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アマレク -後編-

TEXT: シェリル・ハウアー [BFP国際開発ディレクター]

アマレクの戦い©Wikimedia

前半では、イスラエルに敵意をいだく「アマレクの霊」の根源を探りました。後半では、歴史に繰り返し現れるアマレクの霊について学んでまいりましょう。そこから、アマレクの霊に対して、私たちがどのように応答していくのかを探っていきたいと思います。

アマレク - その他の伝統

アラビアやその周辺諸国には、アマレク人に関するたくさんのおとぎ話があります。これらのおとぎ話には根拠はありませんが、多くのアラビア、イスラム作家がアマレク人についての物語を創作してきました。さらに最近になって、イスラム作家たちは「イスラエルの大量虐殺による不運な犠牲者」としてアマレク人を描くようになりました。

イスラム作家たちが書くアマレク人の物語は架空のものですが、アマレクとその子孫が確かに存在していたことは歴史的事実です。なぜなら、彼らについて明確な記述が聖書にあるからです。このアマレク人について、多くのクリスチャンが霊的解釈にとどまり、アマレクを人間の肉的罪の性質としてのみとらえています。今日、多くの教師がアマレクとは人間の内にある悪を表していると教えています。イスラエルとアマレク人との戦いとは、敬虔に生きることを求めるすべての人が葛藤する、内側の敵との戦いです。しかし、それと同時に、歴史に影響を及ぼす現実の働きでもあります。

クリスチャンたちは、アマレクが肉の欲を表すと共に、ユダヤ人の真の歴史上の宿敵であるという聖書理解に至るようになりました。そして、アマレクの子孫に受け継がれてきたヤコブの子孫に対する憎しみが、私たちの住んでいる世界にも影響を与え続けていると認識しています。

それでは私たち神の民は、それに対してどのように応答したらよいのでしょうか。まず、アマレクがどういった人物であるかを覚えておかなければなりません。次に、神が成されたこと、また今後何を成そうとしておられるのかを理解したいと思います。

アマレクの霊

「反ユダヤ主義」は、世界で最も不可解な現象の一つです。歴史上、大量虐殺に遭った民族は他にもありますが、イスラエル民族ほど世界中からの憎悪を体験してきた民族はいません。「反ユダヤ主義」は、社会学的に他に類を見ないほど独特のものです。その言葉も独特です。特定の民族に対する憎悪を「反」と「主義」ということばを持って表す唯一の言葉です。イギリス人に対する思想にまで及ぶ憎悪の単語もなければ、フランス人にも、アイルランド人にも、ドイツ人にもありません。たとえ、歴史の中で、それらの国家との間に抑圧と戦争の苦みを体験したことがあったとしてもです。

ユダヤ人は、他の民族とは全く異なる憎悪が向けられる、世界でただ一つの民族であり、それはイサクとイシュマエルのとき以来続いています。ラビたちは、「預言によると、神は、選民に対する生来の憎悪を持つ民族アマレクと戦い続けられる。メシヤが来られるまで…」と言っています。

今日、多くのクリスチャンは、メシヤの再臨が非常に近い時代に入ったと信じています。そしてメシヤの初臨を信じていないユダヤ人も、彼らの待ち望むメシヤが来られる日がいよいよ近付いてきたと言っています。天の扉が開き、メシヤが再びこの地に来られるためには、扉の鍵を握っているユダヤ民族の存在が非常に重要になります。これが事実であるとするなら、世界中で反ユダヤ主義とイスラエルに対する憎悪が急速に上昇していることは、驚くことではありません。アマレクの霊は、イエス・キリストがメシヤとして再びこの地に来られるまで、決して休むことはありません。

アモス書1章11節からアマレクの霊を象徴する罪が見えてきます。「エドム(エサウの国)の犯した三つのそむきの罪、四つのそむきの罪のために、わたしはその刑罰を取り消さない。彼が剣で自分の兄弟を追い、肉親の情をそこない、怒り続けていつまでも激しい怒りを保っていたからだ。」イスラエルの賢人らは、この箇所からアマレクとそれに従う者たちを特定する罪の性質を四つ挙げました。そして神はこれらの罪を決して赦されません。

  1. 剣を持ってユダヤ民族を執拗に攻め、絶滅を試みる
  2. ユダヤ民族へ、いかなるときも憐れみをかけない
  3. どんな手段を取っても、ユダヤ民族を虐殺することに没頭する
  4. ユダヤ民族の存在そのものに憤りを持っている

