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ハイメール通信No. 181 知恵の始めに知恵を得よ

アメリカの仲介で、5日イスラエルとパレスチナ自治政府が“接近”間接和平交渉を再開する見通しとなりました。ネタニヤフ首相が自ら交渉団のリーダーを務めます。この他、核兵器疑惑のイランへの対処、冷え込むトルコとの関係、内政では政治家の汚職問題など、首相には次々に決断すべき重大事項が押し迫っています。今月は特にネタニヤフ首相を覚えてとりなしましょう。

心を尽くして主に拠り頼め。
自分の悟りにたよるな。
あなたの行く所どこにおいても、主を認めよ。
そうすれば、主はあなたの道をまっすぐにされる。(箴言3:5-6)



■ ネタニヤフ首相を取り囲む現状

1.アメリカとの関係

先月、アメリカのバイデン副大統領が和平交渉推進のためにイスラエルを訪問しました。しかし、その真っ最中にイスラエルの内務相がエルサレムの微妙な地域に突然建設許可が出し、パレスチナ側が激怒。和平交渉が暗礁に乗り上げ、副大統領の顔に泥をぬった形となりました。イスラエルとアメリカの関係が微妙に揺らいでいることが誰の目にも明らかになりつつあります。

しかしオバマ大統領はあくまでも和平交渉を再開させるとして双方に圧力をかけ、5月5日より、アメリカの仲介で間接的和平交渉が再開されるみこみとなりました。揺らぐアメリカとの関係の中で、ネタニヤフ首相が決断しなければならない課題としては以下の通りです。(写真:2009 年ニューヨークでのネタニヤフ首相とオバマ大統領)

①イスラエルとパレスチナ自治政府の“接近”間接和平条約開始

5月5日、アメリカを仲介とし、イスラエルとパレスチナ自治政府が“接近”間接和平交渉を開始するみこみとなりました。交渉の方法は、仲介者となるアメリカの中東特使ジョージ・ミッチェル氏がエルサレムとラマラを言ったり来たりしながら交渉をすすめます。“接近”という表現は、イスラエル側交渉チームのリーダーはネタニヤフ首相、パレスチナ側はアッバス議長という最高レベルの指導者が直接関わっているというところから来ています。

彼らが話し合わなければならない点は、国境線、エルサレムの帰属、治安問題、水、入植地、難民(パレスチナ)問題ですが、どれも結果がでそうにないものばかりです。一つ一つ単独に取り組んでいく予定ですが、イスラエル側がまず治安と水問題を解決したいとするのに対し、パレスチナ側は、国境線問題を最初の議題にしたい考えで、すでに不一致が見られます。ミッチェル氏はまず5日、エルサレムでネタニヤフ首相と会談し、その後、ラマラのアッバス議長のところへ行くことになっています。

<地図:上がラマラ、下がエルサレム:車で30分程度>
● 黄色のエリアがパレスチナ自治政府管轄
● 茶色がユダヤ人入植地周辺でイスラエル軍が駐留している地域

ネタニヤフ首相は今回のアドバイザーとして、イツハク・モルコ氏を選びました。モルコ氏はかつてPLOの故アラファト議長とイスラエルの交渉を経験したベテランです。交渉内容が漏れることへの懸念から、今回のアドバイザーはモルコ氏のみと報じられています。

一方、パレスチナ側も、ヤセル・ラボ氏、セエブ・エレカット氏というイスラエルと長年交渉にあたってきたベテランとともにアッバス議長が交渉リーダーを務めます。
和平交渉と平行してパレスチナ側ではファイヤド首相が国造りに向けた2年計画を出しており、国連に独立を申請する可能性もあります。全体的に見ると、イスラエルにとっては、やや不利な情勢にあると言えます。ネタニヤフ首相に、主からの知恵が必要です。

