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プロジェクトレポート

イスラエルの町を癒す ―タウンサポート・プログラムの祝福―

TEXT:スティーブンス・栄子(元B.F.P.Japan理事長)

この度、ベイト・シェメシュ市の市長のお招きを受け、ブリッジス・フォー・ピース(BFP)のチームと共にこの町を訪問しました。ベイト・シェメシュは、『タウンサポート・プログラム』の対象となっているだけでなく、皆様のご支援により、これまでたくさんの住民に助けの手が差し伸べられてきました。案内役のメイラ・マルハさんは、道すがら、この10年間で人口が4倍に増えたベイト・シェメシュの、苦難に満ちた道のりについて語ってくださいました。

聖書時代

ベイト・シェメシュ(太陽の家)は、旧・新約聖書に何度も登場する、古代イスラエルにとって重要な拠点でした。(新改訳では“ベテ・シェメシュ”)

約束の地に入ったイスラエルの民が、エモリ人と戦ったとき、ヨシュアが「日よ。月よ。動くな。」(ヨシュア10・12-14)と命じると、地球の自転が止まったという出来事が起こった場所です。また、ペリシテ人が契約の箱を奪い、腫物(できもの)で打たれた末、ついに契約の箱を戻した場所でもあります(Iサムエル6・19)。ダビデがゴリヤテと戦って勝利したエラの谷は、この町のすぐそばにあります。

現在

10年前には、人口2万人の豊かでのんびりした町だったベイト・シェメシュは、移民の急激な波を受けて、現在8万人にまでその人口が膨れ上がっています。ここには、中流の人々が住む素晴らしいマンション群の横に、エチオピア系移民の住む貧しい地域があります。彼らは古代と変わらない生活様式そのままで、イスラエルに帰還してくるため、現代的な暮らしの中で途方に暮れています。

大部分の人が、自分の名前すら書くことができません。彼らの80%が、生活保護を受けて生活しています。子どもたちは、労働でお金を稼いで生活を立てることを知らないまま育ちます。生活保護受給者25人を集め、工場での仕事をし、働くことの喜びを教えて自立させようとしましたが、誰も働きに来なかったということです。福祉に頼る暮らしが楽で離れられないのか、あるいは未知の分野に対する恐れがあるのか……これは今、大きな問題となっています。

ユダヤ人の家庭教育は徹底しています。親は子どもが今日習ったことを理解しているかどうか、確認することを怠りません。しかし、エチオピア系の家庭では、親を始め誰も読み書きができないので、子どもが本当に分かっているのか把握されないまま、翌日の勉強が始まります。学問が大切であることすら知らずに育つのです。

ベイト・シェメシュでは、放課後、エチオピア系の子どもたちを、優秀な生徒と共に居残らせて復習させることで、学問の大切さを教えています。福祉がもたらす悪循環に終止符を打つ上で、これは大きな成果を上げています。昨年、イスラエル全国一斉知能テストで、ベイト・シェメシュのある学校(生徒の半分近くがエチオピア系)が表彰されたそうです。このような地道な努力が、イスラエルの未来を築いているのです。

高校を訪ねて

私たちBFPの視察団は、メイラさんに連れられてある高校を訪ねました。ここは、絶え間ない校内暴力に悩んでいる学校でした。その打開策として、聖書庭園を造ることが計画されています。生徒たちが聖書を学びながら、関連する植物を植え、庭造りをすることで、プレッシャー、恐れ、怒りを静めることができると考えています。BFPはこのプロジェクトの一端を担うことになっています。

「僕たちは、ただ勉強をするだけではなく、良い社会を作り、人助けができるようになりたいのです。度重なる暴力を、どうしたら鎮めることができるかを相談しています」。しっかりとした言葉を語る学生リーダーたちの姿に、イスラエルの希望が見えました。

彼らから、BFPの働きについて質問があったので、イスラエルを愛する心をもって12カ国からボランティアが集まり、自費で生活しながら奉仕していることを語ると、一人が、「なぜ、それほどまでしてくれるんですか?」と、目を丸くしてたずねました。

夫のビル・スティーブンスは、「1700年以上のクリスチャンによるユダヤ人迫害に対して、心を痛めている人々が、クリスチャンとユダヤ人の間に平和の架け橋をかけるために働いているのです。」と語りました。通訳の先生は、私たちの説明を聴き、目をキラキラさせて、興奮しながら学生たちに伝えていました。

本当の貧困

ベイト・シェメシュにある小学校の教室の様子。
エチオピア系の子どもたちが多く集う

ユダヤ教によって運営されている、一軒の小学校も訪ねました。そこは児童の約半分がエチオピア系という、貧しい学校でした。「教科書を買うお金もない児童が多いのです。家に帰っても勉強を助けてくれる人がいません。一度も学校に行ったことがないエチオピア系の子どもたちを、一年間、じっくりとそばについて勉強させた結果、13~14歳の子どもは他の生徒に追いつくことができました。彼らは頭が良いのです。ただ、給食費の5シェケル(約130円)が払えないほど貧しい生活を強いられています。『半分だけ持って来なさい』と言いましたが、それでも払えません。

私たちの学校の経済も逼迫していて、給食費を児童から徴収しなければとてもやっていけません。長々とした請求書を作って子どもたちに渡す暇があるなら、彼らの成長のために、教育に専念したいのに……」と、校長先生が語ってくださいました。

学校の給食は、外注先の会社が毎日配達してくれます。スープとパンのような簡単な食事ですが、大部分の児童にとって、それがその日、唯一摂ることができる温かい食事なのです。メイラさんが補足しました。「給食のパンを、自分よりもっとひもじい思いをしている兄弟姉妹に持って帰る子どもたちもいます。」

この言葉を聞きながら、日本全体が飢えていた戦争直後、ひもじい思いをしていたことを思い出しました。しかし、彼らの飢えに比べれば、私は、本当の貧困を経験していなかったのかもしれません。

今度は、メイラさんが校長先生にBFPのことを説明し始めました。「BFPは、ベイト・シェメシュの5軒の幼稚園を修繕し、ペンキを塗り替えて、きれいにしてくれました。また、多くの貧しいエチオピア系住民の家を修繕してくれました。そして、たくさんの食物も送ってくださっています」。その言葉にうなずき、感動しながら聴いていたラビの目に涙が光り、それが流れ出しました。敬虔なユダヤ教徒が、クリスチャンの愛を感じて熱い涙を流している姿に感動を覚えました。

主によって美しい平和の架け橋がかけられたことに感謝を捧げながら、私たちは小学校を後にしました。

今回、タウンサポート・プログラムを通して、大いなる主の御手がベイト・シェメシュに伸ばされていることを見せていただきました。「ダンからベエル・シェバまで」――イスラエルの北から南まで伸ばされている、タウンサポートの働きは、あちらこちらで平和の花を咲かせています!

※タウンサポート・プログラムの詳細はコチラをご参照ください

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