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ティーチングレター

世界に台頭する反ユダヤ主義 -後編-

TEXT:レベッカ・J・ブリマー/B.F.P.Japan編集部

現在も継続されるネオナチ運動 Photo by Wikipedia

世界中にいろいろな形で広がる反ユダヤ主義を知ると共に、教会はどのようにこの問題に対処していけば良いのかを考えていきたいと思います。

反ユダヤ主義の図式

辞書によれば、反ユダヤ主義とは、「ユダヤ人及びユダヤ教に対する差別思想。ユダヤ人を否定することを信条として貫くこと。嫌悪と偏見」と書かれています。歴史上、これほど嫌われ、差別されてきた民族は他にいません。彼らへの憎悪は、時に民族を抹殺しようとするほど強い負のエネルギーを生み出します。

反ユダヤ主義と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、ヒトラーのように、ユダヤ人に直接手をかけ抹殺する暴力的な行為です。残念ながら、現在のウクライナやヨーロッパに広がるネオナチ(ナチスの思想を信奉する人物・団体が行う政治運動)によって、この暴力行為は今もなお継続されています。こうした分かりやすい反ユダヤ主義の他に、17世紀の後半からは、『シオン長老の議定書』に代表される、噂や情報操作による反ユダヤ主義が台頭してきました。

1921年英誌『タイムズ』が
偽書であると暴露した
『シオン賢者の議定書』
Photo by Wikipedia
アドルフ・ヒトラー
Photo by Wikipedia

●世界の金融はユダヤ人によって支配されている。●武器の売買で利益を得るため、ユダヤ人が裏で計画的に戦争を起こしている。●マスメディアはすべてユダヤ人によって支配され、人々をマインドコントロールしている。……など、驚くようなユダヤ陰謀説が次々と生み出されています。こうした陰謀説が世界中に広がり、人々の潜在意識の中に、ユダヤ人に対する嫌悪感を培っています。この土台の上に、パレスチナに対する非道というヒューマニズムを揺さぶる情報が加えられ、〝イスラエル=悪〟という図式が広く信じられるようになっています。

クリスチャンによる反ユダヤ主義

反ユダヤ主義はクリスチャン界にも存在します。「教会がイスラエルに取って代わり、霊的イスラエルとなった」とする置換神学。「ユダヤ人は律法によってきよく、クリスチャンはイエス・キリストによってきよい」とする二契約神学。その他にも、イスラエルに強く傾倒し過ぎて、ユダヤ教に改宗してしまう。あるいは、イスラエルを妄信するあまり、アラブ人を始めとする異邦人の救いをないがしろにしてしまう。こうした狂信的な行動がクリスチャンの中につまずきを起こし、イスラエルへの愛を奪ってしまいます。その結果、ユダヤ人をイエス・キリストから遠く引き離してしまうのです。

反ユダヤ主義の根源

良い意味でも悪い意味でも、ユダヤ人はいつも世界の注目の的です。なぜでしょうか。それは、アブラハムが選ばれて以来、彼らはこの地で繰り広げられている「人類救済計画」という神の舞台の主役だからです。主役に注目が集まるのは当然です。

神の舞台はアブラハムとその民族の選びと契約から始まります。その後、旧約聖書と預言が授けられ、その預言の通り、この民の中からイエス・キリストがお生まれくださいました。主はあがないと復活を成し遂げ、新約聖書を与え、教会を誕生させます。

神の舞台は着々と進み、今や最終章・クライマックスを迎えています。異邦人の救いが完成し、その後ユダヤ人に民族的な救いが及びます。こうして異邦人とユダヤ人の両方が完成するその時、主が再臨され、イエス・キリストが統治される新しい王国を築かれます。この時、主はサタンを封印してしまわれます。サタンにとって、この瞬間ほど恐ろしいものはありません。そのため、サタンは人類救済の舞台が完結しないように、あの手この手を使って主役であるユダヤ人を、舞台から引きずり下ろそうと必死です。

人類救済計画を前進しようとする神と、それを阻止しようとするサタンの対決は4千年以上も続いています。この光と闇の戦いは非常に複雑で、私たちの頭で考えうるようなシンプルなものではありません。エペソ書6章12節に「私たちの格闘は血肉に対するものではなく、主権、力、この暗やみの世界の支配者たち、また、天にいるもろもろの悪霊に対するものです」と書かれている通りです。

