ホーム支援するエズラ作戦プロジェクトレポートバックナンバー > 同じ女性として…… ―地元の人々の心に触れる“イスラエル人プログラム”―

プロジェクトレポート

同じ女性として…… ―地元の人々の心に触れる“イスラエル人プログラム”―

BFPイスラエル人支援プログラムスタッフ 中村恵美子

「ここは何をしている所ですか?」黒い服を身にまとったユダヤ人の男性(正統派ユダヤ教徒)が、6人の小さな子どもを連れて興味津々な顔をして入ってきた。外に並んだ帰還者を見たからなのか、誰かから聞いたのか……。初めにクリスチャンの団体であることを告げ、いくつかの質問に答え、フードバンクの中の様子を見てもらった。「イスラエルの貧しい人たちのために働いているんですね。良いことをしている団体だね」と言ってにっこりと微笑んで、彼らは去って行った。

車の往来が激しく、チェックポイントとして警官や兵士が頻繁に見張っている場所、その角のビルが『BFP食料配給センター』になっており、誰もが気軽に出入りする。

ある日、洋服の入った大きなごみ袋を2つ、両手に持った男性がいきなり事務所に入ってきた。重たそうな大きな袋を見て、「洋服でカバーされた爆発物では!!」と、一瞬、体が硬直した。テロが頻発するこの土地では、バスに乗っている時も、乗ってくる人の顔を見ず、その人が何を持っているかを先に見る。その後どんな人物なのかをチェックする。

いつもの習慣どおり、荷物をたどって顔を見ると、少し恥ずかしそうに「これを私たちの仲間に渡してください」と彼は言い、それを置いて去って行った。若いユダヤ人男性が、クリスチャン団体をとおして同胞をサポートする……。何とも言えない温かい思いが私の心を満たした。

あるイスラエル人一家の応対をしている時、一人の婦人が紙袋を抱えて入ってきた。「これをどうぞ……」とその婦人は、私と話しているユダヤ人の女性に素敵なマフラーを渡した。私も彼女もビックリした。ためらっていたユダヤ人の彼女に、「ベバカシャ(どうぞ)」と私が言うと安心したのか、受け取った。「もう一枚どうぞ」と、婦人は色違いの物を渡した。「たくさんありますから……」と婦人が紙袋の中を見せた。ユダヤ人女性は思いがけない贈り物を受け取り、喜び勇んで帰って行った。婦人は、「ここはBFP(ブリッジス・フォー・ピース)なんですね!友達がこれをユダヤ人のために、と言って送ってくれたけど、誰にどのように渡せばいいのか途方に暮れていたんです。そんな時BFPの大きな看板が目に入って……。神さまがこの場所に連れて来てくださったことを感謝します!どうぞこれを皆さんに渡してください」と、興奮した様子で、シャバットやお祭りの時に使うキドゥーシュ用の素敵なかぶり物がたくさん入った袋を置いて帰った。

イスラエル人女性に支援物資を手渡す中村さん。

昨年の秋、配給センターが拡張され、イスラエル人のための事務所が新たに設置された。帰還者専用の事務所では、初めて訪問した家族を登録し、台所用品と毛布を渡している。そのほか、毎週来る帰還者に食料品を渡す窓口もあり、帰還者には二つの事務所がある。そして今回、イスラエル人用の事務所ができたのだ。

しばらくの間、食料品をパックするだけで、ユダヤ人家族と接するチャンスが極端に少なくなったことに寂しさを感じていた。また、ヘブル語クラスに通いながらも、それを実際に使う機会がないことに、少々むなしさを感じていた。そんな中、「主よ、すべてがあなたの御手の中……寂しさとむなしさを感じる私をあわれんでください。どのような状況であれ、喜んで仕える霊で私を満たしてください」と祈った。それからしばらくして、十月も終わりに近いある日、フードバンク・フロアのマネジャーのシャーリーと、イスラエル人プログラムのコーディネーターであるロッテムが私を呼び、「エミコ、来月からイスラエル人プログラムを担当してもらえないか」と言った。十分後、再び「すぐに今日からやってほしい」と声が掛かり、その日、突然部署が変わった。

