プロジェクトレポート

希望を胸に生きていく

文:レベッカ・J・ブリマー(BFP国際会長)

政情不安が続くウクライナ。ロシアとの対立が続き、経済もどんどん悪くなっています。その中で暮らす高齢のユダヤ人たちは、毎日の食事にも事欠くような状況です。声にならない彼らの叫びに、誰かが答える必要があります。皆様からの尊いご支援は、そんな彼らの希望の光となっています。

無料のランチを召し上がる、ウクライナで暮らすユダヤ人高齢者の方々 Photos by bridgesforpeace.com

「今朝、何を召し上がりましたか」。目の前にいる年配のユダヤ人女性に、私はそう尋ねました。返ってきた答えは、「紅茶を一杯」。

「では、今晩は夕食に何を召し上がる予定ですか」。今度は違う答えが返ってくることを期待しつつ、重ねてお聞きしてみると、彼女の口からは先ほどと同じ答えが返ってきました。「紅茶を一杯」。その答えを聞き、私の心は張り裂けそうでした。

私たちが立ち話をしていたのは、生活困窮者の方々に無料で食事を提供する場所です。そこでは栄養豊富な温かいランチが提供され、年配のユダヤ人たちであふれていました。しかし、ふとあることに気が付いた時、私は恐れを覚えました。この食事が、もしかしたら今後数日間、彼らが唯一口にできる食事になるのではないのか…と。

彼らは感謝と喜びをもって食料を持ち帰ります
Photos by bridgesforpeace.com

凍えるような寒さの中を、彼らはやって来ました。食料を自宅に持ち帰ることができるという希望を胸に、それぞれが入れ物を抱えています。ここで働くスタッフたちは、その場にいる尊いお一人おひとりのことをよく知っています。彼らの家の食器棚には何も無いということも…。だからこそ、彼らが抱えている入れ物いっぱいに食料を詰め込まずにはいられません。次に食事を提供できるのは2日後になるので、それまでの間、彼らはわずかに残った余り物で何とか生き延びなくてはならないからです。

無料の食事が振る舞われているこの場所は、ウクライナのベレゴボにあります。このプロジェクトは、BFP(ブリッジス・フォー・ピース)が支援している「希望の糧」で、地元のシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で週に3回運営されています。

寒さが厳しい真冬のこの日、テーブルにつくお一人おひとりが家族のように温かい笑顔で迎え入れられていました。氷点下の中、寒さと格闘しながらやって来た彼らを、温かい食事が体の芯まで温めてくれます。世界中のクリスチャンから届けられるこれらの支援に対して、彼らが喜びと感謝に満ちていることが手に取るように分かります。聖書を読むなら、神さまがいつも貧しい人、弱い立場にある人々に目を向け、彼らの必要を気にしておられることが分かります。皆様はその神さまと心と思いを一つにしてくださっています。

「希望の糧」でサポートしているユダヤ人のお一人
Photo by bridgesforpeace.com

皆様が「希望の糧」に惜しみない支援をしてくださるおかげで、現在、旧ソ連の九つの場所で無料の食堂を開くことができています。昨年は、年配のユダヤ人の方々に5万5554食の温かい食事を提供することができました。皆様の経済的なご支援がなければ、これらの尊い方たち(多くはホロコースト生存者)は、朝昼晩にわずか紅茶一杯を飲む以外になかったことでしょう。

ウクライナに住むユダヤ人高齢者の多くが、絶望的な状況に陥っているとお聞きした時、私たちの心は揺さぶられました。高齢や病気のため、彼らはイスラエルに移住することがかないません。若い世代のユダヤ人たちは、良い仕事の機会を得ようと都会に住んでいるため、高齢者は周りに頼る人がなく、自分で何とか糧を得なくてはならない状況です。受け取っている年金は、1カ月あたりわずか約60ドル(約6600円)。通常期でも生活がままなりませんが、冬ともなれば暖房費がかさみ、食べ物も高騰し、悲惨な状況となります。

「希望の糧」のコーディネーターを務めるスタニスワフ・ガヴェル氏が最近、ウクライナの高齢者が希望を失うサイクルについて、私たちに説明してくれました。

「十分なお金が無ければ、栄養価の高い食料は買えません。十分な栄養を取れなければ、当然体も弱まり、病気にもなりやすくなってしまいます。栄養不足が原因で病気になったとしても、わずかなお金は薬代に消えていくため、十分な食事が取れません。こうして、さらに病状は悪化していくわけです」

スタニスワフ氏は、彼のチームが引き続きウクライナで働けるように祈ってほしいと要請してきました。拠点のあるスロヴァキアからウクライナに向かって国境を越えていくたびに、彼らの信仰は試されるそうです。でこぼこ道を運転しながら向かう先には、病の床に伏し、身の回りのことが何もできない大勢の方々がおられます。「希望の糧」のチームの務めは、彼らを見舞い、助けること。毎回出掛ける前に、「主が共に行ってくださり、神の愛を示す力を私たちにお与えくださいますように」と祈っていくそうです。

BFPは、イスラエルにいるユダヤ人だけでなく、世界に離散するユダヤ人たちと共に立ち続けてきました。病気や高齢という理由のために、聖書の預言に記されているイスラエルへの帰還を果たせないユダヤ人の方々がいます。私たちは彼らに愛の手を差し伸べ、お世話をし、お仕えしています。旧ソ連の田舎町に住む多くの方にとって、毎日が生きることとの闘いです。「希望の糧」プロジェクトのコーディネーターは、これらの地域に住むユダヤ人指導者たちと会い、3800食以上の食事を配布し続けてきました。それだけではありません。入院費や薬代、手術費、葬儀費用、真冬の暖房費など、経済的な支援も提供しています。絶望的な悪循環に終止符を打ち、生きることへの希望をお届けすること、それがこのプロジェクトの目的です。

皆様は今晩、何を召し上がる予定でしょうか。明日の朝食には、何が用意されていますか。皆様が食卓に座って食事を楽しむ時、ぜひウクライナに住む貧しいユダヤ人高齢者を覚え、お祈りください。それだけでなく、旧ソ連で行われているこの「希望の糧」プロジェクトに心を向けてくださり、ご支援いただけたら幸いです。寒い冬の夜に、たった一人で過ごしておられる方々のため、皆様が寛大なご支援をお捧げくださる時、彼らにとって十二分な食事を提供できることでしょう。

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