*西岸地区では、ネタニヤフ首相が建築凍結の指示を出して以来、過激なユダヤ人入植者が近隣のパレスチナ人村のオリーブの木を燃やしたり、家を取り囲んで叫ぶなどの暴力行為を続けています。3日、このような行為で入植者7人が逮捕されました。和平交渉再開と同時にこのような行為が多発する可能性が高まっています。

②中東地域核フリーゾーンについて

オバマ大統領は1日、核拡散防止条約(NPT)に基づき、中東を核のない地域にするとの提案を出しました。これが採択されると、イランだけでなくイスラエルも核を保有することができなくなります。
ネタニヤフ首相は、3日、オバマ大統領の中東地域核フリーゾーン案についてエジプトのムバラク大統領をカイロに訪ね、会談することになっています。
イスラエルは現在、NPTに非加盟で、核保有について否定も肯定もしないという黙秘を続けていますが、保有していることは暗黙の事実となっています。仮にアメリカの要請に応じてNPTに加盟した場合、核を持っているかどうかを明らかにしなければなりません。

イスラエル国内では、核保有を今のうちに発表してしまう方がいいのではないかとの意見もある一方、全世界がNPTに加盟するべきとの呼びかけは今に始まったことではないとして、懸念する必要はないという見方もあります。核保有を表明するのかしないのか、NPTに加盟するのかしないのか、アメリカの圧力にどう対処するのか、首相に主の知恵と導きが必要です。

* NPT(核拡散防止条約)???

1963 年に、国連で採択された条約で、当時すでに核兵器を保有していたアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国以外の国が核を保有することを禁じる条約です。当初批准した国は62 ヵ国でしたが、現在は190 ヵ国が加盟するようになりました。典型的な不公平条約とも言われ、肝心の最も問題となっているインド、パキスタン、またイスラエルもNPTに加盟していません。北朝鮮は、1993 年に脱退しています。

2.イランと国連の制裁

前回、中国がアメリカのイランへの制裁に歩み寄りを見せているとの記事をお届けしました。しかし、言葉とは裏腹に、中国はやはりイランへの制裁を拒みました。現在、イランへの制裁としてアメリカが提案している制裁は貿易封鎖です。具体的にはアメリカとヨーロッパにイランの船籍が入港することを禁じます。イラン機が空港に着陸することを禁じる可能性も否定できません。
イランは石油産油国ですが、独自で精製する技術や設備がなく、他国に精製を依存しています。この制裁が科されると、イランは貿易に多大なダメージをうけることになります。

またNPTに加盟しているイランは、今月ニューヨークで開かれる総会にアフマディネジャド大統領も参加する予定となっています。ニューヨークではまず、高級ホテル35 軒が、イラン大統領とその代表団の宿泊をボイコットすることになっています。アフマディネジャド大統領の演説の時、誰も会場に出席しないことが予想され、様々な論議がおこっています。

イランの動きはイスラエルにとっては最高レベルの懸念事項であり、制裁が成功しない場合、イスラエルが軍事行動にでる可能性は高まる一方となっています。これについて決断するネタニヤフ首相は、今や中東だけでなく、世界をまきこむ地球規模の決断を迫られていると言えます。

3.トルコとの関係について

昨年のガザでの紛争以降、トルコとの関係もまた冷え込んでいます。トルコのエルドアン首相は、イスラエルをあからさまに非難するだけでなく、イランやシリアとの接近を始めています。
この現状を懸念し、イスラエルはトルコの武器売却要請を拒否することを決めました。兵器の情報がイランやシリアに流れないようにするためです。近隣諸国では友好関係にあったトルコとの反目は、イスラエルにとっては痛手です。信頼関係が回復するように祈りましょう。