通りに面したガラス張りの事務所にまぶしい太陽の光が差し込む。座り心地の良い大きな椅子に広い机。その上に置かれたイスラエル人家族のリスト。リストに書かれた一人ひとりの名前を読み、「神さま、今週ここを訪れるすべての家族を祝福してください。悩み苦しみのある家族に、慰めと励ましが、問題のあるところにあなたの解決が、病のあるところに癒やしが……どうぞ彼らにあなたの良き物を与え、満たしてください。彼らを守ってください。ここで手渡すすべての物に、あなたの愛が含まれています。どうぞ彼らの心に触れてください。あなたの愛に触れられあなたを知ることができますように……」と、静かに祈る。

「ヨム・ヨム・ホレデト、ヨム・ヨム・ホレデト……。」きれいに包装されたジョイバスケットを、イスラエル版『ハッピー・バースディ♪』を歌いながら、一人の女性に手渡す。過酷な生活を負う彼女は、自分の誕生日を忘れていた。彼女の目が潤み、大粒の涙があふれた。言葉も出ず、お互い抱き合った。彼女は震えていた。今まで誕生日の祝いをしたことがなかったのだ。

ある時は、お酒のにおいをぷんぷんさせた男性が事務所に入ってきた。怒鳴り声で何を話しているのかさっぱり分からない。急いでロッテムを呼んだ。ドライバー担当のヨセフも駆け付けてきた。話し掛けると言葉を遮って大声でわめきだす。2人は彼に親切に接した。30分後、彼は落ち着いて静かに去っていった。

パートタイマーとして、配達の仕事を受け持っている女性がロッテムと話している。自爆テロ現場近くにいた子どもが、夜中、突然恐怖に襲われ大声を出す。そして、いろいろ奇怪な行動をとって家族が苦しんでいる……と語る。そこにもう一人、食料品を取りに来た婦人が話に加わる。彼女の息子さんは爆発音を耳にしただけなのに、夜中、冷や汗をかき、うめき声を出して飛び起きるという。ロッテムは、学んできたばかりのカウンセリングのノートを開き、彼女たちと話し合う。ちょっとしたカウンセリング事務所のような雰囲気だ。彼女たちが帰ったあと私もそのノートを見せてもらい、いろいろなことを教えてもらった。

イスラエル人プログラムの現場の様子

スロバキアで働いているBFPスタッフから、こんなリポートが届いています。

これは、三坪ほどのイスラエル人プログラムの事務所で日々展開している出来事の、ほんの一部である。ここでは訪れる人々の家庭の状況を垣間見ることができ、具体的に祈ることができる。

イスラエルのために働く思いが与えられた時、同じ女性として、ユダヤ人の女性たちと接することができる働きができれば……とひそかに思っていた。女性の立場はとても重要である。女性は、子どもや夫に多大なる影響を与える存在である。ユダヤ人の彼女たちが、何があっても動ぜず、真実で、確かなものをもって、家族を守り支えていくことができるように、私はこの働きをとおして主にお仕えすることを心から願っている。

すべての人には主が必要だ。両手いっぱいに食料品を抱えて、ドアを開けて出て行く彼女たちの後姿を見るたびに、切に祈らずにはいられない。

「『わたしは、もう一度、地だけではなく、天も揺り動かす。』この『もう一度』ということばは、決して揺り動かされることのないものが残るために、すべての造られた、揺り動かされるものが取り除かれることを示しています。こういうわけで、私たちは揺り動かされない御国を受けているのですから、感謝しようではありませんか。こうして私たちは、慎みと恐れとをもって、神に喜ばれるように奉仕をすることができるのです。」(ヘブル12:26-28)

いつの日か、ユダヤ人の彼女たちとともに、主を賛美することを夢見つつ……。
イェルシャライムよりシャローム

記事の先頭に戻る

ページトップへ戻る

特定非営利活動法人
B.F.P.Japan (ブリッジス・フォー・ピース)

Tel 03-5969-9656(平日10時~17時)
Fax 03-5969-9657

B.F.P. Global
イスラエル
アメリカ合衆国
カナダ
イギリス&ヨーロッパ
南アフリカ共和国
日本
韓国
ニュージーランド
オーストラリア

Copyright 1996- © Bridges For Peace Japan. All Rights Reserved.