TEXT:B.F.P.Japan編集部
「見よ。わたしは、イスラエル人を、その行っていた諸国の民の間から連れ出し、彼らを四方から集め、彼らの地に連れて行く。」(エゼキエル37・21)
帰還の大きな要因――貧困
「まともな暮らしがしたい……」ウクライナでは、ナターリヤさんの頭から、この思いが離れたことはありませんでした。食べ物や生活必需品も満足に買えず、借金だけが増えていきました。修繕費用がなかったので、10年間の間にアパートは悲惨な状態になっていました。温かい普通の食事や新しい服など「はるかに遠い夢」です。生活を改善しようにも彼らには選択肢がありませんでした。
そんなある日、ナターリヤさんはイスラエルから一時帰国した友人の話を聞いて、イスラエルに帰還することを決意しました。しかし、申請のためにイスラエル領事館に出向く交通費がありません。幸いなことに、この夫妻の帰還のために、BFPの救出作戦プロジェクトが役に立つことができました。BFPは彼女に交通費と、パスポートやビザを申請する費用を援助しました。
現在、ナターリヤさん一家はイスラエルに住んでいます。慣れない地での生活はまだまだ大変ですが、今までの暮らしを抜け出すことができた喜びと、新しい希望に溢れています。彼女はこう言います。「私たちの帰還のための援助をしてくださった人たちすべての素晴らしい愛に、心の底から感謝をしています!」。
現存する反ユダヤ主義
昨年のイスラエルとヒズボラ間の戦闘を受け、世界各国でイスラエルを批判する報道が劇的に増えました。ロンドンでは、「イスラエルを消し去ろう!」というステッカーが貼られた二階建てバスが現れました。イギリスのユダヤ人学生連盟の代表によると、「学校のキャンパスでヘブライ語の書かれたTシャツを着ることが難しくなる。なぜなら、ユダヤ人として攻撃の標的にされてしまうからです」。
反ユダヤ主義は過去のものではありません。東欧諸国やロシアに住むユダヤ人も、強い反ユダヤ主義に直面しています。ナターリヤさんは祖母から反ユダヤ主義に関する話をたくさん聞かされていましたが、それは戦争時代の話だと思っていました。しかし、それが彼女の人生にもある日起こりました。近所の人がビール瓶を投げつけて、「悪魔のユダヤ人、ここから出ていけ!」と言ったのです。
苦しめられたパブロフさん
ウクライナの首都キエフに住んでいたパブロフさんは、反ユダヤ主義の暗雲の下、どこに行っても冷遇され、ののしられました。学校の先生ですら、クラスメートがいる前で彼をののしるのです。「ユダヤ人であることは、いつも恥ずかしいことでした。ユダヤ人は常に何事に関しても悪役で、国の中で最低の民族でした」。
技術の専門学校に入学しましたが、教師が彼を精神病患者だと中傷し、彼はとうとう学校を辞めざるを得なくなりました。パブロフさんの話は、ウクライナ全土や他の東ヨーロッパ諸国で今でも起こっている出来事です。
救出作戦プロジェクトとは
東欧諸国やロシアには、貧困や反ユダヤ主義のために、今の生活を脱出したいと願っているユダヤ人が何万人も残っています。多くの人々がBFPのような支援団体の援助なしには帰還を成し得ません。そのような人たちを探し出し、彼らにイスラエル帰還についての情報を提供するボランティアを、「フィッシャーマン(漁師)」と呼んでいます。
フィッシャーマンによれば、最近は現地の政府機関がユダヤ人を出国させないようにする圧力が再び強まっているということです。実のところ、いざユダヤ人が帰還を決意すると、生活は一層困難になります。ユリーさんいわく、帰還に必要な書類は秘密裏にそろえる必要があるということです。帰還しようとしていることが発覚すれば、仕事を失うことになるからです。
ユリーさんの場合、帰還することが発覚するとすぐにアパートから追い出されました。彼の雇い主が家主でもあったからです。救出作戦プロジェクトは、そのような人々に出国するまでの食料や宿泊費、交通費などを用意し、生活の細部に至るまで、帰還のプロセスを最初から最後まで応援しています。
世界中のクリスチャンのご支援と神さまの御導きにより、同プロジェクトでは、これまでに26,923人にのぼる人々をイスラエルに連れ帰ることができました。反ユダヤ主義の暗雲が静かに広がりを見せている今、ユダヤ人の帰還は急を要しています。
今回のレポートに登場した彼らは、自分たちが聖書の預言の成就に参加していることなど全く知らずイスラエルへの飛行機に乗りました。しかし神さまは彼ら一人ひとりを知っておられ、ウクライナの地から連れ出し、イスラエルへと呼び寄せてくださっています。BFPでは帰還後の生活を助けるプロジェクトもさまざまに用意し、彼らの帰還を促しています。
帰還には、一人当たり日本円にして平均約4万円の費用が必要です。反ユダヤ主義の吹き荒れる東欧諸国に残され、貧困に苦しんでいるユダヤ人が一日でも早く、一人でも多く、イスラエルの地へと帰ってくることができますように。そのためにBFPの救出作戦プロジェクトが主に用いられ、これからも多くの人々の帰還をサポートしていくことができるように、皆様のお祈りに加えていただければ感謝です!
『救出作戦プロジェクト』とは!?
イスラエルには、世界中に離散したユダヤ人が毎月2~5千人ほど帰還しています。高い地位や職を捨て、豊かな国から来るユダヤ人が増えた一方、貧しさと迫害に閉じ込められているユダヤ人がまだ各国に取り残されています。
BFPでは、主に旧ソ連地域や南米から自力で帰還できない人々を救出しています。現地の教会やクリスチャン団体、さらにユダヤ機関と協力し合って活動を行っています。
この働きは、フィッシャーマン(漁師)と呼ばれるボランティアの活躍なくしては語れません。ユダヤ人というだけで差別され、貧困の中にあり、何の希望も無いと感じている人々に、まず「帰還」という選択肢が存在することを伝えるのが彼らの役目です。また、帰還を決意した人々に必要な情報を提供し、書類を揃える手助けをし、無事に飛行機に乗るまでの生活全般を保護します。ユダヤ人であることを隠して生きてきた人々の場合、何代も前にまでさかのぼり、ユダヤ人である「証拠」を求め、広大な地域を捜し回ることもあります。一人のユダヤ人が無事に帰還することが、フィッシャーマンのこの上ない喜びです。彼らは自分たちが、単に人道的な支援を行っているのではなく、聖書の預言の成就に参加していることを知っているからです。
「その日にはもはや、『イスラエルの子らをエジプトの国から上らせた主は生きておられる』とは言わないで、ただ『イスラエルの子らを北の国や、彼らの散らされたすべての地方から上らせた主は生きておられる。』と言うようになる。わたしは彼らの先祖に与えた彼らの土地に彼らを帰らせる。」(エレミヤ書16・14‐15)
時が縮まってきました。再びロシアの鉄のカーテンが見え隠れしています。シンドラーが「もう一人……もう一人……」とユダヤ人を救い出したように、時間切れになる前に、主の民を主の地に連れ戻りたいと願わされます。
ぜひ、ご協力ください!