリスマスをひとりで過ごす、あるいは日本で言えばお正月を貧しい食卓でひとりで過ごす、というようなわびしさに例えられるでしょう。普段ほとんど神を意識していない人であっても、アメリカ人はクリスマスを、日本人はお正月を大切にし、楽しみにしています。同様に、ユダヤ人がいかに世俗的になろうとも、90%が過ぎ越しを祝うという調査があります。

イスラエル軍医総監から、今季BFPに125人分の食料提供依頼がありました。その対象者のほとんどはイスラエルに一人で帰還した新移民です。イスラエル国防軍所属の医療チームは東日本震災時、南三陸町に医療チームを送ってくれた母体です。また世界各国の災害救援にいち早く駆け付け、人道支援を行っています。そのような彼らに、過ぎ越しの希望を食料という形でお返しできることは、クリスチャンがキリストの愛を表すチャンスであり、特権でもあると考えています。

ハメツ(パン種)を徹底的に掃除して、
焼き捨てる正統派ユダヤ教徒 ©Ashernet

また、ハイファという街の、ある住居型施設では視覚障がいを抱える400人のお世話をしています。毎年過ぎ越しの祭りの時期にBFPに支援要請があり、その支援はとても喜ばれています。その他にも数多くの支援団体から、過ぎ越し準備のための要請があります。その多くは、普段BFPのプログラムには入っていない団体ですが、背に腹は代えられないということで緊急の要請をくださっています。それほど、ユダヤ人にとって、この祭日が大切だということが要請の多さからも分かります。クリスチャンに心を開き切っていない、そのような新しい支援先に届くためにも、こうした例祭の特別需要は良い機会となります。BFPは、すべての食卓にマッツァが上り、彼らが誇りと喜びのうちに主の祭りを祝えるようにお手伝いをさせていただきたいと願っています。

イスラエルにも支援が必要

ハイテク分野や観光産業の栄えるイスラエルに、なぜ支援が必要なのかと思われる方も多いことでしょう。実際に、経済協力開発機構(OECD)の最近の発表によると、イスラエルは急激な経済成長と低失業率に沸いています。しかしその同じOECDのレポートによると、加盟国35カ国の中でも最も貧困率の高い国でもあるというのです。

貧困者に過ぎ越し用の食料を
届けるチャリティーを多くの
ユダヤ教団体も行う©Ashernet

「イスラエルの生産高の伸びは相対的に好調で失業率も過去最低。ハイテク・セクターも引き続き好調だが、イスラエル世帯は5軒に1軒の割合で貧困ラインを下回っている現状」だと伝えています。

さらにイスラエルのある地域では、人口のほぼ半分が貧しい生活をしているとの指摘もあります。さまざまな理由がありますが、中でも最も支援を必要としているのは移民たちです。帰還してからの数年は、ヘブライ語を勉強し就職して生活が安定するまで苦労の連続です。新移民の方々がより良い将来への希望を胸にイスラエル社会にしっかりと根を下ろすまで、BFPは主の僕として喜んで仕えたいと願っています。この愛の実践を可能にしてくださっているのが、皆様のお祈りとご支援です。現在BFPは11種類のプログラムを通じて、聖書に書かれている通り、まさに「ダン(北)からベエル・シェバ(南)まで」皆様の愛を形にしてお届けしています。そのほとんどのユダヤ人にとって、クリスチャンからの愛を受けるのが生まれて初めての経験になります。

皆様の尊いお祈りとご支援に、心からの感謝を申し上げます。皆様の代表として、イスラエルに送り出され、皆様の手足となって働くことができる特権を感謝します!どうかイスラエルの神ご自身が、イスラエルを祝福し続けてくださる皆様の尊い犠牲に豊かに報いてくださいますように。「主があなたのしたことに報いてくださるように。また、あなたがその翼の下に避け所を求めて来たイスラエルの神、主から、豊かな報いがあるように。」(ルツ2:12)

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