歴史の中で、何度も右記の基準に基づくアマレクの旗印の下に多くの者が陥りました。その最たるもの、それがヒトラーによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)でしょう。彼の指示のもと600万人ものユダヤ人が、ただユダヤ人であるというだけの理由で、収容所へ送られ、虐殺されていきました。ヒトラーと当時のナチスドイツがユダヤ人絶滅を掲げた根底に「アマレクの霊」があったことは、上記の4つの罪の性質から見て取ることができます。また、最近ではイランのアフマディネジャド大統領が「イスラエルを地図上から消し去る。」と公言しています。それは詩篇83篇4~8節を彷彿とさせます。「彼らは言っています。『さあ、彼らの国を消し去って、イスラエルの名がもはや覚えられないようにしよう。』彼らは心を一つにして悪だくみをし、あなたに逆らって、契約を結んでいます。それは、エドムの天幕の者たちとイシュマエル人、モアブとハガル人、ゲバルとアモン、それにアマレク、ツロの住民といっしょにペリシテもです。アッシリヤもまた、彼らにくみし、彼らはロトの子らの腕となりました。」

イランのアフマディネジャド大統領

悲しいことに、エサウ(エドム)とイシュマエルの子孫を含むイスラム同様、多くのキリスト教国までもが2千年に渡り、アマレクの旗印の下に入りました。アマレクは神の前で傲慢にふるまい、神の力や選民イスラエルの独自の役割を認めようとしませんでした。むしろ、神が選民を通して行おうとする人類の救済計画を見て、「それがどうした」という皮肉な態度を取りました。同じようにキリスト教国も、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫と神の契約関係を認めようとせず、イエス・キリストの名のもとに彼らを迫害したのです。その代表的な例が、十字軍によるユダヤ人大虐殺、スペインで行われた宗教裁判とユダヤ教徒の処刑や追放です。

これらの歴史的過ちを通して、ユダヤ人とクリスチャンの間に大きな溝ができてしまいました。迫害を経験した、あるユダヤ人女性は次のように証言しています。

「私は子どもの頃、母と祖母と共に南部バイエルンへ移されました。そこでは、キリスト教の子どもたちが私を攻撃しました。彼らは私の後をつけ、殴り、私の通学かばんの中身をまき散らしました。彼らは私を侮辱し、母を中傷しました。父も兄弟もなく、頼れる人は誰もいませんでした。人々は無言で見ているだけで、私たちは助けもなく、見捨てられていました。自分の身を守ろうと相手を蹴って引っ掻くなら、人々は私を悪魔と呼んで、再び私たちを中傷するのです。自衛のために抵抗すると悪魔と呼ばれ、抵抗しなければ、弱い者として中傷されました。」

アメリカの教会による反イスラエル運動

私たちの応答

私たちクリスチャンは、ユダヤ人であるメシヤに従う者たちです。それゆえ、歴史上のキリスト教会がヒトラー、ハマン、アフマディネジャド大統領、アッシリヤ人、バビロニア人、ローマ人たちと同じように迫害をしてきたということは信じがたいことです。しかし、私たちの歴史は、反ユダヤ主義の性質に満ちていました。多くの国、多くのリーダー、多くの人、そして本当に残念なことに、多くのクリスチャンが、ユダヤ民族に対する憎悪を形にしてきました。キリスト教会には、置換神学(聖書でイスラエルに与えられている約束、契約、祝福は、ユダヤ人から取り去られ、今や彼らに取って代わった教会に与えられている。「教会」が「イスラエル」の立場を引き継いだ、という教え)を受け入れ、教え、信じ、選民イスラエルを迫害してきた歴史の事実があります。このような一つひとつの積み重ねによって、アマレクの霊は、歴史を通じて強められ繁栄してきました。

今日、イスラム世界の多くが預言者アモスの言葉の体現であることは明らかです。アマレクの霊は、ヤコブの子孫を滅ぼすアマレクの試みを続けています。現在のアラブ世界の不穏な状況、イスラム原理主義の高まり、イスラエルを神の選民と認めないこと、国際社会がイスラエルを非難すること、これらすべてはアマレクの霊に影響される世界の症状です。

イスラム原理主義組織ハマスの少年たち

クリスチャンとして、神の民として、私たちは堅く立つ必要があります。イスラエル国家とイスラエルの人々のために、祈り、とりなし、神のみことばを宣言し、主の勝利を、信仰によって確信し続けていきましょう。そして、アマレクの霊が強く働く只中にあってその破れ口に立ち、とりなし者としての召しに応答していきましょう。

同時に、私たちは、謙遜に神を敬い、罪から離れる生活をしなければなりません。罪を犯すことで、アマレクの霊に力を与えないように気をつけましょう。罪は私と主との間の個人的な問題だけにとどまらず、霊の領域において、アマレクの霊に火を付け、さらに油を注ぐことになるでしょう。日常の問題や、不敬虔なかかわりから解放されましょう。はじめの愛に立ち返るなら、神はあらゆる困難にあうたびに、私たちを助けてくださいます。

また、私たちは、過去の歴史を覚えていなければなりません。アマレクの霊を滅ぼすために私たちができることは、愛の行為、悔い改め、誠意を持ってユダヤ人へ手を差し伸べ、尊敬し、謙遜の内にクリスチャン本来の姿を示すことです。そして、イスラム原理主義など、過激なアマレクの霊に支配されている人々のために祈り、彼らが真の神を知ることができるように、彼らの救いを祈ることです。

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