プロジェクトレポート

寒さに震えるジュリウス

TEXT. レベッカ・J・ブリマー(BFP国際会長)

ジュリウス(左)と、「希望の糧」の支援を展開する現地スタッフのスタニスラウ・ガーウェル

キリスト教国で行われたユダヤ人迫害の傷を、何とか癒やしたい。一杯の熱いスープを差し上げたい。クリスチャンの支援を通して、主の愛と希望の糧を受けてほしい…。『希望の糧プロジェクト』は、そんな願いを込めて運営されています。

ジュリウスというホロコースト生存者

日本でも変動の激しいこの時代を生き抜くことは、高齢者にとって困難になってきました。しかしさらに苦難の中を生きる人々がいます。ジュリウス・レクターはその一人です。彼は年若い少年時代、ナチスによってアウシュビッツ=ビルケナウ収容所に送られ、「A-4912」という認識番号を腕に入れ墨されました。

若かったためドイツ軍の化学兵器工場へ移され、そこで連合軍の爆撃に遭いましたが、ジュリウスは奇跡的に助かりました。後に別の場所へ移送され、レンガ作りを強制されました。ある日、その町にソ連軍が侵攻してきたため、ドイツ軍は夜間に囚人を移送。収容所から別の収容所へと、徒歩による死の行進をさせました。

最終的にはドルロヴァに辿り着き、ドイツ空軍のロケット工場で強制労働をさせられました。劣悪な状況で、食べ物も休憩もほとんどありません。収容所には一本の草も生えていなかったと言います。小さな青い芽が少しでも見えたら、人々は競ってそれを食べたからです。夜は体を縦にしなければならないような狭い宿舎で折り重なって眠りました。いつここを出られるのか分からない、また、いつ殺されるのか分からないという「終わりのない恐怖」が精神を圧迫して人々を苦しめました。

終戦後、ジュリウスは故郷ウクライナのベログロヴォに戻りましたが、すべてが失われていました。家が無かったのは当然ながら、父、叔父、いとこたち愛する家族は皆アウシュビッツで命を落としました。やっと生き抜き命をながらえても、愛する人が誰もいない恐怖と孤独はジュリウスを収容所にいるとき以上に苦しめました。また収容所で心の深いところに負った傷が、いつまでも彼を縛り、その痛みから長い間解放されることはありませんでした。

ジュリウスはその後もベログロヴォで、やっと見つけた義弟と共に暮らし、傷んだ体と心を抱えながら炊き出し支援を受けて生き延びていました。年月が経つにつれ、かつてはベログロヴォに1000人いたホロコーストからの生存者も、今ではジュリウスただ一人となってしまいました。同じ経験をした者同士にしか分からない辛さを分かち合える人はもう誰もいないのです。彼は「喪失」を日々味わい続けています。

ウクライナに住むホロコースト生存者の
多くが貧困と痛みの中で生活している

現在ジュリウスはウクライナ西部でとても厳しい状況下で暮らしています。年老いて体力も衰え、日々の食事も誰かの助けがなければ取ることができませんジュリウスの長年の夢は、いつの日かイスラエルに帰還することでしたが、年齢と体力を考えると、とてもその夢はかなえられそうにありません。

本格的な冬の到来に備えて

現在、ウクライナの彼の住む地方には一万人以上のユダヤ人が、点在しています。彼らの多くは、私たちの目にはとても生活していけそうもないと思えるような悲惨な状況で暮らしています。本格的な冬が到来し、寒さが日に日に増している今、こうした多くの貧困下で暮らすユダヤ人高齢者たちが十分に寒さをしのぐことができない状態でいます。私達BFP(ブリッジス・フォー・ピース)とウクライナ現地のチームは、是非ともこうした方々をお助けしたいと切に願っています。この冬、貧困に苦しむ人たちにとってこれほど深い意味を持つ贈り物はないかもしれません。

BFPは皆様の手足です

BFPはイスラエルとそこに住む人々を助け、祝福するために献身しています。主の御名によってユダヤ人に食物やシェルター、その他多くの実質的支援を提供する皆様の手足として働かせていただいています。そして、イスラエルにいるユダヤ人を助けることと同様に、私たちは健康状態や困難な状況によりイスラエルに帰還できないユダヤ人高齢者、ジュリウスのような人たちのことも忘れていません。

おそらく皆様はさまざまな働きに協力してほしいと支援をお願いされていることでしょう。もちろんBFP以外にも、イエス・キリストの御名によって、主の手足の働きをされる団体が多くあります。主イエスの愛をあらわす数多くの働きがあることはクリスチャンの一人として本当にうれしいことです。皆様がどの働きにご支援されるかを祈るとき、主の御心にかなった支援を主が導いてくださるでしょう。

皆様の祈りの一つに加えていただくために、イスラエルの地に戻れず、人生の終焉(しゅうえん)を迎えようとしているジュリウスやその他多くのユダヤ人の必要をお伝えすることは、主の願いであり御心にかなったことだと信じます。

弱りすぎて希望の糧プロジェクトのスープ・キッチンに
くることのできない方に配達される食料と毛布

BFPでは、この冬も「希望の糧プロジェクト」を通じて貧困の中にいる神の民に暖房器具や毛布の提供を急ピッチで進めています。必要が大きいため、ぜひ皆様にこの「希望の糧プロジェクト」にご協力いただき、ご支援いただけますようお願いしたいのです。ジュリウスのような苦しみの中にある方々に皆様のご協力によって、暖房器具や毛布、配達用食物を数カ月分提供することができます。

私たちは皆様の手足となってこの大切な働きを実行できる幸いを心から喜んでいます。主の御名によって、神の民を祝福したいと願われるクリスチャンの皆様の手となり足とならせていただけるのは何という特権でしょう。

皆様からの尊いご支援は、ジュリウス・レクターのような人々にぬくもりと食べ物を提供するために用いられています。そして現在生活困難な状態に陥っているホロコースト生存者をお助けし、彼らの祝福となることをお約束します。

イスラエルと離散の地にいるユダヤ人、神の民を祝福する皆様に主の祝福がありますように。イスラエルより心からの祈りを込めて、このレポートをお送りさせていただきます。

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