私たちとユダヤ人の関係

オリーブの古木に接ぎ木されて伸びた
若枝(右下の白っぽい枝)
撮影 : Bunkyo Gospel Center

ローマ人への手紙9-11章には、イスラエルに関する重要な教えが書かれています。パウロは、クリスチャンとユダヤ人との関係を、オリーブの木を用いて解説しています。私たち異邦人クリスチャンは、すでに存在していたイスラエルと神の契約に接ぎ木された者です。

マーヴィン・ウィルソン博士は『私たちの父、アブラハム』の中で次のように述べています。「今や、クリスチャンは神の新しい民として、信仰の父アブラハムとその民族の根から、豊かな霊的財産に養われる者たちとされたのです。そこにあるのは、〝一本の木〟のみであることを、強調しておかなければなりません。その木が示しているのは、私たちは神にあって一つの民だということです。」私たちは今や、人類救済計画という神の舞台にユダヤ人と共に立つ者となりました。だからこそ、反ユダヤ主義でユダヤ人が抹殺される、あるいは弱り果ててしまうようなことがあれば、それはそこにつながれている私たちにも影響を及ぼすのです。

どんな反ユダヤ主義も彼らを根絶やしにすることはできない

主はこう仰せられる。『もしわたしが昼と夜とに契約を結ばず、天と地との諸法則をわたしが定めなかったのなら、わたしは、ヤコブの子孫と、わたしのしもべダビデの子孫とを退け、その子孫の中から、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫を治める者を選ばないようなこともあろう。しかし、わたしは彼らの繁栄を元どおりにし、彼らをあわれむ。』エレミヤ33:25-26)。ぜひエレミヤ書の31章31-37節も参照してください。クリスチャンは、神が契約を守る神であることをはっきりと知っています。神は、「父祖たち」と契約を結びました。そして、神はその契約を守り続けます。

私たちは、ユダヤ人が離散した国々から帰還する時代に生き、預言者の言葉が非常に明確な形で成就するのを見ています。ユダヤ人があがなわれる日は必ず来るでしょう。なぜならイスラエルの聖なる方が約束しているからです。パウロは、ローマ人への手紙11章でこのことを言っています。「こうして、イスラエルはみな救われる、ということです。こう書かれているとおりです。『救う者がシオンから出て、ヤコブから不敬虔を取り払う。これこそ、彼らに与えたわたしの契約である。それは、わたしが彼らの罪を取り除く時である。』」(ローマ11:26-27)パウロは、イザヤ書59章21節、エレミヤ書31章33、34節にある約束にも言及しています。

無条件の愛が答え

BFP北部フードバンクのクリスチャン・
ボランティアと、支援を受けるユダヤ教
正統派学生

クリスチャンもかつて反ユダヤ主義に翻弄(ほんろう)され、ユダヤ人を迫害した時代がありました。ユダヤ人はそれによって痛み、双方の関係はひどく損なわれていました。この痛みが癒やされるためには時間が掛かり、うわべだけの回復では決して癒やされません。クリスチャンには、この関係に癒やしをもたらすために、あらゆる方法をもって無条件の愛を表す行動を起こすことが求められています。著書『基礎を固める方法』において、ラビ・イェヒエル・エクスタインは次のように述べています。「真理はまったく単純でした。何世紀もの間、答えは私たちの手からすり抜けていましたが、今その答えが明らかにされました。その答えとは愛です。お互いに愛を差し伸べることは私たちに求められている任務です。どうすれば互いの社会に理解と和解、癒やしの橋を架けることができるか、絶えず尋ね求める必要があります。自分を愛するように隣人を愛し、私たちの世界にシャローム(平和)をもたらすためです。」

みことばに立つ

これからの時代、今までの反ユダヤ主義のみならず、思いもよらないような狡猾(こうかつ)な反ユダヤ主義が起こってくることでしょう。そのからくりにだまされない方法は、みことばに立つこと、神の愛の視点で彼らを見ること、そして祈りです。真理を語ってくださる聖霊さまの細き御声を聞きつつ、神の計画の前進のために、反ユダヤ主義と闘っていきましょう。同時に、イスラエルに対して妄信的にならないように気を付けましょう。唯一真実と愛によってバランスを取っておられる主の背中におぶわれて、最後の舞台を間違いなく進んでいきたいと思います。

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