4.前オルメルト首相贈賄疑惑

前オルメルト首相がエルサレム市長、また産業相であったときの秘書、シュア・ザカンが、オルメルト氏に百万シェケル以上の賄賂を取り次いだ疑いで、先週、海外から帰国したところ空港で逮捕されました。調べによると、オルメルト氏がエルサレム市長であった当時、市は高級住宅マンションを建築するホーリーランドプロジェクトをすすめていました。賄賂はその時、土地の所有者から首相に送られたものです。シュア自身も1万シェケルの他、宝石や絵画など4~5千シェケル分の物品を受けとっていました。シュアは1週間、収監されたのち、現在は自宅謹慎となっています。

<祈り>

  1. ネタニヤフ首相を主の前にとりなしましょう。
  2. 和平交渉が再開されると双方の過激派が暴力行為に出る可能性があります。
    治安のためにもとりなしましょう。

■ 世俗派か宗教派か

イスラエルのイディオト・アハロノト紙の調査によると、今年エルサレムの公立の小学校に入学した新一年生のうちで、世俗派はたった12.7%であったことがわかりました。80%以上は正統派、または超正統派であるということです。公立学校に正統派が増えていると言うことは、国の教育方針に偏りがあるのか、超正統派への優遇措置が過剰なのではないかと指摘されています。

しかし、これはエルサレムの超正統派の人口が増えているということも現しています。エルサレムでは近年、若い世代を中心に他都市へ流出する減少が起こっていました。エルサレムの住居費が高いなどがその原因です。その分、ユダヤ教正統派たちが以前は住んでいなかった世俗派の地域、たとえばキリアット・ヨーベルなどに住むようになっています。結果として、エルサレムでは人口流出に歯止めがかかったというのが現状です。実際、ユダヤ教宗教系統の学校では10%も学生が増えています。

この傾向はエルサレムだけでのものではないと懸念する記事もでています。なぜ懸念されるのか。それは、正統派たちは税金面で優遇されていたり、兵役義務がなかったりするからです。もしこのまま正統派の子どもたちが増えていった場合、従軍しない人々が増えるなどイスラエルにとって重荷が増すとも考えられます。

この動きを受けて、テルアビブのロン・フルダイ市長は、国は超正統派に不公平な優遇措置をやめるべきであり、沈黙を続ける大部分の市民も抗議するべきであると訴えました。エルサレムとは逆に、テルアビブでは若い世代の住民が増えており、「中東のゲイ・キャピタル」を目指すなど、世俗の一途をたどっています。エルサレムはさらに宗教的な町に、テルアビブはさらに世俗的な町になりつつあるようです。


■ エジプトとガザ緊張

ガザとイスラエル側の国境についてはいろいろ報道がなされますが、エジプトとガザの側の国境で起こっていることはあまりニュースになりません。エジプト軍は、ガザからエジプトにむかって掘られている密輸トンネルを“時々”厳しく取り締まります。

今回、エジプト軍は、トンネルの一つに有毒ガスを送り込みました。それによって中にいたガザのパレスチナ人4人が死亡しました。エジプトが有毒ガスを使用するのはこれが初めてではなく、これまでに同じ方法で死亡したガザ・パレスチナ人は40 人に上ると報告されています。ハマスはアラブ諸国に対し、エジプトがガザ住民に柔軟になるよう働きかけてほしいと要請していました。

5月1日、2000 人以上のガザの人々がメイデーのデモを行いました。 2007 年、困窮したガザの住民がエジプトとの国境線を突破し20 万から70 万人がガザへなだれ込んだ事件がありました。エジプトは、再びそのようなことになるのではないかと警戒を強めています。

<祈り>

  1. 不満と怒りに支配されているガザ地区の住人に救いの道が開かれるように
  2. ガザにいるクリスチャンが守られ、祝福されるように

ニュース情報源:GPO(イスラエル・プレスセンター)、イスラエル外務省HP、ハアレツ、エルサレムポスト、アルーツ7、イスラエルインサイダー、CNN、BBC、イスラエル国防軍HP、外務省HP、アル・ジャジーラなど

画像提供:www.israelimages.com、Isranet他

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